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番外編 1日お部屋デート 累紅の場合②

 外出デートから自室へと帰ってきた私たち。

 部屋に戻ってきて私たちがしたことは、閃君との約束のアレ。

 それは、使った筋肉をマッサージでほぐすことだった。

 下着姿でうつ伏せに横になった閃君の腰にタオルを被せて跨がる。


『閃君。重くない?。』

『うん。柔らかい。』

『ふぇ?。ちょっと!。それだと質問の答えが違うよ!。』

『ははは。うそうそ。重くなんかないよ。寧ろ軽いくらいだ。鍛えていても累紅は小柄だからな。上に乗られても全然平気だ。』

『むぅ…戦士としては喜べないけど、女の子としては嬉しいのかな…。』


 素直に喜んで良いのか分からないよ。


『よっと。ぐいぃ~。ぐいぃ~。ぐいぃ~。』


 閃君の背中をゆっくりと揉みほぐしていく。

 沢山使った筋肉をマッサージしてリラックスして貰うんだぁ~。


『おお~。気持ちいい…。』

『ぐいぃ~。ぐいぃ~。ぐいぃ~。』

『ん…。はぁ…。ふぅ…。ぅ…。』


 な、なんか…閃君の吐息がエッチだよ…。

 それに背中から感じる適度に引き締まった感触と温かさ…。

 な、なんか…変な気分に…。

 た、堪えるの…堪えるんだ…私…。今はそんな場面じゃない…。

 女の子ことして、彼女として、彼氏を癒してあげてる最中に変なこと考えるな!。


『やっぱ、累紅は上手いな。』

『そ、そうかな?。普段自分でもやってるからかも。』

『そうかもな…。ぅ…。はぁ…。ふぅ…。』


 マッサージが効いているのか少しずつ閃君の口数が減っていく。

 代わりに、閃君の艶かしい吐息が増えた。

 マッサージで体温が上がったのか、私と密着してるせいなのか、少しずつ閃君の身体から汗が出てきて、閃君の匂いが広がっていく。

 大好きな人の汗の匂い。

 ヤバい。ヤバい。ヤバい。ドキドキしてきた。

 いや、最初からドキドキはしてるんだけど。

 色々な如何わしい妄想が勝手に頭の中に…。


 はっ!?。

 そうだよ。今日は一日デート。明日の朝まで閃君と一緒な訳で…。

 そうだよ、今日は一緒に寝る筈だよね?。

 恋人同士の男女が一緒に寝る。

 勿論。同じベッドに。

 美緑ちゃんの反応を思い出す。

 一日デートを終えた前と後で明らかに変化した美緑ちゃんが閃君を見つめる視線。

 その顔はどう考えても完全に堕ちた女の顔だった。

 どんなことをしたのかを聞いた時、夜以外の話しは流暢だったのに対して、一緒に寝た時の反応は…真っ赤になり、顔を隠す動作。恥ずかしさと嬉しさが混ざったような表情。濁した言葉。

 つまりは…そういうことをしたんだよね。

 閃君と美緑ちゃんが…。


 そして、今日は私と閃君。

 この後…夜は…ひぃん…想像しただけで身体が熱いよぉ~。

 私。もしかして…いや、もしかしなくても…閃君に抱いて貰うんだ…。

 

 嬉しくない訳がない。

 私を女として閃君が抱いてくれるんだ。

 色んな美少女に囲まれている閃君が今日は私だけを見てくれて、私の身体を…。


『ひゃあああああぁぁぁぁぁ!?!?!?。』

『うおっ!?。ど、どうした!?。いきなり奇声を上げて!?。』

『あ、ごめんなさい。つい、色々と妄想を…。』

『妄想?。……………まぁ、深くは聞かないよ。よっと。おお。身体が軽い。凄く楽になったよ。ありがとう。累紅。』

『あ、うん。どういたしまして。』


 閃君の上から退けると立ち上がる閃君。

 つい、閃君の身体を眺めてしまう。

 下着だけの閃君の裸…。

 格好いい顔。広い肩幅。太い腕。厚い胸板。硬くて割れた腹筋…。

 私の視線は徐々に下へと…。ドキドキ…。


『どこ見てんねん!。』

『はうっ!?。』


 閃君のチョップがおでこに炸裂する。

 痛い。閃君の身体を見てたのバレちゃった。


『ほら。交代。累紅も横になりな。』

『う、は~い。けど、閃君。あんまり見ないでね。』

『散々人の身体を視姦してた奴の台詞か?。』

『ぅ…だって…閃君の身体…凄い好みなんだもん。』

『ぅ…それは嬉しいが…ちくしょう。責めるに責められないこと言いやがって。まぁ、良いや。ほら。横になれ。』

『うん。』


 私は身体に巻いていたタオルを外し下着姿になる。

 ちょっと恥ずかしいけど、閃君になら見られても良いもんね。

 きっとこの後、色々と見られちゃうだろうし、その予稿演習ということで…。


 …っ…やっぱり恥ずかしいよぉ~。


『痛かったら言えよ。だいぶ良くなってきてるが、累紅はまだ無駄な筋肉の使い方してる時があるからな。変に負担が蓄積してるぞ。ほら、こことか。』

『はぎゃうっ!?。』


 閃君が私の腰に指を突き立てる。

 その瞬間、背筋に電流が走った。

 変な声と共に全身が跳ねる。


『痛い、閃君…ギブ…。』

『何言ってんだ。それだけ無理してるんだぞ。ちゃんとほぐしてやんねぇと後が辛いんだ。大人しくしてな。』

『うぅ…痛いの嫌ぁ…。』

『確認しただけだ。後は優しくするから。ほら下着姿なんだからあんまり暴れるな。色々と見えるぞ。』

『っ!?。閃君のエッチ。』

『まぁ、否定はしないけどな。ほら、今はマッサージだ。諦めろ。』


 閃君の手が再び背中に。

 一度体験した痛みに心の中で身構える。

 けれど、今度は全然痛くない。

 さっきの指先一点攻撃とは違い、閃君の大きな手のひらが背中を広く撫でるようにほぐしてくれてる。

 痛みにすらならない。優しい手つきで適度な快感を与えてくれてる。


『どうだ?。痛くないだろ?。』

『あ、あれ?。う、うん。気持ちいい…かも。』

『そうか。』


 少しの間、背中を中心に撫でられた後は、肩へと移動する。

 肩、再び背中、腰。そして、また背中から肩へと戻っていく。


『はぁ…ん。ぅ…ん。あん。』

『………………。』

『んあ。………あぁん。』


 マッサージ気持ちいい...。

 無意識に声が出てしまう。


『おい。累紅。堪能してくれるのは有り難いが、もう少し声を抑えてくれ。そんなエロイ声出されると我慢できなくなる。』

『あ、ごめん。凄く気持ち良かったから…。』

『そう言ってくれるのは嬉しいが、恋人のそんな声をマッサージ中、永遠と聞かされる身にもなってくれ…。』

『むぅ。閃君だってさっきエロイ声出してたよ!。私がどれだけ堪えてたことか!。』

『そんな声出してたか?。』

『うん!。生き地獄だったよ!。』

『そうか…何かすまん。』

『あ…私も…ごめんね。声…抑えるよ。』

『ああ、その方が助かる。』


 温かい閃君の大きな手が私の身体を撫で回す。その箇所が熱を帯び、その熱は全身に広がっていく。 

 閃君から与えられる快楽に必死に堪えた。

 全身に走る電撃に身悶える。

 両手で口を塞ぎ、涙目になりながら…。

 全身に広がる熱と快楽に、最後は全身が痙攣した後、我慢出来ずに限界を迎え気を失った。


『よし、これで終わりだ。………あれ?。累紅?。反応がない?。お~い。って、大丈夫か?。何か凄い顔…は、語弊があるな。幸せそうな顔してるけど!?。おい!?。何で涙で顔がぐちゃぐちゃのまま気を失ってんだよ!?。累紅!?。大丈夫か?。』

『あへ~。』

『またかよ!?。てか、せめて服着てからにしてくれ~。』


 そんな声が聞こえたようなぁ~。


『あれ?。私…。』

『起きたか?。』

『また、閃君の顔が目の前にある?。』

『ああ、お前また気絶したんだぞ?。大丈夫か?。』

『あはは…恥ずかしながら、エッチなこと考えると気を失っちゃうみたい…。』


 また、閃君に膝枕されちゃってるね。


『エッチなこと考えてたんかい!?。』

『そんなの…考えるよ。大好きな閃君と一緒にいるんだもん。ドキドキしないわけないもん!。』

『そ、そうか…。………まぁ、それは俺もだな。』

『え?。』

『俺も、累紅と一緒にいれてドキドキしてるよ。ずっとな。』

『閃君も?。』

『当たり前だろ?。俺にとって恋人は特別だ。そして、今日はその想いを累紅にだけぶつけてるんだからな。』

『けど、私…今日全然女の子らしいところ見せれてないよ?。料理も、運動も、全然女の子っぽいことしてないし。』

『はぁ。そんなこと考えてたのか?。俺からしたら累紅は十分女の子として魅力的なんだがな。』

『そ、そうかな?。』

『ああ。頑張り屋なところも。何でも一生懸命なところも。真っ直ぐなところもな。それに動きに品があるっていうか、育ちの良さを感じるんだよな。』

『あはは…まぁ、厳格な両親に育てられましたので…。』

『まぁ、そんなとこも含めて全部好きだってことさ。』

『そうなんだ…。』


 閃君が私のこと…。

 めっちゃ嬉しい…。


『えへへ…。そうなんだぁ~。』

『ああ。じゃないと恋人の関係になんてなってないよ。』


 閃君が頭を撫でてくれる。

 

『ああ。そうだ。これ着てみてくれ。累紅へのプレゼント。』

『あっ…。それ…。』


 灯月ちゃんたちに聞いてた。

 閃君のプレゼント。

 私たちのために作ってくれた衣服。

 私にもあるんだぁ~。


『これ、私に、良いの?。』

『ああ。部屋着だから流石に外には着ていけないだろうが、動きやすいように作ったんだ。』

『やったぁ。ありがと!。閃君!。ちょっと待ってて着てくるから!。』

『こら!。いきなり立つな!。お前今下着姿なんだから!。』

『ひゃわっ!?。そうだった!。そ、それじゃあ…着てきま~す。』


 落ちたタイルを拾って身体を隠し、いそいそと脱衣室へ移動する。

 はぁ…また、失敗だよぉ。

 けど、えへへ…閃君が私のこと魅力的って、全部好きって言ってくれたし…えへ。えへへへ。

 よぉし!。気を取り直して着替えを済ませちゃおう!。


 閃君の用意してくれたのは半袖の大き目なシャツと膝上までのショートパンツ。

 私のイメージなのか螺旋状の刺繍が施され、所々、通気性の良い薄い布になっている。

 しかも、全体的に丸く作られていて然り気無く女の子らしいキュートさを演出している。


『わぁ…可愛いかも。』


 早速、袖を通す。

 うん。動きやすい。けど、ちょっと足出過ぎかも?。


『せ、閃君。着てみたけど、どうかな?。』

『ああ。作った自分で言うのもなんだが、似合ってるよ。累紅は小柄だけど足が長くて綺麗だから、そんな感じも似合うんじゃないかと思ったんだ。普段はジャージで裾の長いヤツだしな。』

『あはは…私、あんまり足を出す習慣なかったんだよね…けど、ありがと。これなら着れそうだよ。可愛いし。気に入っちゃった。』

『そうか。喜んで貰えて良かった。』

『ふふ。閃君。いつも、ありがとね。』

『はは。こちらこそだ。じゃあ、一段落したし、晩飯でも作るか。』

『うん。一緒にね。』

『ああ。約束だからな。』


 立ち上がった閃君と一緒にキッチンへと移動する。

 

『じゃあ、まずは累紅にキャベツを切って貰おうかな。一口大でざっくりで良いから。』

『うん。えっと。えいっ!。』

『…うん。キャベツが舞ったな。天井にぶち当たったぞ。』

『あれ?。もう一回。えいっ!。』

『…まな板が真っ二つに…。』

『あ、あれ~。おかしいなぁ?。』

『ああ。おかしいな。てか、力み過ぎか。ほら、こうやって軽く包丁を持って。』

『ぅ…うん。んん!?。』


 背後に回った閃君が私に覆い被さるように後ろから手を伸ばした。

 包丁を持つ手に手を添えて、もう片方の手もしっかりと握ってきた。

 せ、閃君が…近い…。それに声が耳元で…。

 直接、閃君の体温が…背中に伝わって…。


『猫の手の形な。それで押えて動かないように、で、ゆっくりと包丁をスライドさせる。』

『こ、こう?。』

『そうだ。やればできるじゃないか。』

『え、えへへ。うん。できたぁ。』

『そんな感じで一口大に切ってくれな。』

『あっ…。う、うん。』


 閃君の身体が離れた。

 伝わっていた温かさが消えて、少し…寂しい。

 けど、閃君が横にいるから大丈夫。


『キャベツが終わったら、これも頼むな。』


 ボールに入れられた野菜。

 ミニトマトに、キュウリに、玉ねぎに…。

 ミニトマトを半分に切って、キュウリを…。


『細切りな。』

『で、出来ないよぉ。』

『仕方ないな。ほら、また手を貸して。』


 えへへ。また閃君に密着されちゃった。

 温かいなぁ…。


『こう均等な長さに切って、で、次は薄く縦に切って、後は同じ幅でズザーーーっと。』


 あっという間にキュウリが細切れに。

 

『ついでにキュウリも薄くスライスしてズザーーーっと。』

『何でそこだけ効果音なの?。』

『ん?。なんとなく。』


 私が切ったキャベツの盛られたお皿に切った野菜が乗る。

 

『このままやるか。』

『え?。きゃう!?。』


 閃君は私の背中にくっついたまま料理を続けた。

 閃君の動きに誘導されながら私の身体が動く。


『鍋に水を入れて火にかける。沸いたら火を少し弱めて塩少々、酒も少々。で、薄切り肉をささっと茹でていく。』


 器用に私の手を操作して茹で終わったお肉をざるに上げていく。

 

『そして、冷まして水気を取って野菜の上に投下!。』

『えいっ!。』

『で、白ごまにマヨやら醤油やら酢やら砂糖やらを油と混ぜた特性ごまドレッシングをかけて出来上がり。俺と累紅の冷しゃぶだ。』

『あの…私、殆ど何もしてないよ?。』

『そんことないさ。俺のためになってたよ。累紅ともっとくっついていたかったからな。』

『はえ?。そっちが目的?。』

『うん。累紅と同じ気持ちだろ?。』

『っ!?。』


 もしかして、一度閃君が離れた時のこと言ってる?。私の気持ちバレてたの?。

 そう考えると急に恥ずかしくなってきた。


『もうっ!。もうっ!。もうっ!。』


 恥ずかしさを誤魔化すように閃君に抱きついて胸を叩く。

 はぁん。もう!。見上げた時の閃君の顔…大好き!。


『ほら、米もちょうど炊けたし飯にしようぜ。俺と累紅の共同作業だ。ほれ、食べるだろ?。』

『うん。食べる。』


 閃君と一緒に作ったことには違いないし、恥ずかしかったけど嬉しかったから良いかな。

 

『せ、閃君。あ~ん。』

『あ~ん。もぐもぐ。おお、我ながら美味いな。米にも合う。ほれ、今度はこっちから、あ~ん。』

『っ…あはは…自分からは良いけど、される側は恥ずかしいね。』

『二人っきりなんだから気にするなよ。』

『閃君だから気にするんだよ!。』

『そうか?。恋人らしくて良いとおもうんだがなぁ。』

『さ、さげちゃ、だ、だめ!。やるよ!。食べるよ!。あ~ん。』

『よし、あ~ん。』

『もぐもぐ。美味しい…。』


 美味しいと思うけど…正直緊張し過ぎて味なんか分かんないよぉ…。

 

『………。累紅。』

『ごくん。な、何?。っ!?。』


 呼ばれて閃君の方を見た瞬間、唇に柔らかい感触が広がった。

 見開いた目には閃君の顔がドアップで…。

 いいいいい、今!?。私、キスされてる!?。

 な、何でこのタイミングで?。

 どうして、柔らかい、びっくり、気持ちいい、閃君の顔が近い、温かい、大好き…。顔が熱い、身体も、頭の中クルクルして…。


『ししし。可愛くてつい我慢出来なかった。悪りぃな。』

『きゅ~~~。』

『うおっ。これでも気絶すんのか!?。累紅おぉ!?。』

『閃君…幸せだよぉ…。』

『そ、それは良かったよ…てか、起きてくれ~。』


 どうも感情が恋愛方向に昂ると気を失ってしまうみたいです。


『閃君。あのね。灯月ちゃんたちに聞いたんだけど、デートの時は皆、閃君と一緒にお風呂に入ってるんだよね?。』


 ご飯を食べ終わって一息ついた時、頃合いを見計らって尋ねてみた。


『ん?。ああ。そうだな。累紅はどうする?。嫌なら別々で入るけど?。』

『嫌じゃないよ。寧ろ一緒に入りたい。それに…。あの…。今日は一緒に寝てくれるんだよね?。』

『ん?。ああ。俺はそうしたいが、累紅が良ければな。』

『あのね…私…不意打ちには弱いけど…心の準備はしてたの。だから…閃君と一緒が…良いな…。』

『ああ。俺も一緒が良いよ。じゃあ、一緒に入るか。』

『う、うん。』


 緊張と恥ずかしさと嬉しさ。

 それらがぐるぐると頭の中で渦巻いてるけど、後悔だけはしたくないから。


 と、そんな訳で現在。

 私の身体は湯船の中。

 背中には閃君の熱を直に感じています。

 当たり前だけどお互いに裸です。

 閃君の全部を見てしまいました。勿論、私のも…。

 胸の鼓動が痛いくらい激しいです。


『狭くないか?。』

『ひゃい!。は、はい。大丈夫です…。』

『何故、急に敬語?。』


 変な声出た。こ、声が高くなっちゃう。


『なぁ、累紅。無理しなくて良いんだぞ?。累紅には累紅のペースがあるんだし、今日じゃなくても…。』

『いいえ。今日が良いです!。ずっと待ってたんです!。』

『そ、そうか?。』

『あ…う、うん。ごめんね。声大きかったよね。』

『気にするな。それだけ、俺との関係を真剣に考えてくれてたんだろ?。嬉しいよ。』


 ひゃあああああぁぁぁぁぁ。

 せ、閃君が私を後ろから抱きしめてくれて~。

 閃君の太くて硬い腕が~。浮き出た血管がエッチだよぉ~。


『せ、閃君。私の身体…変…ですか?。』

『変?。全然、凄く綺麗だよ。適度に鍛えられて、それでいて細くて。肌も綺麗だ。』

『あわわわわ…。』


 気絶…しない!。

 今日は最後まで頑張るんだ!。


『せ、閃君!。』

『おっと!?。急に身体の向きを変えてどうした?。』


 閃君の身体に抱きつき、その顔を真剣に見つめる。

 私の想いを改めて閃君に伝える。


『閃君!。こ、これから…その、不束者ですが、宜しくお願いします。』

『此方こそ。宜しくお願いします。』


 慣れないけど、自分から閃君の唇に自分の唇を重ねる。

 閃君はそんな不器用な私を優しく受け止めてくれて。

 静かに唇を離すと、恥ずかしさと嬉しさから自然に笑いが出てくる。


『えへへ。』

『あはは。累紅にしては、流石に大胆だったな。』

『え?。』


 閃君の視線が少しずつ下へと…。

 重なっていたのは、唇だけじゃなかったみたい。

 その事実に突き当たった瞬間、全てを理解した。

 

『あわわわわわ…閃君!。』

『あ、はい。』

『や、優しくしてね。』

『ふふ。ははは。ああ。勿論。』


 その夜、私と閃君は愛し合った。

 閃君の全てに包まれた私は幸せを全身に感じていた。

 肌に伝わる熱と鼻に香る匂い、耳に残る声、それらが脳と思考を溶かし閃君のことしか考えられなくなる。身体と唇は何度も重なり次第に全身に浮遊感を感じ始めた。

 クラクラとする頭で、目一杯の笑顔を作り。


『閃君。大好き…です。』


 精一杯の想いを口にした。


『ああ。俺もだよ。累紅。愛してる。良く頑張ったな。』

『うん!。』


 閃君に頭を撫でられた後、私の意識はゆっくりと沈んでいった。

次回の投稿は17日の木曜日を予定しています。

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