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第382話 【神造機人】と【神造偽神】

『神具…【水深海神球 マリクリア・ディプリシア】。』


 水鏡が神具を発現させた。

 渦巻くように集まる水を固めた球体。

 そして、その球体の周りを幾つものリングが回転している。

 球体は水鏡の頭上に浮遊し、溢れる水が螺旋を描き彼女の周りを回っていた。


『逃がしませんよ!。』

『もうっ!。何なんだよ!。範囲広すぎでしょ!。』


 水鏡の神具から放たれる水の塊。

 連射も可能なようで1メートル大の水が次々に発射される。

 その間を掻い潜り、木々を壁にしながら一定距離を維持し続けるデュシス。

 手に持つライフルにエーテルをチャージし水球を次々と撃ち落としていく。


『くっそ。なんて水量だよ!?。水球の爆発で木が粉々だし!?。』

『私の神具は深海に接続し海底から水を転送しています。無限にも等しい星の力。大量の水を圧縮して放つ弾丸。受けて下さい!。』

『嫌だよ!。悪いけど!。君を倒して仲間を探さないといけないんでね!。』

 

 デュシスはフィメティワとフォルンチカにシャルメルアの救助を任せた、とはいえ心配であることには変わらない。

 一刻も早くこの戦闘を終わらし自らも救援に向かいたいと考えている。


 エーテルを高め貫通力を付与した砲撃が水球を貫く。

 紗恩が使用していた技術のエーテルバージョン。

 それを、マシンガンのように連射する。


『無駄です。純粋な水の量。そしてエーテルで強化した水の壁は、その程度の砲撃では突破出来ません!。』

『くっそぉ~。そうみたいだね。まったく。つくづく異神って奴は厄介だ!。』


 ライフルを乱射しながら突進するデュシス。

 身を屈め、地面を滑り、転がり、ライフルで牽制しながら距離を詰めていく。


『速い!。それに細かい!。』


 狙いを定められない小刻みな反復運動で縦横無尽に地を這うデュシス。

 着弾の際の水の爆発にもその小さな身体を器用に使い最低限の動きで回避し続ける。

 眼前に迫る水鏡。

 間近まで近づいたデュシスは地面を撃ち巻き上がる雪と土を目眩ましにし、水鏡の身体に銃口を押し付けた。


『っ!?。』

『これだけ近づけば防御できないでしょ!。』


 フルパワーで放たれるエーテル砲撃。

 今までの貫通性を上げたモノや、乱射したモノとは違い一撃で勝負を決めるために溜めたエーテル砲だ。

 それがゼロ距離。密着した状態で発射されたのだ。


『決まったかな?。これで、シャルメルアを…。』

『いいえ。まだです。』

『うそっ!?。』


 砲撃の後の巻き上がった土煙の中から現れる水鏡。

 その両手にはエーテルで水を固めたであろう二振りの剣が握られていた。


『はは、今の攻撃…それで斬ったの?。』

『はい。間一髪でしたが防げましたね。』

『マジか~。何でもありじゃん!?。』

『水は変幻自在に形を変えられますので。』


 水鏡から距離を取るデュシス。


『はぁ...遠中近と全部の距離で負けちゃったな。』

『大人しく降参して下さい。』

『はは。それは出来ないよ。君たちは私たちの情報が欲しいんでしょ?。そんなことしたら私たちは殺されちゃうんだ。そう簡単に教える訳ないでしょ!。』


 尚もライフルを発砲するデュシス。


『無駄です。貴女の攻撃では私の水の壁は突破できない。』

『だろうね。こっちは元々単独で行動するように作られていないんだ。チームで戦う私の役割は後方支援での射撃援護だからね。』

『確かにそうでしたね。ですが、今はお一人ですよ。貴女を捕えさせて頂きます。』

『それは嫌だよ。』


 内心の焦りを悟られないように必死なデュシス。

 チームである仲間は各々の戦いで手一杯。

 援軍の期待は出来ない。

 しかし、単体での戦力では勝ち目がない。

 冷たい汗が頬を伝う。


『あら?。どうやら苦戦しているようね。デュシス。』

『『っ!?。』』


 突然、戦闘中の二人の間に現れた少女。

 胸だけを隠しただけの上半身にコートを羽織り。袴のようなズボンを履いた格好。

 刃渡りが100cm近くある刀を持っていた。


 突然の増援に警戒する水鏡。

 だが、この状況に女の仲間である筈のデュシスまでも怪訝な表情を浮かべている。


『何でお前がここにいるのさ。セティアズ。』

『そんなのムダン様の命令に決まってるじゃない。貴女たちじゃ役不足だと思われてるんじゃない?。じゃないとこうして私たちが動くわけないし。』

『何だと?。』

『そんなに、怒らないでよ。現にアンタこの異神に負けてるじゃない。』

『………ふん。まだ負けてない。』

『ああそう。けど まだ でしょう?。とっとと戻ってムダン様の護衛でもしてなさいよ。』

『……………。ふん。』


 無言のまま立ち去るデュシス。

 追いたい気持ちを抑え新たな敵に注視する水鏡。


『あらら。拗ねちゃって。弱いって可哀想ね。やっぱり生物からの改造では駄目ね。不安定過ぎるわ。色々と。』


 残った少女。セティアズと呼ばれた青国の刺客に警戒する水鏡。


『さて、初めまして水鏡さん。私は【神造偽神】の一体、セティアズと申します。宜しくね。』

『私の名前を…。』

『貴女だけではありませんよ。氷姫さん。機美さん。雨黒さん。青嵐さん。青国は貴女方異神をずっと警戒し動向を窺っていました。青国にとっても異神は脅威です。故に何かしらの行動を起こすまでずっと様子を観察していました。データを集めながら、ね。』

『そうでしたか…。では、先程仰っていた【神造偽神】とは何ですか?。さっきまで戦っていた方とは違うのですか?。』

『ええ。勿論です。一緒にされては困りますので認識を正させて頂きましょうか。』


 セティアズがデュシスの去った方角を確認してから語り出す。


『彼女たちは【神造機人】。リスティナ様、及びムダン様によって生きていた人族をベースに肉体を改造された者たちです。』

『人族を改造?。』

『貴女方も知っているでしょうが、人族は弱い。突出した能力も肉体的な武器も持っていない種族です。ですが、その身には無限にも等しい可能性が眠っている。貴女方の仲間、異神の中で最も強いお方も元々は人族です。リスティナ様とムダン様はそこに目を付けました。人族を利用すれば自らの手で神に匹敵する存在を創造出来るのではないか、と…その失敗例…いえ、まともに動作していることを考えれば成功…なのでしょうか?。数多くの失敗の上に誕生した失敗作。まぁ、神になれなかった失敗作という点で言えば彼女たちはガラクタでしょうね。』

『………仲間…なのですよね?。そんな言い方はないのでは?。』

『ん?。仲間じゃないわ。仲間と言うのは同等の存在のことを言うのよ?。アレ等はただの使い捨ての道具。今の青国の技術なら替えはいくらでも用意できるから。』

『少し…苛立ちますね。』

『まぁまぁ。怒らないでちょうだい。本題はこれから。青国は貴女の仲間である代刃さんが仮想世界で使用した異世界の神具の再現に成功している。』

『代刃さんの!?。』

『そして、そこから更に研究を重ねた結果、青国の独自の技術で数々の神具を参考にしたオリジナルの武装【神星武装】を創造することに成功したの。貴女が戦っていたデュシスが持っていたライフルもその一つ。その力は神具に匹敵するわ。』

『あれが…。』

『けど、【神造機人】が扱う【神星武装】は弱い。持ち主のエーテルを吸収して武装として機能する性質上、元が人族では大した効果は得られなかった。精々がエーテルで強化したり、直接エーテルを飛ばしたりするだけ。とてもじゃないけど、それだけで異神の相手になるとは到底思えない。現にデュシスは貴女に負けていた。』

『貴女は違うのですか?。』

『全然っ違うわ。私たちは【神造偽神】。【神星武装】に直接、意識と思考を与えられ神の姿を象った存在。分かる?。私たちは【神星武装】そのものなの。故にその性能の百パーセントを引き出せる。ほらね。全然違うでしょ?。』

『………貴女は私たちと言いましたが、貴女の同種は何体いるのですか?。』

『同種…といえば五体ね。例外…というか特別製が二体いるけど、同種って訳じゃないし…。はぁ…レディスたちが羨ましい…。』


 歯切れの悪いセティアズ。


『そうですか。では、そろそろ。』

『ええ。良いわよ。始めましょうか?。貴女一人にあまり時間を掛けてられませんし。』


 セティアズが長刀を構える。


『とっとと終わらせましょうか。』


 小柄なセティアズと殆ど変わらない長さの刃が妖しく煌めいている。

 それを器用に身体を中心に回し、肩に担ぐ独特の構えを取った。


『行きます!。』


 神具から放たれる水の塊。

 圧倒的なまでの水量が水深に掛かる圧力によって圧縮されエーテルで固められた弾丸。

 外部からの衝撃に反応し爆発。その際に大量の水が勢い良く炸裂する。


『ふふ。その攻撃より私の方が速いです。』


 振り抜かれる長刀。

 肩に担がれた刀が身体を回転させ背中の上を転がすように振るわれる。


『なっ!?。…んで!?。』


 次の瞬間。水鏡は驚愕する。

 距離は離れていた。如何にセティアズの刀が長いとはいえ、水鏡との距離は五メートル程。とても攻撃の届く距離ではなかった。

 しかし、セティアズはその場から動いていない。その場で刀を振るっただけだ…なのに。


 弾丸となった水弾は切断され爆発と同時に放出された瀑布にも似た水流がセティアズの背後左右の木々を津波のように呑み込み薙ぎ払う。

 更には、神具である水球が切断され、水鏡の身体をも切り裂いた。

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