第61話 集結!7人のクロノフィリア
人目を避け、目的である青法詩典の監獄エリアまで森を突き抜けること4日。その甲斐あってか途中、敵に出会うことはなかった。
遠くに見える大きな建物が恐らく矢志路が居る場所だろう。
『ぷっは!葉っぱまみれじゃ…。やっと抜けたのぉ。』
『ああ、森を突っ切れば早いと思ったんだが、思ったより時間が掛かっちまった…。』
『うむ。幼女姿なら閃に、おんぶしてもらえたんじゃがな…。流石に、この姿では見栄えも悪いのう。』
睦美が自分の身体をペタペタ触りながら言う。現在の睦美の姿は幼女ではなく、16歳本来の姿になっている。
これというのも、洞窟の化け物に腕を斬られ、且つ、白の傷を治したことで成長したのだった。
『おい。葉っぱ、めっちゃついてるぞ?取ってやるから動くな。』
『ぬ?。』
『こら。動くな。』
背中やらお尻やら肩やら足やら、色んな所についている葉っぱを優しく取ってやる。成長しても睦美は小柄だ。葉っぱが大きく見える。
『ほら。取れたぞ。』
『…。』
あ…またか…。
『ありがとう…ございます。旦那様。』
『それにも、結構慣れてきたな…。なあ、睦美?。』
『は…はい?何でしょうか?何か至らぬ点でも…ありましたでしょうか?。』
『お前のそれ?結局どっちが素なんだ?。』
『え?そうですね…一応どっちも素…ですね。ただ、本音はこっちの方が喋りやすいのじゃ。まあ、喋り方は癖じゃがな。ワシの両親は結構厳格でな話し方や作法など幼少時から徹底的に仕込まれた。男性は立てるもの、女性は3歩下がって男性をサポートすべしとかなんとかな。古い考えじゃよ。』
『はあ。お前も大変だったんだな。』
『昔の話じゃし、あの頃のワシにとっては普通の事じゃった。大変とか考えた事もなかったぞ。…まあ。』
『何だ?。』
『そんな真面目なワシが。親に隠れてネットゲームにハマっていたと思うと充分…反抗期だったのかのぉ?。』
『後悔か?。』
『いんや。グッジョブじゃ!良くやったと誉めてやりたい!沢山の仲間に、それに…大切な人に出会えたのだからな!。』
『ははは。ああ!俺も嬉しい!エンパシスウィザメントを…俺達のギルドに入ってくれてありがとうな!睦美!。』
『…。はい…。えへへ。旦那様にそう言って貰えて、とても嬉しいです…。』
コロコロ喋り方が変わる睦美を…可愛いと思ってしまうな…。
…と、その時、場違いな、強力な存在感…魔力を感じた。強い…。
『ん?。』
『旦那様?。』
『誰か来る…。』
『む?本当じゃな…数は2人か…。この存在感…只者ではないぞ?』
少しずつ近付いて来る気配に緊張が走る。コイツ等…レベル120を超えてないか?一瞬脳裏に過ったのは洞窟の化け物…。こんな場所に?。
『睦美…。』
『ああ、わかっておる。』
適当に煌真の剣を出しておく。睦美も青龍刀を出した。
………来る!!!。
『そこに居るのは!。』
『誰だ!。』
飛び出して来た人物を一瞬で確認した俺は剣を振り下ろした剣を止めた。向こうも俺の姿を確認し気付いたようだ。指先に集中していた魔力が消失した。五指に輝く銀の指輪が確信へと至らせた。
『豊華さん…。』
『閃か?。』
互いに相手を理解した。
『おお!閃!久しいな!2年ぶりだな!。』
『豊華さんこそ、今まで何処に居たんだ?。賢磨さんは良く会っていたみたいだったが?。』
『豊華さんは、困っている人をほっとけないからね。また、いつもの様にトラブルさ。』
遅れて物陰から現れる賢磨さん。
『賢磨さんも一緒だったのか。じゃあ、目的は?。』
『そうだ!矢志路を迎えに来たのだ!。』
そう胸を張る豊華さん。だが、何だろう…。記憶の中の豊華さんと若干違和感が…。
『豊華さん?。』
『ん?何だ?。』
『何か…あったか?。』
『ん?何も無いが?。』
絶対何かあったと思うんだが…本人はそう、言っているが…念のため。
『そうか。そう言えば、母さんが豊華さんを呼んでたんだ。帰ったら寄ってやってくれ。』
『む?閃にも頼んだのか?つつ美の奴?。』
『閃も?。』
『賢磨にも頼んだらしいんだ。帰ったら顔を出すようにと。まあ、帰ったら真っ直ぐ向かってやるがな!。』
母さんが賢磨さんにも?。
当然、俺の話しは嘘だ。母さんなら豊華さんの違和感を解消してくれるんじゃないかと思ってついた。だが、賢磨さんもということは…。
俺は賢磨さんをチラリと見た。
すると、賢磨さんも俺を見ていて視線が交わり、こくりと頷いた。
やっぱり…何かあったんだな…。
賢磨さんでも母さんに頼らないといけない出来事か…心の問題…か。
『ああ。行ってやってくれ。』
『おう!で?お前は何で閃の後ろに隠れているのだ?というか髪しか見えん誰だ?。』
気付くと俺の後ろに睦美が隠れていた。
あれ?コイツ人見知りだったっけ?。
『コイツは睦美だ。』
『おお!睦美か!お前も久しいな!てか、出てこい!何故隠れている!。』
『こ、これ!引っ張るな!わかった!出るから!引っ張るでないわ!。』
睦美が豊華さんに引っ張られ無理矢理出てきた。
『お前?人見知りだったか?。』
『いやな…久しぶり過ぎて距離感がな…リアルで会うのも初めてだしな…。』
『ああ。成程ね。』
『まあ、良い。出てきてしまった以上は普通に接するまでよ。久し振りじゃな。豊華、賢磨。』
小柄な身体で目一杯胸を張って挨拶する睦美。そんなことしたことないだろう…。
『ああ。久し振りだね。元気だったかい?。』
『ああ。まあな。』
『というより、喋り方だ?どうした?そんなんだったか?。』
『なぁに。能力のせいで、この2年ずっと老婆じゃったのだ。雰囲気出すために口調を変えてたら癖になってしまってのぉ。』
『な!?そうなのか?それは大変だったな…。』
『ああ。だから無凱が言ってたのか。睦美ちゃんは動けるようになったら合流するって…その事だったんだね。』
『ああ。そうじゃ。無凱の奴は1度ワシの所に来たからのぉ。その時に、現状を聞かされたんじゃ。』
無凱のおっさんは色々裏で動きすぎて何をしてるのか俺でもわからない時があるからな…。普段飲んだくれてるのに、無駄に頼りになる。それが、クロノフィリアのリーダーなんだ。
『それより、珍しい組み合わせだね。閃くんと睦美ちゃんか。ゲーム時代そんなに仲良かったかい?。』
賢磨さんが指差す方を見ると、睦美は俺の裾を握ったままだったようだ。
『ゲーム時代は、隠しとったんじゃ。閃を好きな気持ちを…な。智鳴や氷姫に遠慮して。だが、今は閃に気持ちを伝えられたからな!開き直ったのよ!。』
『ほぉ!そうだったのか!全然気付かなかったぞ!。』
『頑張ったのじゃ。だが、灯月とつつ美にはバレておったな…。』
『ああ。あの2人はな…特別だ。』
『そうだね…。』
俺の義妹と義母は恐ろしい…クロノフィリアメンバー共通の認識のようだ。
『どうするのだ?閃よ?。』
『あ?何がだ?。』
『こんな可愛い女子達に惚れられて、誰を選ぶのだ?。』
『ああ。いつかは答え…。『それは心配無用じゃよ!。』
俺の言葉を遮り睦美が言う。
『閃はハーレムエンドを目指しとるのじゃ!好いとる女子は、みーんな、閃の女じゃて!。』
『お前…会う奴全員にそれ言うのな…。』
『当たり前じゃ!ししし。外堀から埋めて最終的には真実にするのじゃ!。』
『おお!睦美格好いいぞ!。』
『ははは、久し振りに会って少し心配だったけど。元気そうで良かったよ。』
豊華さんと賢磨さんが睦美に笑いかけた。
だが、睦美のあの変化をまだ知らないからな。睦美にちょっと反撃してみるか。
『豊華さん、賢磨さん。ちょっと見ててくれ。』
『ん?何だ?。』
『何だい?。』
俺は睦美の方を向く。
『睦美。』
『ん?どうした閃?。』
『俺はお前を大切に思っているからな。』
睦美の両肩に手を置き目の高さを合わせる。
この言葉は嘘ではない。睦美に限らず、俺はクロノフィリアメンバーの全員が大切だ。
だが、最近睦美を特別に思う事もあるんだ。何せあんな直球に好意を向けられるんだ。こっちだって意識してしまうだろう。
『…。』
目を見開き、驚いた表情の睦美。そして、無言に。
『…はい…私も…旦那様のことを…心よりお慕いして…おります…。』
目に涙を溜め、嬉しそうに笑う睦美。なぁ…これで好きにならない方が無理だろう?。
『お…おおおおお!何だコレは?睦美の雰囲気が変わったぞ?こんなキャラだったか?。』
『ああ。これは驚いた。閃君、愛されてるね。』
『ええ。これからが、大変ですね。』
何か…このまま本当にハーレムに持っていかれそうだな…。恐るべしだ。睦美…。
『旦那様…大好きです…。』
背中に回り、服を小さなてで握りながらそんなことを呟く睦美。
『おお!睦美可愛すぎだぞ!何か抱き締めたくなるな!。』
『そうだね。娘に欲しいかもね。』
数分後。
『はめたな…閃。』
『仕返しだ。でも、大切なのは本当だからな?。』
『…はい。存じております。』
『本当にコロコロ変わるなぁ。面白い。』
『青春だね~。拠点に帰ったら皆の反応が楽しみだ。』
『ええい!見世物ではないぞ!。』
『可愛いぞ!。娘に欲しい!。』
『これ!豊華!抱きつくな!。』
豊華さんに抱きつかれるも満更でもなさそうな睦美を微笑ましく思う。賢磨さんも同じ気持ちなのか2人で苦笑い。
『さて、本題に入ろうか。』
『そうだな。確認だが2人も矢志路を迎えに来たんだろう?。』
『おう!そうだぞ!。』
『恐らく、あの建物の中だと思うんだが。』
『おお!でっかい建物だな!ワクワクする!。』
『ここからだと。少し遠すぎて魔力を感じられないね。』
俺達は森を抜けた所にある崖の上にいる。青法の拠点を見下ろしている状態だ。
『で、もう1人…いや、2人か。俺達の仲間が来てるみたいだな。』
『む?閃よ?どうして分かるのだ?。』
『あれ、見ろ。手当たり次第に暴れた痕跡があるだろ?あんなこと出来るのは1人しかいねぇ。』
『煌真じゃな。』
『そうだ。で、煌真は神無が迎えに行ってる筈だからな。多分、一緒だろう。』
『おお!煌真も居るのか!懐かしいな!勢揃いじゃないか!。』
『取り敢えず、近くまで行ってみようか。』
『ああ、そうだな。』
俺、睦美、豊華さん、賢磨さんの4人は、青法の敷地内に侵入する。
『それにしても随分派手に暴れたみたいだな!。』
『警報が鳴ってないみたいだけど。』
『それは、神無のスキルじゃないか?。』
『そうみたいじゃな。僅かに魔力の残留を感じる。』
辺りには兵士の死体が転がっていた。煌真の奴…マジで手加減してないんだな…。
『手当たり次第って感じだね。』
『流石、悪組だな。』
『褒めて良いことなのか?。』
『敵は倒す!間違ってないぞ!。』
『豊華さん…悪組じゃないよな?。』
そんなことを話していたら大きな建物の前に着いてしまった。これまでの道のり…護衛や監視の兵士は全滅。1人として生き残りはいなかった。ヤり過ぎだろう…。
『旦那!。』
嬉しそうな煌真が出会い頭に拳を繰り出した。ああ…2年経って忘れてた。コイツの挨拶は力任せの拳だった。男の俺なら迷わず拳で応えていただろう。だが、今は女の姿…拳で応えて勝てるわけがない…。ということで、スキル【初撃無効】を発動。煌真の拳の勢いを消し、その隙に煌真の神剣を取り出す。そして…力の限り、全力でボディブロー!!!。
『ぐぅぉおお!』
完全に腹に決まった拳。
だが、コイツ…耐えやがった…。
『流石だ。旦那!この世界で初めて痛てぇ攻撃を受けたぜ。』
『化け物度合いも変わんねぇな…。』
『あと、やっぱ女の姿の旦那はヤベェな!旦那!頼む!俺の女になってくれねぇか?。』
『は?何言ってやがる!俺は男に興味ねぇよ!。』
『ははは。だよな!だが、気が変わったら言ってくれ俺は旦那なら、いつでも歓迎だ!。』
『な!に!を!わ!た!し!の!主様に言ってるのよ!この馬鹿んこ!。』
神無の物凄い助走からの回し蹴りが煌真の頭に直撃した。
『痛てぇな。何すんだ?神無?。』
衝撃波を周囲に発生させる程の威力を持った回し蹴りを受けても煌真は頭を擦るだけのダメージだったようだ。タフ過ぎるだろ…。
『主様!お久し振りで御座います。神無!参上致しました。』
『ご苦労様。良く煌真を見つけ出してくれたな。』
『はい。勿体無きお言葉…この馬鹿の無礼は私が後でしっかり言い聞かせますので。』
『うん?ああ…まあ、程々に仲良くな?。』
『はい。心得ました。』
『って、旦那も神無も無視すんじゃねぇよ…。』
その様子を見ていた3人が寄ってきた。
『久し振りだね。煌真君。元気そうで良かったよ。』
『相変わらず、お前さんは騒がしいな煌真よ。』
『…。』
睦美は、また俺の服を握って背中に隠れた。
『あ?おお!賢磨さんに豊華じゃねぇか!?久し振りだな!元気そうで何よりだ!で、旦那の後ろにいる女は誰だ?。』
『ああ、睦美だ。』
『睦美?おお!睦美か!久し振り!ゲームの時と年齢が違うから気付かなかったぞ?。』
『……せん。』
『ん?何か言ったか?声が小さすぎて聞こえなかったぞ?。』
『旦那様は!私のです!貴方のような野蛮な方になど渡しません!。』
炎の翼を広げ、煌真を威嚇する睦美。また、睦美の新たな一面が。
『おいおい?お前そんなキャラだったか?。』
『はっ!?…ごほん!閃はハーレムエンドを目指しておるのじゃ!そこに女子は入って良いが男は駄目じゃ!拒否する!閃は女子皆のモノじゃて!。』
『いや、キャラ変えてもイメージと違うから?何でそんな婆さんみたいな話し方よ?。』
『これは…この2年で培った癖じゃ!流せ。』
そう言い、俺の腕に抱き付いて来る睦美。その様子を見て煌真が肩を竦める。
『何だかなぁ?納得いかねぇ…。』
その様子を見てた神無が睦美に問う。
『睦美殿?。』
『…な、何じゃ?。』
『睦美殿も主様が…その…好きなのですか?。』
『………はい。』
『くすっ。そうですか。やっと自分の気持ちに正直になられたのですね?。』
『え?。お主…もしかして?。』
『はい。気付いていましたよ。でも安心して下さい。灯月殿とつつ美殿以外は知らないので。』
『そ、そうか?何で分かったのじゃ。』
『忍びの洞察眼故に…。』
『あ…そうか…。そうじゃよな…。』
言葉を失っていく睦美。何か可愛そうだ…。俺は睦美の頭を撫でる。
『あ…旦那様…。』
『きゅん!。可愛い…。』
『ヤバイなぁ。可愛い過ぎる!。』
頬を染め、俺を上目遣いで見つめる睦美を見た神無と豊華さんが悶死する。
『こらこら。あまり睦美ちゃんを苛めない。それより、豊華さん。神無ちゃんとも久し振りなんだから挨拶しないと。』
『おっ!?そうだったな。久し振りだな!神無!元気そうだな。』
『はい。そちらもお元気そうで。』
見かねた賢磨さんが豊華さんの意識を誘導する。自分への注意が逸れたことに、小さな溜め息をついた。
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『来た…。』
今まで殆ど動かなかった矢志路が急に立ち上がり、普段の無表情が嘘のように笑顔になる。
『ど、どうしたの?矢志路君?。』
『ご主人様?。』
『如何されましたか?。』
黒璃、聖愛、暗の3人が不思議そうに矢志路を眺める。
『仲間が迎えが来た。お前達。此処を立つ準備をしろ。』
『仲間って…。』
『…。』
『クロノフィリア…の、ですか?。』
『ああ。そうだ。』
『ええ!どうしよう!矢志路君!私達クロノフィリアの敵だったのに…。』
『殺…され…ちゃう。』
『ご主人様…私達…どうすれば…。』
『気にするな。お前達は俺のモノ。仲間は理解してくれるさ。特にあの人なら。』
『あの人?。』
『閃のアニキさ。』
『閃って…もしかして…。』
『ええ。私も知っています。クロノフィリアで一番強い方の名前…。』
『怖い?。』
『大丈夫だ。アニキは誰よりも優しい。行くぞ。お前達。俺の後ろをついて来い。』
『うん。わかった!矢志路君!。』
4人は牢獄を後に地上へと上がっていった。
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『おっ!出てきたぞ。』
『本当じゃ。』
俺は強力な魔力が建物の地下から近付いて来るのを感じた。この強さは、明らかに矢志路だ。だが、魔力を放っている存在がまだいるな?誰だ?。1、2…3人か…矢志路程ではないがなかなか強い魔力を放っている。
そして、壁が歪んでいく。これは、矢志路のスキル【干渉拒絶】だな。
『アニキ…。お久し振りです。』
『おう!矢志路も大変だったな。ここに居たのも太陽から逃れる為だったんだろ?。』
『はい。アニキ達の居場所も分からず…昼間は日光により行動が制限され、宛もなくさ迷っていた所見つけました。』
『そうか。まあ、無事で良かったよ。』
『はい。アニキも…。』
嬉しそうに笑う矢志路。
『おい!てめぇ!さっきのは何だ?何で引きこもりが女に囲まれてんだよ?。』
『ん?居たのか。煌真。久し振りだな。あれは俺の女達だ。手を出すなよ?。』
『出さねぇよ!。』
煌真には当たりのキツイ矢志路。同じ悪組だからかゲーム時代は良く一緒に行動していた。
そう言えば、あの頃から良く喧嘩してたな。
『ああ、後ろの彼女たちが…もしかして、お前…血を?。』
『はい。アニキ。流石ですね。察しが速い。』
『交換もか?。』
『はい。アイツ等の意思です。』
『成程な…だから魔力の質がお前に近いのか。』
『アニキにご挨拶を。お前達!来い!。』
矢志路が呼ぶと、恐る恐ると言った感じで近付いて来る3人。
『紹介します。右から黒璃、暗、聖愛です。これからクロノフィリアに入れたいと思います。』
『は…はじめまして…黒璃です。』
『暗…です…。』
『聖愛と申します。』
目一杯頑張って挨拶している黒璃。ん?黒璃って…もしかして…。
『なあ?矢志路。この娘って黒曜のギルドマスターじゃないか?。』
『おっ?わかりましたか!流石です。色々あって俺のモノにしました。ついでに黒曜宝我は消しておきましたので。』
『消したって…お前…まさか。』
『はい。俺の女に手を出したので全滅させました。』
『おう…。』
マジか?この1週間ちょいで六大ギルド1つ壊滅させるとか、悪組は加減を知らな過ぎだろ…。矢志路といい、煌真といい。
『あ…あの、閃…さん。』
『ん?。』
『矢志路君は私達を…助けてくれたんです!だから、怒らないであげて下さい!。』
必死な表情で訴えて来る黒璃。あれ?俺怒っているように見えたのか?。
『安心しろ。矢志路が自分の意思で決め行動したことだ。怒らねぇよ。あと、確認したいんだが、お前達はクロノフィリアに敵対するか?。』
『ううん!しないよ!。』
『じゃあ、これからお前達は何をしたい?。』
『矢志路君と一緒に居たい!。』
後ろの2人も首を縦に振った。
『よし、ならお前達もクロノフィリアの仲間だ。他のメンバーには俺から言っておくだから安心しろ。』
『…はい。ありがとうございます!閃さん!。』
『…ありがとう…ございます。』
『感謝致します。』
3人各々に頭を下げる。
『あのぉ。1つ聞いても良いですか?。』
『ああ。何だ?。』
『貴方の名前は閃さんなんですよね?。』
『ああ。そうだが?。』
『手配書では男の人だったような?女の人だったんですね。凄く綺麗…。』
『ああ。その事か。本来は男だ。スキルで今は女の姿になってるんだ。知っての通り指名手配されてるからな。』
『あっ…そうだったんですね。』
『こっちも自己紹介だな。右から睦美、神無、煌真、豊華さん、賢磨さんだ。全員クロノフィリアだ。』
『宜しくのぉ。』
『はぁ。旦那が決めたんなら良いけどよ。』
『主様の決断は絶対です。』
『うむ!宜しくな!。』
『宜しくね。』
『はい!これから宜しくお願いします!。』
『…宜しく…。』
『宜しく御願い致します。』
各々に挨拶を交わし交流を深める面々。
これで、見つかっていないのは…あと1人か…。1度、無凱のおっさんに連絡しないとな。そんなことを考えながら俺は周囲の警戒を強める。
何か…静かすぎる。
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監獄エリアから少し離れた位置に建てられている高い塔。その塔の最上階は監獄エリアを全て見渡すことが出来る。
そこに青法詩典のギルドマスター 青嵐が監獄エリアの様子を眺め、食い縛った歯で唇を傷付け出血していた。
『クロノフィリアが…7人だと?馬鹿な…。』
青嵐の視界に映るのは崩壊した監獄と、無惨な亡骸となった大量の警備の兵…。
何故、こうなった?。あそこに配置したメンバーはかなりの強さだった筈…レベルも115~120だ。それを全滅だと?。
『あと、1日…1日だぞ?。そうすれば能力を無効化する装置が…届いた筈なのに…。』
伝説のギルド クロノフィリア。1人でも手に負えず放置するしかなかった。それが…7人だと?。
どうすれば良い?このままではヤられっぱなしだ…こんなことでは白蓮に何と言われるか…。
『仕方がない…【偽りの神】になど頼りたくは無いが…背に腹は代えられぬ…か。』
青嵐は、とあるスイッチを押した。
それは偽りの神を解き放つスイッチだった。
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『何か来る!皆!固まれ!』
急激に高まった魔力を感じ取り叫んだ。俺の声に全員が反応。俺の周囲の集まり辺りを警戒する。
『何だ?あれは?。』
1つの建物が急に爆発した。
そして、中から現れたのは…。
『何?…何でアイツがこんな場所に…。』
全員が息を飲んだ。
目の前の存在を知らない者など…この場にはいない。飽きる程…見た存在だ。忘れることなど出来る筈は無かった。
『クティナ…だと?。』