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番外編 1日お部屋デート 砂羅の場合②

『お兄様…ど、どうでしょうか?。こんなに可愛い服を貰って良いのでしょうか?。』


 お兄様からプレゼントされた手作りの服。

 サラサラとした通気性の良い生地。派手さよりも可愛いらしさをアピールしたレースとリボン。フワッとしたスカートはまるでドレスのように華やか。短めのスカートと袖、所々の布が薄く適度に露出もされている。

 大人っぽさと子供っぽさの両方をバランス良く強調したワンピース。

 部屋着としても、お出かけにも対応できるデザインでした。


『あっ。着替えたか。うん。似合ってる。砂羅は美人系だけど、顔が童顔だから少し子供っぽさを加えても問題ないと思ったんだが…予想以上に可愛いな。お姫様みたいだ。』

『っ…そ、そうですか?。その…普段は動きやすさ重視で選んでしまって…あまりファッションには疎くて…けど、その…嬉しいです。』

『まぁ、普段の砂羅の大人っぽい動きやすい服装も似合うけどな。たまにはこういうのも良いんじゃないかなって思ってさ。着心地はどうかな?。気に入って貰えると嬉しいよ。』

『はい!。勿論です!。涼しいし、動きやすいし、何よりお洒落で可愛い…。私には勿体無いくらいに…。』

『それは違うぞ。その服は砂羅のために作ったんだ。店に売っている万人向けじゃなく、世界にただ一つ砂羅だけに似合う服なんだからもっと自信を持ってくれ…じゃないと、作った意味がない。』

『っ…す、すみません。お兄様の気持ちを…。』

『良いよ。謝らなくて。けど、似合ってるのは事実だし、俺が砂羅を想って作ったんだ。これだけは忘れないでくれると嬉しい。』

『は、はい!。お兄様からのプレゼントです!。絶対にお兄様の気持ちは忘れません!。』

『そうか…はは。良かった。』


 私…この服を宝物にします。

 特別な日に着るようにしましょう。


『じゃあ、時間も時間だしな。そうだ。一緒に簡単な昼飯でも作ろうか。』

『はい!。』


 お昼は二人で冷やし素麺を作ることにしました。

 薬味にショウガとネギを用意して簡単に済ませます。


『あの…お兄様。』

『ん?。何だ?。』

『その…この後のご予定は決まっていますか?。』

『いや、俺は砂羅と過ごせれば良いと考えていたから特に決めてないな。まぁ、強いて挙げるなら砂羅のことをもっと知りたい、くらいだな。砂羅は何かしたいことはあるか?。』

『したいこと…では、なく。お兄様に知って欲しいことがあるんです。その…私の趣味を…。』

『砂羅の趣味か。そういえばあまり聞いたことなかったな。寧ろ、気になるよ。教えてくれないか?。』

『で、では、この後お時間を頂きますね。』


 昼食を食べ終え、後片付けまで済ませる。

 この後、私は自分の趣味をさらけ出す。

 胸が高く鳴ってる。凄く緊張する。

 

『それでは、お兄様。私の寝室へどうぞ。』


 うぅ…心を許している相手とはいえ、私の趣味全開の部屋を見せるのは緊張しますね。


『おぉ…これは凄いな。ぬいぐるみの山だ。』

『あはは…。すみません。これが私の趣味です…その可愛いものが好きなので…。』


 ベッドを中心に大量に並べられた動物のぬいぐるみの数々。

 大きいものから小さなものまで部屋中を敷き詰めるくらいに並んでいる。

 これらは全て手作り。私の趣味。


『えっと…その…私、手芸が好きで…これも全部手作りで…。』


 閃さんから貰った手作りの服を見た後じゃ、感動も何も無いかもしれない。

 しかも、この異常な量…どんなに趣味だと言っても限度がある。絶対…引かれちゃう…。


『上手いな。これ。継ぎ目が凄く綺麗だ。俺、結構独学だったからこういう繊細さが足りなくてな。服の時はレースやアクセサリーで誤魔化してたけど、やっぱこれくらい出来ないといけないよな。』

『あ、あの…それでしたら私で良ければ教えますよ。少しコツを掴むだけでお兄様なら出来るようになると思います。』


 あれ?。全然引かれてない?。

 それどころか一つ一つを真剣に眺めながら感想を言ってくれる。

 

『マジか!?。ありがとう。じゃあ、早速教えて貰って良いか?。』

『あ、はい、喜んで。』


 そんな流れで始まった手芸の時間。

 お題は手のひらサイズのぬいぐるみ。

 何を作るかはお互いに内緒。

 今は互いに背中合わせに布に針と糸を通している。


 お兄様は凄いです。

 たった一回の説明ですぐにコツを掴んでしまいました。

 流石、私たち全員の服を作っているだけありますね。

 今も淀みなくぬいぐるみ作りに集中し手を動かしている。


 私も負けじと手元に集中。

 寝室には静かな時間が流れていく。

 背中越しに感じるお兄様の気配と息づかい。

 布の擦れる音だけが私とお兄様を包んでいるみたい。

 

 少し甘えたくなってきました。

 ちょっとだけ、お兄様の背中に体重をかける。すると、お兄様も私に合わせるように体重を乗せてきました。

 接触する背中から感じるお兄様の体温。

 胸の鼓動まで聞こえて来そうな密着感。

 互いに話すこともない時間。

 けど、とても温かくて、心地良い居心地。

 お兄様がそこにいる。私と触れ合っている。

 それだけで心が満たされている。

 不思議で幸せな時間がゆっくりと流れていくのを感じました。


『良し!。完成だ。砂羅はどうだ?。』

『私も出来ました。少し頑張り過ぎてしまいました。』

『ははは。俺もだ。ここも、ここもって修正してる内にいつの間にか夕方だしな。』


 まだ、作品は隠しています。

 私のお兄様への想いを込めたぬいぐるみ。

 多分、今まで作ったぬいぐるみで一番の出来映えです。


『じゃあ、一緒に見せ合おうか。』

『はい。』

『『せ~のっ!。』』


 お兄様と同時にぬいぐるみを差し出す。

 お互いの作品を確認。驚きました。

 お兄様を見ると、お兄様も目を丸くして私を見つめていました。


『ははは。どうやら同じ考えだったみたいだな。』

『ふふ。そうみたいですね。』


 笑い合う。

 何故なら、お兄様は私に似たぬいぐるみ。

 私はお兄様に似たぬいぐるみを作ったのですから。

 

『おお。俺だな。特徴を捉えてて、やっぱり上手だな。砂羅は。』


 お兄様が私の頭を撫でてくれます。

 気持ちいい…。いっぱい褒めてくれる…。

 

『お兄様も凄く丁寧に細部まで私の特徴を再現しています。凄く、可愛い…。』


 お兄様から見て私はこんなに可愛く映っているのでしょうか。

 嬉しいですが…少し…恥ずかしいですね。


『お互いに互いを作ってたなんてな。偶然…じゃないな。はは。恋人らしいこと出来たな。そうだ。砂羅。そのぬいぐるみを少し貸してくれないか?。』

『はい。どうぞ。』


 お兄様にぬいぐるみを渡すと。

 何やら糸を取り出しぬいぐるみ同士を縫い始めた。


『良し!。これで完成だ。じゃあ、これは今日という日の記念にしよう。砂羅。何処か良い飾れる場所はないか?。』

『あ…。』


 お兄様が差し出したぬいぐるみは…お兄様と私が手を繋いでいて、そのお互いの手には赤い糸がリボンのように縫われていました。

 まるで、運命の赤い糸のようにお互いを強く結び付けて…。


『お兄様…。』

『ああ。砂羅。俺はもうお前を離さないからな。このぬいぐるみの糸はいつか切れてしまうかもしれないが、俺とお前のここには絶対に切れない糸がある。』


 お兄様が私の小指と自分の小指を絡める。

 力強く、決して離さないという強い意思を感じました。


『はい。私はお兄様と共に生きます。どんな困難が立ちはだかろうと、必ずお兄様と乗り越えて、そして…。』

『ああ。必ず幸せになろうな。』

『はい。』


 赤い糸で結ばれたぬいぐるみを抱きしめて、私は大切に想ってくれているお兄様へゆっくりと唇を重ねた。


『ふふ。ふふふん。』

『上機嫌だな。』

『はい。お兄様と一緒に夕食を作れるなんて夢みたいです。』

『だな。やっぱ一人より二人で作った方が楽しいしな。塩を取って貰って良いか?。』

『はい。どうぞ。』


 二人でキッチンに並び夕食を作る。

 メニューはオムライス。スープ。生野菜のサラダでオリジナル胡麻ドレッシング。


『サラダのお皿どうしようか?。』

『あっ!。こっちに大きいのがあります。はい。お兄様。』

『ありがとう。』

『えへへ。』


 過去を打ち明ける前と違い、私が何かをすると必ず頭を撫でてくれるようになったお兄様。

 凄く自然に頭を撫でられるので、私も自然とお兄様との距離が近くなっています。

 ですが、ご安心を。

 二人でも余裕があるとはいえ、互いに動いているキッチンの中。普通の人ならば交差する際にぶつかってしまうこともあるでしょう。

 しかし、お兄様は違います。

 絶妙な動きで私の動きを阻害しないように立ち回りと身のこなしで、寧ろ、私をサポートしてくれます。

 クラブの皆さんが言っていました。

 お兄様に執事をやらせたら世界一じゃないかと。

 私は今、その片鱗の一部を目撃し体験しているのです。


『さぁ。食べようか。』

『はい。お兄様。』


 料理が完成しテーブルへと運ぶ。

 椅子に腰掛ける際も、自然と隣に座っている自分に多少驚いてしまいます。

 

 お兄様の頬についたケチャップを舐め取ると、お兄様は悪戯っぽく笑い私にキスをしてきます。

 ドキドキしながら、ドキドキさせられる。

 そんなイチャイチャを繰り返しながら食事を終えた。


『お兄様…。私…お兄様に心の内を話せて良かったと思っています。何だか心が軽くなって。』


 湯船に浸かる私。

 私の身体を抱きしめるように後ろから手を伸ばすお兄様。

 夕食の後、お風呂の準備を終え現在は二人で入浴中。

 お兄様に裸を晒すのは初めて…と、思ったのですが、午前中に思いっきり裸を見せていましたね。

 今更ですが、あの行動…大胆というより痴女じゃないですか?。

 テンションが上がると暴走するのは悪い癖ですね…私…あはは…うぅ。


『俺も砂羅のことを知れて良かった。これからも辛いこととか、悲しいことがあると思う。けど独りで抱え込む必要はないからな。嬉しさや楽しさだけじゃない。辛さや悲しみだって分け合えることが出来るんだから。』

『はい。お兄様。』


 体重を預けるとお兄様の腕に力がこもる。

 太い腕が私を優しく包む。

 温かい…。お兄様の鼓動が近くに感じられて安心する。


『砂羅。』

『お兄様。』


 自然に引き寄せられるようにキスを繰り返し、気づけば互いに向かい合っていた。

 鍛えられたお兄様の身体にドキドキする。


『私…お兄様のこともっと知りたいです。私のことを知って貰うだけじゃ足りません…もっと…貴方を教えて下さい。』

『ああ。沢山教えるよ。俺が砂羅をどれだけ愛しているのかもね。』

『はい!。いっぱい甘えさせて下さい!。』

『ああ。』


 抱き合い互いの熱を感じ合う。

 夜は始まったばかりです。


 初めてのデート。

 互いを知り、絆を深め、恋人としての一歩を踏み出した。

 これからどんなことが起きようとも私はお兄様のために生きていきます。


 お兄ちゃん。

 私…今、幸せです。


ーーー


ーーー数日後ーーー


 私は灯月ちゃんに呼ばれ、とある物陰に追いやられていた。

 背後には壁。目の前には真剣な表情の灯月ちゃん。


『あ、あの…灯月ちゃん?。用事というのは?。』

『ふん!。』


 真っ直ぐに、勢い良く腕を突き出した灯月ちゃん。

 これが俗にいう壁ドン!。

 突いた先が壁だったのなら。


『あんっ!?。あの?。灯月ちゃん?。何で急に胸を?。』

『失礼しました。身長差のせいで壁ドンになりませんでした。』

『そ、そうですよね…灯月ちゃん小さいですし…。』


 約頭一つ分小さい灯月ちゃんが私に壁ドンすると、ちょうど突き出した位置に私の胸がありますよね。

 それはその結果と…。


『その…いったい…ん…といいますか、いつまで揉んでいるのでしょうか?。』

『あ。失礼しました。あまりにも立派で柔らかい感触だったので。つい堪能を。』

『ああ…その、ありがとうございます?。灯月ちゃんのも十分に立派ですよ?。』

『はい。自負しております。ですが、この揉み心地の良さは…うん。癖になりますね。』


 ああ、そうですか…。


『そ、それで…私に何か?。』

『はい。砂羅ねぇ様に一つお窺いしたいことがありまして。』

『もしかして、お兄様のことでしょうか?。』

『察しが良くて助かります。何故、にぃ様にその様な呼び方を?。』

『それは…。』


 私は事の経緯を灯月ちゃんに話す。

 

『そうですか…それは…。私からは軽々しく口に出来ない内容ですね。お兄様呼びはあくまでも呼び方だけと…そういうことですか?。』

『はい。お兄様と私は恋人です。兄妹ではありませんから。』

『理解しました。では、改めて、砂羅ねぇ様に一言。』


 私から離れた灯月ちゃんは振り向いたままの体勢で...。


『お兄ちゃんの妹は私だけなんだからね!。妹の立ち場はどんな理由でもあげないから!。それでは!。失礼します!。お幸せに~。』

『ええ…。』


 そう言い残し走り去っていったのでした。

次回の投稿は26日の木曜日を予定しています。

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