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バジリスク

その日カナは図書室で一冊の本を手に取った。

その瞬間、カナは瞳と表情から生気を失った。

カナは本に魅入られた。

そこにエネットが図書室に入ってきた。

エネットはカナを見つけた。

「カナ?」

エネットは不審に思った。

「カナ!」

「! あれ? エネット君?」

「どうしたんだい、カナ? ぼーっとしたりして?」

「う、ううん、何でもないよう。それじゃあね、エネット君」

「あ、ああ」

カナは本を持ったまま走り去った。

これが次の事件の前触れだった。


次の日、エネットは自転車でアポロン魔法学院に登校した。

学院はなんだかあわただしかった。

「なんだろう? なんだかおかしいな」

エネットは校舎の中に入った。

すると、荷台に乗せられて行く人を見た。

その人は硬直してした。

「今のは!?」

エネットは驚いた。

エネットはそのあとを追った。

医務室はさながら野戦病院のようだった。

中には「石化」した生徒たちが次々と運び込まれていた。

その中にパオラ先生を見つけた。

「パオラ先生! いったいどうしたんですか!?」

「ああ、エネット君。大変なんです! 生徒が石化するという事件が起きました。ああ、集中しないと……」

パオラ先生は一人の生徒の石化を解除しようとしていた。

パオラ先生の専門は回復魔法だからだ。

「私も手伝います!」

「リヴィア!」

リヴィアも石化した生徒に駆け寄り、石化を解除していく。

石化は回復には長い時間がかかる状態異常だった。

「いったい何が起こったんだ?」

エネットは呆然とした。

そこにフランチェスコ校長が現れた。

「バジリスク(Basilisk)が現れたんですよ、エネット君」

「校長先生……あの、バジリスクですか?」

「そうです。石化の力を持つあの、バジリスクです。生き残った生徒が証言してくれました。動く蛇のような怪物を見たと」

「そのバジリスクは、今どこにいるんですか?」

「残念ながらわかりません。この校舎のどこかに隠れているのかもしれません。現在手の空いている教師たちが探しています」


エネット、リヴィア、ユキコ、カナの四人は緑の芝の上にシートを敷き、昼食を取っていた。

お弁当タイムである。

「リヴィア、大丈夫かい?」

エネットがリヴィアを気づかった。

「あ、はい。大丈夫です、エネット君」

「そうだよ、リヴィア? 少し、休んだ方がいいんじゃない? 石化の治療って疲れるでしょ?」

「大丈夫です。私は本当に大丈夫ですから、ユキコちゃん」

「そう? ならいいんだけど……カナは……? どうしたのよ、ねえカナ?」

カナは呼ばれてもずっとぼーっとしていた。

みんなの視線がカナに集中した。

「え? あれえ? みんなどうしたの?」

カナは正気に戻った。

「カナも大丈夫? どうしたの? なんだか心がこの場にないような感じで……」

「ユキコちゃん、私は大丈夫だよお。さあ、お弁当を食べようよ」

「そうだね。そうしよっか」

それを見たエネットはますます不審を強めた。


カナは一人図書室に向かっていた。

エネットはそれを怪しく思い、ひそかに後をつけていた。

(このまま図書室に向かっているのか……バジリスクの出現以来、校舎は立ち入り禁止になっているのに、カナは何をするつもりだろう?)

カナは図書室に入った。

周りをきょろきょろ確認する。

すると、本棚が動き、暗い空間が現れた。

カナは闇の中へ消えていった。

エネットはすぐさまその中へと入った。


「ここは……地下のホールか?」

エネットは辺りを見わたした。

「ようこそ、エネット・シルヴィ君」

「誰だ!?」

ホールに火がともった。

ホールが明るくなった。

ホールの中央に一冊の本を持ったカナが立っていた。

「フフフ、初めまして。私は『悪魔の書』」

「本が、しゃべった!?」

その後本はカナの手を離れて宙に浮いた。

本の表紙についている目とエネットの視線が合った。

「フフフ、君が後をつけていることはこの私が知っていたよ。もっとも、彼女の方は気づかなかったようだがね」

「カナに何をした!」

「なに、魂を魅了させてもらったよ。私の操り人形にするためにね」

「カナを解放しろ!」

「フハハハハハ! それはできんな。この娘にはまだ利用価値がある。バジリスクのイケニエになるという価値がね。フフフ、フハハハハハ!」

「バジリスク……石化事件もおまえのしわざか!」

「ふふん、その通り。この私がバジリスクを操っていたのだ。さあ、いでよ、バジリスク! この少年が獲物だ!」

悪魔の書のページが開いた。

そこには一つの紫色の宝石が収められていた。

「宝石!? バジリスクも宝石獣か」

「その通りだ。エネット・シルヴィ君」

宝石が悪魔の書から飛び出した。

宝石はしだいに形を取り、大きな蛇の姿になった。

これがバジリスクである。

バジリスクは大きな叫び声を上げた。

「さあ、れ! バジリスクよ! その牙を血で染めるがいい!」

悪魔の書が命令を下した。

エネットはエーテルスピアを出した。

バジリスクは毒の息をはいた。

「風撃!」

エネットは毒の息に風撃をぶつけた。

風の放流が毒の息を押しのけ、バジリスクにダメージを与えた。

「風刃!」

エネットは風の刃を発射した。

風の刃がバジリスクを傷つけ、ダメージを与える。

バジリスクが動き出した。

バジリスクは大きく口を開け、エネットにかみつこうとした。

「おっと!」

エネットはタイミングを見計らって、バックステップでよけた。

バジリスクの口が空をかむ。

鷹風たかかぜ!」

バジリスクをエネットの魔力が襲う。

鷹風はバジリスクを吹き飛ばした。

「ギリャアアアアアア!?」

バジリスクは目を妖しく光らせた。

「石化の目」である。

「来る!」

エネットは目を閉じて石化の目をやり過ごした。

バジリスクは尾を叩きつけて攻撃してきた。

エネットはとっさにエーテルスピアでガードした。

ガードしたものの、尾の衝撃でエネットは吹き飛ばされた。

「ううっ!?」

エネットは倒れた。

「まだだ!」

エネットはスピアを杖にして立ち上がる。

バジリスクが大きく口を開けた。

毒の牙が二本見えた。

あの牙でかみつかれたら一巻の終わりであろう。

「風巻!」

エネットはエーテルスピアに風をまとわせると、バジリスクののどめがけて風の刃を突き付けた。

風巻はバジリスクののどを貫通した。

「ギャアオオオオオオオン!?」

バジリスクが悲鳴を上げる。

バジリスクは悲鳴を上げると、茶色い粒子と化して消滅した。

「何だと、バジリスクがやられただと!?」

「これで最後だ!」

エネットはエーテルスピアを悪魔の書をめがけて投げつけた。

「グワアアアアアアア!?」

エーテルスピアは悪魔の書を貫いた。

悪魔の書は地面に落ちた。

「火炎槍!」

エネットは悪魔の書に炎の魔法を放った。

悪魔の書は燃え上がり炎上した。

エネットは近づき、エーテルスピアを回収した。

そのとたんにカナが地面に倒れた。

「やれやれ、抱っこして連れて行くしかないか……」

その様子をひそかに一人の男が見ていた。

その男はユリウスだった。

「フフフ……宝石獣バジリスクを退けたか……さすがはエネット君。学年主席だな」

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