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第94話 休憩時間

『よっ。待たせたな。戻ったぜ。』


 白蓮との密談を終え皆の待つ会場外の林の中に向かった。

 姿を隠していた裏是流達が出迎えてくれる。


『お兄ちゃん。何処に行ってたんですか?。』

『そうだよ閃。いきなり居なくなっちゃうんだもん!。』

『ちょっとな。内緒話だ。』

『ええ。何スか?それ?。』

『おっ!白。久し振りだな。元気そうで何よりだ。裏是流も…って何か…やつれてないか?。』


 白とは洞窟の件以来の再開。

 裏是流とは拠点に居た時以来だな。暫く会っていなかった間に裏是流の顔は疲れきってやつれていた。


『ははは。閃さん…白が…キス魔になっちゃったんだよ…。』

『は?。』

『閃…ごめん僕のせいなんだ。』


 代刃が耳打ちしてきた内容によると…。

 敵との戦いの最中瀕死の重傷を負った白を助けるために代刃は異世界の神具を呼び出した。その際に出現したモノがキスをすることで対象の傷を癒すスキルだったそうだ。

 それ以降、キスの味を覚えてしまった白は代刃達にキスをねだってくるようになってしまったという。

 それで、その中でも裏是流とのキスが一番白の中でもしっくり来たらしく、裏是流は暇さえあれば白に襲われているのだという。


『裏是流。』

『ん?何?閃さん?。』

『強く生きろよ。』

『ちょっと…完全に見捨てる気じゃん!?。』

『白も、程々にな。』

『はいッス!。』

『まあ、2人は幼馴染みだしお似合いだよ。でも、あんまり人前でするなよ?そんなとこ基汐や光歌がみたら驚いちまうぜ?。』

『はいッス!。』

『うん…知ってた…うん…諦めてたよ…うん…。』


 顔に表情が消えた裏是流が力無く項垂れた。

 俺は裏是流の後ろに立っていた少女に声を掛けた。


『で、挨拶が遅れたな。君が時雨だったか?。』

『え?あっ…はい!。元…青法詩典の時雨です。この節は裏是流さんに命を救われ、クロノフィリア加入を勧められました!よろしくお願いします。』

『俺は閃だ。よろしくな。時雨…と言ったらゲーム時代にソロプレイヤーの個人ランキングで2位だったよな?覚えてるぜ。』

『あっ…私のことを?。』

『ああ、あの時はまだソロプレイヤーもかなりの人数いたからな。それで2位だったんだ。すげぇよ!。』

『ありがとうございます。光栄です。』

『時雨のレベルは120で良いんだよな?。』

『はい。そうです。』

『これから、ここは更に危険になる可能性がある。一先ず時雨は俺達の拠点に送り届けたいと思うんだが?問題ないか?。』

『あ、はい。皆さんから、その辺りの話しは聞いていますので。』

『話が速くて助かる。じゃあ、時間も限られてるからな早速。』


 俺は 箱 を繋げ拠点へのゲートを作る。


『お前らはちょっと待っててくれ。』

『はいッス!』

『分かりましたわ。』


 時雨を引き連れゲートの中に、ゲートの先は喫茶店の前に作った。


『やあ、いらっしゃい。話は裏是流君から聞いてるよ。』


 既に無凱のおっさんが入り口前で待っていた。


『おっさん。後は頼めるか?。』

『問題ないよ。皆で応援してるから頑張ってね。』

『ああ。任せろ。』


 俺は再びゲートを潜り会場へと戻った。


ーーー


ーーークロノフィリア拠点前ーーー


ーーー時雨ーーー


『さて、時雨ちゃんで良いかな?。』

『あっ…はい。そうです。』


 閃さんはゲートを潜り元の場所に戻って行った。残された私におじ様が声を掛けてきた。

 裏是流さんの時も感じたけど、クロノフィリアのメンバーは美男美女ばっかりね…。


『ようこそ。クロノフィリアへ。歓迎するよ。僕達は今、閃君達の戦いを応援していたんだ。君も一緒に応援しよう。』

『…はい。』


 応援って…ここで?。


『すみません。』

『ん?何かな?。』

『ここは、どの辺りなのでしょうか?。』

『…ああ。この場所は黄華扇桜の拠点から更に南にある場所さ。』

『なっ!?。』


 白聖連団の支配エリアから900キロ近く離れているのに、この一瞬で移動したというの?。


『はは。驚いてるね。でも、長距離移動が出来るのはクロノフィリアでも2人しか居ないからね。』

『やっぱり、クロノフィリアは凄いですね。大会での戦いも常軌を逸してましたし…。』

『レベル150の恩恵さ。たまたま運が良かっただけだよ。さぁ、立ち話も何だ…中に入ろう。メンバーを紹介するよ。』

『はい…お邪魔します。』


 廃墟が並ぶ、このエリアの中で一際目を引く喫茶店の中に入る。そして、私は更に驚くこととなった。

 喫茶店に入った瞬間、最初に目に飛び込んで来たのが巨大なモニターだった。

 画面には大会会場の様子や、閃さんや裏是流さんが映っている。

 どうやって、会場の映像を流しているのかは分からないけど…この電気もまともに配電されていない世界で白聖の支配エリアの映像をリアルタイムで入手出来るなんて…。

 能力だけじゃない…技術力も…規格外なんだ。

 モニターの前の椅子に座っていた方達が順番に自己紹介をしてくれた。

 この方達がクロノフィリア…。私を笑顔で迎えてくれ、とても歓迎されました。

 青法とは雰囲気からして違いますね。

 青法は、何かに取り憑かれているようにリスティナへの信仰が激しく、ギルドマスターの青嵐を中心にギルド全体が狂信者だらけだった。

 私は、自分の力を必要としてくれた青嵐に誘われ青法に入ったのだが、私自身が神様を信じていない為、青法の人達と意見が食い違ったりすることが多かった。

 だからだろうか。ここの、クロノフィリアの方々からの歓迎をとても温かいものと感じてしまう。

 順番に自己紹介が進み、この場にいるクロノフィリアメンバー全員が自己紹介を済ませた後奥の椅子に座っていた面々が自己紹介を始めた。

 そして、何よりも私を驚かせた。


『え?赤皇…黒璃…美緑…?。』


 そこには六大ギルドのギルドマスター達が座っていたのだから…。


『おう!確か青ぃのの所に居た女だな?時雨だぁ!これから宜しくな!。』

『こんにちは!会議の時以来だね!私は黒璃!宜しくね!。』

『美緑です。宜しくお願いします。』


 良く見るとその幹部達も並んで楽しそうにお茶を飲んでるし…。


『色々あってね。今は彼等もクロノフィリアのメンバーさ。』

『はは…ははは…。』


 もう…渇いた笑い声しか出ませんでした。


ーーー


ーーー大会会場 VIPルームーーー


ーーー白蓮ーーー


『戻りました。ん?端骨はどちらに?。』


 クロノフィリアメンバー…閃との密談を終えVIPルームに戻ってくると端骨の姿は無く、黄華さんだけが残っていた。彼女は会場をじっと眺めている。

 いつ見ても絵になる人だね…。

 これで子供がいる人妻だというのだから銀が珍しく嫉妬するのも分かる。


『少し用事があると言って出ていきましたよ。』

『ほぉ…では、今は黄華さんだけと?。』

『そう…なりますね。』


 おや、少し警戒されてしまったね。


『なら、丁度いい。少し話を聞いて貰えますか?。』

『え、ええ。』


 怪訝な表情で僕を見る黄華さん。この人は隠し事が下手だね。


『今し方、この人と話をしてきたんだ。』


 僕は手配書を黄華さんに見せた。

 一瞬目を見開いて、ゆっくりと僕の顔色を窺う。


『そ、それで?。』

『彼は黄華扇桜とクロノフィリアが裏で繋がっていたことを僕に教えてくれたんですよ。』

『なっ!?。』

『成程。黄華さんを通じてクロノフィリアは僕達六大ギルドの情報を得ていた。それなら、納得です。今までのクロノフィリアの迅速な対応の速さにね。』

『………。』

『今、この部屋には僕と銀、白雪の3人。そして、貴女だけ。普通ならそう考える。けれど、居ますよね?黄華さんを護衛しているクロノフィリアメンバーが?。』


 これは、鎌を掛けただけ。

 あの男が居るギルドが仲間を敵陣に送り込むのに何の手も打たないわけがないからね。

 すると、黄華さんを庇うように黒い神父服の男が現れる。

 ああ。やはり居ましたか。【バグ修正プログラム】に反応しなかったということは霊体にでもなっていたのかな?。

 流石のシステムも幽霊には干渉できないからね。


『やれやれ。見破られていましたか。』

『君は会議の時に居たね。名前を聞いても良いかな?。』

『クロノフィリア所属 No.11 叶です。宜しく。白蓮君。』

『どうも。』

『それで、貴方はこの状況をどうするのですか?我々がクロノフィリアだと気付いた以上、貴方にとっては排除の対象の筈でしょう?。』

『何もしないよ。』

『は?。』

『え?。』


 驚いてるね。彼等の中での僕の立ち位置が理解できる。


『黄華さん。いくつか質問をしても良いかな?。』

『…ええ。』

『貴女に渡したリヒトはどうしたのかな?。』

『クロノフィリアのメンバーに渡したわ。』

『なら、薬に使われているモノも知っているかい?。』

『…人間…。』

『やっぱり…知ってたか。』

『何故…そんなことをしたの?。』

『………それは、…私欲…だね。僕の為の犠牲になってもらった。』

『…そうですか…。悲しいね。』

『…黄華さんはリヒトを使う気はあるかい?。』

『あるわけないでしょ!。』


 黄華さんが怒っている。

 ああ。そうやって怒るんだね。普段の凛とした姿はやっぱり演技だったのかな?。


『うん。それが良い。使わないに越したことはない。個人的にも貴女には使って欲しくなかったから。良かったよ。』

『…さっきから、貴方の真意が読めないわ。』

『ははは。だろうね。』


 さて、そろそろ本題だ。


『僕は決勝戦が終わり優勝者が決定した瞬間に行動を起こす。僕の全てを使い君達を殲滅するつもりだ。』

『っ!。』

『それまでは何もしないけど…そうなれば会場の全てに安全な場所は無くなってしまう。』

『それを私達に話しても良いの?。』

『ふふ。構わないよ。』

『………。』

『君達の仲間に長距離のワープ系のスキルを使える人は居るのかい?。』

『…そんな大切な情報を、あなたに言うと思う?。』

『出来れば教えて欲しいけど。言いたくなければ、ここからは僕の独り言だ。ここからこの場所は戦場になる。レベル120の黄華さんでは、確実に足手まといになる。だから、それまでに自分のギルドかクロノフィリアの拠点に戻って欲しい。』

『…何でそんなことを私に言うのよ?。』

『おや?今のは僕の独り言だよ?。』

『………。』

『ここより、黄華さんは彼等の所にいた方が良い。観客席なら何が起きてもこの部屋より安全だよ。』

『…あなたは…何を考えてるの?。』

『………。銀。』


 僕が命令すると銀が扉を開けた。


『さあ、黄華さんと叶さん。』

『…わかったわ。』


 僕が貴女にしてあげられるのはこれくらいだね。

 でも、最後に…。


『黄華さん。それと叶さん。』

『え?。』

『何…かな?。』

『端骨には、気を付けて。アイツは僕よりも彼等の力を使っているから。』

『端骨?。』

『彼等?。』

『僕は君達の敵だからね。ヒントはここまで。』

『………。』


 何も話さず部屋を出て行こうとする黄華さんの後ろ姿を見ながら僕は…。


『黄華さん…。お元気で…。』


 …と、呟いた。


ーーー


『皆様~。大変長らくお待たせ致しました~。32名いた選手も一回戦が終わり、半分の16名に!強者の中の強者が残ったと言っても過言ではないでしょう!それでは!お待ちかねの2回戦!Aブロック!第一試合!赤コーナー!1回戦では圧倒的な力を見せてくれました!春瀬選手~!。』


『私ですわね!行って参りますわ!。』


 春瀬が観客席から降りていく。

 選手は控え室で待機しなくても良いらしいので全員で観客席に移動した。

 一応、裏是流のスキルで認識阻害を使っているが。


『続いて青コーナー!一回戦は素早く華麗な動きで相手を翻弄し対戦相手を寄せ付けませんでした!匿名希望!セーラー服美少女戦士選手~!。自分で美少女って言っちゃってるし~。プププ。』


 対戦相手は灰色のフードの付いたコートを羽織っていた。


『どんな相手でも私は負けませんわよ!。』


 リングに上がる両者。

 聖剣を構え、対戦相手を睨む春瀬。


『それでは!春瀬 対 セーラー服美少女戦士!始めっ!。』


『はぁぁぁあああああ!。』


 一気に距離を詰めようとする春瀬に相手は…。


『神具…【獣神魔弾爪填銃】!。』

『なっ!?。』


 放たれる魔力の弾丸。

 至近距離で放たれた弾丸を剣を盾にし防いだことで発生した爆風で春瀬はリングの端まで吹き飛んだ。

 そして、対戦相手は爆風で羽織っていたコートが宙に舞った。


『あっ…光歌お姉ちゃんの気配…。』


 俺の隣で翡無琥が呟いた。

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