第55話 裏組の旅
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どうもありがとうございます。
これから次話の投稿が2日くらい掛かる時があると思います。
これからも、読んでくれると嬉しいです。
僕達は謎の鎧から受け取った地図に印されていた場所に向かった。
目的地は赤蘭煌王の支配エリア。
その中心の都市部から一番遠い区画。そんな場所に何があるのか。正直、見当がつかない。過去の記憶を探っても特に珍しい建物や遺跡などがあった記憶はない。
白聖連団のエリアから赤蘭煌王までの距離はかなりある。強化された肉体でも5…いや、4日、むしろ黄華扇桜の方から向かう方が近いくらいだ。閃や無凱さんが居れば 箱 でワープ出来るんだけど、僕達には、そんなスキルはない。
『今日は、ここで野宿だね。』
男の姿を解除して女に戻る。
『了解ッス!』
『ええ、無理しても仕方がありませんしね。休みましょう。』
『じゃあ、結界を張るッスよ!。はっ!。』
鬼術 四神葬包陣列呪法。
4本の刀が四方に刺さり、その中に結界が作られる。
『ふぅ。結構進んだね。』
『そうですわね。このまま進めば予定より早く着きますわよ。』
『そうッスね。代刃ッチ、火をお願いするッス。』
『あっ!そうだね!戻るの早すぎたよ。』
再び、男へ。
『はい。ライター…あっ、バーナーの方が良いね。』
乾いた薪に火を着ける。
火が燃え移ったことを確認して、大木に座る。
『おにぎり、いるッスか?。』
『あら?いつの間に作ったのですか?いただきますわ。』
『隠れ家を出る前に作っておいた作り置きッス。どうぞッス。』
『ありがとう、ですわ。』
『僕も良い?。』
『もちろんッスよ。はい。』
『ありがとう。』
3人でおにぎりを食べる。
『はあ。この前の閃先輩と睦美先輩と野宿したのを思い出すッス!楽しかったッス!。』
『せせせ、閃…と…野宿…。良いなぁ…。』
『おにぎりが潰れたッス!。乙女ッス!。』
『おにぎりを握り潰す乙女とは…。乙女なのでしょうか?。』
『恋する乙女に不可能はないッス!。』
『白の独特の考えは難しいですわ…。』
ちょっと…聞いても良いかな?。閃とどんな話したのか…知りたいなぁ。んー。聞いちゃえ!。
『ねぇ。白?。』
『野宿の時に閃先輩と何を話たかッスね?。』
『え、えええええ!何で分かったの!?。』
『感ッス!あと、経験則ッス!。』
『ふぅ…閃さんのことを知りたいと思うのは、好意を持っているなら当然のこと…ですが、代刃はその頻度が多すぎるのです。』
『むぅ…そんなに、聞いてるかなぁ?。』
『ほぼ毎回ッス!。』
『ですわね。』
そうなんだ…自分では気付かなかったよ…。
『でも、白は代刃ッチの味方ッス!教えちゃうッスよ!。』
『…っ!うん!ありがとう!白!。』
『顔を真っ赤に染めて上目遣いで笑う代刃ッチ!可愛すぎるッスよ!。』
『いや…照れるよぉ…。』
ついモジモジしてしまう。
『教えるッスよ!』
それから、白から閃との野宿の日のことを教えて貰った。
白のおにぎりを一緒に食べたこと。灯月の豪華なお弁当が沢山、閃のアイテムBOXから出てきたこと。閃と睦美が仲良くなっていたこと。閃が否定しているけど睦美がハーレムを目指していること。
『くすっ!灯月さんも相変わらず…ですわね。』
『楽しかったッスよ!。』
『ハーレム…ハーレム…ハーレム…ハーレム…ハーレム…ハーレム…ハーレム…ハーレム…ハーレム…。』
『…難儀な性格ですわね…。』
『だから、ほっとけないッス!。』
『ですわね…。』
閃…今まで言い出せなかったけど…僕も閃が大好きだよ…。
ああ、実は俺もだ。ずっと前から…お前の気持ちには気付いていた。今まで黙っていて、すまない。俺もお前のことが好きだ!。愛している!
嬉しいよ…ずっと、我慢してたんだ…もう、抑えなくても…良いんだよね?。
いいさ。俺も、もう我慢しない。お前は…俺のモノだ!もう離さない!。
閃…僕も…離れない!。
代刃…。愛している!。
僕も…。
『戻ってきなさい!。』
『はうっ!。』
おでこに衝撃が…。あれ?閃は?どこ?。
『あれ?。春瀬?。』
『はぁ。お帰りなさいませ。現実へ。』
『ああ。また、やっちゃったんだね。』
『妄想癖ッス!乙女には必要不可欠のスキルッスよ!。』
『そ、そうかな?。えへへ。』
『喜ばない!。白も持て囃さない!。』
春瀬が立ち上がり僕と白を見下ろす。
『良いですか?今から向かう場所には、どの様な危険があるのかも分からないのです!あまり羽目を外すと痛い目を見ますよ?特に代刃は、閃さんの事となるとダメダメになるのですから、こういう時は気を緩めないように努力すべきなのです!白も白です!恋愛脳なのは十分に理解しています!ですがダメダメな代刃のダメダメに拍車を掛けるような言動はダメダメな代刃を更にダメダメにさせるだけです!貴女達は昔からそうです!いつもいつも………。』
始まってしまった…。春瀬の説教モードが…。これが始まると兎に角長い。長い。長すぎる…。最長記録14時間…ひたすら怒り続ける。
『僕…ダメダメって…何回言われれば良いのかな?そんなにダメダメ?。』
『白も…何も言えないッス…。』
『こうなったら長いよ?。』
『仕方ないッスね!白に任せるッス!』
白が立ち上がり春瀬の前へ。
『何ですか?白!まだ話の途中ですよ!。』
『春瀬ッチ。閃先輩がこんなこと言ってたッス。』
『ん?。』
『仁さんが春瀬ッチの身体の事を心配していたッス。健康とか傷とか。無茶してないかとかを聞かれたって言ってたッス。』
『え!?仁様が!?。私の心配を!?。』
『そうッス!めちゃくちゃ心配してたって先輩が言ってたッスよ!。』
ああ。仁様。お慕い申し上げますわ。私、貴方様の妻になる準備はとうに出来ております。
…女性の君に先に言わせてしまったね。不甲斐なくて、すまない。もう1度、僕にチャンスを貰えないだろうか?
ええ。構いませんわ。是非、お願いします。
春瀬君…。いや、春瀬。僕の妻になって欲しい…君を心の底から愛している。
は、はい!。私も愛しています!。
嬉しいよ!春瀬…君を幸せにする。
はい。仁様。何処までも貴方に着いていきますわ!。
春瀬…や、やっぱ…ハズいし…お、お母さん…。
光歌ちゃん!やっと認めてくれたのですね?はい!私が、貴女のお母さんです!沢山甘えて下さいね。
うん…お、お母…違う…あの…ま、ママ…。
ドッキューーーーーーン!!!はい!ママです!光歌ちゃんのママですよ!。
ママ…大好き…。
私もです!光歌ちゃん!大好き!。
『…はぁはぁ…はぁはぁ…』
『これで良しッス!。』
『結局、僕達は似た者同士なんだよね。』
こうして、夜は深けていった。
ーーーーーーーーーーーーーー
『地図では、この辺りですわね。』
その場所は、だだっ広い畑が広がっていた。
ちらほらと見える能力者が生み出した水が実った食物に降り注いでいた。見るからな農園。とてもではないがクロノフィリアにとって役に立つモノがある…ようには見えなかった。
『何もないッスね?。』
『ああ。だが、あの鎧は俺達にとって必ず必要なモノがあると言っていたからな。地表に無いと言うことは…。』
男の姿で答える。
『そうッスね。』
『地下…ですわね。』
周囲を見渡しても地下への入り口があるようには見えなかった。建物があるわけでも、扉がある訳でもない。
『うーん。何処にあるんスかね?。』
『ちょっと、宜しいですか?。』
『ん?何だ、春瀬。』
春瀬が地図を広げ見せてくる。
『ここと、ここと、ここ。印が付けられている場所から等間隔で洞窟があるのですわ。』
『洞窟?。』
『ええ。この辺りの洞窟は入り組んではいますが地下で繋がっているのですわ。』
『じゃあ、この場所も?。』
『ええ。この下も繋がっていると見て間違いないかと。』
『やったッス!これで、探せるッスね!。』
『良く知っていたな?。』
『あら?言ってませんでしたか?私の実家はこの近くなのですよ…と言いましても昔の話ですが…。』
『そうなんスか?知らなかったッス!。』
『春瀬は、リアルで会ったこと無かったしな…。』
『オフ会に誘っても春瀬ッチ、来れなかったッスしね。』
『ええ。習い事が忙しくて…って!そんな昔の事は良いのです!兎に角、突破口は見つかったのですから行動しましょう!。』
『…そうだな。じゃあ、3つ洞窟があることだし3手に別れて探索しようぜ。』
『了解ッス!。』
『ええ。構いませんわ。』
『じゃあ、決まりだな。行くぜ。』
こうして、僕達は各々の洞窟へと向かったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーー
『何もないな…。』
僕が洞窟に入って2時間。
春瀬が言っていた通りに入り組んではいるが、それ以外には…何もない。生き物もいない。ただ、岩肌が続いている。
『ん?これは…。』
一部、岩肌からはみ出ている部分に機械の壁が見えた。触れてみると岩の中に大きな機械が隠されているようだった。
『もしかして、洞窟全体に?。』
露出した機械は所々に見られ洞窟の奥へと続いているようだ。
『何かある…な。』
僕は急ぎ足で先を進んだ。
『え!?。』
僕は驚いた。
『キィィィイイイイイ!!!。』
少し広めな空間に差し掛かった瞬間、1匹の猿が襲い掛かってきた。こんな場所に猿?。何よりも僕を驚かせたのは…。そんな事ではない。
『クリムゾンアイズエイプ?。』
それは、ゲーム時代のモンスター。この世界にモンスターはいない筈なのに。何で?。ここに?。
『キィィィイイイイイ!!!。』
そんな僕の考えを余所に飛び掛かってくる猿。
情報看破…発動。
ーーーステータスーーー
・名前 クリムゾンアイズエイプ
・レベル 51
・階級 伝説級
・スキル
狂化 肉体強化 増援 硬質化
『レベル51か…生け捕りは、ちょっと厳しいか。仕方がない核だけでも持ち帰って調べるか!。神具…。』
神具を取り出す。
『魔柔念金属!。』
液体のように自在に形を変化させる金属が出現した。