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第50話 黒い男

少し短いです。

登場キャラの 光歌 は、以前まで漢字の部分をカタカナ表記にしてましたが、読みづらいと思いましたので普通に戻しました。

 前戦争跡地には小規模なギルドが多数、自分達の縄張りを持って活動している。我が強い者が多く六大ギルドの勧誘にすら断る者達で構成されている。

 そんな彼等の中には様々な噂が流れている。

 学校の怪談などのような尾ひれ羽ひれがついた話はもちろんのこと根も葉もない話も飛び交っている。

 大間かな噂は大きく分けて7つ。

 1、地下に存在する異世界への入り口

 2、六大ギルドに匹敵する謎の暗殺集団

 3、古い廃病院に現れる死者の霊魂

 4、廃墟ビルに出没する魂狩りの死神

 5、幻の宝石が眠る研究施設を守護する機械

 6、廃墟の中に建つ謎の喫茶店

 7、ゲーム時代には存在しなかった謎のモンスター


 大体こんな感じだ。

 喫茶店は俺達、クロノフィリアの拠点のことだろう。

 廃墟ビルの死神は…まぁ、察して欲しい。天使なのか死神なのか分からない娘だ。

 そんな噂が真しやかに囁かれている跡地で、この俺、クロノフィリア所属 No.8 基汐とNo.22 光歌は情報収集の為に散策していた。

 戦争跡地は広い。

 見渡す限りに背の高い建物が聳え立ち1日で回れる範囲も限られてしまう。下手に小規模ギルドの縄張りに入れば戦闘に発展してしまうし、かと言って入らなければ情報は入手出来ない。


『ダーリン。これからどうするのぉ?。』

『そうだな…。一先ず、白達の情報集めからだな。あの3人のことだから何かしらの噂があっても不思議じゃないしな。』

『白も代刃も…春瀬も、何処で何してるのよぉ。マジ疲れるんですけどぉ。』


 俺の腕に抱きつきながら頬を膨らませている光歌。だが、口ではこんなこと言っているが光歌は仲間意識が非常に強い。裏組3人のことも、とても大切に思っている。


『昨日、徹夜で3人分の通信機作ってたもんな。』

『え?。ダーリン!見てたの!?。ちょっ!マジ恥ずいんですけど!。』


 化粧で隠しているがよく見れば目の下にクマが出来ている。

 一応、今いるギルドメンバー全員に渡してある、光歌作の小型通信機は自身の魔力を使い通信機同士で通話が出来るというモノ。

 だが、距離が離れれば離れる程、馬鹿みたいな魔力を持っていかれてしまうため実用的ではない。魔力量の少ないメンバーが使えば仁さんの喫茶店から白聖連団の支配エリアの距離で数秒使用しただけで戦闘どころか単純なスキルすら使えなくなるレベルだ。

 これは、本当に最終連絡手段なのだ。

 だが、この電気も電波も制限された世界で、なんとかメンバー同士で連絡をとれないかと光歌が研究と実験の末に完成させたのがこの通信機だ。


『ああ、俺の恋人は最高に優しいと改めて実感した。』

『っ!マジで照れるって…そんなんじゃないし…』


 俺は顔を真っ赤にしながらツンツンした態度を変えない光歌を可愛く思い頭を撫でた。


『でも…。』

『ん?。』

『昔みたいに、クロノフィリアの全員が1つ屋根の下でワイワイガヤガヤした雰囲気がまた出来ればなぁって………。はっ!?。違う…。今の無しだからね!。』

『ははは。そうだな!俺も早く皆の顔が見てぇよ!。』

『もう!早く行こう!。』


 猫科の耳と尻尾が飛び出した光歌が早歩きで先に行く。俺は、笑いながら後を追った。


ーーー


 暫く歩いていると先を歩いていた光歌が足を止めた。


『どうした?。』

『お客さん。』

『ん?。』


 光歌の見つめる方を見ると数人の男達が物陰から姿を現す。あの風体からして、この辺りを縄張りにしているギルドだろう。

 1、2、3……6人か。

 その内の1人が懐から取り出した手配書と俺の顔を見比べている。

 ああ、そういう輩な…。もうこの手の輩は散々相手にしてきた。六大ギルドの干渉されにくいこの場所では俺は顔を隠してはいない。よって当然、懸賞金目当ての馬鹿がこうして喧嘩を売ってくる訳だ。

 情報看破 発動。6人の男のレベルを確認する。

 50…55…58…60…51…弱ぇぇええ。なんでこんなに低いレベルでイキれるんだ?意味不明だ?こんな早死にしそうなやり方で、よくこの世界で生き残れてるな…。


『兄貴!アイツ手配書に載ってやすぜ?。クロノフィリア所属 基汐!大物ですぜ!。』

『本当か?ははは!そりゃあ良い!俺達にもやっと幸運の女神が微笑んだって訳だ!。』

『隣の学生?女は手配書にありませんね。ですが、あのクロノフィリアの男と一緒なら、おそらく同じメンバーで間違いないですぜ!。』

『おおう、かなりのペッピンさんじゃねぇか?最近、女に飢えてたからな手配書に無いんなら俺らで楽しんでも問題ないわな!。』


 ゲスな視線が光歌を見る。俺はリーダーと光歌の間に割って入る。取り敢えず穏便に済ませたいな。会話通じるだろうか?。


『なぁ。俺達は争うつもりはないんだ。手配書を持ってんなら、その中の誰でも良い…見覚えがあるかだけ教えて欲しい。』

『はぁ?そんなもん知ってたとしても、ただで教えるわけねぇだろうが!ひひひ。そうだな…そこの女が1日、俺の相手をしてくれるって言うんなら教えてやっても良いぜ?。』

『………。』


 ダメだコイツ…。殴りてぇ。いや、殴ろう。

 俺は一歩を踏み出そうとした。


『ダーリン。』

『おっと!?どうした?。』


 いきなり光歌が声を掛けてきた。あっ…ちょっと怒ってるな。

 周囲を確認しながら男共に近付いていく光歌。


『おっ?なんだい?可愛子ちゃん。俺達の相手してくれるのかい?良いねぇ。聞き分けの良い子は。』

『マジ、ウゼェし。どうせ手配書の人等の事なんて知らないんだろ?さっきから人のことジロジロエロい目で視やがってキモいんだって!。』


 光歌は神具を取り出した。

 細身の光歌には不釣合なゴツく黒い二丁の銃。


『兄貴!アイツ銃を出しやしたぜ?。』

『へ!どうせハッタリよ!撃てやしねぇさ。』


 ドンドンドンドンドンドン……。

 光歌が様々な方向に発砲した。全部で6発。その全てが虚空へ消えた。


『ダーリンッ!ちょーキモかったから、こんなとこ、もう行こう!』

『ああ、いつものヤツか?。』

『そっ。だからもう行こうよ。』

『そうだな。こんな雑魚相手にしてる時間が惜しい。で、何秒?。』

『23秒。』


 俺達は男共に背を向け別の道へ歩いて行った。


『あ…兄貴…行っちまいやしたぜ?。』

『あんのガキィィィイイ!舐めやがって!。』


 男共6人が動こうとした。

 その時、


『ぐぁっ!?』『だばぁ!?』『どべぁ!?』

『うびぉ!?』『ごぉは!?』『ぺギャ!?』


 壁、地面、置物、小石…その場にある、ありとあらゆるモノに跳ね返って方向を変えた跳弾が6人全員の首を後ろから貫通し全員が息絶えた。放たれた銃弾が男共に命中するまでジャスト23秒。計算通りの狙撃だった。


『もう!この辺、あんなのしか居ないわけ?もうキモスギィなんですけど!。』

『まあ、言うなって。こんな腐った場所に住む連中だ。ドイツもコイツも似たようにならないと生き残れないんだろうさ。』

『私達の知ったこっちゃないしぃ。』

『まあ、そうなんだけどな…。』


ーーー


『ダーリン。何か変な感じしない?。』


 少し進むと壊れてゴチャゴチャになっているガソリンスタンドがあった。そこに踏み入れた途端に光歌が周囲を警戒しながら俺に背中を預けてきた。普段隠している耳と尻尾が出ていることにも気付かずに。


『変な感じか?俺は光歌みたいに気配探るのとか苦手だからなぁ…。』

『何か。ゾクゾクするというか。視られてるというか?。でも場所分からないの。』

『光歌でも分からないのか。警戒した方が良いな。』


 俺と光歌は背中合わせに周囲を警戒し見渡していく。


『っ!ダーリン!上っ!。』

『おっ!?。』


 俺と光歌を引き裂くように走る刃。漆黒のコートに顔半分を覆う仮面を着けた男。


『ちっ!いきなり何なの!?。』


 光歌が銃を向ける。


『ピィィィィィイイイイイイイ。』


 響き渡る指笛。


『光歌!。』

『ちぃ!。』


 光歌を取り囲むような陣形で迫る黒い3つの影。各々に短刀に黒い魔力を纏っている。つまりは毒か呪いか…。


『しゃっ!。』


 3つの刃が交わった。光歌の身体を呆気なく分断した………と錯覚する速さで光歌が移動した。黒い3人組には残像しか見えていなかったのだろう。煙のようにかき消えたことに驚き愚かにも周囲を探してしまったのだから。俺から視線をそらして。


『オラッ!。隙ありだ!。』


 3人を1撃で殴り飛ばす。3人は影に溶けるように消える。


『なっ?影で作った分身か!?。神無みてぇだな!。』

『ダーリン。気配がアイツからしかしない。多分…敵は目の前のアイツだけだよ。』


 壁を足場に移動していた光歌が降りてくる。


『アンタ何者さ?いきなり攻撃してきて!。』

『………。』


 最初の一撃以降微動だにしていない黒いコートの男。


『黙りだな。無口なヤツか。喋れないヤツか。』


 試しに情報看破で確認しようとするも。


『ステータスが見えない…。隠蔽するスキルか…あのコートの効果か…。』

『ダーリン。私にやらせて。アイツのコート剥ぎ取ってやる。』

『光歌…無理はするなよ。』

『うん。』


 光歌が前に出る。両手には既に銃を握り、耳と尻尾も臨戦状態だ。


『しゃっ!』


 先に動いたのは黒い男。速い!。レベル150の俺でさえ集中していないと見失うレベルだ。

 男の両手にある漆黒の短刀が光歌を襲う。


『ふん!。』


 光歌は短刀の斬撃を潜るように躱し、すれ違いざまに発砲。黒い男も至近距離で発射された銃弾を余裕で捌き、斬り伏せた。


『………。』

『………。』


 にらみ合う、2人。


『ふふ。』


 そして、笑う光歌。


『!?。』


 黒い男コートに亀裂が入り顔の部分が顕となった。光歌の銃の銃口。そこに現れる3本の緑色の爪。光歌のスキル【獣爪】。先程の交差の際、銃弾を囮に発動し黒い男のコートを斬り裂いたのだ。

 

『アンタ…。確か…。』

『ああ。アイツは…黒曜宝我の初代ギルドマスター…黒牙だ。』

『でも、アイツは…。死んだよね?。』

『ああ。前戦争…この場所で白蓮に殺された筈だ。』


 詳細は知らない。

 あくまでも確証に近い噂だ。世界がこんな形になってしまってから起きた最も大きな戦い。白聖連団と黒曜宝我の2大ギルド間の戦争で白蓮に殺された。そして、戦争の終結に繋がった人物だ。現在は彼の妹の黒璃が跡を継ぎ2代目ギルドマスターとなったと聞いている。


『でも、アイツ普通に生きて動いてるよ?。』

『分からん。』


 もう1度、情報看破。


ーーーステータスーーー


・名前 黒牙

・レベル 120~150

・種族 朧夜影鳥王族

・スキル 

 操影分身 操影武装 実体操影

 影纒 バグ修正プログラム 

 自我崩壊(強制) 影隠れ 戦士の記憶 

 太陽神の使い魔 神の被験体

・装備

 朧忍装束

・武装

 朧影布


『ダーリン…。』

『ああ。コイツは危険だ。レベル…150だと?。マジかよ…意味わかんねぇスキルもあるし…。』

『ちょっと。本気出す。』


 俺と光歌は再び黒牙へ向き合った。

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