第44話 チーム変更
『おっ!。来おったか!。久し振りじゃな。閃。氷姫。』
丘の上にある小さな公園で子供達を遊ばせていた少女がいた。見覚えのある姿と話し方。
『あっ!?。睦美か?。いたのか?。』
『えへへ。どう、閃ちゃん。驚いた?。』
『ああ。驚いた。それに…この子供達は?。』
『ワシの能力で【綺麗】になった【白聖の騎士】じゃ。』
『おぅ…察した。どうやら…一悶着あったらしいな。そこは、智鳴が教えてくれたぞ。子供達がいっぱい居たってな。そうだな、睦美なら納得だ。』
睦美の能力は、あの化け物に効果的だったからな。後で、お礼を言わなきゃな。
『睦美。久し振り。』
『おう。氷姫か?。久しいな。はて?。何かあったか?。表情が以前より柔らかくなったような?。憑き物が落ちたというか?。』
睦美も結構、鋭いんだよな。久し振り…というかリアルで会ったのは初めてだというのに、記憶の中と今の氷姫の違いに気づくなんてな。
てか、幼い姿のクセに口調が変わらないんだな…。
『うん。あった。』
『そうか…。お前が無事ならそれで良い。して、そちらの者は?。』
睦美が小さな身体を横に倒し水鏡を覗き込む。
『は、初めまして。私は水鏡と申します。この度は皆さんに色々とご助力頂きまして…。』
『この街の地下で能力を持たない人達を保護していたんだ。そこでリーダーをしていたんだ。』
『ほぉ。それは素晴らしいことじゃな。』
『それを【白聖】の連中に目をつけられてな、保護していた人達が人体実験に利用されてた。それが今回、俺たちが解決した事件だ。』
『そうか…。大変じゃったな…。』
今の説明で大体のことを察したようだ。
『申し訳ありません!。』
睦美の後ろにいた女性が前に出て頭を下げた。
『ん?。誰だ?。』
『私は【白聖連団】所属【十二騎士】が1人【里亜】です。』
『何で【白聖】がここにいるんだ?。』
『私は智鳴さんに命を助けて頂きました。地下の件も知っていた…ですが、私の力ではギルドの動きを止めることが出来なかった。私の力…権限では、そちらの水鏡さんの所から送られてきた人々を数人保護することしか…出来なくて…。』
『え?。あの人たちを?。』
『はい…ですが、殆ど幼い子供たちです。大人の方たちまでは救うことが出来ず…。』
『………里亜さん。ありがとう…。』
里亜を抱きしめる水鏡。犠牲になったと思ってた人々。だが、それでも少しでも生き残ってくれていたことに涙していた。
『閃ちゃん。里亜さんとっても良い人なんだ。【クロノ・フィリア】に誘ってみたの。』
ニコニコ笑顔の智鳴。コイツの直感か…。智鳴は考えて行動すると大抵のことを失敗するんだが、直感が働く時は必ず良い方向に事が運ぶ。
まぁ、本人が無駄に色々と考えてしまう性格だからか直感が働く機会が極端に少ないが…。
『はい。【白聖連団】に居ても私は何も出来ない。いずれは、あの闇に取り込まれてしまうかもしれない。だから、智鳴さんの誘いを受けたいと思いました。』
『貴女は…浮斗士を止めようとしてくれたのですか?。』
水鏡が恐る恐る確認する。
『はい…ですが。あの男は自分の事しか考えていません。私の言葉に耳を傾けようとすらしてくれなかった。』
『そうですか………やはり、彼が黒幕だったのですね。』
自分の過ちを正そうとしてくれた人が居た事が嬉しいのか今の言葉で笑顔になる水鏡。
『でじゃ。ワシは里亜に子供達の面倒を見て貰おうと思っとった。閃も同じじゃろ?。』
『ああ。今から無凱のおっさんに相談しようと思ってたんだ。水鏡の所の住人たちのことも含めてな。』
『そうか。なら悪いようにはならんな。』
俺は携帯端末を取り出し無凱のおっさんを呼び出した。
これ…滅茶苦茶、魔力使うな…。
ー
ーー
ーーー
『やぁやぁ。お待たせぇ。来たよ~。』
目の前の何もない空間に現れた【箱】の中から顔を出す無凱のおっさん。
コイツ…また酒を飲んでたな。
『よっ!。無凱。久し振りじゃな。』
睦美が小さな身体を目一杯広げ無凱に声を掛ける。
さっき智鳴に聞いたら、おっさんはここに睦美が居ることを知っていたらしい。
コイツも俺に黙ってやがったな…。
『やぁ。睦美ちゃん。若々しくなられて。』
『ああ。久々にまともに動けるようになったぞ。』
『それは良かった。さて、この子供達が閃君が言ってた睦美ちゃんの能力で子供になった【白聖の騎士】達かい?。』
『ああ。そうだ。で、こちらが、元【白聖】の【十二騎士団】だった【里亜】だ。俺達の仲間になってくれるみたいだ。』
『里亜です。宜しくお願いします。』
『話しは聞いてるよ。宜しくね。ウチには、この子達以外にも沢山の子供が居るからね。仲良く頼むね。』
『はい!。お任せください。』
今度は水鏡に顔を向ける。
『そして、こちらが【水鏡】だ。地下の無能力の人達を保護している。』
『は、初めまして、水鏡と申します。』
『初めまして、僕は【クロノ・フィリア】のリーダーをしている無凱だ。能力を持たない人達を守りたいと思うのは僕たちと一緒だ。【クロノ・フィリア】は、君を歓迎し、全力で君の力になるよ。』
『っ!。あ…ありがとう…ございます!。』
目に涙を溜めておっさんの手を握る水鏡。
『地下の人達なんだが数百人は居るらしい、おっさん、この人数大丈夫か?。』
『ああ。問題ないよ。黄華さんと話し合っているからね。心配無用さ。』
『助かる。あと、今回の件で話しておきたいことがある。少し良いか?。』
『オッケー。聞こうか。』
ー
ーー
ーーー
俺とおっさんは皆から少し離れた場所で話し合う。
『成程、氷姫ちゃんのお父さんが…。』
『ああ。【白聖】の研究は、かなりヤバイことになってるな。』
『今回は偶々、閃君だったから良かったけどね。』
『物理主体のメンバーが遭遇してたら、ヤバかったな。即興で17人分の神剣を試したが灯月と睦美の能力しか効かなかった。寧ろ、2人の能力は効果抜群だったな。』
ゲーム時代でも能力の相性は戦況を変える重大な要素だ。
【クロノ・フィリア】には様々な能力者がいるが、半分は物理攻撃が主体の連中だ。
『そうか…成功作が一体だけだったのが良かったね…もし量産されていたら…。』
『ああ。かなり苦戦するだろうな…。』
『そうだね。僕の【箱】でも倒せないかも…。』
『いや、本気出せば余裕だろ?。まぁ、この件はおっさんに任せるから、俺はこのまま矢志路の所に向かう。で、氷姫の事なんだが…。』
『閃ちゃん。ちょっと良い?。』
いつの間にか、近くに来ていた智鳴。
『智鳴?。』
『あのね。氷ぃちゃんの事なんだけど。休ませてあげたいんだ。今も平気な顔してるけど…心も身体も疲れきってると思うの。』
『ああ。俺も同じことを考えていた。』
『あっ!。そうなんだね。』
『氷姫の側についててやってくれないか?。』
『うん。もちろんだよ!。ごめんね。まだ、1日しか経ってないのに…。』
『気にするな。俺は1人でも大丈夫だ。という訳だ、おっさん。』
『オッケー。でも、大丈夫かい?。誰か助っ人呼べるよ?。』
『ちょっと良いかのぉ?』
おっ。睦美も来たか。
『おっと。びっくり。どうしたの睦美ちゃん?。』
『ワシがついて行ったら駄目かのぉ?。久し振りに動けるようになったのでな。身体を慣らしたいのじゃ。』
『ああ。そうだね。ずっと、お婆さんだったからね。閃君は良いかい?。』
『もちろんだ。本当に久し振りだしな。睦美と組むのは。宜しくな。』
『おう。こっちこそじゃ。ししし。』
こうして、新たなチームが出来上がった。
ー
ーー
ーーー
『よし、じゃあ僕たちはまず、水鏡さんのいた地下の隠れ家に行って現状の把握をしてくるよ。皆~。少し手伝ってね。』
『うん。』
『了解です。』
『宜しくお願いします。』
子供達、里亜、水鏡とおっさんの【箱】の入り口に入っていく。
『閃。ごめん。役に立てなかった。』
『そんなことはないさ。氷姫は頑張って自分の過去と向き合った。そして勝ったんだ。だから俯くな。いっぱい笑え。』
氷姫の頭に手を置きポンポンと撫でる。
『うん。』
『お前には、俺も、智鳴も、灯月も、基汐も、光歌も、仲間の皆もいるんだ。困ってたら必ず皆で助けてやる。だから、迷わず俺達を頼れ。もう独りで抱え込むな。』
『うん…ありがとう。閃。』
氷姫が俺の頬を両手で引き寄せた。
『んっ…!?。』
ちゅっ。と、唇同士が触れ合うキス。
『大好き。』
真っ白な顔が赤く染まって微笑む氷姫。
『ああ。ズルい!。私も閃ちゃんとしたいぃ!!!。』
智鳴も近付こうとするが氷姫に邪魔された。
『駄目。今は。私の。』
『…ははは…。』
『ひゅー。あついねー。』
『ワシも…いつか、してみたいのぉ…。』
ー
ーー
ーーー
全員が【箱】に入る。その後、【箱】は空間から消えた。
それを確認し俺と睦美は歩き出した。
『さて、行くか睦美。』
『ああ。行こうぞ。』
こうして旅のメンバーを入れ替えて再び矢志路のいる場所へ向かうのだった…と、そこまでは良いのだが…。
『そう言えば…汗だくだな…。』
『ワシもじゃ。』
『あっ…昨日の温泉、一般開放してるって言ってたな…。』
『何!。温泉か!。是非入りたいのぉ~。』
『なら行くか?。』
『おお!。あと、その前に服を買いたいのじゃが?。この年齢のサイズに合う服が今、着ているのしか持っておらんのじゃ。』
『ああ。俺もそうだ。なら先に服だな。』
『うぬ!。』
俺達は昨日、智鳴と氷姫と寄った服屋に向かう。
そして、店に入るや否や、何故か女性店員達からの黄色い悲鳴。
『おっ!?。何じゃ?。いきなり!?。』
『わからん…昨日はこんなんじゃなかったが…。』
『あ…あのぉ。お客様?。』
女性店員の1人が、おどおどとした様子で声を掛けてきた。
『ん?。俺か?。』
『お!。俺!?。一人称、俺!?。』
俺の一人称に驚く店員。
『何かあったのか?。店に入ったらお前等が急に悲鳴を上げたが?。』
『あ…失礼しました。実はですね…。』
女性店員の話によると、昨日店に寄った時の俺達3人が余りにもモデル顔負けの美しさ。しかも、3人が各々違うタイプの美人だった事で店員達の中で、俺達の素性が様々な想像、妄想話で盛り上がったのだと言う。
そんな、噂の人物の1人が、昨日の今日で来店したことに店員達のテンションが爆上がりしたのだという。
『あの…今日は2人なんですね?。昨日の2人とは別の…しかも、とっても可愛らしい女の子ですね。妹さんですか?。』
『ママじゃ!。』
『ママ!?。』
俺を指差してとんでもないことを言う睦美。
急に何を言い出したのかな?。この娘は?。
おい!?。何でそうなる!?。
面白くなりそうじゃろ?。
いや、そんな楽しそうに言われても…。
アイコンタクトで会話する。
『ママは、凄く優しいのじゃ!。』
『お母様だったのですね…凄く…お若いのに…。』
『ま、まぁ…な。』
『お嬢さん。パパは一緒じゃないの?。』
『パパとママは離婚したのじゃ。』
『バツイチ!。子持ち!。こんなに美しいのに!?。はぁ…色々とあるのですね…。』
『でも、おねぇちゃんがいっぱい居るから寂しくないのじゃ!。』
『あっ、昨日もそうでしたね。あの、お2人もご家族なのですか?。』
『姉妹じゃ!。』
『えええええ!?!?!?。』
『こんなにお若いのにぃぃぃいいいい!?!?!?。』
『ご、ご姉妹は何人…なのですか?。』
『えっと…15人じゃ!!!。』
『えええええ!?。頑張りすぎですぅぅぅううう!?!?!?。』
ほぼほぼ作り話じゃねぇか!。
ししし、反応が楽しいのぉ。
ばたっ!。と、倒れる女性店員。
そして、バッ!。と、頭だけを上げる。
『あの…今日はどのようなご用事で?。』
え?。このタイミングでその質問?。てか、営業トークだよな?。何故に倒れたまま…。何か怖いよ…この人…えっと…気を取り直したってことだろうか…。
『ああ。俺とこの娘に合う服を見繕って欲しいんだ。なるべく動きやすいモノを頼む。』
『わ!。わかりました!。お任せください!。全身全霊!。命を賭けて選ばせて頂きます!。』
『あ…いや、そんな凄まれても…。』
勢い良く立ち上がる店員。
しゅっ!。と、手を上げると奥から別の店員6人が、軍隊…いや、最早…忍者だな。忍者のように現れた。目にも留まらぬ速さで次々に服が用意されていく。
プ…プロだ…。
『これなんてどうでしょう?。』
『あっ…いや。スカートは勘弁してくれ。できればズボンで。』
『では!。これです!。如何でしょう?。』
『いや…これ、もう服じゃないよね?。バニーじゃん。あと、何で首輪持ってんの?。耳も尻尾もいらねぇから!。』
『これでは?。』
『これ、もう下着じゃん!。外歩けないじゃん!。まてまて…そのセーター背中からケツまでの布無いじゃん!。そんなんで動けんって!?。』
『とっておきです!。』
『何で巫女服?。おい!。後ろの女!。なんでビキニアーマーとか持ってるんだ!?。てか、何でそんなもん店に置いてんだよ!?。』
『動きやすい服と仰りましたので…。』
『確かに動きやすいけど!。服かそれ!。』
『コスプレ衣装ばかりじゃな…。』
こうして昨日に引き続き、着せ替え人形にされて2時間が過ぎた…。
『もう…あの店、絶対行かねぇ。』
『ははは。楽しかったのぉ。』
結局、俺は入店した時と同じような組み合わせ、Tシャツ、短パン、フード付きコートにニーソとブーツ。睦美は子供用のフード付きコートにワンピースとサンダル。という服装になった。
『その猫耳どうしたんだ?。』
『あの店員に貰ったんじゃ!。』
『似合うな…。』
『じゃろぅ!。ししし。ワシ、不死鳥なんじゃがな。こういうのも悪くない。』
何か無駄に疲れた俺たち…いや、俺だけか…は、温泉に着いた。
『おお!。広いのぉ!。しかも貸し切り状態じゃ!。』
『昨日もそうだったな。』
湯に浸かる。
『はぁ…疲れた…。』
『オヤジみたいぞ。いや、今は女じゃったな。して、人っ子1人居ないのじゃが?。』
『ああ。昨日もずっと1人だったな…あっ!。違うわ。もう1人居たんだった。先に入ってた人。』
『ほぉ。美人じゃったか?。』
『何でまずその質問?。まぁ、ああ~。ぶっちゃけ、ドストライクだった。マジで。』
『お!?。主にそこまで言わせるとは…少し興味が湧くのぉ。どんな娘じゃったんだ?。』
『えっと…青よりの水色の長い髪だった。片眼が前髪で隠れてて顔全体は見えなかったが美人系だったな。…少し垂れ目で、少しだが今の俺の姿に似てたな。』
『………。』
『ん?。どうした?。急に黙って?。』
『いや、主が見た女は…泣きボクロが無かったか?。』
『泣きボクロ?。ああ、確かあったな。隠れてない方の目の下に。』
『なる…ほど…のぉ。』
『何だ?。知り合いか?。』
『いや、知らん。』
『はい?。そ、そうか…。』
「アヤツ…まだ、閃に自分の本当の姿を見せておらぬのか…相変わらず…じゃな…。」
『ん?。何か言ったか?。』
『いんや。何も言っとらん。』
ばしゃばしゃ…ざばぁぁあああああん!。
『おい!。泳ぐな!。』
『ははははは!!!。』
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ーーー【昨日】【温泉 更衣室】ーーー
ーーー【?】ーーー
バタン!。浴槽へ続く扉を力一杯閉める。
見られた…見られた…見られた…見られた…見られた…見られた…見られた…見られた…見られた…見られた…。
『せ、閃に…裸…見られちゃった…よぉ…。』
僕は自分の身体を抱き締め座り込んだ。
動悸が激しい。バクバクいってる!。
油断した。何で閃がこんな所に居るんだよぉ。
『閃…全然…変わってない…2年も経ってるのに…。女の姿でも…格好いい…。』
『あら?。【代刃】?。どうしました?。あら、まだ入っていなかったのですか?。』
『【春瀬】ぇ…。閃が…。閃…に、裸、見られちゃったぁ…。』
『ん?。ああ。閃さんがいらっしゃるのですか?。成程。だから、裸でうずくまっているのですね?。』
『うん…もう出るぅ…。』
『あら、せっかく会えたのに挨拶しないのですか?。』
『ムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリ。』
『相変わらず、閃さんの前ではダメダメですね。』
『まだ…心の準備がぁ…。リアルで会うの初めてだしぃ…。』
『…そうですか。わかりました。貴女の心の準備が出来るまでは付き合いましょう。ですが、早く決心をつけなさい。私も早く仁様にお会いしたいのですから。』
『うん。春瀬ぇ…ごめんね。ありがとう。』
『いいえ。構いませんよ。さぁ、【白】の所に戻りましょう。』
『うん…本当に、ごめんねぇ…。』




