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第360話 帰還の理由

『成程。赤国と人族の地下都市でそんなことがあったのね。』


 緑国に戻ってきた俺たち。

 突然の帰還に驚かれたが、すんなりと受け入れてくれた面々。

 再会に互いに喜び合い、今は緑国内にある作戦会議室に移動した。

 そこに集まった俺たち。

 俺、兎針、奏他、睡蓮。基汐、紫音。

 緑国からは。

 美緑、砂羅、累紅。

 光歌、涼、美鳥。

 レルシューナ、律夏。

 他の緑国のメンバーには各自の仕事に戻ってもらい美緑が作った種を耳に着けて貰った。

 これは、世界樹を通したイヤホンのような物らしく会議室での会話の内容が聞けるらしい。

 

『ああ。赤国は赤王を中心に纏まりつつあるらしい。今は俺たち異界の神と同盟を結んでいる。』

『そう。じゃあ、緑国が手を結ぶべきは赤国で決まりのようね。』

『ああ。基汐の持ってきた機械が転移装置らしいな。』

『ふ~ん。ちょっと借りるわよ。』

『人族の地下都市は…もう、再建不可能なレベルだ。そこに住んでた人族も全滅、ここに来るまでの道中にあった人族の里にも人族の死体しか転がっていなかった。恐らく、この緑国周辺にはもう人族は残っていないんだろう。』

『そう…その最後の生き残りが貴女…えっと、睡蓮だっけ?。』

『あ、ああ。そうやん。ウチは睡蓮いいます。よろしゅう。』

『ああ。宜しくな。』

『歓迎しますよ。』

『律夏、レルシューナ。難しい願いかもしれないが、睡蓮をこの緑国で保護して貰えないだろうか?。本当は俺が一緒にいてやりたいんだがこれからのことを考えると緑国で預かって貰うのが一番助かるんだ。』

『それは構わない。睡蓮と言ったな。動きを見ただけで分かる。かなり強いだろ?。』

『ああ。同化前の奏他を圧倒したレベルだ。』

『あはは…あの時は惨敗だったよ。夢伽に強化して貰っても勝てなかった。』

『それは凄いですね。つまり、以前緑国へ来た時の奏他さんよりも…ということですよね?。』

『うん。今も接近戦じゃあ厳しいかな?。』

『奏他は同化をしたから戦闘スタイルが丸っきり変わっちまったしな。今は中~遠距離の戦いが得意だろ。』

『同化…ですか…。そうですね。閃さんや兎針さん、奏他さん。皆さん以前とは見違える程に強いエーテルを纏っていますし、この数週間で…余程過酷な戦いを行っていたのですね。』

『はは。まぁ、戦った相手の内容はさっき話した通りだ。』


 惑星の神。ジュゼレニア。

 絶対神。

 ゼディナハ。黒牙の神眷者。

 そして、その仲間の優、修、彗の転生者。

 黒国は完全に敵だ。


 他に基汐たちの場合は、

 赤国を襲撃した白国の神眷者。ザレク。


『今は戦力が多ければ多い程助かる。睡蓮が良ければその身は緑国で保護しよう。レルシューナも良いか?。』

『はい。問題ありません。後で他の方々にも紹介致しましょう。個室も用意しますので寛いで下さい。』

『そうか。助かるよ。睡蓮。良かったな。』

『はい。閃はん。居場所をくれてあんがと。』

『ああ。それともう一つ。』

『何だ?。』

『戦力の強化という意味で兎針もここに残って貰おうと思っているんだ。話した通り、この前の戦いで兎針は惑星の神へと進化した。その辺の神眷者じゃ勝てないくらいの強さだ。』

『それは…有難い提案だが…。』

『兎針さんは良いのですか?。その…閃さんと離れてしまいますが…。』

『ええ。きちんと話し合って決めたことですので。』

『そうですか。でしたら私たちからは何も言いません。部屋は以前使って頂いたのと同じ場所を用意致しますね。』

『はい。有り難う御座います。レルシューナさん。』


 緑国の戦力が上がれば迂闊にゼディナハたちも攻めては来れないだろう。

 それにこれからの戦いは俺単独で動いた方が行動しやすいというのもある。


『それにしても、三人はよっぽど寂しかったのね…。』


 基汐の足の間に座り、基汐の持ち込んだ転移装置を弄りながら俺を見る光歌。

 その尻尾は基汐の身体に巻きついて決して離れない、離さないという強い意思を感じる。


『まぁ、確かにな。折角再会してすぐに離れ離れにしちまった。寂しい思いをさせちまったな…。』

『えへへ。閃さん~。』

『お兄様~。』

『閃君~。』


 美緑は俺の足の間。両脇に砂羅と累紅。

 足も腕も動かせないや。

 兎針と奏他は遠慮気味にその隣で苦笑い。

 睡蓮は俺たちの様子を微笑んで眺めている。


『相変わらず、閃はモテモテだな。』

『ごめんな。寂しい思いをさせて。』

『良いんです。閃さんは頑張っているのですから、けど、こうして再会できた時くらい沢山甘えていたいのです。』

『はい。お兄様。また、すぐに旅立たれてしまうのでしょう?。少しの間だけで良いのでこうしてお兄様の体温を感じていたい。』

『えへへ。閃君の匂い~。』

『ああ。時間は少ないがその間はずっと居ような。』


 三人と軽くキスをして基汐の方を見る。


『なぁ、大丈夫か?。かなりハッキリと痕が残ってるが…。』


 基汐を見ると頬にくっきりと残る手のひらの痕。


『ああ。約束を破った罰だ。潔く受け入れるよ。』

『基汐~。可哀想…。』

『あん?。』

『ひっ!?。な、何でもない…。うぅ…光歌…怖い…。』


 光歌の威嚇に怯える紫音。


 暫く、個室に籠っていた光歌と基汐と紫音。

 紫音の紹介と、まぁ彼女の気持ちを尊重して恋人にしたいと光歌に報告したようだ。

 あの時の部屋の外に響くくらいのビンタの音には流石に驚いたが…。

 まぁ、認められたみたいではあるな。

 光歌を見る紫音の顔は完全に恐怖で歪み常に涙目なんだが…。


『ねぇ。閃。この機械少し預かるわよ?。』

『ん?。ああ。構わないがすぐに起動出来ないのか?。』

『ん~。起動は出来るわ。ただ、赤国と繋がった瞬間、他の国とも繋がっちゃう可能性もあるのよ。元は青国が作った物でしょ?。そんなの危なすぎて素直に使うなんて出来ないじゃない?。』

『じゃあ、安全に赤国とだけ行き来できるようにするってことか?。』

『ええ。構造はだいたい把握したわ。後は少し改造するだけなのだけど。少し時間が掛かるわ。』

『どれくらいだ?。』

『ん~。五日…いや、四日くらい貰って良いかしら?。』

『ああ。構わないよ。』


 ここから移動するとなると赤国に行くだけでも四日以上掛かる。それくらいなら大丈夫だろう。

 本当は逸早く青国へと向かい詩那たちと合流したいが、距離的な問題は仕方がない。


『なるべく急ぐけど、それまでは休みなさいよ。アンタ、結構無理してるでしょ?。』


 光歌の視線が鋭くなる。


『………分かる?。』

『ええ。見た目では分かりづらいけど、中身はボロボロでしょ。神力の反動、相当凄かったみたいね。』

『はは、まぁ、そうなんだわ。実は。律夏、レルシューナ。良ければ機械が起動できるようになるまで緑国で休ませてくれないか?。』

『君なら問題ない。他の方々もゆっくり休んでくれ。』

『当然です。部屋は用意しますよ。ふふ。美緑ちゃんたら。』

『はい。お願いします。』


 何故か、視線で会話するレルシューナと美緑。


『美鳥さん。赤国には威神がいるぞ。威神も美鳥さんに会いたがっていたよ。』

『ふふ。そうですか…早く、お会いしたいですね。』


 基汐の報告に嬉しそうに笑う美鳥。

 赤国には、時雨、威神、玖霧、知果。

 そして、睦美と智鳴がいるらしい。

 仲間との再会だ。待ち遠しいな。


『さて、報告は以上。で、ここからが最も重要な話だ。皆、聞いてほしい。』

『重要な?。』

『ああ。俺が取り戻した記憶に刻まれた世界の本当の形、そして、俺たちの 真の敵 についてだ。』

『それは…いったい…。』


 涼を中心に、俺の真剣さが伝わったのか全員が沈黙し次の俺の言葉を待つ。


『この世界は…。』


 クロロとアリプキニアと一体化したことで記憶を取り戻したこと。

 世界が何度も滅びと再生を繰り返していること。

 その原因となるモノが俺たちの最大の敵であること。

 およそ推測できるリスティールの役割。

 俺たち異界の神、神眷者、惑星の神、そして神々。各々に与えられたこの世界での存在意義。

 このリスティールは俺たちを最高神へと進化させることを目的としていること。


『ダークマター…それが我々…この世界に住む全ての者の敵ということか?。』

『ああ。崩壊を引き起こす現象。その実態は謎が多い未知のエネルギーらしい。絶対神はそのエネルギーに抗う手段を模索しその結果、この世界で最高神を増やすことでダークマターに対抗しようとしているみたいなんだ。』

『その…崩壊はいつ起こるのでしょうか?。』

『近い内としか言えない。発生は繰り返しでもバラバラだった。だが、一度発生してしまえば崩壊は止められない。』

『そうですか…。では、私たちに出来ることはないのでしょうか?。』

『うむ…ただ、滅びの時を待つ…というのも…。』

『何か対処法はないのか?。』

『確証がある訳じゃないんだが、どうやら今回の世界の流れは今までのどれにも類似が無いんだ。』

『類似がない?。』

『ああ。始まりは確かに同じだった。だが、全ての事象が少しずつズレて今ではこれから先何が起こるのか想像もつかない。』

『そんなことに…。』

『では、我々はどうすれば…。』

『どうやら、悪い方にばかり進んでいる訳ではないらしい。絶対神の野郎は今回の世界の流れに賭けているみたいでな。俺の覚醒。そして、転生者たちの覚醒を促すためにこのリスティールという舞台に神眷者たちを用意したみたいなんだ。それも今までにないくらい強力な神眷者をな。』

『では、セルレンやエンディアも?。』

『ああ。あんな巨大で強力な世界樹や軍隊と破壊的な爆発する神具なんて今までの世界には無かった。』

『全ては私たちを鍛えるため?。』

『ああ。最高神への覚醒とエーテルを扱える存在を増やすためだな。その内、神の連中も動くだろう。俺たちに出来るのは来る日に備えて力をつけること。それが最も重要なことだと思う。』

『そうか…。』

『今まで以上の努力が必要ということですね。この国も。』


 あまりにも突拍子のない話の内容。

 しかし、現実は…世界は確実に終焉に向かう。

 これは否応なしに聞き入れて貰うしかない。


ーーー


 会合から一日が過ぎ、俺と兎針は緑国の端、海へと抜ける森の中にいた。

 理由は一つ。


『ここだな。俺たちが迷い込んだ森。』

『はい。ここに彼女がいます。』


 ここにいる惑星の神。

 【狂嵐神】ジュゼレニアがいる。

 俺たちは彼女に会いに来たのだ。


 意思を乗せたエーテルを放出しジュゼレニアへ呼び出す。

 

『閃?。何で?。もしかして、私に会いに来てくれたとか?。』


 空間が歪み。

 彼女の支配する空間作り出した惑星環境再現 プラネリントの中から現れる。


『ああ。その通りだ。久し振りだな。』

『わぁお。なぁに?。マジで?。やったぁ!。』


 嬉しそうに俺の前に降り立つジュゼレニア。

 くるくると回り、短いスカートを靡かせながら俺の腕に抱きついた。


『まぁ、俺だけじゃないけどな。』

『はえ?。』

『キキキ。久しいのぉ。我が娘。』

『は?。え?。マ…ママママママママママ…ママ!?!?!?。』

次回の投稿は3日の木曜日を予定しています。

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