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第58話 各々のこれから①

ーーー代刃ーーー


 白と春瀬の様子がおかしい…。

 機械桃太郎を倒し、謎の女に告げられたクリティナの宝石を集めるために黒曜宝我の支配エリアに向かうことにした。僕こと代刃と白と春瀬。赤蘭の支配エリアを進むこと2日が経ち、今は隠れ家と定めた場所に潜伏していた。

 その間、何故か白と春瀬の僕に対する態度に若干違和感があった。

 春瀬はスキンシップが激しくなった。今も何故か僕の腕に抱き付いて腕を組んでくるし、チラチラと僕の顔を見てくる。僕…今、女の姿なんだけど…。てか、男の姿でも問題じゃないかな?この2年こんなこと無かったのに…急にどうしたの?。

 そして、白もおかしい。白は春瀬みたいに僕にくっついては来ないけど、ずっと僕の服の裾を摘まんでる。時折、僕の顔を見て…いや、顔というより唇をじっと見つめて来るんだよね。気になって白の方を見ると、白もこっちを見て えへへ って照れたように笑うんだ。どうしちゃったの本当に?。


『ねえ。2人共、聞いても良い?。』

『あら?なんですの?。急に立ち止まって?。』

『どうしたッスか?。』


 僕が止まると当然連結してる2人も止まる。急に立ち止まったことが疑問なのか不思議そうな顔で僕を見てる…って何で僕のことを不思議がるんだ?明らかに、おかしいの2人の方だよね?。


『あのね。ちょっと聞きたいんだけど…。』

『あら?どうしました?。』

『何かあったんスか?。』


 いやいや。普通に返答しないでよ。僕の方がおかしいみたいじゃん。


『2人の距離感…何か近くない?。』

『………。』

『………。』


 無表情で無言になる2人。

 え?何で黙るの?てか、ちょっと怖いよ?。


『私は、あの時の気が付きましたの!。』

『なっ…何を?。』


 急に話し出した春瀬にビックリしながら聞き返す。


『貴女に奪われた唇…ピンチを救われた…これはもう貴女に全てを捧げる覚悟でも持たないと貴女と共に歩めない。そう、判断致しました。ですので、より深い仲になるために私は貴女ともっと親密になりたいのですわ!。』

『………。』


 ええ。意味分からないよ…。どゆこと?。


『なので、もっとイチャイチャしたいのですわ!。』

『は…春瀬には仁さんがいるじゃないか!。』

『もちろん仁様のことは愛していますし、お慕いしておりますわ!私は、貴女とお友達として親密になりたいのですわ!。』

『それが…これなの?。』

『ええ。私…。女同士でも構いませんわ!。』

『えぇ…。僕は…。そ、そうだ!白はどうしてそんな後ろで僕の服を掴んでるのさ?。』


 真剣な…あまりのも真剣な眼差しで僕に密着してくる春瀬からの圧力に怯え…いや、身の危険を感じて白に話を振った。


『代刃ッチ…あの…ね。白は…自分の気持ちが…分からなくなっちゃったッス。』

『…どういう…こと?。』

『代刃ッチ…と、ちゅー。したいッス。』


 きゃぁぁぁあああ!白に変なスイッチ入ってるぅぅうううう!。


『白は、無理矢理は嫌ッス。だから、気が向いたらで良いから。ちゅー。して欲しいッス。代刃ッチとの…す、凄く…気持ち良かったッス。』


 し、知らなかった…白。めっちゃ、キス魔だったんだ…。


『ぼ…僕は…。』

『代刃ッチ?。』

『代刃?。』


 2人が怖い…閃…助けてぇ…閃…閃閃閃閃閃…。


『僕は閃が好きなんだぁぁああああ!!!』


 僕は全力で逃げたんだ。


ーーーーーーーーーーーーーーー


ーーー神?ーーー


『あと…あと…ああ時間が…彼女は君たちにとって…。ああ、切られちゃった…間に合わなかったね。』

『だが、重要な点は伝えられたな。あの女…アイツがクロノフィリアに託した【限界突破2】。それが、奴等の手をこまねさせている事実。』

『うん。だからこそ、その隙に私達が頑張ってクロノフィリアのサポートしないとね!。』

『頑張っているのは、お前だけだ。俺は…お前の護衛だ。』

『にしし。ありがとう。よし!次は…。』


ーーーーーーーーーーーーーーー


ーーー聖愛ーーー


『あの…矢志路さん…優しくお願いします…。』


 私は自ら首筋を差し出していた。

 私では黒璃ちゃんを守れない…救えない。黒璃ちゃんを守ってくれると言う、この方を信じて…。私は…私の全てを捧げます。あの人の、大切な妹を。


『良いのか?。』

『はい。…あっ…。』


 彼の矢志路さんの牙が私の首に刺さる。

 チクりとした痛みの後、全身を駆け巡る快楽。彼との繋がりを感じて…私は彼のモノになった。


『旨かった。ありがとう。今、傷を消す。』


 彼が首に付いた牙の痕を治癒してくれた。


『ありがとうございます。矢志路さ…いえ、ご主人様。』

『聖愛~。これで、一緒だね。』

『黒璃ちゃん…うん。』


 私に抱き付いて来る黒璃ちゃんを優しく撫でる。ああ、この娘がこんな嬉しそうに…あの俯いて、自分の殻に籠っていた…あの暗い表情でビクついていた…この娘に笑顔をくれたこの方を…私は信じます。


『ふん。俺は血さえ貰えれば良い。後はお前達の好きにしろ。何処へでも行き自由に暮らせば良い。』

『うん。矢志路君!。』

『………。』

『だが、お前達が困った時…助けて欲しいと思った時は必ず俺を呼べ。お前達が何処に居ても俺が必ず助けてやる。』


 とくんっ。と心臓が跳ねる。


『はい。ご主人様。』


 その時、彼の裾を引っ張る暗君。


『ん?。どうした?お前は確か…暗だったか?黒璃に聞いたぞ。お前も良く頑張ったな。』


 ご主人様が暗君の頭を撫でた。


『僕も…す…って。』

『は?。お前もか?。』

『ぅ…ん。』


 暗君が珍しく真っ直ぐ真剣な表情でご主人様を見ていた。


『良いのか?。』

『ぅ…ん。黒璃と同じが良い。』

『暗君…。』


 普段の小さな声はこの時だけは大きな声だった。それだけの覚悟…なのでしょうか?。


『分かった。首を出せ。』

『ぅん。』

『ん?。お前…女か?。』

『『え?。』』


 私と黒璃ちゃんが同時に驚く。女?。暗君…女の子だったの?。いつも、ニット帽にパーカーと短パンだったから、つい男の子かと…。


『暗君!女の子だったの!?知らなかったの!?。』

『ぅん。そぅ…だよ。黒璃と同じ。』

『暗ちゃん!。』


 暗君…いえ。暗さんに抱き付く黒璃ちゃん。ふふ、姉妹みたいですね。暗さんも嬉しそう。


『それじゃあ、噛むぞ。』

『お願い…します。…ん…。』


 ああ。いつも無表情な暗さんが…あんな恍惚とした表情を………あっ。もしかして、私もあの様な表情を晒して?。ああ。私のクールなイメージが…。クールで大人なイメージが…。


『傷を消すぞ。』

『ぅん。ありがとう。ご主人様。』

『暗ちゃん~。』

『ぅん。黒璃。』


 ふふ。本当に仲が良いですね。


『お前達は俺のモノになったわけだが、血さえ分けてくれるなら俺から縛り付けるつもりはない。だが、1つだけお前達に言っておく事がある。そして、選択しろ。』

『矢志路君?何を?。』

『ぅん?。』

『何を…でしょうか?。ご主人様。』

『強さを得るか。自由を得るかだ。』


 その後、聞かせされたご主人様の言葉は文字通りの 選択 だった。

 でも、私達が選択した答えは3人とも同じ答えを出す。私達は守られるだけの女じゃないから。


ーーーーーーーーーーーーーーー


ーーー水鏡ーーー


『ここら一帯が、戦う力が無い方々を保護している区画だよ。君の所にいた人達の移動も終わったからね。』


 伝説のギルド クロノフィリアのリーダー無凱さん。彼の迅速な対応により地下施設に匿っていた方々の移動が終了しました。

 保護区画は黄華扇桜にあると聞きました。私達が居たのは白聖連団の支配エリア。あの距離を一瞬で移動した事にも驚きですが、地下にいた数百人を一度に運んでしまうなんて…なんて馬鹿げた能力ですか…。


『あ、ありがとうございます。』

『うん。君も良い娘だ。』


 ポンポンと頭を叩かれた。

 え?完全に子供扱い?いや、確かに貴方よりは年下ですけど。それなりの大人なんですが?。


『ここには、地下に居た人達の他にも、戦う力が無い人達が沢山居る、君には彼等を守って欲しいんだ。けど、君はもう1人じゃないからね。僕も居るし、クロノフィリアの皆が居る。黄華扇桜の娘達もいる。安心して自分の出来る事をすれば良いから無理をしないでね。』


 その優しい笑顔を見た私は…思わず見とれてしまいました。この方は信頼できると…。年上なのに…少年のような、その笑顔は私の胸の鼓動を高鳴らせた。


『す…てき…。』


 そんな彼をじっと見つめていると区画の奥から2人の女性がやって来ました。

 1人は、小柄な少女でした。頭の良さそうな顔立ちで元気良く走って来ます。

 もう1人は、凄く綺麗な女性。着物姿がとても美しい。

 

『ああ。やっと戻って来たんですね!無凱さん!。』

『もう…貴方はいつも説明不足なんだから!急に言われても、こっちには準備があるんですからね!。』

『いやぁ、すまないね。でも、黄華さんなら対応出来ると信頼しているんですよ?。』

『………もう!貴方は、本当にもう!。』


 あの2人、とても仲が良さそうですね。


『で、こっちの方が話していた水鏡さんだ。』


 突然、話を振られビックリしました。


『あっ。初めまして、水鏡です。』

『初めまして、私は柚羽と申します。無凱さんの…弟子…です。』


 元気な少女は無凱さんの、お弟子さんだったのですね。道理で親しい訳ですね。


『初めまして。ギルド 黄華扇桜のギルドマスター 黄華です。この保護施設の管理者です。宜しくね。』

『ギルドマスター!?六大ギルドの!?。』


 ここが、黄華扇桜の敷地内なのは知っている。彼女がここの…トップ。


『大丈夫。そんなに緊張しないで良いよ。黄華さんは優しいから。』

『あ、な、た、が何を言っているの!。』

『あうち!。』


 あっ。殴った。


『痛いなぁ。黄華さん。』

『貴方はいい加減に…人の先回りをするのはやめなさいと、いつも言っているでしょ!。今は私が彼女と話をしているの!。』

『はーい。黄華さん。』

『まったく。』


 本当に仲良が良い。どの様な関係なのでしょう?。


『あの2人は元夫婦です。』

『元?。』


 柚羽さんが耳打ちしてきた。


『詳しいお話は私も知りません。が…仲が良いのは…事実です。』


 その柚羽さんの無凱さんへの瞳が…。

 これは…憧れ?寂しさ?羨ましさ?。複雑な色々な感情が混ざっている感じですね。

 でも、それはきっと…私も…。


 私は、これからこの方々と共に…。


ーーーーーーーーーーーーーーー


ーーー仁ーーー


『おや?無凱、それは?。』


 いつもの様に、酒を飲んでカウンターに突っ伏している無凱。その手には2枚の紙。あれは、折り紙だね。懐かしい、これをするのは、白君だね。


『…察しの通り、白ちゃんだよ。どうやら、3人無事で元気みたいだね。』

『そうか…それは朗報だ。』


 無凱から2枚の紙を受け取る。

 白君のスキル【鬼法 言霊書記】と【鬼法 形代傀儡】か。


『無凱さん、仁さん、クロノフィリアの皆。白達は元気です!。代刃ッチと春瀬ッチの3人で居ます。閃先輩とも会いました。現状は把握できていますッス。白達は個別で情報収集した後、そちら拠点に向かうッス!だから心配しないで下さいッス!あと…基汐さんと光歌さん…早く会いたいッス。以上ッス!。』

『無凱さん、仁さん、クロノフィリアの皆。白ッス!。白達は今、赤蘭の支配エリアに居ますッス!とある謎の女の人から貰った情報を辿って行ったらリスティナの宝石がある洞窟に辿り着いたッス!。女の人から受け取った情報では、宝石は7つ。それは、クロノフィリアにとってとても大切なモノらしいッス!白達は黒曜の支配エリアに向かって、もう1つ宝石を取って来るッス!宝石の在処は折り紙に描いておいたッス!役に立てて欲しいッス!。…あ、後、宝石のある場所にはレベル150の門番がいるッス!とっても手強いッス!気を付けて。じゃあ宜しくッス!。』


 白君の言葉が消える。

 はは、元気で良かったよ。折り紙には下手な絵で描かれた日本地図。そこに印されている6つの赤い✕が書かれていた。黒い✕が1つ。これは白君達が回収した場所だろう。残り6つのリスティナの宝石か。


『んあぁ。仁。ちょっと用事が出来たんだよねぇ。少しの間、頼めるかい?。』


 立ち上がり身だしなみを整える無凱。

 成程ね。行動が早い。


『ん?ああ。良いよ。気を付けて。』

『は~いよ。』


 扉を開け出ていく無凱の背中を見送った。


『ふっ…。相変わらず…自分が動く時は必要最低限の事しか語らないな。僕以外じゃ伝わらないよ。それじゃ。』


 受け取った地図に付いたチェックマークは…黄華扇桜に付いていた。


ーーー


ーーー無凱ーーー


『さて、行きますか。おや?。』


 喫茶店を出た僕。

 そして、僕を待っていた柚羽ちゃん。なにやら、決心を固めたような難しい表情をしているね。


『無凱さん…。何処に行くんですか?。』

『ん?ああ。ちょっとね。少し空けるけど、鍛練と能力の練習を忘れないでね。』

『…あのっ!。』

『良いよ。』

『え?。あの…まだ何も…。』


 彼女は今の会話を聞いていたね。もう寝たと思っていたけど…。


『聞いてたでしょ?今の話を。』

『…はい。気付い…当然ですね。気付かれていましたよね。』

『それで?。』


 一瞬で僕の考えを読み取り、目を見開く。

 うん。やっぱり君は優秀で良い娘だ。


『お願いします。私を…いえ、足手まといなのは十分承知しています!でも、貴方の…貴方達の世界を知りたい!少しでも貴方に近づく為に!私を連れて行って下さい。』


 土下座で頼む柚羽ちゃん。真面目だねぇ。


『ああ。良く言えたね。』


 柚羽ちゃんの頭をポンポンと叩く。


『会話を聞いて分かっていると思うけど、これから行く場所にはレベル150の化け物が潜んでいるらしいからね。』

『はい!。』

『あんまり、気張らないでね。』

『はい!。』

『ははは。真面目だねぇ。行くよ?。』

『は…はい!。』


 柚羽ちゃんは強くなるね。

 そう思い、俺はこの娘の世話を焼くことにした。若いって良いねぇ。

 はぁ…僕の あの娘 は元気でやっているのかな?全然、顔を見せないし…何処で何をしているのやら。

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