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第3話 クロノ・フィリアの現状

 それから、5分くらいが経過し基汐と光歌が風呂場から戻ってきた。

 改めて周囲を見渡す。

 カウンターの席にだらしなく座っているのがクロノ・フィリアリーダーの無凱(ムガイ)のおっさん。

 その隣に座るのが副リーダーでこの店のマスターである(ジン)さん。

 店の中心にある長テーブルの横に置かれたソファーに座る幼馴染みの基汐(キシオ)

 基汐の隣で寄り添うように座るマスターの娘で基汐の恋人である光歌(ミツカ)

 長テーブルの椅子に腰掛けるマスターの親友の賢磨(ケンマ)さん。

 基汐たちの座るソファーの向い側に置いてあるソファーに座る俺。

 俺の膝の上に乗っている最年少の瀬愛(セア)

 俺の右側に文庫を読んでいる幼馴染みの氷姫(ヒメ)

 左側に幼馴染みの智鳴(チナリ)

 後ろに立つのが義妹で自称メイドの灯月(ヒヅキ)

 この場にいる10人が主にこの店を拠点にしているクロノフィリアメンバーだ。


『さて、全員揃ったしそろそろ始めようか。』


 マスターが手を2回叩き全員に合図を送る。

 その言葉に全員が頷いた。


『じゃあ、まず閃くんからお願いしようかな。』

『わかりました。』


 俺は現在日本という国だったこの地域を事実上支配している白聖連団のエリアへ視察に行ってきたことを報告する。


『ーーーーー現在、白は特に大きな動きを見せてはいなかった。だが、水面下では能力の研究から無所属の能力者を集め勢力の拡大を狙っているみたいだな。』

『なるほどねぇ、勢力拡大は様々なギルドで行われているけど、国のトップともなると規模も研究人数も内容も他より頭一つ抜き出るよね。』

『僕が聞いた話では他のギルドに所属している者たちですらスカウトという形で勧誘しているみたいだね。中には賄賂じみたモノまで使ってるらしいけど。』

『何処の勢力も力の強い能力者を欲しがってますからね。』

『黄の娘たちもスカウトされたって、つつ美さんも言ってたかも。』

『赤みたいに正々堂々と真正直に勧誘するならまだ良いけどね。』

『ああ、そういう点なら現状の問題は黒と緑かね。』

『そう、アイツら脅迫や人質、誘拐とか平気でやるような連中だからな。』

『僕たちは表立って動けないからね。』

『もしかしたら、あちらは動くかも知れないけどねぇ。』

『あちらって?』

『僕の妻のことかな?』

『ああ、豊華さんのことですか。』

『あと、代刃君たちもね。』


 クロノ・フィリアはここにいる10人のメンバー以外にあと13人存在する。つまり、半分以上は別行動をしている。

 残りの13人の中でも7人はクロノ・フィリア内で好戦的な者たちが多く、クロノフィリアに敵対する者たちを 消す ために行動している。

 つまり、やられたらやり返すという考え方の奴らばっかりの困ったメンバーだ。


『そうそう、アイツら、また 白聖 に喧嘩売ったみたいだった。懸賞金上がってたぞ。』

『またかい?』

『アイツらもう姿隠す気が無いからモロに顔写真付きの手配書になってた。』

『ああ、うちの嫁がすまないね。』

『いいえ、賢磨さんが謝ることじゃないですよ。』

『いや。責任を持って豊華さんには注意しておくから。』

『ついでに、何故か俺と基汐の懸賞金も上がってた…』

『マジで!?俺らこの2年何も表立って動いてないんだが…』

『奴らのデータで顔と名前が一致してるメンバーが俺ら含めて10人。裏で動いてるアイツら7人に、俺とお前、で…あと無凱のおっさんもか。』

『あらら、僕もかい…。困ったね。』

『見事に前衛チームだな。』

『ダーリン…カワイソウぅ。』

『まあ、大丈夫だ。それより光歌が手配されてないことに安心したぞ。』

『ダーリン…』

『そこ!ラブラブしない!』

『まあ、指名手配の件はもう少し時間をかけて解決しよう。出来れば全員揃って備えたいんだけどね。』

『アイツらをまず止めるところからか…』

『何とか合流出来るように僕も裏で動いてみるよ。』

『おっ。珍しいね無剴君。自分から動くなんて。』

『まあね。僕の作ったギルドだからね。責任は持つさ。』


 深いタメ息の後、新しい煙草に火をつける無剴のおっさん。

 全員が何とも言えない空気に場が包まれる。


『そう言えば、聞きましたか兄ぃ様。』

『ん?何だ灯月?』

『私も 神無ちゃん に聞いた話なので詳細なところまではわかってないのですが。何でも、今都市部に現れる謎の銀髪少女の情報にも懸賞金が懸かっているそうですよ。』

『え?何それ?』

『あっ、それ私も聞いたことあるよ。灯月ちゃん。』

『私も…』

『お兄ちゃん。瀬愛も聞いたよ。黄のお友達が言ってたの。』

『謎の銀髪少女って、もしかして俺のことか?』


 その場にいる俺以外の全員が首を縦に振る。


『え?無剴のおっさんとマスターも知ってるの?基汐も光歌も?賢磨さんまで?』

『そうだね。てっきり閃君も知っているものだと。』

『閃。人気者。』

『もしかして、俺…身バレしてる?』

『いいえ。むしろ情報が少ないからこその懸賞金なのではないでしょうか。』

『灯月ちゃん。どういうこと?』

『兄ぃ様の女性としてのお姿は、それはもう私と兄ぃ様が求め夢見た最高で至高の美しさを持っています。それはもう、フードなんかで顔を隠されたところで溢れ出るオーラまで隠しようがありません。それはもう、そのような存在が突然街中に現れれば噂の一つや二つ立ってもおかしくありません。』

『それはもうって言い過ぎじゃね?てか、バレないように行動してたつもりなんだけどな。』

『人の目はどこにあるかわからないって事だね。注意しててもね。』

『監視カメラの死角を移動した事で逆に怪しまれたのかも知れないし、まあ、あくまでもまだ噂の域を出るものじゃないから大丈夫じゃないかな。』

『そうか。てか、何で情報だけで懸賞金懸かってるんだ?』

『兄ぃ様。これも噂ですが。なんでも白聖の偉い方がシルエットしか写っていない映像で兄ぃ様の姿を発見して美しい銀髪とフードからでもわかるスタイルの良さに心奪われたそうで是非お嫁さんに欲しいと言い出したところから懸賞金が懸けられたらしいのです。』

『なんだろう…想像しただけで吐き気が…』

『安心して、閃。』

『氷姫?』

『閃は、私のもの。だから、守るよ。』

『あ、ああ。色々突っ込みたいが、ありがとう。』

『私も閃ちゃんのこと悪い人から守るよ。』

『私もです。兄ぃ様。』

『お兄ちゃん。私も頑張って守るね。』

『うん。閃君は幸せ者だなぁ。』

『そうだね、微笑ましくなる。』

『若いねぇ。』

『ダーリン!ワタシたちもマけてられない!ラブラブしようよ!』

『うむ、仁さんがいる前だとキツイな。』

『僕は気にしないよ?基汐君のことは認めてるからね。』

『あ、ありがとうございます。』

『ほら!ダーリン!ちゅーしよぉ。』

『こら。場所を弁えろ。』

『はーい。えへへ。ダーリンにデコピンされちゃった。』

『こっちも、微笑ましいねぇ。仁君。』

『そうだねぇ。我が娘ながら困った性格だよ。誰に似たのかなぁ。』

『こらこら、遠い目をしないで戻っておいでよ仁。』

『まあ、賢磨にも子供が出来ればその内僕の気持ちがわかるよ。』

『…そう…だね。』

『君もなかなか苦労してるよね。』

『僕の奥さんがアレですから。』

『いやぁ。独身の僕にはわからない悩みだねぇ。』

『いやいや、君はわかるだろう?無剴。』

『ははは。おいおい話が反れてるぞ。次は基汐君と光歌ちゃんの番だよ。』

『露骨に話を反らしたね。』

『うん。逃げたね。』

『まあ、いいさ。いつもの事だね。それじゃあ、基汐君お願いできるかい?』

『あっ、はい。仁さん。』


 光歌に抱きつかれていた基汐が姿勢を正す。光歌も座り直すが相変わらず腕は組んだままだ。


『俺たちは、閃と逆の位置にある戦争跡地を偵察してきたんだ。』

『もう、スゴいホコリっぽいしぃ、タテモノはホウカイしてるしぃ、トチュウでスゴいイキオいでアメふってきたの、サイアクだったんだぁー。』

『もう、色んな組織が偵察した後みたいで特に役立ちそうなモノは落ちてなかった。けど、ある噂は聞くことが出来た。』

『噂?』

『ああ、その噂って言うのは、戦争跡地を拠点に謎の少数のチームが能力者狩りを行っているらしいんだ。』

『狩りってことはプレイヤーキルしてるってことか?』

『ああ、恐らく理由は…』

『レベル上げ…か、』

『そうだ。これは無剴さんの方が詳しいと思う。』


 基汐の視線に答えるように無剴のおっさんが話し出す。


『えーと、前にも話したけどゲームの世界に侵食されたこの世界では基本的にモンスターは出現しないよね。ついでに、ゲーム時代のようにレベル上げの標的となったラスボス クティナも当然いない。つまり、プレイヤーのレベルはゲーム最終日の時点で止まっている。』

『ああ、俺たちクロノ・フィリアのメンバーは裏ボスを倒した時に限界突破2の恩恵でレベル150のMAXになった。』

『そうだね。通常のプレイヤーはレベル100が上限、ラスボスとの戦闘で、それを倒したプレイヤーと同ギルドに所属する功績上位30人のプレイヤーには限界突破1の恩恵でレベル120になる権利が与えられた。』

『ですが、限界突破2の恩恵とは違い与えられた時点では、まだレベル100。クティナを倒した経験値を加算しても最大でレベル110までしかなりませんでした。』

『そうつまり、限界のレベル120まで上げるにはまだ経験値が必要だった。』

『レベル110以上のプレイヤーが1人でもいるとクティナを倒す難易度が格段に下がったよね。』

『はい、それこそ恩恵を受けられるギリギリのメンバーで編成したパーティーで何度も挑戦するのが最も効率良くレベルを上げる方法として認知されていました。』

『で、この現実世界の話しに戻すけど。モンスターやラスボスのいないこの世界でもレベルを上げる方法が発見された。それは…』

『プレイヤー…つまり、能力者を殺すこと…』


 俺の言葉に無剴のおっさんが首を縦に振る。

 それを、見た全員が言葉を失ってしまった。

 仁さんの店が静寂に包まれた。

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