第389話 上空で
『なっ!?。これはっ!?。』
『閃さん!?。謎の輝きが…。』
『閃君!?。えっ!?。私たちまで光って…。』
私の目の前から不思議な光を放ち、神さまぁは消えた。
近くにいた兎針と奏他も巻き込んで突然と忽然に。
神さまぁたちがいた箇所まで近寄ろうとするも突如発生した足元の揺れにバランスを崩した。
『え!?。神さまぁ!?。』
『ちょっと!?。先輩たち消えちゃったし!?。』
『お兄さん!?。』
残された私を含め、詩那と夢伽も目の前の出来事に驚いている。
だが、それだけではなかった。
神さまぁが消えたことで移動に使用していた神具の船のエーテル供給が失われ崩れるように消えてしまった。
当然、足場を失った私たちは…。
『きゃあああああぁぁぁぁぁ!?!?!?。』
『きゃわあああああぁぁぁぁぁ!?!?!?。』
『詩那!。夢伽!。』
ソラユマと同化した私は宙を浮ける。
だが、飛行手段を持ってない二人は重力に逆らえず落下していった。
慌てた私は落下の速度を利用して二人を追い、何とか服の裾を掴むことに成功する。
ズシリとした重みが両腕に掛かる。
『うぐっ…お、もい…。』
『ちょっと!。ウチ!。重くないし!。』
『私もです!。重いのはお肉がいっぱいついてる詩那お姉さんの方です!。』
『ちょっと!。夢伽!。どういう意味よ!。』
『暴れるな。落とすぞ…うぐっ。腕が…。』
『ひっ!?。…うぅ…高い…怖い…高い…怖い…先輩…助けて…。』
『た、大変です!。八雲お姉さん!。詩那お姉さんが泡吹いて白目向いてます!。』
『静かになったな!。助かる!。』
『確かに!。』
『ぅ~。ひ…どい…。』
ゆっくりと高度を下げていく。
私のはあくまでも浮遊。飛行ではないからな。
だが、問題が終わった訳ではない。
ここは青国の上空、私たちはエーテルを纏っている。
青国の連中…特に 奴 が、私たちに気付かない訳はない。
警戒心を募らせた直後、青国を取り囲むエーテルが動き始めた。
『っ!?。来たか!?。』
『なっ!?。何か、大きな輪っかが動いてます。私たちに向かってきてますよ!?。』
『ああ。青国の防衛システムの一つだ。青国の支配者、リスティナの神具で青国全体を複数個で囲っているエーテルのリング。触れたものを蒸発させる。』
『え?。それマズイですよ!?。』
『ああ。マズイ。あれは私たちじゃ防げない。だから。』
避けるしかない。
回転する巨大なリングは純エーテルで構成されている。
私たちが扱うエーテルとは濃度も性能も段違いだ。
『うぐっ…。』
何とか軌道の外へ。
上下への転移を使いリングから回避する。
幸いなことにリング自体の動きは遅い。
リング一つに集中すれば避けるのは容易い。
だが、それはリングが一つだった場合だ。
リングは青国を取り囲むように大小様々なサイズが複数個、不規則に回転しているのだ。
『ぐっ!?。こっちもか!?。』
『わわわ!?。こっちからも来てます!。』
『うべぇ……………。』
『わわわ!?。詩那お姉さんの首が振り回されて凄い方向に!?。』
『ほっとけ!。死ぬよりマシだ。』
『そうですね!。』
『ひ……どい……。』
良し。何とか抜けられそうだ。
私の神具【天蓋衛星宙域神光砲 コズリュセンテル・ヴァルミュゼーラ】。
宇宙から見下ろす視界で不規則の中から僅かな規則性を見出だせた。
『っ!?。ヤバい!?。』
青国の中心。
リスティナや他の幹部連中がいる拠点の頂上からエーテルの収束を感じる。
マズイ。この状況での砲撃は私では防げない。
『夢伽!。盾を!。速く!。』
『はっ!。はいっ!。【鱗壁絶甲華鏡盾 シルゼス・ミラリアフィリーゼ】!。』
鱗の盾を全面に展開した直後、拠点の頂上に集中したエーテルの砲撃が放たれた。
一直線に、正確な照準で狙い撃たれた。
『ぐっ!?。この砲撃…強い…。うっ!?。』
エーテル砲撃が盾に直撃する。
この砲撃も純エーテル!?。くそっ、いくら夢伽の防御力が優れていても純エーテルのエネルギーは防ぎ切れない。
『うぐっ…もう…む…り…です……あぅ!?。』
『ぐあっ!?。』
神具の盾は破壊されダメージを受けた衝撃で吹き飛ばされる。
詩那は何とか守ったが、夢伽を手離してしまった。
『きゃあああああぁぁぁぁぁ!?。』
『夢伽!。っ!?。』
くっ…気を逸らせばリングが迫ってくる。
夢伽との距離が離れすぎた。
しかも、拠点からの追撃が...。くるっ!。
『きゃっ!。また!。ぐっ!。』
再び、放たれたエーテル砲に反応する夢伽だが、体勢も悪い。エーテルの収束も不十分。あれでは、さっきと違って僅かな時間も受け止められない。あの砲撃は盾を貫通する。
なら。私が!。神具!。起動!。
【天蓋衛星宙域神光砲 コズリュセンテル・ヴァルミュゼーラ】から放たれるエーテル砲撃。
純エーテルではないけど、夢伽の盾を利用させて貰う。
角度の調整。複数の砲撃を展開された盾に反射し一点に集中させ密度を上げた。
砲撃同士のエーテルの衝突。
空中で眩しく爆ぜる火花と爆風が空中に四散した。
『くそっ!。またっ!?。』
再度、エーテルが集まる。
連続での砲撃。
当然だ。青国には星から純エーテルを汲み上げる技術がある。
それを利用して無限のエーテルを兵器に転用しているんだ。
そして、それを指揮している奴…青国の幹部…。
『ルクシエーナ………このままじゃ…夢伽!。』
『うっ………。』
『なっ!?。気絶!?。』
さっきの爆風で。
次が来るのに。あの距離じゃ間に合わない。砲撃も、転移もダメだ。どうする。どうすれば。神さまぁ…。私じゃ限界です…。
無情にも純エーテル砲が夢伽の向けて放たれた。
ダメだ。このままじゃ、夢伽が殺される。
『【魔水極魚星】!。皆を助けて!。』
『え?。』
空中を浮遊する私と詩那の身体が何かに運ばれている?。
これってエーテルのイルカ?。
夢伽も別のイルカの背中に乗っている?。
『これは!?。神具?。』
『間に合った。急だったから実体化に時間が掛かっちゃった。ごめんね。八雲。』
ヒラヒラとした衣服に身を包んだ少女。
神さまぁと同化した神眷者。
『アクリス?。』
『うん!。ここは任せて!。』
支配空間を広げたアクリス。
青国の上空。蒼穹に蒼海が出現した。
次回の投稿は19日の日曜日を予定しています。




