表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/426

第59話 各々のこれから②

ーーー氷姫ーーー


 ちゃぽん。と天井の雫が湯船に落ちた。

 現在、大浴場に居るのは2人。

 水風呂に入る氷姫とお湯に浸かる智鳴。


『ごめん。智ぃちゃん。私に。付き合わせて。戻させた。』

『気にしないで良いよ。氷ぃちゃんは全然悪くないし!だから、謝る必要も気にする必要もないんだよ!氷ぃちゃんが元気になったら、また閃ちゃんを誘って一緒にお出掛けしようよ。』

『うん。ありがとう。』


 申し訳なさそうに水風呂から顔だけを出し謝罪する氷姫に笑いながら応える智鳴。互いの性格を知り尽くしている分、智鳴が本当に何とも思っていないことが理解できる氷姫は、とても気分が軽くなった。


『智ぃちゃんも。大好き。』

『私も大好きだよ。氷ぃちゃん。』


 そこに、ガラガラと扉が開き入ってくる人物。


『ああ。やっぱりぃ。帰って来てるってぇ。聞いたよぉ。ここに居たんだねぇ。』


 大浴場に入って来たのは、つつ美だった。


『つつ美さん。』

『こんばんは。』

『はいぃ。こんばんわぁ。氷姫ちゃん。智鳴ちゃん。お疲れ様だったねぇ。』


 ゆっくり歩いて来る、つつ美…それを見つめる彼女達の視線は一ヵ所に重なっていた。


『ばるんばるん。』

『凄いね…。』

『ん?あらあらぁ。ダメだよぉ。そんなにぃ。見ちゃぁ。大丈夫だよぉ。2人共ぉ。立派だもん。閃ちゃんも満足だよぉ。』

『うん。閃。満足。』

『うぅ。恥ずかしいです…。』


 つつ美が氷姫に手招きする。

 首を傾げつつも水風呂から上がり、つつ美さんへ近付いて行く氷姫。


『えいっ!。』

『わっ。』


 氷姫を抱き締めるつつ美。


『ふかふか…。』

『ふふふ。良く頑張ったねぇ。』

『え?。』

『辛かったでしょぉ?。でもぉ。頑張ってぇ。乗り越えたぁ。本当に頑張ったねぇ。』


 氷姫の頭を撫でるつつ美。


『…うん。うん。』

『忘れないでぇ。貴女のぉ。家族はぁ。クロノフィリアのぉ。皆ぁ。独りの時間はぁ。終わってるんだよぉ。』

『うん。』

『私はぁ。氷姫ちゃんのぉ。お母さん。だからぁ。辛い時はぁ。お母さんにぃ。甘えなさいねぇ。泣いてもぉ。大丈夫ぅ。ちゃんと受け止めてあげるからねぇ。』

『うん。う…ぅぁあぁああああああああん。』

『うん。いい子ぉ。いい子ぉ。』


 つつ美はクロノフィリアのお母さん。

 メンバーが辛い時の心のクッション。

 全員がそれに救われている。

 これまでも…これからも…。


ーーーーーーーーーーーーーーー


ーーー灯月ーーー


『にぃ様、成分が足りないです…。』


 虚空に向け放った声は静寂の中に溶けていった。

 閃。にぃ様が旅立たれて早いもので1週間弱。無凱さん達のお話では、まだ青法の支配エリアに着いていないとの事…。


『まだ…にぃ様には会えないよう…ですね…。』


 にぃ様の部屋は綺麗にしてある。

 カーテンも布団もシーツも枕も変えた。掃除もした埃1つ落ちてない。いつ、にぃ様が帰って来ても大丈夫!。

 そんな掃除も…毎日してるのに…肝心のにぃ様が居ない…寂しい…寂しい…寂しい…。


『………でも、ふふふ。にぃ様のシーツも枕も布団も我が手にあり!』


 これは洗わない、洗わない、洗わないですよぉ。


『えへへ…にぃ様の匂い…。すぅぅぅううううううううううううううううううううううううう…はぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああ。いい匂い。にぃ様…大好きぃ。』


 今日の夜は、にぃ様の匂いに包まれて寝れますよぉ。幸せです!。

 さて、にぃ様が帰って来た時の為に色々準備しなければ!。


『そうと決まれば例の場所へ。』


 にぃ様に美味しく健康的な料理を振る舞うために私は廃ビル1棟をまるまる改造し様々なモノを育成しています。

 15階建てのビル。この辺りの廃ビルは比較的損傷が少なく改造は簡単でした。

 そのままビルに入り屋上へ…。

 ビル内には牛や豚や鳥、魚や甲殻類、果ては虫や爬虫類や両生類に至る、あらゆる 食用 生物を育てています。

 そして、屋上にあるビニールハウス内と手作りの畑には太陽の恵みとたっぷりの水と質の良い土で、のびのび育てた沢山の種類の野菜が…。


『野菜が…。』


 私の目に飛び込んで来た風景は、荒らされ、ぐちゃぐちゃされた、私のオアシス…。食べられる野菜は無惨に取り除かれ、それ以外はめちゃくちゃの惨状に…。


『まさか!。』


 私は急いで下の階に走る…いいえ。飛ぶ!。


『あぁぁぁああああ…。にぃ様の為に育てた…動物達が…。』


 建物内は血で真っ赤に染まっていました。

 全て…全て…殺されて…。

 にぃ様の…。為に…にぃ様の為に…育てたのに…。


 その瞬間、周囲が揺らいだ。


『誰ですか?こんな酷いことをしたのは…。まぁ…誰であっても構いませんが…。』


 翼を広げ空へ…。


『私のオアシスを破壊したゴミは…必ず見つけ出して…殺す!。』 


ーーーーーーーーーーーーーーー


ーーーとある日常の光歌ーーー


『これは…流石に…恥ずかしいな…。』

『きゃああああああああああああ。』

『布殆ど無いじゃん…。母さんの衣装…。』


 流石、サキュバスの衣装ね。

 胸と局部以外に布はない。それでいて閃の完璧な女体が合わさった事で、まさに芸術の域へ辿り着いた。外付けアイテムの角と羽が、恥ずかしそう頬を染め、羞恥に耐えながら歯を食い縛る表情がなんとも…なんとも…楚々られます。


『はぁはぁ…はぁはぁ…。閃!今度はこのポーズね!。』

『…やだ…。』

『…やれ…。』

『……やだ……。』

『……テスト……。』

『くっ…。』


 一枚のグラビア写真を閃に見せ、ポーズを指示する。

 テストの罰ゲームだという自覚を攻めポーズを強制させる。


『こ…う…か?。』

『きゃあああああああ!!!最高だし!マジ最高!。パネェ!。』


 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ。


『おい!カメラは無しだろう?。』

『安心して下さい!にぃ様!』

『灯月!?ってお前もカメラ持ってんのかよ!?。』

『ええ。ですが安心して下さい。写真は決して外部には漏らしません!私が厳重に保管します!この命に変えましても!。』

『いや…俺の写真に命に賭けんな…。』

『いえ、にぃ様の写真にはそれだけの価値があるのです!』

『その通りだし!灯月!。』

『はい!光歌ねぇ様!。』

『おい!お前ら!結託するな!。』

『じゃあ!次は!これじゃん!。』

『あら!私のメイド服ですね。胸元のサイズもにぃ様に合わせてある。流石です!光歌ねぇ様!。』

『おい!2人して無視するな!。』


 閃の着せ替え時間は…まだまだ続く。

 続くったら続く。


『はぁはぁ…はぁはぁ…。マジ最高!。』

『はぁはぁ…はぁはぁ…。素晴らしいです!。』


ーーーーーーーーーーーーーーー


ーーー無華塁(ムカル)ーーー


 クロノフィリアのメンバーは全員で23人。

 そして、裏ボス登場で出現したダンジョンと裏ボスに挑んだ際の人数は実は24人だった。

 つまり、スキル【限界突破2】を獲得し、レベル150に至っている人物は全員で24人いるということになる。

 では何故、六大ギルドや少数ギルドに名が上がらないかというと、その人物が何処のギルドにも所属していないソロプレイヤーだったからだ。


『あ、雨だ…。』


 山奥で独り。

 巨大な大木に向かい。ひた向きに、ひたすらに、無心に…何時間も矛を振り続けていた。そんな、彼女の動きを止めたのは、鼻の先に当たった1粒の雨だった。1粒の雨は次第に山全体に降り注ぎ、やがて激しい雷を伴う嵐になった。


『濡れちゃう。』


 焦らず。ゆっくり、とした動作で木陰に隠れた。


『ふぅ。間に合った。』


 アイテムBOXからタオルを取り出し顔を拭く。


『はぁ。やっと見付けたよ!。』

『ん?誰?。』


 ひと息つきながら、雷と強風の音と降り続ける雨を眺めていた無華塁。そして、彼女に話し掛ける小さな機械の鳥。


『無華塁ちゃんで合ってる?。』

『うん。合ってるよ?。』

『私は、神様 だよ!。』

『神様。本当に居たんだ。』

『え?そ、そうだよ。神様。君たちクロノフィリアの味方だよ!。』

『神様!凄い!神様!。』

『あ?え?あ…はい。神様です。はい。って、疑わないの?。私が言うのもなんだけど…いきなりこんな怪しい小さい機械の鳥が自称神様とか言い出してるんだよ?。』

『え?神様。じゃないの?。』

『あ…いえ、神様です…はい。なんか調子狂う娘だね…。』


 機械の鳥は無華塁の肩に止まると更に話し始めた。


『それでね。今日は貴女にお願いがあって来たの。』

『お願い?何?。』

『この地図にある場所に行って、そこにある宝石を取って来て欲しいの。』

『宝石?何で?。』

『その宝石は貴女達、クロノフィリアにとってとても必要になるの。だから、仲間を助けると思って!。』

『閃の為になる?。』

『え?。閃?。あっ、バグの…。うん。なるなる!なりまくりよ!。』

『なら。良いよ。』

『え?あっ。はい。お願いします。決断早いなぁ。』

『うん。あと、私、クロノフィリアじゃないよ。』

『え?そうなの?。』

『うん。でも、クロノフィリアは仲間。』

『そうなんだ。あっ!そろそろ時間だ。じゃあね。それじゃあ宜しくね!。』


 機械の鳥は空へと飛び立った。


『あっ。危ないよ?。』

『え?ぎゃぁぁぁぁあああああああ!!!。』


 鳥に雷が落ちた。っと思った。


『大丈夫?。』

『あれ?雷?落ちてない?。』

『斬った。』

『斬った?雷を?。』

『うん。』

『嘘…。』

『鳥さんに。怪我無くて良かった。』


 空に向け矛を構えた。


『何をしてるの?。』

『雲。どける。』

『え?。』

『はあ!!!。』


 全力で振り抜いた矛から轟音が響く。周囲に駆け巡る振動は空気を揺らし天に届いて雲を割った。


『すっご!。』

『これで安心。』

『あっ。ありがとう。じゃあ、気を取り直して。じゃあね。』

『うん。ばいばい。』


 機械の鳥は飛びだって行った。無華塁は、鳥が見えなくなるまで手を振り続けていた。


ーーーーーーーーーーーーーーー


ーーー白蓮ーーー


 戦争跡地を拠点にするギルドは多数あるが勢力や戦力で見た場合。当然、トップに君臨するのがクロノフィリア。それ以外は烏合の衆と言わざる得ない。

 だが、1つ。六大ギルドに匹敵する戦力を持ったギルドがあった。

 名を【紫雲影蛇】。ギルドメンバーは9人。

 リーダーの名前は、紫柄(シガラ)


 長い木製の廊下を歩く。後ろには、護衛の銀と雪姫と…。

 扉を開け中に入る。

 さて、どうなるかな?この交渉は。


『ああ。いらっしゃい。ようこそ、紫雲影蛇へ。』

『こんにちは。紫柄君。今日は宜しくお願いするよ。』


 部屋の中には9人。紫雲全員か。で、目の前におる顔の下半分を隠している男がギルドマスター 紫柄。

 彼等はこのクロノフィリアが蔓延るエリアを生き抜いている実力派集団。

 こと、生き残る、盗む、暗殺、隠れる、ことに関しては群を抜いている。

 そして、全員がレベル120の実力派だ。


『それで?ああ、白聖連団のギルドマスター自ら…今日は俺らに何の用で?。』

『言葉を飾るのは苦手なんだ。だから、率直に言うんだけどね。君たちを我が白聖に引き入れに来た。』

『は?。』

『いやぁ。恥ずかしながら、クロノフィリアにちょっかい掛けてしまってね。我がギルドの白聖十二騎士団が奴等のせいで、ほぼ壊滅状態。これから、大きなイベントを控えているというのに立つ瀬がないんだよ。そこで君達に白羽の矢を立てたのさ。』

『ああ、断る。』

『おや。即答だね。』

『ああ、それは俺達をお前の駒として使いたいと言っているのと同義だ。ああ、そんなふざけた理由でここまで来たのか?出口は後ろだサヨウナラ。』


 扉の近くに居た女性が扉を開ける。


『それは、早計かな。』

『ああ、何?。』

『君達はクロノフィリアに怯える毎日を送っていて、現状に満足しているのかい?。』


 ピクリと眉毛が動く。

 ほぅら、ボロが出た。隠してはいても結局私たちは同じなのさ。


『ああ、面白いことを言う。そのクロノフィリアに手を出して、お前はここに来ているんだろう?ああ、その言い方だと、クロノフィリアに対抗する手段をお前が持っていると聞こえるが?。』

『私では、ないよ。』

『私ではない?。』

『隠し事は無しにしようか。』


 結局、あの方々の力を借りないといけないのか…我ながら弱い…な。


『紹介するよ。___だ。』

『なっ…!?。』

『!?。』


 私の隣に次元の穴が出現し、その中から現れた存在。目の当たりにした、その場にいる全員が驚愕の表情に染まる。

 そりゃそうだよ。この方は… 神 なのだから。姿を拝んだだけでも理解できるだろう?我々人間が余りに無力なのだということを。


『ああ、お前…いや、白蓮さん。あんたに着いていけば、その方の…力の片鱗を得られるのか?。』

『もちろんさ。その為に十二騎士団を犠牲にし準備を整えたんだ。』

『ああ、あんたも…相当なクレイジーさだ。気に入った。白蓮さん。俺ら紫雲影蛇は白聖連団の傘下に入ろう。皆も良いよな?。』


 紫雲影蛇のメンバー全員が首を縦に振った。


『ああ。宜しく頼むよ。』


 白蓮と紫柄が握手を交わす。

 白聖に加わった紫雲により、能力者大会の準備が進められていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ