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第73話 事件の始まり

ーーー玖霧ーーー


『見事に破壊されてるわね…。』

『はい、この壁をここまで破壊するなんて…並の能力者では決して出来ません。』

『しかも、破片が消し飛んでるところまであるよ?。』

『少なくてもここで戦闘があったのは間違い無さそうね。』


 ウチの馬鹿こと赤蘭煌王のギルドマスター 赤皇からの連絡を受け、急いで出掛ける準備を行い知果と燕の3人でギルドハウスを後にした。

 ギルド専用の隠し地下通路を使い最速で黄華扇桜との境界へ向かった…そこで、私達が見たのは大きく破損し一部分が消え去っていた巨大な壁の有り様だった。


『見たところ大きな病院があるだけですね?。』

『あの病院は知っているわ。こんな世界になる前から建っていた有名な場所よ。』

『噂では、現在、黄華扇桜の方々が病院の医師達と協力して能力と医療技術の両面から患者の治療を行っているとか。』

『素晴らしいわね。そう言う場所がウチの支配エリアにも欲しかったわ。』


 遠くに見える病院に出入りする人々の流れを見ながらそんな会話をしていると、此方に向かってくる人物がいることに気付いた。


『こんにちは。お姉さん方。お待ちしていました。私はクロノフィリア所属 No.13 翡無琥です。』


 その少女は、両目を布で覆い少し太めの白杖を持っていた。

 私は、クロノフィリアのメンバーの顔は手配書に載っていた10人以外の顔を知らない。


『失礼な質問ですが…貴女、目が?。』

『ん?あ、はい。そうですよ。私の種族は天真眼神族なんです。なので本来の目は見ることが出来ませんが、他のモノを視ることが出来ます。なので日常生活や戦いに不自由はありません。』

『そうなんですね。ごめんなさい。プライベートな質問をしてしまって。』

『いいえ。気にしないで下さい。ふふ。お姉さん達も良い 形 ですね。』

『え?形?。』

『心の…です。少し失礼します。あっ、翡無琥です。お姉ちゃん。赤蘭の人達に会いました。心の形はとっても綺麗です。この人達なら大丈夫だと思います。』


 翡無琥さんが小さな携帯端末を取り出し、誰かと話している。お姉ちゃん?どなたに掛けているのかな?。


『お待たせしました。今、もう1人来ますので。少々お時間を下さい。』

『あっ…はい。』

『あ…えっと…説明不足ですみません。お姉さん方を今からクロノフィリアの拠点に案内し今回の件を詳しく説明しますので。』

『あっ…はい。あの…ウチの馬鹿…あ…ギルドマスターは?。』

『はい。私達の拠点に居ますよ。元気な方ですよね。』

『ええ、元気過ぎるのよ…。』

『ふふ。』

『え?何か可笑しかった?。』

『いえ、ごめんなさい。私は人の心が視えるんです。お姉さんがその方をとても大切に想ってるの視えてしまったので…。』

『ふぁぁぁあああああああああああ!!!。』

『クスクス…。』

『にしし…。』


 慌てる私を見て笑う知果と燕を熱くなっている顔で睨むがニヤニヤ笑顔で受け流される。

 くっ…後でシメル。


『お待たせしました。赤蘭煌王の皆さん。』


 そこにタイミング良くやって来た綺麗な女性。

 …って、あれ?この方って…。 


『初めましてだね。私は黄華扇桜のギルドマスター 黄華です。宜しくね。』


 そ、そうだ。黄のギルドマスターだ。何で?クロノフィリアの娘と一緒に…いや、違うわね。この黄華扇桜のエリアにクロノフィリアの娘がいて、その娘が黄のギルドマスターを呼んだ。つまり…そういうことだよね。


『初めまして。赤蘭煌王 九大王光の玖霧です。こっちの2人は同じく九大王光の知果と燕です。』

『宜しくね。』

『…はい。』


 互いに挨拶を交わすと黄華さんの元へ翡無琥さんが歩み寄って行く。


『お疲れ様だったね。翡無琥ちゃん。』

『えへへ。お姉ちゃん…。』


 目元が隠れて見えないけど、とても嬉しそうに黄華さんに抱きつく翡無琥さんを優しく受け止める黄華さん。

 その様子を見るだけで2人の絆の強さが感じられる。親子…いえ、姉妹みたい。

 

『じゃあ、行きましょうか。』

『あっ、はい!。』


 黄華さんの後に付いてクロノフィリアの拠点に向かう。

 …っと、思ったのだが着いた先は黄華扇桜のギルドハウス。


『あの…クロノフィリアの拠点に行くんですよね?。』

『ええ。こっとの方が近いからね。』


 黄華扇桜のエリアは、古風な都といった風景だった。季節外れの桜が咲き乱れ風に舞い、木造の建物などが並び江戸時代かそれより前にタイムスリップしたように感じた。

 その中に一際目を惹く大きな建造物があり、それが黄華扇桜のギルドハウスなのだと分かる。


『ここが、私達、黄華扇桜のギルドハウスだよ。ここからクロノフィリアの拠点に行けるから。』


 黄華さんの後を追いギルドハウスに入ると中は高級ホテルのロビーのように輝いていた。

 同じギルドハウスでも私達の赤蘭煌王のモノとは違い、そのギルドの特色が色濃く現れるのね…。

 黄華扇桜は、如何にも女性中心に造られた華やかしさが感じられ細部に至るまで繊細な拘りを感じた。

 対して、私達のギルドハウスは此方に比べたら…あまりにも無骨だ…。飾り気もなく床にはトレーニング器具が放置され、所々、隅の方には埃が溜まっている。もちろん、掃除はしているけど圧倒的にしない人が多すぎて人手が足りていないというのが現状。

 正直、比べてしまうと恥ずかしい。


『こっちだよ。』


 そんな私の考えを余所に歩みを進める黄華さん。やっぱり、ギルドマスターが綺麗な人だとギルド全体に、その雰囲気が伝達するんだなぁ。

 良くも悪くも…いや、悪い部分しかないか…。ウチのギルドも、あの馬鹿の影響を受けている。はぁ…。


『大変そうですね。』


 翡無琥さんが私に耳打ちをしてきた。

 あっ…また、視られたのかな?。恥ずかしい…。

 

『この奥がクロノフィリアの拠点に繋がってるの。』


 黄華さんが何も変哲の無い扉を開ける。

 すると、目の前に下に続く階段が現れた。


『ここが?。』


 階段の下に目を向けると、そこは喫茶店?のカウンターや多くの椅子やテーブルが並ぶ場所だった。


『そう。ここがクロノフィリアの拠点だよ。』


 階段を降りていく。

 

『ははは!結構、力あるな!威神と良い勝負じゃないか?。』

『マジ、アンタ強ぇな!全く動かねぇ。』

『俺なんてまだまだよ!。』

『いや、基汐さんは強すぎだって。』

『ダーリン!頑張れぇー!。』


 あ…馬鹿がいた…。

 赤皇と筋肉質の男性が何故か腕相撲で白熱していた。レフェリーをするこれまた身体の大きい男性と筋肉質の男性をダーリンと呼び応援する女性の4人が盛り上がっていた。

 どういう…状況?。


『ん?おお、来たのか。玖霧。』

『ええ。事の顛末の何1つ理解できないままね。』


 腕相撲を止めた4人。

 馬鹿と対戦していた男性とその彼女さんかな?女性は奥にあるソファーまで移動していった。

 レフェリーをしていた男性は、軽く頭を下げると階段を上がって行く。


『やあ。いらっしゃい。赤蘭煌王の皆さん。僕はクロノフィリアで副リーダーを任されている仁っていうんだ。宜しくね。』


 カウンターにいるオジ様。渋くて格好いい…。


『はい。初めまして。玖霧と申します。』

『知果です。』

『燕です。』

『宜しくね。コーヒーでも淹れようか。』

『あ…はい。お構い無く。』


 7人分のコーヒーを用意したオジ様は私達を大きめのテーブルへ案内すると各々に配って行った。

 黄華さんと翡無琥さんも同じテーブルについた。


『さて、行き渡ったね。赤皇君もこっちに座ってくれるかい?。』

『おう!。』

『こらっ!失礼でしょ!。』

『おっと…いけねぇ。いつもの癖でつい…。』

『すみません。ウチの馬鹿が…。』

『良いよ。気にしないで慣れてるからね。』

『はぁ…。』


 テーブルについた7人。

 仁のオジ様、黄華さん、翡無琥さん、私、知果、燕、馬鹿。

 

『さて、赤皇君から聞いた話をまず君達に説明しようか。』

『はい。お願いします。正直、もう理解の追い付かないことばかりで…。』

『そうだよね。今回の件は我々にも大いに関係があることでね。じゃあ、説明するよ。』


 それから、オジ様の説明が始まった。

 話しによると事の発端は…。


ーーー赤皇ーーー


『らっ!。』

『はっ!。』


 拳同士の衝突。

 発生した衝撃波で周囲に突風が巻き起こった。


『腕を上げたじゃねぇか。群叢!。』

『そうでしょう!もう赤皇さんに追い付くんじゃないかなッス。』

『ぬかせ。』


 それは、まぁ…珍しくもねぇ、いつもの感じだったな。

 そんなんで群叢と拳を交えてた時…。

 そいつ等が現れた。


『少し宜しいかな?。少々我々の話を聞いて欲しいんですが?。』


 最初に声を掛けて来た男には見覚えがあった。

 六大会議の時に目立っていたヤツだったからな。名前は確か…端骨…そう端骨だ。緑ぃの所にいた白衣を纏った男だ。

 そして、もう一人…。


『っ!?!?。』


 端骨っていう男の後方に立つ細身で細目の黒いロングコートの男。

 一目…その男を見た瞬間、全身が震えやがった。危険信号とかそんなんじゃねぇ。決して触れてはいけない絶対的な存在を目の当たりにしたような…。兎に角、なりふり構わず逃げろと本能が告げていた。今、逃げなければ手遅れになるってな。


『はぁ?誰?アンタ等?。』

『止せ!群叢!。』

『大丈夫ッスよ!俺、今調子が良いんッスから!。』

『この馬鹿が!。』


 不用意に近付いて行ってしまう群叢。

 端骨の首根っこを掴もうと手を伸ばしたその時。


『おやおや。随分攻撃的ですね。ですが、そんな野蛮な手で触らないで頂きたいですな。スキル【束縛樹根】。』

『なっ!?何だこの根っこは?。動けないッス!。』


 群叢の足に無数の木の根が巻き付いて身動きを封じた。


『群叢!。』


 助けてやりたいが、身体が動かねぇ。

 端骨の雑魚なんて問題じゃねぇ。

 その隣にいる化け物の存在に俺の神経の大半を持っていかれているからだ。一瞬でも気を抜いたら…油断すれば必ずあの男は動く。だから動けない。


『ぐっ!?何をする!?。』

『ふふ。やれやれ、自己紹介も無しに暴力とはつくづく赤蘭は…。穏便に済ませるつもりでしたがこうなっては仕方がないですねぇ。』

『………。』


 黒いロングコートの男の指先が群叢の額に触れた。


『がぁぁぁあああああああああああ!!!。』


 苦しみ出す群叢。


『ああ、良いですね~その表情。本当は赤皇さん。貴方が目的でしたが今回は彼で我慢しましょう。我々の実験に付き合ってくれて感謝しますよ。』

『がぁぁぁあああああああああああ!!!。』

『もうじきです。もう少しで楽になれますからねぇ。』

『がぁぁああ…あっ…。』


 糸が切れたように崩れ落ちる群叢。


『それでは、目的は果たしましたので我々はこれで。突然の来訪失礼いたしました。ん?そうそう、今更ですが私は端骨と言います。お見知りおきを。』


 そう言うと端骨と黒いロングコートの男は森の中へ姿を消していった。

 警戒心で動けなかった俺の身体も自由を取り戻し群叢に駆け寄った。

 情報看破で群叢を調べるも見たことの無い2つのスキルに変えられていた。


『おい!群叢!大丈夫か!おい!目を開けろ!。』

『………。』


 俺の声に目を覚ました群叢だったが様子がおかしい…。

 目の焦点は合っておらず、うわ言のように何かを呟いていた。


『群叢?おい?どうした?。』

『クロノ…。』

『はっ!?。』

『クロノ…フィリアぁぁぁぁあああああああ!!!。殺す殺す殺す殺す殺す殺すぅぅぅうううううううううう!!!。』


 その後は、急に駆け出していく群叢を追い掛けて黄華扇桜との境界まで行ったのが事の始まりだ。


ーーーーーーーーーーーーーーー


ーーー玖霧ーーー


 馬鹿の話が終わり、発端が明るみになった。


『まあ、こんなところだな。』

『…緑龍絶栄の端骨と謎の黒いロングコートの男か…。』

『何者なの?。』

『わからねぇ。ただ、あれはクロノフィリアとは別の意味で化け物だった。レベル差とか、スキルとか、そんな固定された能力じゃねぇ。存在が違うって感じか?こいつは人間じゃねぇと俺は思った。』

『アンタの直感は当たるしね…。』


 伊達にギルドマスターを名乗っていない赤皇の素質、それは異常なまでの勘の良さ。特に自身の危険に対する危機感を察する能力が突出している。

 そんな赤皇が逃げるではなく動けなかったのだ。その存在は聞くまでもなく化け物だったんだろう。


『で、その後は暴走した群叢を私が倒しました。緊急の事態だったとは貴女方の仲間の1人を殺してしまった。申し訳ありませんでした。』

『え!?。』


 突然、現れた神父服の男性。


『私は叶と言います。宜しくお願いします。』

『宜しく…お願いします。』

『ははは。だから気にすんなって叶さん。不用意に近付いた群叢の奴が悪いんだ、それにあんな暴走を止める方法はああするしか無かった…と俺も思う。むしろ、アイツを救ってくれて…止めてくれて、ありがとうございました。』


 あの脳筋男の赤皇が叶さんに頭を下げた。それだけで事態の重さが理解できた。


『ああ。そうですね。…頭を上げて下さい。』


 一瞬、自分の肩の方を見ると軽く頷く叶さん。え?今…誰に頷いたの?。

 そのまま、頭を下げている馬鹿を起こし立たせる。


『玖霧さん。でしたか?。』

『はい。そうです。』

『赤皇君に聞きました。貴女が赤蘭煌王の頭脳なのだと。今回の件で貴女の計画を歪めてしまったことでしょう。申し訳ありません。』


 私に頭を下げる叶さん。


『…いいえ。頭を上げて下さい。ウチのギルドマスターが言った通り、彼の命を奪うことでしか方法が無かったのでしたらお礼を言うのはこっちの方です。彼を…群叢君を助けてくれてありがとうございました。』

『そうですか…。そう言って頂けて私も救われます。』


 ニコリと笑うと叶さんが後ろを向き階段を上がって行った。


『じゃあ、次の話なんだけど。赤皇君の話を纏めると彼は僕達クロノフィリアと赤蘭煌王の中にいる赤皇君についてくる数人で同盟を結びたいと言っているんだ。』

『同盟ですか?。』

『そうだよね。赤皇君。』

『ああ。現状のままなら赤蘭に未来はない…と俺は思う。このまま白蓮の駒になるくらいなら俺はアンタ達の仲間になりたいと考えていた。』


 そうか…赤皇も馬鹿なりにギルドの事を考えてるんだね。

 でも、他のギルドメンバーがどう判断するか…アイツもそれを分かっている。実力主義がギルド方針だということが災いする。個が自分の力に自信を持ってしまっている分、チームとしての纏まりが無いのよねぇ…。


『それは、私個人としても願いたい事です。ですが、これはギルド全員で決断すべき事と考えます。結論には少しお時間をいただけないでしょうか?。』

『当然だね。それは構わないよ。君達が悪い人間じゃないのは翡無琥ちゃんに聞いて知ってるからね。でも、なるべく早く結論は欲しいかな?。』

『はい。すぐにギルド内で会議を行います。』


 おそらく、結果は私の想像通りになるだろう。

 ギルドメンバーはこの同盟案に乗らない。むしろ群叢君の死を理由に赤皇のリーダー性に疑問を持ち出しギルドマスターの解任を推薦するだろう。

 まったく…我が強いせいで自分達の利益しか見えない連中だから…仕方がないのよね…。


『一応、何かあった時の為に護衛に翡無琥ちゃんを付けるからね。安心して良いよ。』

『え?この娘を?。』

『はい。宜しくお願いしますね。玖霧お姉さん。』

『え、ええ。宜しくね。』


 この娘の強さは分からない。

 盲目だけど人の心などを視ることに特化した種族ということだけ。

 あのクロノフィリアのメンバーなのだから強いのだろうけど。どれくらいの強さなのかしら?。


『お前、翡無琥嬢ちゃんの力を疑ってるな?。』

『え?えっ…いえ、そう言うわけじゃ無いけど…。』


 この馬鹿が嬢ちゃん呼び?

 興味を惹いた相手じゃないと名前すら覚えない馬鹿なのに?。


『はは。大丈夫分かってるよ。心配なんだよね。今はまだ敵のギルドに1人で向かわせることを。』

『…。』


 仁さんの質問に、こくり。と頷く。

 敵地のど真ん中に少女1人…もしも決裂した場合、最悪…戦闘になってしまう。

 そんな危険な場所に彼女を?という考えに至ってしまう。


『翡無琥ちゃん。少し力を見せてあげて。』

『あ、はい。』


 翡無琥さんが立ち上がり私達3人の方を向いた。


『いきます。スキル【境界刀気】…。』

『ひっ!?。』


 彼女が手に持つ白杖に右手を添えた、その瞬間…。

 私達の首が飛んだ。


『あれ?今…。』


 我に帰ると首は繋がっていた。なんともない。一瞬、完全に殺されたと錯覚した。


『あの…ごめんなさい。びっくりさせちゃって。』

『い、いえ。此方こそ疑ってしまってすみません…。』


 この娘…が護衛?それこそ彼女1人で赤蘭のギルドを滅ぼせるわよ…。

 はは、これがクロノフィリアですか…。

 知果も燕も冷や汗を流しながら驚愕し震えている。


『じゃあ、決まりだね。良い知らせを期待してるよ。』

『は、はい。』


 その日、私達は大急ぎでギルドへ帰還した。

 ギルド幹部全員を集めた会議を開いたのは、その日の夜だった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


ーーー無華塁ーーー


『やっ!。』


 白聖連団の支配エリアにある地下の洞窟で、今…1つの戦闘が終わりを向かえた。 

 機械人形の身体が真っ二つに両断され機械の中に設置されていた宝石がコロコロと地面を転がる。


『これが。宝石かな?。』

『す、凄いね…あの機械人形は結構強い分類だったんだけど…。相手にならないなんて…。』

『あっ。神様。』


 機械の小鳥が無華塁の肩に留まり少女の声で話し掛けてきた。

 

『こんにちは。無華塁ちゃん。』

『こんにちは。これ。言ってた宝石?。』

『そうそう。良くここを見つけ出せたね?。』

『うん。勘。』

『そ、そうなんだ。勘なんだね…。…何なのこの娘…。』

『ん?どうかした?。』

『何でもないよ。』

『あの機械人形の強さ。どうだった?。』

『ん?。強さ?。弱かった。』

『そ、そう…。』


 神様が呆れてる?。何で?。


『この後。どうすれば良いの?。』

『それがね。この白聖のエリアにはもう1つ宝石があったんだけど誰かに先を越されちゃったみたいなんだよね。』

『そうなんだ。』

『あっ、そうそう。これ知ってる?。』


 小鳥の口から小さな紙の筒がポロリと落ちた。


『何?これ。武闘大会?。』

『そう。白聖主催の武闘大会。優勝商品はなんとクティナの宝核玉!超レアアイテムだって!』

『レアアイテム!。』

『おっ?興味出たの?。』

『ううん。全然。』

『あっ…そう…。もう…この娘が分からない…。』

『これ。手に入れたら。閃。喜ぶかな。』

『また閃?。貴女の行動理由って彼なの?。』

『うん。そうだよ。』

『う…ん。その人のことは良く分からないけど。元ゲーマーならレアアイテムは手に入れたいんじゃないかな?。』

『そうかぁ。なら出る。』

『…あっ…そう…この娘の将来が心配だよ…。』

『ねえ。1つ聞いても良い?。』

『良いよ。』

『もし、私が貴女を騙してたらどうするの?。』

『騙してるの?。』

『え?いや、騙して無いけど。もしもの話だよ。』

『もしも。…そうなら…。貴女を殺す。何処までも追い掛けて。必ず。ぶち殺す。』


 普段、ボーッとしている無華塁から放たれる殺気。それは、先程の戦闘や出会った時の雲を割った時でさえ彼女が手加減していたんだという事を思い知らされた。


『ご、ごめんね。変なこと聞いて。』

『うん。気にしてないよ。神様。』


 こうして無華塁の手に宝石の1つが渡った。

 残りの宝石は、あと3つ。

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