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第89話 大会開幕

 審査と予選を難なくクリアした俺達5人は大会の会場へ案内された。

 中央の巨大なリング。

 人に埋め尽くされている観客席。コイツ等は全員六大ギルドの関係者だろう。物凄い賑わいだ。

 あの高い位置から見下ろせる位置にあるのがVIPルームか。黄華さん達はあそこに居るのかな?

 何となく周囲を見渡していると、突然辺りが暗くなる。

 リングの中央にいる奏他にスポットライトが向けられマイクを片手に話し始めた。


『えーと。会場の皆さーん!たいへんお待たせ致しました!静粛にお願いしま~す!。』


 その言葉に会場全体が静けさに包まれる。


『皆様方!ありがとうございます!それでは選手の皆様。本戦出場決定!おめでとうございま~す!。参加希望者230名から審査と予選を潜り抜けた総勢32名!戦うフィールドは私のいるこのリング!皆さんにはランダムで振り分けられた8名ずつの、AからDブロックで勝ち抜き戦のトーナメントを行ってもらいまーす。』


 モニターに映し出されるトーナメント表。

 俺は…Dブロックみたいだな。無華塁も一緒だ。

 春瀬がAブロック。代刃がB。翡無琥がCか。


『そして、準決勝と決勝は~。各ブロックの勝者同士でランダムに選ばれた方々で戦って貰いまーす。あっ…ルーレットで決めるんで直前まで誰と戦うのか分かりませんのでー。』


 勝ち残った者4人でルーレットか…。

 出来れば俺達クロノフィリアで勝ち残りたいところだ。


『勝敗のルールは簡単。リングアウト、気絶など戦闘続行不可能な状態、降参で勝敗をきめま~す。そして、もう1つ、 殺し もありで~す!。な、の、で頑張ってくださーい。』


 殺しもかよ…。マジで後先考えて無くね?。


『次は戦闘に関する補足説明です!。武器はどんなモノを使用してもオッケーです!能力やスキルの使用も自由!能力で生み出したモノならば生命体の使用もありです!。ですが、第3者の介入はその時点で失格になりますので注意してくださいね。観客席には特殊なバリアが施されていますので安心して全力を出して戦ってくださーい!。』


 要は決着つくまで殺し合えってことかよ…。


『そして~。最後に優勝賞品の紹介でーす!。数々の戦いを潜り抜け!見事、優勝された方に贈られるのは~。超レアアイテム!【クティナの宝核玉】で~す!装備すれば、あの最強のラスボス、クティナの能力が手に入る!』


 巨大なモニターに映る 赤い宝玉。

 おお。っと会場全体が響く。

 あれが、クティナの宝核玉か…。夢の中のリスティナに教えられたクロノフィリアにとって重要なアイテムの1つ…。


『最後に、この大会の責任者にして主催者、我等、白聖連団のギルドマスターである白蓮様から御挨拶を頂きます!!!。皆さん静粛にお願いします!。』


 高い位置にあった部屋?VIP席らしき場所から白蓮が手を振っている。

 その姿はモニターに映り、全員の視線はモニターの白蓮に集められた。


『皆。今日は私の主催した大会に参加してくれてありがとう。この大会は、各々の強さの証明の場として用意させてもらった。ギルドに所属する者は地位を上げる機会を、無所属の者は我々、六大ギルドからのスカウトがあることだろう。この大会で結果を残せば確実に明るい未来が待っている。是非とも全力で取り組んで欲しい!私も主催として見学させてもらうよ。それでは、諸君!大会の始まりだ!。』


 白蓮の姿がモニターから消えると、雷が落ちたかのように一気に盛り上がる会場。

 観客達のテンションは最高潮だ。


ーーーーーーーーーーーーーーー


『ひひひ。いよいよですねぇ~。』

『ああ。ついに…この時が来た。長かったような…短かったような…。』

『何名か 怪しい のが居ますね。白蓮さんはどう思いますか?。』

『1人。あそこに居る銀髪の娘…彼女は自分から名乗ったよ。』

『名乗った?。』

『ああ。クロノフィリアだと。』

『なっ!?。』


 ガラス越しに身を乗り出す端骨。銀髪の娘?閃君じゃん。やっちゃったね…。


「これで閃ちゃんに注目が集まるわね。」


 え?。幽鈴さん?。

 心の中に幽鈴さんの声が聞こえた。


「あっ。声は出さないでね。心の中で会話しましょう。」


 あ…はい。それで、注目が集まるのはマズイのでは?。


「ふふ。どうかしらね。白蓮ちゃんの様子をみる限り、彼…自分の手で私達を倒すことが目的みたい。だから、閃ちゃんは敢えて正体を明かしたのかも。自分の力を白蓮ちゃんに見せるためにね。」


 何故そんなことを?。


「真正面から白蓮ちゃんを倒すためね。きっと。この大会そのものが、そのための余興みたいだしね。」


 そう言えば、会議の時の白蓮は…。


 接触の切っ掛けを待っている


 という言葉を肯定していた。なら、接触した上で何をするのか…決まってる。クロノフィリアを倒すこと。


 倒せるの?。


「何かある…と見て間違いないわね。でも、閃ちゃんなら何となく白蓮ちゃんの考えが分かるのかもね。」


 白蓮の考え?。


「くす。2人とも元ゲーマーってことよ。」


 え?何ですかそれ?。


「それに、閃ちゃんに注目が集まれば翡無琥ちゃん達への衆目の目も逸れるでしょ?。」


 ああ。それなら納得です。閃君らしい。


『彼女が…クロノフィリア…見たことのない顔ですが…おや…そう言えば、白蓮さん?青嵐さんはどうしました?まだ、青法の方々の姿を見掛けませんが?。』


 VIPルーム内をキョロキョロ見渡す端骨。

 それは私も気になっていた。青法はこの会場全体を見渡しても1人も見つけられなかったから。


『ああ。彼等は来ないよ。どうやら見限られてしまったようだね。援助していた物資の搬入も拒否されてしまったからね。』

『もしや…真実を話したと?。』

『もちろん。けど、彼等の神は変わらなかったみたいだ。』

『ふむ。そうですか。それは残念…いや、幸福?運が良い?ひひひ。どれなのでしょうね。』

『それはこの大会が終わった後に分かることだよ。』

『違いない。』


 その時、VIPルームの扉が開いた。


『ちっ!あの女ども絶対ゆるさねぇ!。』


 怒りの形相で入ってきた火車は、置いてあるテーブルを蹴り飛ばし用意された椅子に荒々しく座る。


 何かあったのかしら?。


『くくく。随分荒れてますねぇ。どうかされたのですか?火車さん?。』

『ああ?うっせぇぞ!雑魚が!気安く話し掛けてんじゃねぇ!。』

『理由くらいは知りたいね。何があったんだい?。』


 端骨は肩をすくめ、代わりに白蓮が質問する。流石に白蓮には素直に答えるみたい。なんか…小さい男ね。


『ちっ!あの銀髪の女が俺をバカにしやがったんだ!ちょっと外面が良いからって調子に乗りやがって!。』


 閃君!?何やってるのよぉ!?。


「多分だけど、あの頭お猿さんがナンパでもしたんじゃないかしら?。」


 ああ。場面が目に浮かびますね…。


『なぁ、白蓮よぉ!俺も大会に出ても良いか?いや、出させろや!でよ?あの銀髪の女と戦わせてくれ!俺をコケにしてくれたんだ!泣いて喚くまで痛め尽くしてやる!。』

『ふむ。既にトーナメント表は発表してしまったんだけどね。』

『ひひひ。良いじゃないですか。白蓮さん。 力 を見るチャンスですよ。』

『おっ!話が分かるじゃねぇか!雑魚のクセによ!。』

『ひひひ。ありがとうございますねぇ。』

『そうだね。確かに 力 を見る絶好の機会だ。良いよ。此方で手配しておくから時間が来たらDブロックに行ってくれ。』

『ああ!そんなに俺の 力 を見たいのか?良いぜ良いぜ良いぜ!ギルドマスターになった俺の力を存分に見せつけてやるからよ!。』


 白蓮の言ってる 力 って閃君のことよね。


「ええ。ふふ。やっぱり頭お猿さんね。見ていて楽しいわ。」


ーーーーーーーーーーーーーーー


『それでは~。Aブロック1回戦の選手は~リングに上がってくださ~い!。』


 説明が終わり選手は、選手控え室に案内された。大きなモニターが取り付けられた広い部屋。ここで試合の様子を見学できるのか。

 リングの上でマイクを持った奏他が司会役のようだ。


『では、行って参りますわ。』

『ああ。頑張って来いよ』

『春瀬、頑張れ!。』

『春瀬お姉ちゃん!頑張って下さい!。』

『ファイト。』


 白銀の鎧を装備した春瀬が控え室から出て行くとモニターに春瀬の姿が映る。金色のウェーブがかったロングの髪がカメラ越しに眩しい。


『赤コーナー!無所属!白銀の鎧を身に纏う金髪の美しい女騎士!春瀬~!。』

『対するは~。青コーナー!我ら白聖連団が誇る最高戦力~。白聖十二騎士が序列3位~。灰鍵~!。』


 うぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!。


 湧き上がる歓声。会場全体が揺れている。


 いきなり白聖の奴と当たるのか…。大丈夫か?アイツ…。


『両者、準備は良いですか?。』

『ええ。』

『ああ。』


 リング中央に歩み寄る両者。


『それでは、第一試合!春瀬 対 灰鍵…始めっ!』


 試合が開始された。…が互いに動かない。


『始める前に名乗ろう。先程も紹介されたが。俺は、誇り高き白聖十二騎士が1人。序列3位!灰鍵だ!尋常なる勝負を所望する!。』


 あっ…。あの野郎名乗りを上げやがった…。


『閃…マズイかも…。』

『ああ…春瀬の性格は…昔のままか?。』

『うん…変わってないよ…。』


 モニターを見ていた俺と代刃が冷や汗を流す。この流れは…確かにマズイな…。


『んんんんん…良いですわね!尋常な勝負はこちらも望むところ!では!私も名乗りましょう!』


 春瀬は聖剣を出現させ地面へと突き刺した。


『私は、クロノフィリア所属!No.9!春瀬!いざ!尋常に勝負ですわ!!!。』

『なっ!?。』


 やっちまった~。俺…何のためにクロノフィリアだって記入したんだよ!お前らに周囲の目が行かないようにも考慮してたんだぞ?だから、お前達には所属ギルドを聞かれたら無所属でって言っといたのに…。


『閃…。大丈夫かな?。』

『…まあ、大会が終わるまでは襲われることはないだろうし…良いんじゃないか?ははは…。』

『笑顔が引きつってるよ…。』


ーーー


『春瀬ッチ…名乗っちゃったッスね…。』


 観客席から春瀬の様子を観察していた白と裏是流も困惑していた。


『ああっ!?何やってるのさ!?僕の【認識妨害】は、自分から正体を明かすような行動で簡単に解除されちゃうって教えといたのに…。春瀬のバカァ…。』


 頭を抱えてうずくまる裏是流。


ーーー


 観客席からは、どよめきが走っている。


『そう言えば、あの顔…手配書で見たことあるぞ…。』

『俺も見たことあるぞ?。』

『クロノフィリア!?実在したのか!?。』

『えっ!?本物!?。』

『すげぇ!クロノフィリアと白聖十二騎士の勝負とか見物じゃねぇか!。』


 クロノフィリアのメンバーの気持ちを知らず、勝手に盛り上がっていく会場。


ーーー


 驚きの声を上げた灰鍵。


『成程…。クロノフィリアか…。こんなに早く相対出来るとは願ってもない!我が宝剣の錆びにしてくれる!。』

『ええ。私も全力で参りますわ!。』 


 2本の細い刃を持つ双剣を取り出す灰鍵。

 対する春瀬も地面に突き立てた剣を抜き構える。


『行くぞ。』

『いつでもどうぞ。』


 ニヤリと笑う灰鍵が地を蹴り駆け出した。


ーーー


『いやはやこれは驚いた。まさか、こんなに早く2人目が見つかるとは…。しかも自分から…クロノフィリアはバカなのでしょうか?。』

『見たまんま騎士道を重んじる性格なんだろうね。これは、興味深い一戦になりそうだね。』

『ちっ!雑魚どもの戦いなんか興味無ぇんだけどな!。』


 3人の会話を聞いていた黄華は驚愕し言葉を失っていた。黄華自身、春瀬を見たのは初めてなのだ。最初は綺麗な人だなぁ~。みたいな軽い気持ちで眺めていた。だが、突然の名乗り合い。クロノフィリアであることを明かした彼女の心意が理解できないでいた。


「くすくす…変わらないわね。あの娘も。」


 昔からなのですか?。彼女は何故、自分でクロノフィリアだと言ったんですかね?。


「ふふ、理由は相手が名乗ったからね。それ以外の理由は無いわ。あの娘…正々堂々が大好きだから。閃ちゃんも予想外だったんじゃないかしらね。まさか、対戦相手があんな騎士然とした態度で出てくるなんてね。」


 大丈夫でしょうか?。


「大丈夫よ。白蓮ちゃんが動かない限りはね。ここで様子を見ていましょう。」


 …ええ。分かりました。


「ああ。あと拠点のメンバーもこの大会を見てるから何かあっても大丈夫だと思うわよ。」


 え?そうなんですか!?。


「光歌ちゃんと機美ちゃんが頑張ってたからね。あの2人なら偵察機くらい簡単に作れるわ。」


 ほえぇぇぇ…。


ーーーーーーーーーーーーーーー


ーーークロノフィリア拠点の喫茶店ーーー 


『あの馬鹿っ!何も変わってねぇ!。』

『昔からな…アイツ、どんな相手にも真正面からじゃないと戦えない性格だしな。』

『はぁ。』

『あらあら~。春瀬ちゃん~。らしいわね~。』

『皆、どうしたの?。』

『ん?春瀬の奴が自分の正体をバラしたんだ、変わらんなぁ。瀬愛のは難しすぎたな。』

『閃の作戦。意味無かった。』

『いや、白蓮を挑発する目的なら達成はしてるんだが…。』

『堂々とし過ぎだ…。』

『まあ、何とかなるよ。閃君が居るんだしね。僕の無華塁ちゃんも。』

『無凱さん。親バカだよ~。』

『さて、これからどうなるのかな?。』

『旦那様…。』

『主様…ご無事で…春瀬のバカ。』


ーーーーーーーーーーーーーーー


 吹き抜ける旋風。走り抜けるつむじ風。

 荒く激しく吹く風が嵐のように吹き上がる。狂ったように渦を巻き、同時に発生するカマイタチがリングを切り裂く。

 台風。そう台風なのだ。

 全身を強風が鎧のように纏わり付き動く度に周囲を巻き込んでいく。

 両手に持つ双剣はその刃に竜巻を作り、振り抜く毎にリングを抉る。


『我がエレメントは風!お前に我が風の刃を受け止めることが出来るか?。』


 全身が風そのものとなった灰鍵が春瀬に斬り掛かる。

 それを見て。不敵に笑う春瀬。


『面白いですわ!。』

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