表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/509

第61話 集結!7人の【クロノ・フィリア】

 人目を避ける為に、目的である【青法詩典】の監獄エリアまで森を突き抜けること4日目。

 その甲斐あってか道中、敵に出会うことはなかった。

 あの遠くに見える巨大な建物が恐らく矢志路が居る場所だろう。


『ぷっは!。葉っぱまみれじゃ…。やっと抜けたのぉ。』

『ああ、森を突っ切れば早いと思ったんだが、思ったより時間が掛かっちまった…。』

『うむ。幼女姿なら閃に、おんぶしてもらえたんじゃがな…。流石に、この姿では見栄えも悪いのう。』


 睦美が自分の身体をペタペタ触りながら言う。現在の睦美の姿は幼女ではなく、16歳、本来の姿になっている。

 これというのも、洞窟の化け物に腕を斬られ、且つ、白の傷を治したことで能力の制約として成長したのだった。


『おい。葉っぱ、めっちゃついてるぞ?。取ってやるから動くな。』

『ぬ?。』

『こら。動くな。』


 背中やらお尻やら肩やら足やら、色んな所についている葉っぱを優しく取ってやる。成長しても睦美は小柄だ。葉っぱが大きく見える。


『ほら。取れたぞ。』

『………。』


 あ…またか…。


『ありがとう…ございます。旦那様。』

『それにも、結構慣れてきたな…。なあ、睦美?。』

『は…はい?。何でしょうか?。何か至らぬ点でも…ありました…でしょうか?。』

『お前のそれ?。結局どっちが素なんだ?。』

『え?。そうですね…一応どっちも素…ですね。ただ、本音はこっちの方が喋りやすいのじゃ。まぁ、喋り方は癖じゃがな。ワシの両親は結構厳格でな話し方や作法など幼少時から徹底的に仕込まれた。男性は立てるもの、女性は3歩下がって男性をサポートすべしとかなんとかな。古い考えじゃよ。』

『はぁ。お前も大変だったんだな。』

『昔の話じゃし、あの頃のワシにとっては普通の事じゃった。大変とか考えた事もなかったぞ。…まぁしかしのぉ。』

『何だ?。』

『そんな真面目なワシが。親に隠れてネットゲームにハマっていたと思うと充分…反抗期だったのかのぉ?。』

『後悔か?。』

『いんや。グッジョブじゃ!。今のワシから過去の自分に良くやったと誉めてやりたい!。沢山の仲間に、それに…大切な…殿方と出会えましたから…。』

『ははは。ああ!。俺も嬉しい!。【エンパシス・ウィザメント】は俺たちを繋いでくれたんだ。俺たちのギルドに入ってくれてありがとうな!。睦美!。』

『………。はい…。えへへ。旦那様にそう言って貰えて、とても嬉しいです…。』


 コロコロ喋り方が変わる睦美を…可愛いと思ってしまうな………と、その時だった。この場には場違いな程に強力な存在感…魔力を感じた。コイツ…強いな…。


『ん?。』

『旦那様?。』

『誰か来る…。』

『む?。本当じゃな…数は2人か…。この存在感…只者ではないぞ?。』


 少しずつ近付いて来る気配に緊張が走る。コイツ等…【レベル120】を超えてないか?。一瞬、脳裏に過ったのは洞窟の化け物…。こんな場所に?。


『睦美…。』

『ああ、わかっておる。』


 適当に【煌真】の剣を出しておく。反応速度が向上した。隣の睦美も神具の青龍刀を出した……………来る!!!。


『そこに居るのは!。』

『誰だ!。』


 飛び出して来た人物を一瞬で確認した俺は剣を振り下ろした剣を止めた。向こうも俺の姿を確認し気付いたようだ。指先に集中していた魔力が消失した。その五指に輝く銀の指輪が確信へと至らせた。


『豊華…さん?。』

『ん?。閃か?。』


 互いに相手を理解した。

 その瞬間、豊華さんの表情が緊張感が解れ満面の笑みに変わる。


『おお!。閃!。久しいな!。ははは!。2年ぶりだな!。元気そうでなによりだ!。』

『豊華さんこそ、今まで何処に居たんだ?。賢磨さんは良く会っていたみたいだったが?。拠点にも顔を見せないで?。』

『豊華さんは、困っている人をほっとけないからね。また、いつもの様にトラブルの渦中さ。』


 遅れて物陰から現れる賢磨さん。


『賢磨さんも一緒だったのか。じゃあ、目的は?。まぁ、ここにいるってことは、だいたい察しはつくが…。』

『そうだ!。矢志路を迎えに来たのだ!。』


 そう胸を張る豊華さん。だが、何だろう…。記憶の中の豊華さんとの若干違和感が…。そんな時、ふと、賢磨さんと目があった。そして、何かがあったことを悟る。


『豊華さん?。』

『ん?。何だ?。』

『何か…あったか?。』

『ん?。何も無いが?。』


 絶対何かあったと思うんだが…本人はそう、言っているが…念のため。賢磨さんもそんな雰囲気だし。仕方ない。


『そうか。そう言えば、母さんが豊華さんを呼んでたんだ。帰ったら寄ってやってくれ。』

『む?。閃にも頼んだのか?。つつ美の奴?。』

『俺も?。』

『賢磨にも頼んだらしいんだ。帰ったら顔を出すようにと。まあ、帰ったら真っ直ぐ向かってやるがな!。』


 母さんが賢磨さんにも?。

 当然、俺の話しは嘘だ。母さんなら豊華さんの違和感を解消してくれるんじゃないかと思ってついた。だが、賢磨さんもということは…俺はもう一度、賢磨さんをチラリと見た。

 すると、賢磨さんも俺を見ていて視線が交わり、こくりと頷いた。

 やっぱり…何かあったんだな…。

 賢磨さんでも母さんに頼らないといけない出来事………心の問題…かな。


『ああ。行ってやってくれ。きっと喜ぶよ。』

『おう!。それで?。お前は何で閃の後ろに隠れているのだ?。…というか髪しか見えんが誰だ?。』


 気付くと俺の後ろに睦美が隠れていた。

 あれ?。コイツこんなに人見知りだったっけ?。


『コイツは睦美だ。』

『睦美?。おお!。睦美か!。お前も久しいな!。てか、出てこい!。何故隠れている!。』

『こ、これ!。引っ張るな!。わかった!。出るから!。引っ張るでないわ!。』


 睦美が豊華さんに引っ張られ無理矢理出てきた。


『お前?。人見知りだったか?。』

『いやな…久しぶり過ぎて距離感がな…リアルで会うのも初めてじゃしな…。』

『ああ。成程ね。』

『まあ、良い。出てきてしまった以上は普通に接するまでじゃ。久し振りじゃな。豊華、賢磨。』


 小柄な身体で目一杯胸を張って挨拶する睦美。そんなことしたことないだろうに…。


『ああ。久し振りだね。元気だったかい?。』

『ああ。まぁな。色々と大変じゃったがな。』

『というより、喋り方だ?。どうした?。そんなんだったか?。』

『なぁに。能力のせいで、この2年ずっと老婆じゃった。雰囲気出すために口調を変えてたら癖になってしまってのぉ。』

『な!?。そうなのか?。それは大変だったな…。』

『ああ。だから無凱が言ってたのか。睦美ちゃんは動けるようになったら合流するって…その事だったんだね。』

『ああ。そうじゃ。無凱の奴は一度ワシの所に来たからのぉ。その時に、現状を聞かされたのじゃ。』


 無凱のおっさんは色々裏で動きすぎて何をしてるのか俺でも把握しきれない時があるからな…。普段飲んだくれてるのに、無駄に行動力があって頼りになる。それが、【クロノ・フィリア】のリーダーなんだ。


『それより、珍しい組み合わせだね。閃君と睦美ちゃんか。ゲーム時代そんなに仲良かったかい?。』


 賢磨さんが指差す方を見ると、睦美は俺の裾を握ったままだったようだ。


『ゲーム時代は、隠しとったんじゃ。閃を好きな気持ちを…な。智鳴や氷姫に遠慮して。じゃが、今は閃に気持ちを伝えられたからな!。開き直ったのじゃ!。』

『ほぉ!。そうだったのか!。全然気付かなかったぞ!。』

『頑張ったのじゃ。じゃが、灯月とつつ美にはバレておったな…。』

『ああ。あの2人はな…特別だな。ははは。』

『そうだね…。』


 俺の義妹と義母は恐ろしい…【クロノ・フィリア】メンバー共通の認識のようだ。


『それで?。どうするのだ?。閃?。』

『ん?。何が?。』

『こんな可愛い女子たちに惚れられて、誰を選ぶのだ?。』

『ああ。いつかは答え…。『それは心配無用じゃよ!。』ええ…。』


 俺の言葉を遮り睦美が言う。


『閃はハーレムエンドを目指しとるのじゃ!。好いとる女子は、みーんな、閃の女じゃて!。』

『お前…会う奴全員にそれ言うのな…。』

『当たり前じゃ!。ししし。外堀から埋めて最終的には真実にするのじゃ!。』

『おお!。睦美格好いいぞ!。』

『ははは、久し振りに会って少し心配だったけど。元気そうで良かったよ。』


 豊華さんと賢磨さんが睦美に笑いかけた。

 だが、睦美のあの変化をまだ知らないからな。睦美にちょっと反撃してみるか。


『豊華さん、賢磨さん。ちょっと見ててくれ。』

『ん?。何だ?。』

『何だい?。』


 俺は睦美の方を向く。


『睦美。』

『ん?。どうした閃?。』

『俺はお前を大切に思っているからな。(仲間として)』


 睦美の両肩に手を置き目の高さを合わせる。

 この言葉は嘘ではない。睦美に限らず、俺は【クロノ・フィリア】メンバーの全員が大切な仲間だ。

 だが、最近睦美を特別に思う事もあるんだ。

 何せ、あんな直球に好意を向けられるんだ。こっちだって意識してしまうだろう。


『………。』


 目を見開き、驚いた表情の睦美。そして、無言に…。目が左右に行き来し、次第に頬に赤みが増し、少しずつ俯いていく。


『…はい…私も…旦那様のことを…心よりお慕いして…おります…。』


 目に涙を溜め、嬉しそうに笑う睦美。なぁ…これで好きにならない方が無理だろう?。


『お…おおおおお!。何だコレは?。睦美の雰囲気が変わったぞ?。こんなキャラだったか?。慎ましいな!。』

『ああ。これは驚いた。閃君、愛されてるね。』

『ええ。これからが、大変ですね。』


 何か…このまま本当にハーレムに持っていかれそうだな…。恐るべしだ。睦美…。


『旦那様…大好きです…。』


 背中に回り、服を小さな手で握りながらそんなことを呟く睦美。


『おお!。睦美が可愛すぎだぞ!。何か抱きしめたくなるな!。』

『そうだね。娘に欲しいかもね。』


 数分後。次第に元に戻った睦美が静かに睨む。


『はめたな…閃。』

『仕返しだ。でも、大切なのは本当だからな?。』

『…はい。存じております。』

『本当にコロコロ変わるなぁ。面白い。』

『青春だね~。拠点に帰ったら皆の反応が楽しみだ。』

『ええい!。見世物じゃないわい!。』

『可愛いぞ!。娘に欲しい!。』

『これ!。豊華!。抱きつくな!。』


 豊華さんに抱きつかれるも満更でもなさそうな睦美を微笑ましく思う。賢磨さんも同じ気持ちなのか2人で苦笑い。


『さて、本題に入ろうか。』

『そうだな。確認だが2人も矢志路を迎えに来たんだろう?。』

『おう!。そうだぞ!。』

『恐らく、あの建物の中だと思うんだが…。』

『おお!。でっかい建物だな!。ワクワクする!。』

『ここからだと。少し遠すぎて魔力を感じられないね。いや、もしかしたら、【魔力を無効化】する機械が起動しているかもしれない。』


 俺たちは森を抜けた所にある崖の上にいる。【青法】の拠点を見下ろしている状態だ。


『ああ。でだ、もう1人…いや、2人か。俺たちの仲間が来てるみたいだな。』

『む?。どうして分かるのだ?。』

『あれ、見ろ。手当たり次第に暴れた痕跡があるだろ?。あんなこと出来るのは…いや、するのは1人しかいねぇ。』

『【煌真】じゃな。』

『そうだ。で、煌真は【神無】が迎えに行ってる筈だからな。多分、一緒だろう。』

『おお!。煌真も居るのか!。懐かしいな!。勢揃いじゃないか!。』

『取り敢えず、近くまで行ってみようか。』

『ああ、そうだな。』


 俺、睦美、豊華さん、賢磨さんの4人は、【青法】の敷地内に侵入する。


『それにしても随分派手に暴れたみたいだな!。』

『警報が鳴ってないみたいだけど。』

『それは、神無のスキルじゃないか?。』

『そうみたいじゃな。僅かに魔力の残留を感じる。』


 辺りには兵士の死体が転がっていた。煌真の奴…マジで手加減してないんだな…。


『手当たり次第って感じだね。』

『流石、【悪組】だな。』

『褒めて良いことなのじゃろうか?。』

『敵は倒す!。間違ってないぞ!。』

『豊華さん…【悪組】じゃないよな?。』


 そんなことを話していたら大きな建物の前に着いてしまった。これまでの道のり…護衛や監視の兵士は全滅。1人として生き残りはいなかった。やり過ぎだろう…。


『旦那!。』


 嬉しそうな煌真が出会い頭に拳を繰り出した。ああ…2年経って忘れてた。コイツの挨拶は力任せの拳だった。

 男の俺なら迷わず拳で応えていただろう。だが、今は女の姿…拳で応えて勝てるわけがない…ということで、スキル【初撃無効】を発動。煌真の拳の勢いを消し、その隙に煌真の【神剣】を取り出す。そして…力の限り、全力でボディブロー!!!。


『ぐぅおおおぉぉぉ!?。』


 完全に腹に決まった拳。だが、コイツ…耐えやがった…。てか、腕が痛ぇ…。腹筋硬すぎだろ?。


『流石だ。旦那!。この世界で初めて痛てぇ攻撃を受けたぜ。』

『化け物度合いも変わんねぇな…。』

『あと、やっぱ女の姿の旦那はヤベェな!。旦那!。頼む!。俺の女になってくれねぇか?。』

『は?。何言ってやがる!。俺は男に興味ねぇよ!。』

『ははは。だよな!。だが、気が変わったら言ってくれ!。俺は旦那なら、いつでも歓迎だ!。』

『な!。に!。を!。わ!。た!。し!。の!。先輩に言ってるのよ!。この筋肉馬鹿が!。』


 神無の物凄い助走からの回し蹴りが煌真の頭に直撃した。


『痛てぇな。何すんだ?。神無?。』


 衝撃波を周囲に発生させる程の威力を持った回し蹴りを受けても、煌真は頭を擦るだけのダメージだったようだ。タフ過ぎるだろ…。


『閃先輩!。お久し振りです。この神無!。先輩の命令をこうして遂行致しました!。』

『ご苦労様。良く煌真を見つけ出してくれたな。』

『はい。勿体無きお言葉です…この馬鹿の無礼は私が後でしっかり言い聞かせますので!。』

『うん?。ああ…まあ、程々に仲良くな?。』

『はい。心得ました。仲良くは出来そうもありませんが頑張ります!。』

『…って、旦那も神無も無視すんじゃねぇよ…。』


 その様子を見ていた3人が寄ってきた。


『久し振りだね。煌真君。元気そうで良かったよ。』

『相変わらず、お前さんは騒がしいな煌真よ。』

『………。』


 睦美は、また俺の服を握って背中に隠れた。


『あ?。おお!。賢磨さんに豊華さんじゃねぇか!?。久し振りだな!。元気そうだな!。で?。旦那の後ろにいるちっこい餓鬼は誰だ?。』

『ああ、睦美だ。』

『睦美?。ああ…おお!。睦美か!。久し振り!。ゲームの時と年齢が違うから気付かなかったぞ?。』

『……せん。』

『ん?。何か言ったか?。声が小さすぎて聞こえなかったが?。』

『旦那様は!。私のです!。貴方のような野蛮な方になど渡しません!。』


 炎の翼を広げ、煌真を威嚇する睦美。また、睦美の新たな一面が…。


『おいおい?。お前そんなキャラだったか?。』

『はっ!?。………こほん!。閃はハーレムエンドを目指しておるのじゃ!。そこに女子は入って良いが男は駄目じゃ!。拒否する!。閃は女子皆のモノじゃて!。』

『いや、キャラ変えてもイメージと違うから?。何でそんな婆さんみたいな話し方よ?。』

『これは…この2年で培った癖じゃ!。流せ。』


 そう言い、俺の腕に抱き付いて来る睦美。その様子を見て煌真が肩を竦める。


『何だかなぁ?。納得いかねぇ…。』


 その様子を見てた神無が睦美に問う。


『睦美…さん。』

『…な、何じゃ?。』

『睦美さんも閃先輩が…その…好きなのですか?。』

『………はい。大好きです。』

『ふふっ。そうですか。やっと自分の気持ちに正直になられたのですね?。』

『え?。神無…お主…もしかして?。』

『はい。気付いていましたよ。でも安心して下さい。灯月さんとつつ美さん以外は知らないので。』

『そ、そうか?。何で分かったのじゃ。』

『忍びの洞察眼故に…。』

『あ…そうか…。そうじゃよな…。そうなのか…。』


 言葉を失っていく睦美。何か可愛いな…小動物みたいだ。。俺は睦美の頭を撫でる。


『あ…旦那様…。えへへ。気持ちいいです。』

『きゅん!。可愛い…。』

『ヤバイなぁ。可愛い過ぎる!。』


 頬を染め、俺を上目遣いで見つめて照れながら笑う睦美を見た神無と豊華さんが悶死する。


『こらこら。あまり睦美ちゃんを苛めない。それより、豊華さん。神無ちゃんとも久し振りなんだから挨拶しないと。』

『おっ!?。そうだったな。久し振りだな!。神無!。相変わらずのようだし!。元気そうだな!。』

『はい。豊華さんもお元気そうで。』


 見かねた賢磨さんが豊華さんの意識を誘導する。

 自分への注意が逸れたことに、安心した睦美が小さな溜め息をついた。


ーー

ーーー


『来た…。』


 今まで殆ど動かなかった矢志路が急に立ち上がり、普段の無表情が嘘のように笑顔になる。


『ど、どうしたの?。矢志路君?。』

『ご主人様?。』

『如何されましたか?。』


 突然の行動に黒璃、聖愛、暗の3人が不思議そうに矢志路を眺める。


『仲間が迎えが来た。お前達。此処を立つ準備をしろ。』

『仲間って…。』

『………うん。』

『【クロノ・フィリア】…の、ですか?。』

『ああ。そうだ。』

『ええ!。どうしよう!。矢志路君!。私たち【クロノ・フィリア】の敵だったのに…。』

『殺…され…ちゃう。』

『ご主人様…私たち…どうすれば…。』

『気にするな。お前たちは俺のモノ。仲間は理解してくれる。特にあの人なら。』

『あの人?。』

『閃の兄貴さ。』

『閃って…もしかして…。』

『ええ。私も知っています。【クロノ・フィリア】で一番強い、要注意人物の方の名前…。』

『怖い?。』

『大丈夫だ。兄貴は誰よりも優しい。行くぞ。お前たち。俺の後ろについて来い。』

『うん。わかった!。矢志路君!。』


 4人は牢獄を後に地上へと上がっていった。


ーー

ーーー


『おっ!。出てきたぞ。』

『本当じゃな。しかし、一人じゃないな?。』


 強力な魔力が建物の地下から近付いて来るのを感じた。この強さ魔力の質は、明らかに【矢志路】だ。だが、魔力を放っている存在がまだいるな?。誰だ?。1、2…3人か…矢志路程ではないけど、なかなか強い魔力を放っている。レベルでいうと【120】だな。

 そして、壁が歪んでいく。これは、矢志路のスキル【干渉拒絶】だな。


『兄貴。お久し振りです。』

『おう!。矢志路も大変だったな。ここに居たのも太陽から逃れる為だったんだろ?。』

『はい。兄貴たちの居場所も分からず…昼間は日光により行動が制限され、宛も無くさ迷っていた所見つけました。なかなかの居心地につい長居をしてしまいました。』

『そうか。まあ、何はともあれ無事で良かったよ。』

『はい。兄貴も…。』


 嬉しそうに笑う矢志路。


『おい!。てめぇ!。さっきのは何だ?。何で引きこもりが女に囲まれてんだよ?。』

『ん?。ああ。居たのか。脳き…いや、煌真。久し振りだな。あれは俺の女たちだ。手を出すなよ?。殺すぞ?。』

『出さねぇよ!。てか、テメェ如きに殺されるわけねぇだろうが!。引きこもり野郎が!。』

『ほぉ?。試してみるか?。』

『上等だ!。こらっ!。』

『やめいっ!。』

『はい!。兄貴!。』

『チッ…旦那が言うならしょうがねぇ…。』


 煌真には当たりのキツイ矢志路。同じ【悪組】だからかゲーム時代は良く一緒に行動していた。そういえば、あの頃から良く喧嘩してたな。


『ああ、後ろの彼女たち…もしかして、お前…血を吸ったのか?。』

『はい。兄貴。流石ですね。察しが速い。』

『交換もか?。』

『はい。アイツ等の意思です。』

『成程な…だから魔力の質がお前に近いのか。』

『おい。兄貴にご挨拶を。お前たち!。来い!。』


 矢志路が呼ぶと、恐る恐ると言った感じで近付いて来る3人。


『紹介します。右から黒璃、暗、聖愛です。これから【クロノ・フィリア】に入れたいと思いますが…許可を頂けないでしょうか?。兄貴。』

『は…はじめまして…黒璃です。』

『暗…です…。』

『聖愛と申します。』


 目一杯頑張って挨拶している黒璃たち。ん?。黒璃って…もしかして…。


『なあ?。矢志路。この娘って【黒曜】のギルドマスターじゃないか?。』

『おっ?。わかりましたか!。流石ですね。色々あって俺のモノにしました。ついでに【黒曜宝我】は消しておきましたので。跡形もなく。』

『消したって…お前…まさか!?。』

『はい。俺の女に手を出したので全滅させました。』

『おう…。』


 マジか?。この一週間ちょいで【六大ギルド】1つ壊滅、いや消滅させるとか、【悪組】は加減を知らな過ぎだろ…。矢志路といい、煌真といい。


『あ…あの、閃…さん。』

『ん?。』

『矢志路君は私たちを…助けてくれたんです!。だから、怒らないであげて下さい!。』


 必死な表情で訴えて来る黒璃。あれ?。俺怒っているように見えたのか?。


『安心しろ。矢志路が自分の意思で決めて行動したことだ。怒らねぇよ。あと、確認したいんだが、お前たちは【クロノ・フィリア】に敵対する意思があるか?。』

『ううん!。しないよ!。』


 後ろの二人も首を横に振る。


『じゃあ、これからお前達は何をしたい?。』

『矢志路君と一緒に居たい!。』

『うん。』

『私もです。』

『よし!。なら、お前たちも【クロノ・フィリア】の仲間だ。他のメンバーには俺から言っておくさ。だから安心しろ。』

『…はい。ありがとうございます!。閃さん!。』

『…ありがとう…ございます。』

『感謝致します。』


 3人各々に頭を下げる。


『あのぉ。1つお聞きしても良いですか?。』

『ああ。何だ?。』

『貴方の名前は【閃】さんなんですよね?。』

『ああ。そうだが?。』

『手配書では男の人だったような?。女の人だったんですね。凄く綺麗…。ご主…矢志路様が兄貴と仰っていたのでてっきり…。』

『ああ。その事か。本来は男だ。スキルで今は女の姿になってるんだ。知っての通り指名手配されてるからな。』

『あっ…そうだったんですね。そんなスキルが…知りませんでした。』

『こっちも自己紹介だな。右から睦美、神無、煌真、豊華さん、賢磨さんだ。全員【クロノ・フィリア】だ。』

『宜しくのぉ。』

『はぁ。旦那が決めたんなら何も言わねぇけどよ。』

『閃先輩の決断は絶対です。』

『うむ!。宜しくな!。』

『宜しくね。』

『はい!。これから宜しくお願いします!。』

『…宜しく…。』

『宜しく御願い致します。』


 各々に挨拶を交わし交流を深める面々。

 これで、見つかっていないのは…あと1人か…。一度、無凱のおっさんに連絡しないとな。そんなことを考えながら俺は周囲の警戒を強める。


 何か…静かすぎるせいか胸騒ぎを感じる。


ーー

ーーー


 監獄エリアから少し離れた位置に建てられている高い塔。その塔の最上階は監獄エリアを全て見渡すことが出来る。

 そこには【青法詩典】のギルドマスター【青嵐(セイラン)】が監獄エリアの様子を眺め、食い縛った歯で唇を傷付け出血していた。


『【クロノ・フィリア】が…7人だと?。馬鹿な…。悪夢か?。これは?。』


 青嵐の視界に映るのは崩壊した監獄と、無惨な亡骸となった大量の警備の兵…。

 何故、こうなった?。あそこに配置したメンバーはかなりの強さだった筈…レベルも【115~120】だ。それを全滅だと?。


『あと、1日…1日だぞ?。そうすれば能力を無効化する装置が…届いた筈なのに…。』


 伝説のギルド【クロノ・フィリア】。1人でも手に負えず放置するしかなかった。それが…7人だと?。どうすれば良い?。このままではやられっぱなしだ…こんなことでは白蓮に何と言われるか…。


『仕方がない。【偽りの神】になど頼りたくは無かったが…背に腹は代えられぬ…か。』


 青嵐は、とあるスイッチを押した。

 それは【偽りの神】を解き放つスイッチだった。


ーー

ーーー


『何だ?。何かが来る!。皆!。固まれ!。』


 上空に急激に高まった魔力を感じ取り、慌てて叫んだ。俺の声に全員が反応。俺の周囲の集まり辺りを警戒する。


『何だ?。あれは?。』


 1つの建物が急に爆発した。そして、その中から現れたのは…。


『は?。な、何で、アイツがこんな場所に…。いや、この世界にいるんだ!?。』


 全員が息を飲んだ。

 目の前の存在を知らない者など…この場にはいない。飽きる…見た。何度も戦った。苦い記憶と苦戦の記憶。俺たちに絶望を与えた存在だ。忘れることなど出来る筈は無かった。

 

 その存在は…。


『【クティナ】…だと!?。』


 ゲーム【エンパシス・ウィザメント】がラスボス。


 【クティナ】だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ