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第54話 危険な接触

『きゃーーーーーーーーーーーーー。』


 深夜の帝都に響く女性の悲鳴。

 時刻は深夜の2時を過ぎた頃。

 静寂を切り裂くように悲鳴が木霊した。


『こ…来ないでっ…。』


 壁際に追いやられた女性…。涙を流し怯えた表情で目の前の存在から距離を取ろうと踠いていた。だが、恐怖により腰の抜けた女性に成す術はない。女性の心境などお構い無しに目の前の存在が手を翳した。


『いやぁーーーーー!。』


 目の前の存在は一言で言えば機械の鎧だった。関節に植物の蔦のようなモノが見える。兜から見える赤く輝く一つ目。剥き出しになっている鎧の胸部から覗く紫色に輝く宝石。両手に装着されたトンファーの形をした刃。

 そんな機械の鎧が女性を触ろうとした…

 その時…。


『おいおい。こんな夜更けに女を襲うたぁ…化け物も暇なのか?。』


 その余りにも自然な…まるでペットに話し掛けるような穏やかな声で鎧の横を通りすぎる男の登場に鎧の動きは停止した。


『お嬢さん、大丈夫か?。』


 爽やかで優しい笑みを浮かべる男が手を女性に差し伸べた。


『はっ…はい…。』


 その笑顔に頬を染め手を握り返す女性。男は女性を引き寄せ立ち上がらせる。


『ここは、任せて。帰りな。』

『あっ…あなた様は?。』

『ぼ…俺はゴミ掃除だ。あんたは逃げな。』

『はい…どうか、ご無事で!。』


 住宅街へ走り出そうとした女性は足を止め振り返る。


『ん?どうした?早く行け、ここは危険だ。』

『貴方様の…お名前を…お聞かせください!。』

『俺か?俺は…だ。』


 名前を告げた女性はうっとりとした表情で走り去って行く。


『さて、優しいな。待ってくれていたのか?。…なんてな。』


 機械の鎧は立ったまま動けないでいた。身体中に巻き付いた鎖によって身動きを封じられていたのだ。


『どうだ?俺の鎖は?動けまい?。』


 その時…鎧からの女の声がした。鎧が喋る…というより鎧を操っている者の声が、鎧を介して話している…という感じだ。


『ふふふ。貴方がクロノフィリアの代刃君だね?手配書で見たよ。随分なイケメンさんだね。はじめまして。こんばんは。』

『こんばんは。で?そう言うお前さんは誰だよ?。』

『んー。今は、まだ言えないんだ。まぁ、敢えて名乗るなら 神様 かな?。』

『神?大層な名前じゃないか。お前の目的は何だ?何故、女を襲おうとしてた?。』

『んー。この鎧?まあ、作ったばっかりだから名前とか、まだ無いんだけどね。どう?格好いいでしょ?。結構自信作なんだ。』

『いや…気持ちわりぃだろ。関節とか触手じゃん。』

『え!?触手って格好良くないの?何か前に見た映像で触手に喜んでる女の人が…。』

『そ!そんな女いないよっ!。あっ…。』

『ん?喋り方変わった?。』

『いや…。そんなことはない。で?何故襲った?。』

『襲ったんじゃないよ!ちょっと身体を借りようとしただけ!別にあの人に危害を加えるつもりはなかったんだよ!。』

『そうなのか?。』

『うん!。』

『じゃあ、お前の目的は何なんだ?。』

『それより…先に、この鎖を外してくれないかなぁ?戦う気は無いからさ。』

『………。』


 鎖をほどく。


『ありがとー。』

『さあ、解いたぞ。教えろ。お前の目的は?。』

『それはね。君たちに…クロノフィリアに会うことだよ。』

『俺達?。』

『そっ!。クロノフィリアの誰でも良いから会いたかったんだ。』

『どうしてだ?。』


 鎧は小さな紙切れを取り出し、差し出してきた。


『これを君たちに渡したくてね。』

『これは?。地図?。』


 小さな紙に書かれた地図。そして、ある一点に印が付けられていた。

 地図には、ギルド 赤蘭煌王 が支配するエリアが書かれている。


『この場所に何がある?。』

『貴方達にとって…これから必ず必要になるモノと…そのヒント。』

『貴方達…クロノフィリアにとってか?。』

『そう。貴方達を狙ってるヤツは白聖連団だけじゃない。それを、知っていて欲しいの。』

『白聖だけじゃない?。どう言うことだ?お前さっきから会話の内容が中途半端だぞ?。』

『ごめんね。私も結構危ない橋を渡って貴方と話してるんだ。だから、今はこれだけしかしてあげられないの。でも、私は…私達は味方…に近い存在だから…お願い…その地図を信じて向かって…。手遅れになる前に…。』


 そう言い残し、鎧は崩れるように消滅した。

 立ち尽くし、地図を眺める代刃。


『調べてみるか…。』


 代刃は仲間の夜の散策を終え仲間の待つ隠れ家へ帰還した。


ーーー


『ただいま!。』

『お帰りッス!。』

『お帰りなさい。遅かったですわね。』


 隠れ家に戻ると、出迎えてくれる2人。白と春瀬。


『ねえねえ!聞いてよ!今ね変な奴に出会ったんだ!。』


 僕の姿は既に女の姿に戻してある。男の姿は運動するのに動きやすいけど、やっぱりちょっと恥ずかしいんだよね。


『変な奴?。』

『どんな奴ッスか?。』


 僕は、今し方出会った鎧の変な奴についての説明を2人にした。


『真夜中に女性を襲っていた謎の鎧と…。』

『その鎧を介して白達を探していた謎の女…ッスか。』

『そう…それで、これがソイツから貰った地図。』


 地図を春瀬に渡す。


『赤蘭のエリアですね。赤蘭のギルドホールからは随分と離れている…確か…ここには何もなかった筈ですが…。』

『結局、そこに何があるのかも…アイツの目的も…何も分からなかったんだよぉ。でも、アイツは僕達を…クロノフィリアを探してたって言ってた。』

『………。』

『行ってみないッスか?。』

『白?。』

『なんとなく…感ッスけど。この前のレベル150の化け物に関係がある気がするッス。』

『ああ、先日、閃さんや睦美さんと一緒に倒したという。』

『閃~。』

『乙女ッス!。』

『いいから!では、3人で行くとしましょう。白の感は良く当たりますしね。』


 春瀬は立ち上がり窓際へ移動する。窓を開け夜の風が部屋へ入り込む。


『嫌な…風ですね。私の騎士としての感ですが。ちょっと本気で当たらねば…いけない…気がします。』


 一瞬にして銀色の騎士甲冑を着込んだ春瀬。


『そうッスね!白も頑張るッスよ!傷も睦美先輩に治して貰ってから身体の調子がバッチリッス!。』


 白も鬼族の戦装束で身を包み4本の刀を出現させる。


『うん!僕も頑張る!』


 男の姿に変わり、ジーパン、Tシャツ、ジャケット、指無しグローブ、男の姿の閃がよくしていた格好の服装…。

 そして、右の瞳に現れるNo.21の刻印。


『俺がいる!行くぜ?赤蘭煌王の支配エリアにな!。頼りにしてんぜ?お前等!。』

『了解ッス!。』

『ええ。行きましょう!。クロノフィリアの為に…。』


 3人で隠れ家の荷物を纏めアイテムBOXに収納し出口へと向かう。


『クロノフィリア、裏組。出撃だ!。』


ーーーーーーーーーーーーーー


 私は、赤蘭煌王所属の 九大王光 の1人。

 (ツバメ)

 私が先輩である玖霧さんに与えられた任務、六大会議の際に白聖から渡されたというレベルを上昇させる薬 リヒト の情報を探るように命じられ白聖の支配エリアに潜入した。

 そこで、今日謎の鎧に遭遇した。


『あれ?君は…ああ、 データベース にあったよ。燕ちゃんだね。こんなところで何してるの?。』

『っ!?。何故、私の名前を?。』

『あっ!そうだ!君に少し手伝って貰おうかな?。』


 鎧は私に近付いてくる。


『くっ!化け物!。』


 私の武装は両足に装備される風の靴。


『来るな!。』


 鎧の化け物に蹴り掛かる。私の蹴りは蹴速により発生させる真空により風圧と蹴打と斬撃を同時に放つ事が出来る。ついでに、風に乗ることで風の速さで移動することが出来る。


『わっ!?。速いね!?。』

『なっ!私の蹴りを止めた!?。』


 鎧は軽々と私の腕を受け止めた。


『ごめんね。ちょっと痛いけど。我慢してね。』

『ぐあっ!。』


 鎧は私を壁に投げ飛ばし壁に叩きつけた。

 背中の衝撃で呼吸が一瞬止まり、靴に宿していた魔力が途切れてしまい纏っていた風も消えてしまった。


『ごめんね。でも、ちょっとだけ君の身体を借りるだけだから…。』


 気付くと鎧は、すぐ目の前まで迫っていた。もう私に戦う術はない。鎧が手を私に翳そうとした時…恐怖に叫び声を上げてしまった。


『きゃーーーーーーーーーーーーー!!!。』


 叫び声を上げても鎧の接近は止まらない。


『こ…来ないでっ!。いやぁーーーーー!。』


 と…その時…。彼が現れた。


 茶色の髪。ジーパンに赤いジャケットを羽織った男性。

 いつの間にか、鎧の身体が謎の鎖によって身動きを奪われていた。


『お嬢さん、大丈夫か?。』


 差し伸べられる手。優しい笑顔。

 私の…王子様…。

 差し伸べられた手を握り返すと優しく引かれ、その…たくましい胸で私の身体を受け止め支えてくれた…。

 あっ…顔が…近い…。格好いい…。


『ここは、任せて。帰りな。』


 彼の言葉に従って私は走り出した。

 でも、どうしても…知りたい。


『貴方様の…お名前を…お聞かせください!。』

『俺か?。』


 一瞬、きょとんとした表情になる男性。

 ああ、そんな可愛らしい顔も出来るのですね…。


『俺は代刃だ。』


 代刃様…。素敵なお名前…。

 私は、その名前を胸に刻み走り出した。

 また、お会いしたい…そう願いながら。


ーーーーーーーーーーーーーー


?『お前も随分と危険な橋を渡るな。』

?『まあね。でも、一目見ておきたかったんだよねぇ。クロノフィリアのメンバーに。』

?『はぁ…正直、ハラハラしたぞ…。』

?『言ったでしょ。大丈夫だって!。あの鎧だって作りたてホヤホヤ。アイツ等だって気付かないよ。』

?『___にはバレているかもな…。』

?『………。』

?『はぁ…何故、お前は奴等に肩入れするんだ?。』

?『私達の行動が間違っていると思うから!。』

?『うむ…。それで、お前は奴等に 彼女 の情報を与えたのか?。』

?『うん!。これからの彼等には絶対 彼女 の力は必要になるからね。』

?『それで、仲間を裏切ってまで奴等に干渉したと…本当に自分のことは二の次だな。』

?『そういう君も私に付き合ってくれてる訳だけどね!。』

?『ふん!。』

?『ははは。照れちゃってさ!。』

?『照れてなどいない!。ただ…お前が…心配なだけだ…。』

?『ツンデレ乙っ~。でも、ありがとう。』

?『ふん!ツンデレではない!。』

?『ははは。…クロノフィリアかぁ…。これから大変だろうけど…頑張ってね。』

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