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番外編 1日お部屋デート 砂羅の場合①

 コトコト。トントン。グツグツ。


 もう、そろそろですね。

 時計を見ると午前7時を過ぎたところ。

 あと30分で閃さんが来てしまう。

 少し急がないと。


 慣れた手つきで料理をしていく。

 時間までに完成させないと。

 手早く、それでいて丁寧に。

 

『っ!?。』


 また、やってしまいました。

 慣れている筈なのに指を切ること七回目。

 切った箇所から流れる血を舐める。

 口に広がる鉄の味も慣れたものです。


『緊張…しているのでしょうか…。普段なら、こんなミスばかりしないのに…。』


 緊張…そうですね。

 それは仕方がないことです。

 何せ、今日は…。


 適当な大きさに丸めて空気を抜いたハンバーグをフライパンで焼いていく。

 隣のコンロではデミグラスソースを煮込み中。

 小さなスプーンで味見。

 うん。美味しい。上手に出来てます。

 失敗ながらでも完成に持っていく。

 用意したお皿に出来上がったハンバーグを乗せデミグラスソースをかけ、トッピングにチーズと目玉焼きを乗せる。

 添え物にブロッコリーとポテト。ニンジンのグラッセ。コーンスープも用意しました。


 朝食…少し作り過ぎでしょうか?。


『少し張り切り過ぎましたね。えへへ。』


 なんと言っても今日は閃さんとの一日お部屋デートの日。

 ついに私の順番が回ってきました。

 待ちに待った、閃さんとの初めてのデート。

 私よりも先に順番がきていた美緑ちゃんや累紅ちゃんの話を聞いて、ずっと羨ましかったのです。はやる気持ちを料理にぶつけてしまいました。

 きっとミスが多かったのもそのせいですよね。

 …むむ。冷静に考えて…やっぱり朝食にしては些か多い…ですよね。

 いや、それよりハンバーグは朝から重くないですか?。

 いや、絶対重いですよね?。

 

 何か盛大にやらかしてませんか?。


 コンコン。


 あ。閃さんが来た…みたいです。

 どうしましょう…。こんな料理を見せられたら流石に閃さんも困ってしまうんじゃ…。


『は、は~い。今、開けますね。』

『お早う。砂羅。お邪魔するよ。』


 ドアを開けると私の恋人が笑顔で立っていました。

 はぁ…閃さんが私の部屋に来てくれた。

 今日は閃さんを独り占めです。

 私だけの閃さん…胸がドキドキします。

 閃さんの背が良い具合に私より高くて見上げて見る感じが…昔、お兄ちゃんと話してた時を思い出してしまいます…本当に、お兄ちゃん…みたいな…人。

 大きな手…あの手で頭を撫でて貰いたい…。

 頑張ったねって褒めて貰いたいなぁ…。


 おっと。閃さんは私の恋人です。

 お兄ちゃんではないのです。

 変なことを考えるのは止めましょう。


『はい。お待ちしておりました。その…朝食の仕度も出来ていますので此方にどうぞ。あ。手荷物をお預かりしますね。』

『お、おう。ありがとう。今日は宜しくな。砂羅。』

『はい。宜しくお願いします。閃さん。』


 えへへ。今日は沢山閃さんにご奉仕しますよぉ~。

 普段からお世話になりっぱなしですし、しっかりと私との時間を楽しんで貰わないと。


『ん。この良い匂いは…おお。ハンバーグか。ソースの匂いが食欲をそそるな!。さっき早朝ランニングしてきたから腹ペコなんだよ。』


 テーブルの上の料理を見て笑顔になる。

 やった。閃さんの好物を聞いておいて良かった。ありがとう。灯月ちゃん、睦美ちゃん。

 それに、どうやら無駄な心配だったようです。


『えへへ。良かったぁ。一緒に食べましょう。閃さん。』

『ああ。美味しそうだ。ご馳走になるよ。』


 閃さんの対面に座ろうとする。

 本当なら隣が良いのですが、いきなりでは閃さんも困ってしまうでしょうし…隣であ~んとかしたいとか、あ~んってされたいとか言ってしまって引かれても嫌ですし…。

 ん~。距離の詰め方って難しいですね。

 恋人ではありますが、どうしても行動の結果に 嫌われたら って、考えてしまっていつもの様な自然な動作が出来ません。


『………砂羅が嫌じゃなければ、隣に来ないか?。』

『え?。』

『いや、折角のデートなんだから、それらしいことしたくてな。嫌か?。』

『嫌だなんてとんでもない!。その…良いのでしょうか?。』

『勿論、こっちおいで。』

『…はい。その…失礼します。』


 嬉しい申し出です。

 失礼がないように平静を装っていますが、今すぐにでも閃さんに抱きつきたい。そんな衝動を必死に抑えています。

 恋人とはいえ、私達はまだ出会って間もない。灯月ちゃんや智鳴ちゃんのような幼少期からのお付き合いでも、クロノ・フィリアの方々のようなゲーム時代の友人関係でもないのです。

 お会いして、まだ一年も経っていない。

 なので、お互いのことを理解したとは言い難い。

 私のことは勿論ですが、私も閃さんのことは何も知らないと言っても過言ではありませんし…。

 人柄を含め、外見や優しさ。あと、これは誰にも言っていないことですが、お兄ちゃんみたいな安心感に恋心を抱きました。

 初恋です。恋人も初めてです。

 なので、私はこの一日デートで閃さんのことをもっと知りたい。

 そして、私自身のことを知って貰いたい。

 そう目標を掲げて今日に挑んでいるのです。


『じゃあ、いただきます。』


 手を合わせてから箸を持とうとする閃さんの手を止める。


『砂羅?。』

『あの…えっと…あ、あ~ん。』


 一口サイズにしたハンバーグを閃さんの口に運ぶ。


『あ~ん。もぐもぐ。うん。美味い。』

『っ!。えへへ。お口に合って良かったです。』

『前々から思ってたが砂羅は料理が上手だな。手慣れた感じっていうか…普段からやっていたのか?。』

『はい。私は弟妹が多かったので…。父は仕事で忙しく、お姉ちゃんだった私が家事や弟妹たちの面倒をみていました。』

『そうなんだ。弟や妹が…だから、何でもそつなくこなしてたんだな。面倒見も良いし。美緑や累紅も砂羅のことをお姉ちゃんみたいだって褒めてたぞ。それに保護区の子供たちのところにも行ってあげてるだろ?。つつ美母さんも感謝してたよ。』

『………ふふ。はい。私は美緑ちゃんや累紅ちゃんの…皆のお姉ちゃんですから。寧ろ、皆さんに喜んで貰えて嬉しいです。』

『………そうか。』

『それより、もっと食べて下さいな。はい。あ~ん。』

『あ~ん。美味い。けど、これだと砂羅が食べられないぞ?。』

『ふふ。なら食べさせて下さい。』

『成程。そういうことなら。ほれ。あ~ん。』

『あ~ん。もぐもぐ。』


 うん。ちゃんと味も染みてる。

 肉汁も良い感じで美味しいです。

 うっ…やっぱり、朝からハンバーグは重いですね…。

 失敗です…。


『美味しかったよ。ご馳走様。』

『うぅ…お粗末様です。すみません。私の分まで食べてもらってしまって…。』


 結局、自分の分も食べきれずに閃さんに食べてもらってしまいました。

 うぅ…何か…私、空回っている気が…。


『洗い物は俺がしようか。』

『そんな。閃さんにさせるわけにはいきません。私がするので、閃さんは休んでいて下さい。』

『そうか?。なら、甘えさせてもらうよ。』

『はい。待ってて下さい。先にお茶を。』


 素早くキッチンに走り、冷やしておいた麦茶とグラスを持って戻ってくる。

 

『はい。閃さん。お待たせしま…あっ!?。』


 ガシャンという大きな音。

 落としてしまったグラスが割れてしまいました。


『大変!。今すぐ片付けますね。っ!?。』

『おいおい、大丈夫か?。』


 拾おうとしたガラス片で指を切ってしまいまいました。

 また、やってしまった…今日の私変です。

 失敗ばかり、閃さんに良いところを見せたいのに…。


『はい…大丈夫…です。』

『ほら、元気だしな。ガラスは俺が片付けるよ。』


 閃さんは素早くガラス片を集めてくれた。


『閃さん…ごめんなさい…私。』

『何で謝るんだよ。失敗は誰にでもあるんだ。気にすることじゃない。それより、ほら、手を出して。』


 閃さんは私の両手を掴むとすぐにスキルを発動させる。

 ガラス片の傷だけじゃなく、料理の際に切った傷も治癒してくれた。


『うん。綺麗な手になったな。』

『あの…閃さん…。ごめ…。』

『だから、謝るな。砂羅は頑張ってるし、しっかりやってるよ。それは俺が…いや、皆が保証してる。だから、たかがミスなんかでそんなに落ち込むなよ。』


 閃さんの大きな手が私の頭を撫でる。


『~~~~~。』


 私…やっぱり閃さんに撫でられるの好きです。


『閃さん。これ、どうぞ。』

『うん。ありがとう。』

 

 改めて、グラスを持ってきて麦茶を注ぐ。

 

『はい。…ん…。』

『……………え?。』

『………あ…。』

 

 しまったぁ~。

 ありがとうって言われたのが嬉しくて…つい撫でてもらおうと頭を下げてしまいました。


『す、すいません!。何でもありません!。』


 誤魔化すようにキッチンへと逃げる。

 うぅ…変な子だと思われたかもぉ…。


『なぁ、砂羅。』

『は、はい?。どうしましたか?。』


 洗い物が終わったタイミングで閃さんに呼ばれる。

 すると、手招きをする閃さんが私を向かい側へと座らせた。

 良く分からないけど正座する。


『ちょっと聞きたいんだけど、砂羅って兄ちゃんか姉ちゃんがいたか?。』

『はえ?。』


 全く予想していなかった質問に変な声が出た。

 私の過去は美緑ちゃんと累紅ちゃんにしか話していない。

 それにさっきの会話では弟や妹の話しかしていなかった筈なのに?。


『た、確かにお兄………兄がいましたが...ど、どうしてそう思われたのですか?。私…話していないですよね?。』


 普段からお姉ちゃんとしての振る舞いをしていた筈ですが?。


『いや、何となくなんが。普段は礼儀正しいし、皆のことも良く見てて、しっかりしてるんだが…時々、甘えたそうにしてる気がしてな。恋人にするような感じじゃなくて…そうだな…灯月と少し似た仕草をするんだよ。これでも兄貴だからな。妹が甘えたいとか、褒められたいとか思ってる時の雰囲気が分かるんだよ。』

『私…そんな雰囲気を出してたのですね…。』

『いや、少しな。俺も何となくそうなのかなぁくらいの感覚だったんだ。そうか、兄ちゃんがいたんだな。』

『はい。その…。少し…長くなりますが…昔話を聞いて頂いても良いですか?。』

『ああ。良いよ。砂羅を知れる機会だ。こっちからお願いしたい。』

『ありがとう。ございます。では…。』


 私は閃さんに過去…お兄ちゃんのこと。

 私の不注意でお兄ちゃんを失ってしまったこと。

 世界が侵食され家族を失ったこと。


 そして、妹からお姉ちゃんになったことを全て包み隠さず話した。


 途中で相槌などはせず、終始真剣に私の話しに集中していた閃さんが話し終わったタイミングでゆっくりと話し始めた。


『私の過去は以上です。つまらない話でしたよね。すみません…。』

『いいや、そんなことないよ。砂羅の俺に対する視線の謎が分かったからさ。』


 私は閃さんにお兄ちゃんを重ねていた。

 別人で、しかも恋人。それがどんなに失礼なことなのかは理解している。

 兄妹とはいえ、恋人に別の異性を重ねるなんて…。

 恋人として、閃さんを愛しているのは本当のこと。

 だからこそ、閃さんを通して例え兄であっても他人を重ねたことで嫌われたくなかった。


『閃さん…すみません。その…。』

『そうだな…俺は砂羅の兄ちゃんじゃないし、兄ちゃんになることも出来ない。』

『は…い…。』

『俺は恋人として砂羅が好きだ。砂羅はどうだ?。』

『はい!。勿論です!。私もです!。私も閃さんを恋人として…一人の男性として大好きです!。』

『そうか。ありがとう。嬉しいよ。』

『閃さん…。』

『砂羅。これだけは、言っておく。砂羅の兄ちゃんは砂羅を苦しめたくて助けたんじゃないよ。砂羅が自分自身のせいで兄ちゃんを殺してしまったと、悔やんで後悔して苦しんでいるのを見て喜ぶ兄なんていないさ。』

『っ…。』

『俺は砂羅の兄ちゃんに会ったことないけどな。俺が同じ立場なら大切な妹を救えて良かったって思ってただろうな。そして…。』

『閃さん?。』


 立ち上がった閃さんは私の頭に手を乗せた。

 ゆっくりと髪を梳かすように撫でる。

 大きな手が静かに優しく頭の上で上下する。

 それは…お兄ちゃんが良くしてくれた撫で方で…お兄ちゃんを知らない筈の閃さんが同じようにしてくれることが嬉しかった。


『どんな兄ちゃんでも、兄ちゃんが妹を思い、一番に望むのは、自分のせいで苦しむ妹の姿じゃなく、妹が幸せになって生きてくれることだ。』

『………お兄ちゃん…の…幸せを…奪ったのに?。』

『違う。砂羅は奪ってなんかない。そう思っているのは砂羅だけだ。砂羅にやるべきことがあるとするなら…それは、お兄ちゃんの分まで幸せになることなんだ。』

『………お兄ちゃんの…分まで…。』

『いつまでもくよくよしてたら兄ちゃんに怒られるぞ?。いい加減にしろってな。』

『私は…幸せになっても良いのでしょうか?。』

『ああ。なって良いんじゃない。ならないといけないんだ。兄ちゃんに救われたんだろ?。その兄ちゃんの思いを無駄にするな。』

『お兄ちゃんの…思い…。』

『安心しろ。砂羅は独りじゃない。兄ちゃんもきっと守ってくれてる。美緑だって、累紅だって、クロノ・フィリアの皆だっているんだ。何より、俺がいる。俺は恋人として、砂羅の彼氏として砂羅を幸せにしてやる。砂羅の兄ちゃんに誓ってな。』


 お兄ちゃん…。

 私は…。間違っていたのかも…しれません。

 勝手にお兄ちゃんの気持ちを決めつけて…。

 罪悪感で自分を縛り付けて…。

 ごめんなさい。お兄ちゃん…。

 それと…助けてくれて…ありがとう…。


 流れる涙を拭う。

 目を閉じるとお兄ちゃんが笑ってくれた気がしました。


『……………はい。私…幸せになります。閃さん。私をどうか、支えて頂けませんか?。』

『勿論だ。砂羅と恋人になったその瞬間から俺は砂羅を支え幸せにするって決めてるんだからな。嫌とか言っても絶対幸せにしてやるから覚悟しろよ?。』

『ふふ。はい。覚悟しちゃいます。閃さん。改めて、宜しくお願いします。』

『こちらこそ。よっと。』

『きゃっ!?。』


 不意に閃さんは、私を抱き立ち上がった。

 俗に言うお姫様抱っこ。

 目の前にある閃さんの顔。

 太い腕が背中と足に回される。


『閃さん?。』

『俺は砂羅の兄ちゃんにはなれない。』

『はい。その通りです。閃さんは恋人です。』

『ああ。けどな。砂羅を妹みたいに甘やかすことは出来る。』

『え?。』

『皆のお姉ちゃんを頑張る砂羅も魅力的だけどな。俺の前くらい甘えて良いんだぞ?。』

『甘えて…良いのですか?。』

『勿論だ。リアル兄ちゃんを舐めるなよ。砂羅が求めるならいくらでも甘やかしてやる。』


 そう言った閃さんはソファーへ移動し座る。

 私を膝の上に乗せたまま頭を撫でてキスをしてくれた。


『閃さん…。』

『好きだよ。砂羅。甘えても。我が儘を言っても良い。俺が全部受け止めてやる。』

『何でも…ですか?。』

『ああ。何でもだ。』

『その…じゃあ、呼び方。』

『呼び方?。』

『その…お兄ちゃんは私にとって一人だけ、閃さんは恋人。ですが、呼び方だけ…お、お兄…お兄様とお呼びしても良いですか?。その…妹のように接してくれると…言ってくれたので…。』


 うぅ…自分でも何を言っているのか分からなくなってきました…。

 閃さんに…絶対、変な女だと思われてそう…。


『ああ。良いよ。砂羅の好きなように呼んでくれて。』

『っ!。う、嬉しいです。お、お兄様~。』

『おっと。いきなりだな。そんなに甘えたかったんだな。』


 胸の中が温かくなる。

 ずっと、失っていたものが見つかったような。

 ぽっかり空いた穴が埋められたような。

 充実感と満足感に満たされて…。

 感情の勢いのままお兄様に抱きついていました。


『お兄様。』

『何だ?。』

『えへへ。呼んでみただけです。』 

『そうか。』

『お兄様。』

『ん?。』

『いっぱい。撫でて下さい。』

『お安いご用だ。』


 何度のお兄様に抱きついて、何度も胸に顔を埋めて、何度もキスをする。

 私がお兄様を堪能している間、ずっとお兄様が撫でてくれた。

 

『お兄様…。』


 今まで溜め込んでいた分を発散するように...。

 初めて好きになった人に甘えられる幸せを全身で味わいながら。

 私はお兄様に密着し続けました。

 そんな私にお兄様は嫌な顔一つせずに応えてくれて…。


『私…幸せ~。』


 全身がお兄様の温もりに包まれたまま溶けていく感覚に身を委ねて…。

 私は…。


『ちょっ!?。砂羅!。砂羅!。スキル発動してる!。全身砂になってるって!。』


 砂になった。

 どうやら、無意識に【砂化】のスキルを発動してしまったようです。


『あっ…ごめんなさい。今、戻りますね。』

『ちょっと待った!。今戻ったら!。』


 そうでした。

 今戻ったら…一度砂になったことで衣服が脱げて…。

 つまり、全裸ということです。


『ふふ。大丈夫です。お兄様は私の恋人ですから私の身体、いくらでも見て下さい。。』

『時と場合は考えようよ!。てか、俺が我慢できなくなるから!。なんならお前も顔真っ赤だからな!。』


 お兄様は着ていた服を私の肩に掛けてくれる。

 お兄様の匂いがします。

 落ち着く…いい匂い。


『ああ。それと、どうせ着替えるならこれ着てみてくれ。美緑たちに聞いてるかもしれないけど、デートのプレゼントな。』

『あっ!。聞いてます!。お兄様に可愛い服を貰ったって。もしかして、私にも?。』

『ああ。本当なら町とかに出て色々と買い物デートとかあるけど。世界がこんなんだろ?。だから、作るしかなくてな。俺の好み全開だが気に入って貰えるように作ったんだ。一度袖を通してみてほしい。』

『はい!。お兄様からのプレゼントなら何でも嬉しいです!。早速着てきます!。』

『こら!。その格好で跳ねるな!。砂羅は今ほぼ全裸なんだから!。』

『えへへ。ごめんなさい~。お兄様。ちょっと、待っていて下さいね。ちゅっ。』


 お兄様から頂いた服を抱きしめならが、脱衣室へと移動する。


 素の自分。

 お姉ちゃんではない、妹としての自分をさらけ出せる大切な人。

 そんな方に出会えて幸せです。

 お兄ちゃん。私、絶対にお兄ちゃんの分も幸せになります!。だから、安心して見守っててね。

次回の投稿は22日の日曜日を予定しています。

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