第41話 狐がつまむ
『ははっ!この女ぁ!。俺の一撃を受け止めやがった!。』
私は柘榴さんが里亜さんへ繰り出した斬撃の一刀を鉄扇で受け止めた。
魔力で強化された一振は並の能力者なら防御諸とも押し潰されてしまう威力が込められていた。
自身の一撃を受け止められ嬉しそうに笑う柘榴さんと、見ず知らずの自分を庇ったことに驚く里亜さん。
私は今まで色んな人の悪意を見てきた。でも、中には純粋で良い人だっていることを知っている。私にはどうしても里亜さんが悪い人には思えなかった。
『貴女は…どうして…。』
戸惑う里亜さんに目線だけを向け微笑んでおく。そして、柘榴さんを睨み付ける。
私は今、怒ってます。尻尾だってビンビンです。
『何で!里亜さんを攻撃したの!?。仲間なんでしょ?。』
『はぁ?。仲間だぁ?。そんなヤツ!白聖十二騎士にゃいねぇよ!。いるのは序列を上げるのに邪魔なカスだけよ!。』
『ヒドイことばっかり言って!。』
『てめぇは何でその女を庇ってんだぁ?。』
『里亜さんが良い人だからに決まってるじゃん!。』
これが私の本音。
多分、里亜さんはこの柘榴さんとは違う。
いえ、白聖連団とは違うと直感で思った。
『貴女…。』
『馬鹿が!。そんな、くだらねぇ理由でお前は死ぬんだぞ!。』
『死なないよ!。』
柘榴さんの剣が標的を私に変えて襲い掛かる。頭、首、胸、腹、足。的確に急所か行動不能になる箇所を狙ってくる。
でも、直線的!。単調!。これなら私だって余裕で防げる!。
『はぁ。ここまで俺の攻撃を防ぎ切るとはな。女…てめぇ何者だ?。』
嵐のような斬撃を止める柘榴さん。
『…クロノフィリア…No.7、智鳴だよ!。』
私は言い放つ。これで地下の階段から敵の意識は私に移った筈。
『クロノフィリア…。ははは。なる程な。なら、納得だ。俺の攻撃を防ぐなんて芸当、ギルドマスタークラスかクロノフィリアしかいねぇからな。』
顔を手で押さえ笑いを堪えてる柘榴さん。ちょっと不気味かも。
『教えて!。さっきの話は本当なの?。』
『あん?。さっきの話?。…ああ。研究成果のことか?。何でそんなに知りたがる?。てめぇに関係ねぇだろう?。』
『関係あるから知りたいの!。』
『じゃあ。教えてやる訳にはいかねぇな。』
『ケチッ!。』
『力ずくで聞き出してみろや!。』
また単調な攻撃を仕掛ける柘榴さん。
『遅いよ!。』
余裕で受け流す。
『はぁ。これも防ぎやがった。』
『教えてくれるまで防ぐからね!。』
すると、手にした剣を地面に突き刺した。
何するの?。
柘榴さんの魔力が少しずつ上昇するのがわかる。しかも、これ私と同じ 炎 の属性だ。
『はぁ。ダメだわ。』
『ダメ?。』
『いや、すまんかった。お前のこと舐めてたわ。俺の攻撃を余裕で防ぐくらいだ。白蓮が警戒するのもわかった。』
『降参するなら、貴方の知ってること全部教えてもらうから。』
『降参?。ぷっ…ははは。するわけねぇじゃん。こっちは今まで手加減してやってんだぜ?。』
『手加減?。』
『おい!起きろ!炎獄剣 ラグバ!!!。』
その言葉と同時に、地面に突き刺した剣を引き抜いた。剣の刃に炎が走り、黒い炎が柘榴さんの周囲を取り囲んでいる。
『智鳴ちゃん!気を付けて!あれは触れるもの全てを燃やし尽くす地獄の炎 獄炎 です!逃げてください!。』
里亜さんが忠告してくれる。
けど、ここで逃げたら何も解決しないから。
『大丈夫です。私に任せて。』
『何故、貴女は私を…助けてくれるのですか?まだ1度しか話して無いのに…。』
里亜さんの疑問に私は真っ直ぐな気持ちで答える。
『仲間を探してる時の里亜さんが、とっても心配そうにしてたから!直感だけど!私は貴女が良い人だって思ったの!。』
『…それだけ…のことで?。』
『私にとってはそれで十分なんだよ!。』
『…。』
『ねぇ。里亜さん。』
『あ、はい。クロノフィリアに来る気あるかな?。』
『え?。』
『貴女なら、歓迎するよ!だから、アイツ倒すまでに考えておいてね!。』
私は獄炎を纏う柘榴さんに突っ込んだ。
『長話の後は特攻か?お前馬鹿なんじゃないか?。そんなんで俺の魔剣に勝てるわけねぇだろうが!。』
『馬鹿じゃないもん!。』
鉄扇と剣がぶつかり合う。
『ははは!こんなもんかクロノフィリア!。』
「くっ!強い…。」
『オラオラオラ!。』
柘榴の獄炎が纏う魔剣は全ての斬撃に炎の攻撃が上乗せされ一撃一撃が先程の攻撃の数十倍の威力となっていた。
また、剣が振るわれる度に炎が斬撃に乗せ放たれるため距離を取ることも出来ない。
「っ!ちょっとマズイかな?。」
『智鳴さん!。』
『てめぇは来るんじゃねぇ!。』
助けに入ろうとする里亜を獄炎が襲う。
取り囲むように里亜の周囲に展開された。
『迂闊に触れたら消し炭だ!お前はそこで大人しく見てろや!。』
『くっ…。智鳴さん!逃げて!。』
『逃がさねぇよ!。』
柘榴の肉体も魔剣の影響なのかスキル 身体強化が働き大幅に上昇していた。
「きゃっ!。」
一振で吹き飛ばされ壁に叩きつけられた。
「かはっ!。」
『ははは!。これが伝説のクロノフィリアか?弱すぎて話になんねぇ。』
「くっ…強い…。」
『今更、理解したところで遅せぇよ。雑魚!。オラ!。』
腹を蹴られる。
「ぐっぁ!。」
『ああ、ああ。言い声だ。そうだ。てめぇら雑魚はそうしてれば良いんだ。生意気に歯向かって来やがってクソが!。』
今度は顔を蹴られる。
『オラ!。』
「ぐっ!」
今度は肩。
『オラオラオラオラオラオラ!。』
胸、腕、足、顔…また腹。
蹴る。蹴る。蹴る。蹴る。蹴る。
『はははははは!最高の気分だ!。クロノフィリア?こんなのに白蓮のバカは怯えてたのかよ?信じらんねぇ?。』
ボロボロの姿を見て口を押さえる里亜。
『もう!止めなさい!柘榴!もう、彼女は限界です!これ以上は本当に死んでしまっ…キャ!』
取り囲んでいる獄炎が里亜を襲った。
『ごちゃごちゃ、うるせぇ。最初から殺す気だって言ってんだろ?次はお前だ。終わるまで静かにしとけ!。』
『くっ…。』
『さてっと。』
再び。近付いて来る柘榴。
『ああ。可愛い顔が台無しだ。可愛そうになぁ。まあ、殺してやるから死んでから後悔しろや。俺に喧嘩を売ったことをな。』
髪の毛を捕まれ、顔を無理やり上げさせられる。
『ははは、どうせ死ぬんだ。その前に良いことを教えてやる。』
「良い…こと…?。」
弱々しい姿を見て気を良くした柘榴。
嬉しそうに、楽しそうに、愉快そうに。
語りだした。
『俺ら白聖連団は白蓮の野郎の指示で様々な実験をしてきた。レベルの上限を上げる研究。魔力を無効化する機械。そして、無能力の雑魚を能力者にする研究だ。』
「そ、そんなに…。」
『特に雑魚を能力者にする方法がとにかくヤバくてな。人体実験を繰り返した挙げ句、成功したのはたった1人…。それが【完成された人間】だ。』
「完成…された…人間…?。」
『白蓮は国と協力し監獄に収容されていた犯罪者共を実験に使用した。犯罪者の精神力の強さに期待してな。そして成功したのが、例の事件の犯人さ。』
「…。」
『そう睨むなって。俺は関係ないんだからな。でだ。完成された人間は、やたら燃費が悪いらしくてな。しかも、能力者は食わねぇ。無能力者を餌として必要なんだとよ。』
「っ!まさか!。」
『そのまさかよ。あの地下から運び出された無能共。あれは全部ソイツの餌として連れて行かれてたわけだ。』
「…そ…んな…。」
『話は終わりだ。死ぬ前にスッキリ出来て良かったな。感謝しろよ?。』
勝ち誇った表情で見下す柘榴。
魔剣が再び熱を放出し始める。
「ふふふ。」
『は?。気でも狂ったか?。いきなり笑い出してよ?。』
異変に気付くのに時間は掛からなかった。
雰囲気が…変わった。
「だから言ったでしょ?こういうタイプの男は付け上がらせるとペラペラと要らないことまで話してくれるのよ。」
『はっ?。』
「あら?ビックリした?どう?狐につままれた気分は?。」
『何、言ってやがる?そんなボロボロの身体で?。』
「ざんねーん。それ。」
柘榴は後ろから突然現れる気配に振り返る。
そこには、智鳴がいた。
傷の1つも負っていない。
服も赤いチャイナ服になって…。
「偽物でした~。本体はこっち~。」
『馬鹿な!?。』
「それで~。そのボロボロにされた分身体なんだけど。アンタがボコボコ蹴るからもう臨界よ~。」
強烈な音と急激な光が放たれる分身体。
慌てて分身体を見た柘榴。
だが既に遅かった。
『なっ!?。…ぶっがぁーーー!!!』
至近距離での爆発。
防御も間に合わずに爆炎に巻き込まれた。
ボゴゴーーーーーーーーーーーン!!!!!
「【炎舞 炎傀儡】。さっき手加減してくれたみたいだし、それに免じて威力は抑えてあるよ。良かったわね。」
『はぁはぁ…クソが!舐めやがって!殺してやる!。』
「ああ、そういうのいいから。散々アンタのターンで進ませてあげたんだからさ。今度はウチの番。【炎舞 炎狐】。」
智鳴が召喚する炎の身体を持つ9匹の狐。
「周りの雑魚をお願い。」
こーーーーーーーーーん!。
智鳴の命令に鳴き声で答えた狐達は周囲にいた騎士達に襲い掛かった。
「アンタは私が直接殺してやるよ。【炎舞 炎陣刀】。」
両手に持つ鉄扇から高密度に凝縮された炎の刃が現れる。
「その剣に相当自信があるんだろう?。遊んであげるから掛かってきなよ?。」
完全に立場が逆転していた。
優位を確信し分身体をいたぶっていた柘榴を一方的に弄んでいる智鳴。
『クソがクソがクソが!!!舐めるなぁああああああああ!!!。』
ぶつかり合う炎の刃。
圧倒的に激しく燃え上がるのは黒い炎。
手数も多く、その斬撃は無数の軌跡を残す。
黒い炎も強化された肉体も全てが智鳴を殺すことに注力している。
が…。
「惜しい。はい!。もうちょっと左!。」
当たらない。【炎舞 炎舞葉】。
高熱により歪んだ空気を纏い実体を歪ませるスキル。
『ちっ!何で当たらねぇ!?。』
「はい!隙ありぃー。」
何度も虚空を斬り裂く柘榴を見兼ね刀を振り下ろす。剣を持っていない左腕が宙を舞った。
『なっ!?ぎゃぁあぁああああああ!!!腕がぁぁああ!俺の腕がぁぁあああああ!!!。』
尻餅をつき転げ回る柘榴。醜い…。
「あらら?。よく喋る男は断末魔も汚いわね?。」
『てめぇ。よくもぉぉおお!。』
「あっ…言い忘れてたわ。」
『はっ?。』
「アンタが今戦ってたのも…」
『ああっ!?』
ゴガーーーーーーーーーーン!!!!!。
2度目の爆発。当然威力は控えめ。
建物を壊すわけにはいかないからね。
「…偽物だから。」
本物の智鳴登場。
『ぎゃぁあああああああああああ!!!。』
柘榴は、さっきの私のように壁に背を当てた状態だ。ふふふ…無様ね。
「どう?さぁて。そろそろトドメかしら?。」
『くっそぉぉおおおお!殺してやる!。』
「はいはい。聞き飽きたわよ。」
眼前に炎刀を突き付ける。
「立場が逆になったけど?言い残すことはある?。」
『くっそ。何故だ?何故…俺の獄炎が…。』
「あんなマッチの火みたいな弱火で何言ってるのかしら?。」
『弱火だぁ!?。』
「ええ。ほら。」
ウチは里亜の周囲を取り囲んでいる黒い炎を操り指先に集める。
『あっ?炎が…。』
「ふぅ…。」
息を吹きかけると炎は、あっという間に欠き消えた。
『お…俺の…獄炎が…。』
遂に心が折れたのか絶望の表情に変わる。
「じゃあ。トドメね。さような…。」
『そこまでだ!!!。』
「え?。」
声に振り向くと騎士が3人立っていた。
地下続く階段の前に…。
『動くな女!コイツらがどうなってもいいのか?。』
『おねぇちゃーーーん。』
『あーーーーーーーん。』
騎士に取り押さえられた3人。
『柘榴様!地下より子供2人。老婆が1人発見しました!!!。』
「彗!修!睦美!!!。」
『女!。我等に放っている狐モドキを消してもらおうか!。』
「くっ…。」
炎狐達が消える。
『よぉし。良い娘だ!。柘榴様!。』
『へへへ。形勢逆転だな。』
失った左腕を押さえながら立ち上がる柘榴。
『おら!ババア!速く動け!。』
「アンタ達止めて!その人に乱暴しないで!。」
『ははは。そうかコイツらを守るためにここで戦ってたってことか!。』
ウチの弱点を知った喜びが抑えられないようで睦美に近付いていく柘榴。
『止めなさい!柘榴!。』
『動くな!里亜!てめぇも動いたらコイツらを殺す。』
『くっ…。』
里亜も動けないでいる。
『ん?待てよ。女…今、彗と修って言わなかったか?。』
柘榴が2人の子供を覗き込む。
騎士達に取り押さえられた子供の2人では振りほどくことは出来ない。
『おねぇちゃん…。』
『いやぁあああ…。』
顔を近付けられ怯える姉弟。
『似てるな…。もしかして…。お前ら…。』
どうやら…正解にたどり着いたようだ。
『おいおい。マジか?敵にやられて子供に戻されるとか…どんだけ騎士団の面汚しだよ!!!ババア、お前の仕業か?。』
「ち、違う!その子達は関係無い!。」
『俺はこのババアの聞いてるんだぜ?まあ今の台詞で俺様気付いちゃったけどね!いや、確信したって感じかなぁ。』
「あっ…。」
ウチは心の中で笑っていた。
コイツ…馬鹿だ…。
『おい!里亜ちゃんよぉ。このガキ共が探してたクズ共だってよ。』
『…そうみたいですね。まさか、子供の姿にされているなんて。もう十分でしょ?柘榴。目的は達しました。悪ふざけは止めて基地に帰りましょう。』
『なぁにバカ言ってるんだぁ?このガキ共はここで殺す。もちろんお前も。そこの女も。このババアもだ!。』
「止めてー。子供達に手を出さないで!!!。」
『だーめーだーねー。まずはガキ共を殺す。次は女、お前だ。次に里亜。最後にババア。諦めな。』
剣を振り上げる柘榴が子供達を見下ろす。
『おねぇちゃーーーん!怖いよーーー!!!』
『お姉ちゃん…た…助けて…。』
助けを求める子供達。
ええ。助けてあげるわ。ウチじゃないけどね。
振り下ろされた剣は肉を斬り裂いた。
『あぁん?』
『え?。』
『おばぁ…ちゃん…?。』
「ああぁああああ…睦美ぃぃいいい!!。」
計画通り!。
『ちっ…つまらねぇ真似しやがって。殺す順番が変わっちまったじゃねぇか。』
子供達を庇った睦美。
肩口から腰まで背中を真っ二つ。
『ああああああああああああ!!!!!。』
『おばぁちゃーーーーーーーーーん!!!。』
泣き叫ぶ子供達。
『ああ。うるせぇ。人質として最後に殺そうと思ったが2人いるし…どっちか殺すか。』
『ひっ…。』
『い…や…。』
怯える子供と笑う男。
けど…もう男の番は…ターンは来ない。
『なっ!?なんだ!この炎は!?。まさか…女!これも貴様か!。』
「違いまーす。それより、気を付けなアンタ。」
『は?ぶっ!?。』
柘榴の顔にめり込む棒。
『はぁぁぁあああああ!ワシっ復かぁぁあああああああああああああつぅうううう!!!。』
小さな…5歳くらいの少女が柘榴を手に持つ青龍刀でぶっ倒す!!!。
『おう!坊や!ワシを殺してくれて!ありがとな。』
『え?。誰?。』
『え?え?。』
困惑する姉弟。
炎に包まれた老婆の肉体から現れた少女に驚いている。
『彗。修。怖い思いをさせてすまなかったな…ワシじゃ、睦美じゃ。』
『おばぁちゃん?。』
『え?そうなの?』
『おう!そうじゃ!ワシじゃ!。』
『わーーーい!!!。』
『おばぁちゃーーーん!!!。』
『さて。よっと!!。』
睦美の小さな身体が残像を残し消える。その場にいた8人全ての騎士が…。
『ここ…どこ…ママーーーーーーー!!。』
子供になった。
『ほれ、泣くな。ワシのとこに来い。』
『誰?。』
『お前達の、ばぁちゃんだ。』
7歳くらいに成長した睦美に子供達が集まった。
『っぅうううう。いってぇぇええ。何が起きやがった?。』
「あら?起きたね。寝てて良かったのに。どう?まーた。狐につままれちゃったけど?。」
『おっ!女ぁぁあああ!!!。』
ウチの襟を掴み上げる柘榴。
ウチの身体が持ち上がる。
「ねぇ?睦美?。」
『なんじゃ?。』
「コイツも子供にする?。」
『いや、いらん。』
「そうだよね。おっけー。」
ウチは柘榴を見た。
『何を言っている?。』
「アンタさぁ。もう死ぬよ?。」
『はっ?。』
「子供達が居たから建物に危害を加えるわけにいかなかったから使わなかったけど。もう、その必要は無いしさ。」
その時、柘榴は気付いた。
頭上から降り注ぐ神々しい光と肌を焼くような熱気に。
『こっ…これは!?。』
「神技…炎舞 炎天陽光!!!。」
太陽がそこにはあった。
2つ目の太陽。
熱気は全てを砂に変え、光は全てを破壊した。
建物は崩れ、植物は枯れ…そして、燃える。
気付いた時には遅かった。柘榴は瞬く間に蒸発した。
悲鳴も断末魔も上げる時間は用意されなかったのだ。
ーーー
『やれやれ。相変わらずじゃな。智鳴よ。』
一方、睦美は、10人の子供達と彗と修。そして、里亜を炎の翼で抱えて飛び、離れた場所に降り立った。
『これが…クロノ…フィリアの力…。』
あまりの威力に唖然とするしかない里亜。
『凄いじゃろ?。教会無くなったぞ!。』
『あっ…私まで助けていただき…ありがとうございました。』
『いんや。礼はいらん。智鳴の声は聞こえていたからな。最初から助けるつもりじゃったよ。』
『貴女は誰なんですか?。』
『ワシか?クロノフィリア所属 No.6 睦美じゃ。種族は 転生炎鳥神族。つまり、不死鳥じゃな。』
『不死鳥…。そんな珍しい種族が…。』
と、その時遠くから声が聞こえた。
『睦美ちゃーーーーーん!!!。』
『おっ、来たか。』
『智鳴さん…。』
睦美と里亜。合計10人の子供達が智鳴を迎えた。