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第46話 不思議な洞窟

 突然の出会いから白に連れられ、化け物が出ると噂される洞窟へ向かう森への道中。

 生い茂る木々を掻き分けて進んでいく。


『結構、歩いたのぉ。』

『ああ。辺りが暗くなってきたな。』

『洞窟までは、まだ距離があるッスから、今日は、ここら辺で野宿にしましょうッス!。』

『おお!野宿か!ゲーム時代ぶりじゃのう。』


 適当なスペースを見つけ横たわる大木に腰を下ろした。


『スキル!鬼術 四神葬包陣列呪法!。』


 白の持つ4本の刀が四方に刺さり結界を作る。


『この中なら獣に襲われる心配はないッス。あと…薪はこんなもんッスね。先輩、火をお願いするッス。』

『ああ。』


 智鳴の能力で火をつける。


『ありがとうッス。』


 俺の火を挟んで向かい側に座る白。


『そう言えば先輩方は何か食べるものを持ってきてるんスか?。白はおにぎり沢山作ってきたッスから良かったら、どうぞッス!』

『おお!白のおむすびは美味じゃからな。貰っても良いか?。』

『もちろんッス!。』

『じゃあ、俺からは これ を出そう!。』


 ドーーーーーーーーーーーーーーン!。


『これは!?。凄い量ッスね。』

『灯月のヤツが仁さんの厨房の食材を全て使って作ったお弁当だ!1週間分ある。頼む、消費するのを手伝ってくれ…。』

『灯月か…あやつも変わらんのぉ…閃が相手だと加減を忘れる。』

『ははは…灯月先輩も変わらないッスね。何か嬉しいッス。』


 俺達は森の中…しかも野宿中だというのに、旅館に出るような豪華なディナーを食べた。知ってるか?これ一応、お弁当と言われて渡されたんだぜ?。


『先輩方…何個か質問しても良いッスか?。』

『ああ。何だ?。』

『いや、何か…随分仲良くなったッスね。閃先輩と睦美先輩…。ゲームの時そんなにくっついてたッスか?』


 実は俺も思っていた…睦美の距離感。

 今の睦美は俺の横に座っているが、寄り添うように体重を預けている状態だ。時折、食べ物を俺の口に運んでくる。その時の、あ~ん。と少し照れながらする動作には外見の幼さ、可愛さも相まって抱き締めたくなる衝動と、俺は今、戦っている。


『ワシは、閃に自分の気持ちを伝えたからのぉ。今まで智鳴や氷姫の為に我慢しておった気持ちが抑えられんのじゃ。』

『自分の気持ちッスか?。どんな?。』

『…ワシも…閃が…好きなのじゃ……もう!言わすでないわ!照れるじゃろ!。』

『ひぇ。そうだったんスね!全然気付かなかったッスよ!。』

『頑張って隠しとった。本当は抱っこしたり、手を握ったりしたかったのじゃ…。』

『可愛いぃぃぃぃぃぃッス!。』

『な!?。何をする!?。』


 白はスキル 鬼術 鬼法縮地 で俺達の目の前に移動すると睦美を抱き抱え頬擦りする。


『可愛すぎるッス!その外見の可愛らしさ!恋する乙女の瞳で閃先輩を見つめる姿!少女漫画の主人公みたいッス!応援するッス!』

『痛い痛い!腰が折れる!背骨が!あと角も痛い!これ!離さんか!。』

『はっ!ごめんなさいッス…。』


 白の種族は魔呪鬼神族。つまり 鬼 だ。

 その種族スキルにより常時肉体強化が働いている。


『ぐるるるるっ。』


 俺の後ろに隠れて白に獣のような威嚇する睦美。お前は不死鳥だったよな?鳥はそんな威嚇しないだろう…。


『すみませんッス。どうも昔から、知り合いや友達の恋愛を応援したくなっちゃうんッスよ。』

『ふん!閃はハーレムエンドを目指しておるからな!応援されなくてもワシは閃の女ぞ。』

『おい。勝手に決めるなよ?。考えとくって言っただけじゃねぇか?何で決定事項みたいになってんだ?。』


 バッ!と俺の胸に抱きつき、顔を向け上目遣いで見てくる。


『…ワシ…では…ダメか?』

『うっ…。』


 涙目で俺を見るな…。


『かぁぁああああああ!可愛すぎるッス!。』


 ヤバい…よく分からないが睦美がヤバい。


『ししし。おなご閃の胸は大きくてやわらかいのぉ。クッションみたいじゃ。』

『おい。』

『良かろう?いずれは添い遂げる関係なのじゃ。今のうちにお互いのことをよく知っておいた方が良いと思うのじゃ!。』

『結構、長い付き合いだし大体ことは分かっているつもりなんだがなぁ。まあ、2年も会ってなかったし、その間に何か変わっちまってたら知らんが。』

『ほぅ。閃はワシのことを分かっていると?例えば?。』

『そうだな。楽しい時は必ず左足の爪先で2回地面を蹴ってから動き出すとか、悲しい時や寂しい時は近くにいる人間の左後ろに立ってずっと相手の左手を見つめるとか、怒ってる時は両手の親指を包む形のグーを作るとか、嘘ついてる時は目線が左から右に動くとか、照れてる時は目を直視出来ないのかずっと相手の唇を見てるとか。驚いた時は目じゃなくて先に耳をふさぐとか。何か言いたい時は下唇を噛んで相手をじっと睨むとか。今はこれぐらいしか分からんな。』

『……………。』

『流石ッス!…ちょっと灯月先輩似てて怖かったッス!流石、兄妹ッス!』


 まあ、クロノフィリアはずっと一緒に戦ってきたんだ。これくらいの癖とか仕草なんて皆分かっていて当然だろう。


『閃…。』

『ん?なんだ?。』


 じっと、こちらを睨んでいる睦美。下唇を噛んでるので何か言いたいことがあるのか?

 と、急に俺に向かって座礼を始めた。

 ど、どうした!?。


『私と結婚し末長く幸せにして下さい。』

『はい?。』

『貴方様のことが大好きです。どうか、私の旦那様になって下さい。』

『何を言って?てか、口調!どうしたそれ?。』

『何でも仰ってください。貴方好みの女性になってみせます。』

『戻って来い!。』

『あにゃっ!。』


 おでこチョップ発動!。

 幼女の姿で言われると物凄いヤバいことをしている感じになるな。


『すまん。取り乱した…。』

『まったく、急に…ビックリしたぞ。』

『いやぁ、好きな男にあれだけ自分のことを知って貰ってたと知ったらな…つい…。』

『何言ってるんだ。これくらい他のメンバーだって言えるぞ?例えば白なら…。』

『ストップッス!それ以上は勘弁ッス!そんなこと言われたら気持ちが揺らいじゃうッスよ!。』

『む、そうなのか?大袈裟だな。』

『はぁはぁ。』

『恐ろしい男じゃな。』


 それから、他愛もない会話に花を咲かせながら時間は過ぎていく。


『あのぉ…先輩?』

『ん?何だ?。』

『あの…今更なんスけど。基汐さんと光歌さんは元気ッスか?。』

『基汐と光歌か?ああ。元気だぞ、アイツは今情報収集で光歌と出掛けてる。まあ、お前らの情報を集める為にだがな。』

『そッスか。良かったッス。』


 嬉しそうに笑う白。

 そうだ。白は基汐が好きなのだ。だが、白は少し変わっていて基汐と光歌がイチャイチャしているのを見るのが好きなのだ。


『そろそろ。お前らも戻って来いよ。今の世界は少しずつだが…異常が増えてきている。早めにクロノフィリアは全員集まった方が良いと言うのが俺や無凱のおっさんの見解だ。』


 俺は白に仁さんの喫茶店の場所が記された地図を渡す。


『了解ッス。代刃っちの気持ちが落ち着いたらすぐに向かうッスよ!。』


 地図を受け取る白。


『代刃の野郎は何か困ってるのか?俺で良ければ力になるが?。』

『いやぁ。大丈夫ッスよ。そんなことしたら…多分…代刃っちが壊れるッス。』

『お…おぅ。そうなのか?。まあ、困ったことがあったら俺を呼べって言っといてくれ。』

『はいッス!』


 多分、駆け付けた時点で卒倒するんじゃないッスかね。

 代刃のヤツも難儀な性格よなぁ。


『さて、寝るか。お前ら先に寝ろよ。俺が見張りしとくから。』

『大丈夫ッスよ。白の結界に何かが近付けば、すぐ分かるようになってるッスから。』

『そうか。じゃあ念のため俺も。』


 無凱のおっさんの 箱 を展開。これで余所者は中に入れない。

 裏是流の 幻想獣召喚 を発動。これでクミシャルナを呼ぶ。


『これなら全員寝ても安心できるだろう?。』

『うむ。完璧じゃな。』

『安心ッス!。』


 俺達はクミシャルナの長い身体にくるまれて眠りについた。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


ーー翌日ーー


 朝食を済ませ、再び森の奥へと進んでいく。


『ここッスよ。』

『おお。如何にも…っという感じじゃな。』

『化け物がこの中にいるのか?。』

『噂によればッス。』

『よし、入ってみよう。護衛を頼む。』

『きゅぅぅぅうううううん!。』


 クミシャルナは召喚したまま護衛を頼んだ。

 洞窟内は暗く、尖った岩肌が露出していた。

 凸凹の道を進んで行く。


『不思議な感覚だな。』

『ん?どうしたのじゃ?。』

『いや…ここの雰囲気がな。』

『ああ。白も思ったッスよ!。この感じ、ゲームでのボスステージ手前みたいな感じッスよね。』

『ああ。確かにそんな感じがするのぉ。』


 エンパシスウィザメントには、ミッションやクエスト、イベントなどでは必ずボスユニットが用意されていた。ダンジョンの最奥まで行くと扉があり、その扉に入ると長い通路がボスのステージまで続いていた。通路内はモンスターもNPCも存在しない何もない空間だった。

 この洞窟の雰囲気は、その通路によく似ているのだ。


『ここか。』

『ああ。そのようじゃ。』

『緊張するッスね。』


 1時間程歩いたか。ついに最奥まで辿り着いた。そして、そこにはゲームの時と同じく石造りの大きな扉があった。


『開けるぞ。』


 無言で頷く2人。2人も気付いている。この石の扉の奥から感じる異様な魔力を…。

 石の扉が左右に開く。視界には広い空間。その中心にある鎧の置物?。

 俺達は入り口から空間内を窺った。


『あれは、なんじゃ?。』

『分からないッス。本当にゲームの時のボスステージみたいッス。』

『閃はどうじゃ?。』

『………。』

『閃?。』

『先輩?。』


 無言の俺に心配し振り返る2人。

 俺は観てしまった。あの鎧は…。


『レベル…150だ…。』


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