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第388話 繋ぐ

 クロロの能力の一つである自己加速を使用し高速で移動したことで、目的地には当初の予定よりも大幅に早く到着した。

 崖の上から見下ろすその国は広大な大地の全てが山々に囲まれている天然の鉄壁で守られていた。


『ここが…黄国か…。』


 赤国からは陸地で繋がっているお陰で青国よりも簡単に着くことが出来た。

 さてと、これ…何処から入れば良いんだ?。

 見ると、国全体を囲うように巨大な城壁が並んでいる。


『取り敢えず近づいて壁伝いに入り口を探すか。』

「待て、閃。」

『ん?。どうした?。アリプキニア?。』


 急に呼び止められた。


「迎えだ。」

『え?。』

『なぁなぁ。お前が閃だな?。』

『は?。』


 接近に全く気付かなかった。

 突然現れた金髪銀眼の少女。

 コイツは…ああ。アリプキニアの記憶にあるな。


『ああ。そうだ。で、お前がスヴィナか?。』

『おお。わらわの名前を知っているのだな!。』

『妾が教えたのだ。スヴィナ。キキキ。久しいな。』

『おお。母上!。相変わらず小さいな!。』


 実体化したアリプキニアを抱き上げるスヴィナ。


『これ!。下ろさんか!。』

『ははは。しかも軽いぞぉ~。』

『ぎゃあああああぁぁぁぁぁ!。振り回すな!。おい!。スヴィナ!。回るな!。よせ!。酔う…。』

『ははは。母上は元気だな!。』


 凄まじいスピードで回転するスヴィナ。

 アリプキニアは涙目だ。


『うえぇぇぇぇぇ…酔った。』

『感動の母と子の再会だな。』

『うぅ…どこがだぁ。』

『それで?。スヴィナ。俺たちのところに来たってことはこの国に入っても良いのか?。』

『ああ。勿論だぞ!。閃の気配はずっと前から感じていたからな!。皆で待ってたんだ。』

『そうか。なら遠慮なく案内して貰おうか。』

『ああ。ついてくるんだ!。ほら!。母上も!。行くぞぉ~。』

『こ、これ!?。手を離さんか!。走るな!。てか、速い!。妾浮いてるぞおおおおおぉぉぉぉぉ!?!?!?。』


 母親に会えたのが嬉しいのか、今までに会った惑星の神とは全然違う反応だな。

 それにあのスヴィナの身体を構成しているエーテル…今のスヴィナの状態は俺と【合神化】したアリプキニアと同じだ。

 つまり、誰かと合神化したことになる。

 この国にいるクロノ・フィリアの仲間かね。

 それに無凱のオッサンがいれば良いんだが。

 無事に黄華さんに会えたのかも気になるところだ。


『ここだぞぉ~。』

『おお。ここか。』


 黄国は俺たちがいた仮想世界で言うところの学園に似た造りになっている。

 建造物も、施設も、俺たちの世界で見たことのあるものばかりだった。

 懐かしいな。


『閃。妾はもう駄目だ。抱っこして。』


 俺たちが到着したのは 会議室 と書かれた部屋の前。

 この短期間でボロボロになり虚ろな眼のアリプキニアを抱き抱える。

 

『キシルティア~。連れてきたぞ~。』


 ドアを開けたスヴィナに続き室内に入ると、長いテーブルに複数の椅子が並んでいた。

 一番奥にいる少女が最初に眼に入る。

 

『良く来たな。お前が閃か?。』

『ああ。君がキシルティアか?。』

『そうだ。我が黄国へようこそ。歓迎するぞ。』

『俺のことを知っているのか?。』

『ああ。この世界の真実も知っている。我には今までの繰り返しの生の記憶が残っているのさ。』


 キシルティアの記憶もクロロの中にあった。

 世界が繰り返されている事実を知る数少ない存在の一人として記憶している。


『そうか。なら話は早いな。』

『閃君久し振りだね。元気そうで何よりだよ。』

『久し振りだな!。閃!。てか、また見知らぬ幼女を抱いているな!。相変わらずモテモテだ。』

『閃さん。ご無沙汰しています。』

『お、お久し振りです!。』

『閃さん。またお会いできて良かった。』


 俺はキシルティアとの話を区切りこの場にいるメンバーに視線を送った。

 賢磨さん。豊華さん。初音。里亜。そして、柚羽。


『ああ。皆。久し振り。再会できて嬉しいよ。』


 更に知っている顔が二つ。


『初めまして…だな。こうして話をするのは初めてだな。けど、二人のことは聞いてるよ。確か…異熊と漆芽だったよな?。』

『ああ。初めまして。君の噂はかねがね。閃さん。』

『私たちのこと…誰に聞いたのですか?。』

『ん?。ああ。兎針と奏他さ。』

『む?。君は兎針と会ったのかい?。』

『奏他…元気ですか?。』

『ああ。元気だよ。まぁ、何というか二人とも恋人になったんだ。』

『っ!。あの兎針が!。』

『わぁ~。おめでとうです。』


 驚く異熊と嬉しそうに拍手をする漆芽。

 正反対の反応だ。特に異熊の兎針に対する反応…かつての仲間だろうが…兎針…何したんだいったい?。


『そういえばオッサンはこの国に来たか?。黄華さんを探す目的でこの国に向かったんだが?。』

『ああ。来たよ。けど黄華さんは別の国にいるからその後を追って行ったんだ。』

『ん?。どういうことだ。詳しく聞かせてくれないか?。』

『そうだな。互いの情報の交換を行おうか。閃…皆、好きな場所に座ってくれ。今飲み物を用意させる。』


 その後はまず俺のこれまでの情報の提示をした。

 転生してから、人族の里、地下都市。

 緑国、赤国へと旅をした流れを。

 その過程で入手した情報、再会した仲間たちのことを全て話した。


 キシルティアからの話しはクロロの記憶にあるものと合致した。

 本当に前世…いや、繰り返される世界の記憶を保有しているようだ。

 過去…複数回前の世界で俺との面識もあるようだった。


 世界の終焉。繰り返される世界。神々。

 そして、その原因【ダークマター】。

 既に賢磨さんたちにも周知しているようで、此方からの説明は殆どしなくて済んだ。


『まさか…イグハーレンが攻めてくるとはな…。白国の使者として…か。』


 黄国は白国からの襲撃を受けた。

 無凱のオッサンを筆頭にソイツ等の撃退に成功。

 イグハーレン。異世界の神具、大罪神獣。

 俺と戦ったゼディナハたちとは別の勢力なのか…それとも裏で繋がっているのか。


『成程ね。煌真が…。神無を人質に…。』


 イグハーレンの野郎…俺の仲間に…。

 しかし、それは厄介なことになったな。

 肉体的に融合したのを切り離すなんて、絶刀しかないんじゃないか?。

 しかも、煌真が従わざる得ない状況。

 煌真は俺たちの中でも間違いなくトップクラスの力だ。

 仮に戦いになっても抑え込まれるだけだろう。

 俺か、オッサンか、仁さんや矢志路くらいか。


『ウチ等じゃ煌真を止められなかった。無凱の奴がいなかったら全滅も有り得たぞ。』

『そうだね。出鱈目とは彼の為にある言葉だよ。』

『だな。』


 イグハーレンと一緒ということは…今は白国にいるってことだよな?。

 なら、俺の目的地と同じだ。

 それまでに何か対策を考えとかなきゃな。


 それに黄華さんは紫国…オッサンはそれを追って行ったと…。

 確か無華塁が向かったのも紫国…。相変わらず無華塁の勘は凄いな。


『クンクン。』

『な、何だ?。だ、誰だ?。』

『閃。』

『どうした?。クティナ?。』


 実体化したクティナがキシルティアの元に現れる。顔を近づけ匂いを嗅いでいる。


『何か…キシルティアから、閃の匂いがする。』

『え?。』

『我からか?。』

『うん。』

『キシルティア。ちょっと閃に触れてみて。』

『あ、ああ。構わんが?。』


 差し出されたキシルティアの手に触れる。

 すると、淡い青色の光がキシルティアの身体から溢れ俺の身体に流れ込んできた。

 強いエーテルの波動が俺の中で渦巻き、体内を巡っていたエーテルと混ざり合い融合する。


『何だこれ?。力が湧き上がってくる感じがする。』

『我には分からん。何故、我の中に閃のエーテルがあるんだ?。いや、待てよ…。』


 キシルティアが何かを考え始めた。


『我の傷を治したのは…死んだ我を蘇らせたのは閃なのか?。』

『俺?。』


 俺にはそんな記憶はない。

 だが、キシルティアから流れ出て体内に取り込まれたエーテルは、間違いなく俺のエーテルだ。まるで初めから俺の中にあったかのように馴染んでいる。

 しかも、この感じは創造神…リスティナのモノではない。

 微かに覚えている、仮想世界で暴走していた際に感じた…心象の深層世界で戦ったもう一人の俺のエーテル。

 つまり、絶対神の…あらゆる存在を消滅させるエーテルだ。

 それが何故キシルティアの中に?。


『何が何だか分からないが力が戻ったみたいだ。』


 俺の本来の力が…。

 

『それにしても、スヴィナが合神化に選んだのが柚羽だったんだな。』

『え?。あ、はい。そうです。』

『わらわが柚羽に決めたのだ!。今じゃ仲良し小好しなんだ!。』

『そうか…それは良かった。』


 既に合神化しているなら話が早いな。

 この世界のことも理解しているし、なら俺がこの国でやるべきことは一つだ。


『キシルティア。青国から転移装置を貰ってないか?。』

『ああ。確かに受け取った。だがな。我が国は他国との交流を絶っていてな。我が国に敵意を向けてくる者が他国にいても困るからな。使ってはいない。』

『そうか。好都合だ。』

『好都合?。』

『ああ。相談なんだが。』


 この場にいる全員に緑国と赤国の同盟という関係を伝え、黄国とも同じく同盟を結びたいと考えていることを伝える。

 

『この二国は俺たちの仲間と協力して戦いの傷跡から立て直した。黄国とも同盟を結びたい。』

『ふむ。スヴィナはどう思う?。』

『うん。わらわは問題ないのだ!。それに柚羽たちの友達も一緒にいるんだろ?。仲間との再会は良いことだ!。』

『ふむ。閃。緑国と赤国の代表…王との会談は可能か?。』

『ああ。どちらの国もそれを望んでいるぞ。』

『そうか。なら、我が国に紹介しよう。頼めるか?。』

『ああ。問題ない。じゃあ、転移装置のところに案内してくれ。』


 俺は案内された転移装置の前で赤国で行ったように赤国にセッティングしていた【箱】を発動し赤国へ転移。

 赤国の愛鈴と赤皇にことの次第を伝え赤国の転移装置で緑国へ向かう。

 そこで、レルシューナと律夏にも同じ内容を伝えた。

 そして、再び【箱】を使い光歌を連れて黄国へ。


『久し振りね。皆。』

『光歌あああああぁぁぁぁぁ!。』

『ぎゃぶん!?。』


 豊華さんに抱きつかれた光歌の身体がくの字に曲がり吹き飛んだ。

 感動の再会だな。


 光歌は黄国の転移装置に手を加え、慣れた手つきで転移装置を起動。

 改めて、黄国は赤国と緑国と繋がったのだった。


『初めまして、キシルティアさん。私は緑国で女王として国を任されているレルシューナと申します。』

『は、初めましてだな。赤国王。愛鈴だ。黄国王。キシルティア。』

『ああ。レルシューナ。愛鈴。我はキシルティアだ。宜しく頼む。』


 愛鈴とレルシューナがキシルティアとの挨拶を済ませ、柚羽と律夏、赤皇を連れ会議室へと入っていった。

 他の皆は各々に再会を喜んでいる。


『里亜…本当に無事で良かった…。』

『うん…涼さんも…。会いたかった。』


 恋人との再会。


『賢磨さん。久し振りです。』

『豊華もな。』

『えへへ。嬉しいね。』

『ああ!。基汐も睦美も智鳴も元気そうだな!。』

『こうして再会出来て良かったね。これからは共に頑張ろう。』


 かつてのクロノ・フィリアメンバーの再会。


『初音。久し振りね。』

『はい!。時雨さん。また会えて嬉しいです。』


 同じ恋人を持つ者同士の再会。


『あら、異熊さん。恋人ができたの?。』

『あの真面目な異熊が。びっくり。恋人。おめでとう。』

『むっ…そういう二人にも恋人ができたようで…。おめでとう。』

『奏他。無事で良かったです。』

『ふふ。そうだね。漆芽も元気そう。それに恋人ができたんだね。』

『うん。異熊。大好きです。』

『あらあら。お熱いこと。』

『私たちもラブラブ。異熊に。負けない。』


 兎針。紫音。異熊。漆芽。奏他。

 かつての同じギルドの仲間たちの再会。

 各々が再会に喜び合い、そして、三国によるこれからの交流。結束する仲間たち。

 真実を知ったことで結ばれる同盟。

 皆がいれば大丈夫だろう。

 こっちのことは任せたぜ。

 

 そして、俺は…。俺自身のやるべきことを…。


『さぁ。行こうか。』


 旅立つ。

 離れ離れになった仲間の元へ。

 俺は一人。青国に向け空を駆ける。

次回の投稿は16日の木曜日を予定しています。

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