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第357話 奥の手

ーーー奏他ーーー


 両手両足に填められた金色の枷。

 そして、全身に巻き付いた鎖。


 動けない…。油断した。

 まさか、こんな隠し球を用意していたなんて。

 それに…エーテルも外に出せない…。

 何なの…この枷と鎖は…。

 この拘束具に捕まった瞬間、チナトは消滅してしまった。

 エーテルを封じる神具。

 身体が閃君のエーテルから作られているチナトにはこの神具は天敵だ。

 非常にマズイ。大の字で固定されて身動きとエーテルを封じられた。

 強制的に解除されて神具も使えない。


『はぁ…はぁ…。わりぃな。使う気は無かったんだが。よっと…誇って良いぜ。二人がかりとはいえ、お前達は俺を追い詰めたんだ。』


 肩で息をしながら話すゼディナハ。

 私とチナトの二人でゼディナハを攻め続けてた。

 あと一歩のところまで追い詰めた瞬間、突然の横やり。二人の男女が戦いに参入した。

 ゼディナハの増援に気を取られた一瞬。奴が隠し持っていた鎖の神具が身体に巻き付いたんだ。


『奏他!。』

『行かせない。貴女の相手は私。』

『くっ…。』


 セツリナはもう一つの絶刀、エレラエルレーラの相手で精一杯。いや、セツリナがエレラエルレーラを抑えてくれているから私達が戦えているんだ。

 彼女がいなければ、ゼディナハとの戦いにすらなっていない。

 それだけ、私のような転生者にとって絶刀は脅威なんだ。


『はぁ…。まさか、こんなところで懐かしい顔を見ることになるなんてね。』


 私は時間を稼ぐ方向にシフトする。

 チナトが閃君の元に戻ったことで、閃君も気が付いた筈。

 閃君ならきっとチナトや他の神獣を援護に送ってくれる筈…。


 と、いうことで、かつての仲間に話し掛ける。

 同じ白聖連団に所属していた二人。

 閃君の話だと、閃君の仲間の睦美さんの能力で子供に戻ってレベルが1になったって言ってたっけ。何もかも忘れてクロノ・フィリアの保護下に入っていた…だったかな?。

 仮想世界で死んだ際の最終的なレベルが120以上の人達がリスティールに転生しているって話してたけど、違ったのかな?。


『彗に…修…。懐かしいね。』

『あん?。俺等のことを知ってんの?。』

『私は知らないわ。誰よ。この女。』

『俺も知らねぇ。』

『そう…まぁ、どうして生きてこの世界にいるかは聞かないわ。ゼディナハとつるんでいる以上、私の敵だろうし。』

『なんか良く分からねぇが、ゼディナハさん。この女ムカつくな。殺しても良いか?。』

『ああ、構わない。観測神の強さは嫌と言うほど味わった。仲間の一人くらい消しとかねぇと後々面倒になりそうだ。特に他の国の連中と合流されると数の面でも押されちまう。』

『へへへ。そうかい。なら、遠慮無く殺させて貰うぜ。』

『修…アンタは何でゼディナハと一緒に行動しているの?。』


 どうやら私のことは覚えていないみたい。

 それに性格も変わってないわね。

 殺すことが大好きで女や子供でも容赦なく殺していた。

 正直、私は好きじゃなかったし、白蓮にすら愛想つかされていた。


『あん?。そんなもん決まってんだろ?。ムカつく奴を殺すためだ。折角、生まれ変わったんだ。俺達を前世で痛め付けた連中に復讐してやるんよ!。』

『前世で…痛め付けた?。』


 閃君は保護したって言ってたけど。

 それに閃君の仲間が子供に暴力を振るうとは考えにくいし。


『ああ、クロノ・フィリアって連中だ。それが原因で俺も彗もは死んだんだ。だから、ソイツ等の仲間だっていうテメェを殺すのも俺の目的の一つだな。』

『それは本当の話なの?。』

『あ?。』

『本当に修はクロノ・フィリアの人達に殺されたの?。』

『たりめぇだろ。俺を転生させてくれた人から聞いたんだからよ。これ以上、正しいことなんかあるかよ。』

『それって…。』

『なぁ、修。そろそろ殺しとけ。コイツ時間稼ぎしてるぜ。仲間が助けに来る前に殺っとけ。』

『ああ。そうだったな。訳の分からねぇことばっかり話しやがって。コイツのペースに流されるところだったぜ。』


 これ以上、情報は聞き出せないみたい…。

 くっ…どうしよう…。本当に…殺される…。


『奏他!。』

『だから、行かせない。』

『どけ!。』

『無駄。貴女が離れた瞬間、私があの女を絶つ。』

『くっ…。』


 閃…君…。助けて…。


『何だ。このエーテルの気配は?。』


 え?。

 突然、地下都市全体に広がるエーテルの波。

 この気配は…閃君?。

 あれ?。閃君だけじゃない。もっと、他にも。


『ねぇ。ちょっとヤバくない?。これ、私達より強いよ?。』

『観測神…の…これは神技じゃねぇな。もっと強い…神力か…。』


 神力。

 神がその在り方を世界に刻み、未来を引き寄せ確定させる切り札。

 閃君が神力を?。あの女の子、それだけの力があったの?。


『あっ…やべぇな。デカイのが此方にも来る。おい、テメェ等自力で避けろ!。』

『何言って?。』

『上見ろ、上!。』

『上?。』


 全員の視線が上、地下都市の天井を見たその時だった。


『何っ!?。』


 夥しい量の炎を纏った岩が地下都市に降り注いだ。

 これ、隕石?。しかも、エーテルを感じるってことは誰かの神具?。神技?。

 無差別に降り続く隕石群がゼディナハ達を巻き込み地下都市を破壊し尽くす。


『ちょっ!?。ヤバッ!?。これ、私、死ぬ?。』


 どさくさに拘束が解けた私は崩れるように膝をついた。

 そんな私に隕石の一つが迫り来る。


『絶つ。』

『消えろ!。石ころ!。』

『私の奏他が傷物にされてたまるもんかあああああぁぁぁぁぁ!。』


 セツリナが隕石を両断。

 そして、助けに来てくれたラディガルとチナトが細かくなった破片を排除してくれた。


『チナト…ラディガル…セツリナ…。』

『おう。無事で何よりだ。奏他。』

『良かったわ。生きてて…。』

『それにしても…今のはいったい…。』


 抱きついてくるチナト。

 ラディガルとセツリナが周囲を警戒する。


『畜生。このエーテル。あの時の女か?。』

『げほっ。げほっ。マジで何のよ。』

『ちっ。こんなんばっかりかよ。』


 隕石で焼けた地面の中から現れるゼディナハ達。

 彼等にとってもこれは想定外だったみたい。

 誰かは分からないけど助かったわ。


『チッ…最悪が続くな。ここまで追って来るなんてな…。』

『ああ。紅陣やお爺さんの仇だ。逃がすわけないだろう?。ゼディナハ。』


 地下都市の天井は破壊され、うっすらと夜空が覗いている。

 そこから現れたのは、赤い竜の鎧を身に纏った神だった。


『あれは、基汐か?。』


 鎧の彼を見てラディガルが呟いた。

 基汐?。その名前って、クロノ・フィリアの…閃君が親友って言ってた。人の名前。


『はぁ…。こりゃあ、駄目だな。撤退だ。観測神どころか竜鬼神まで来ちまったら今の俺等に勝ち目はねぇ。』

『逃がすと思うか?。』

『ああ。逃げるね。切り札の一つを使うのとになるが仕方がねぇ。いつまでも隠せるもんでもねぇしな。』


 ゼディナハがエーテルを集中させる。

 そして、彼の横に顕現する黒い蝙蝠のような片翼を持つ少女。

 そのエーテルが彼女の性質を物語っていた。


『何あれ?。』

『神獣だ…しかも…俺達と同じ階級の…。』


 そういえば、ゼディナハは神眷者なのに一度も神獣を出していなかった。

 いや、エレラエルレーラが神具であり神獣である。そう思っていた。


『ラディガルと同じ階級ってことは…神獣の中で頂点に位置する格種族の王の一体か。』

『ああ。俺達が五行の五属性に分類される神獣なら…。』

『あれは…闇属性と言ったところかしらね。』

『君は?。初めまして、貴方が基汐ね。ご主人様の忠実なるしもべ、チナトよ。宜しく。』

『ああ。閃の…。閃は何処にいるんだ?。』

『あっちで戦っているわ。私たちは今、奏他を助けに来たの。』

『奏他?。』


 基汐…君が私を見た。

 緊張で胸が高鳴る。


『あはは…こうして話すのは初めてだね。奏他だよ。今は閃君と一緒に行動してるんだ。』

『………そうか。基汐だ。宜しくね。さて、話しは後だ。先ずは目の前の相手に集中しよう。』

『うん。そうだね。』


 黒い神獣の少女がゼディナハの横に降り立つ。


『わりぃな。エルリィム。お前を使うつもりは無かったんだが、状況が厳しいんだわ。』

『ええ。その様ね。私と同類もいるようだし。異神が二柱、エレラエルレーラも彼方の絶刀で精一杯みたいだし。ええ。理解したわ。状況は不利のようだし撤退しましょう。ゼディナハ。ああ。ついでに黒牙も拾っていくわよ。』

『ああ。そうだな。ってことだ。異神共。俺達は帰るぜ。』

『っ!?。』


 正直、この場でゼディナハを倒しておきたい。

 けど、ゼディナハが鎖やあの神獣の様にどれだけの隠し球を残しているのか分からない以上、迂闊に踏み込めない。


『神具。起動。』

『っ!?。』

『あれは…柱?。』


 十メートルくらいの高さの柱が地中から召喚される。

 その頂点付近にはエーテルの塊が球体となって回転し輝きを放っている。

 禍々しい。黒く重い光。


『神具【十界・黒闇星柱陣 エル・ルバグダガリサ】。』


 球体の輝きが増し、周囲一体を目を覆いたくなる程の光量が埋め尽くす。


『ぐっ…。皆!。無事か!。』

『はい。こっちは大丈夫です。』

『神獣達は?。』


 神獣達の気配が消えた!?。

 この光の効果?。

 暫くすると、輝きは弱まりゼディナハ達は消えていた。

 今の輝きに乗じて逃げたんだ。 


『どうやら、今の光は神獣達に特殊な効果をもたらすようだね。』

『そうみたいだね。えっと…基汐…君だったよね。改めて、ありがとう。貴方が来てくれて助かったわ。』

『偶然さ。ゼディナハが人族の地下都市を狙っているって情報を得て、この付近を探索していたら閃の気配を感じたんだ。えっと…確か奏他だよね?。白聖にいた。』

『うん。そうだよ。』

『君からは閃の気配を感じるけど…何がどうなっているのかな?。』

『それは、閃君と合流してから話すよ。閃君も今、戦っている筈だから。』

『基汐~。』


 そんな話をしていると、やる気のない声が近付いてきた。

 あれ?。あの娘も…知ってる…って、兎針を背負ってるし。ボロボロだし。大丈夫なの?。


『ああ。紫音。こっちも終わったよ。その娘は?。』

『兎針。前話した、ぺったん娘。』

『へ、へんな…あだ名は…やめて下さい。あともう少しゆっくり飛んで下さい。傷に響きます。』

『うぅ…注文多い。基汐~。』

『ん~。俺の知らない間に色々あったんだな。取り敢えず三人はゆっくり追ってきて。閃の所には俺が先行するから。閃なら大丈夫だと思うけど一応警戒しておこう。』


 そう言った基汐君は竜の鎧のまま飛び去って行った。


『うぅ…基汐。行っちゃった。えっと…えっと…。』

『この方は奏他さんです。人見知りは相変わらずですね。』

『むぅ。は…じめ…まして…うぅ…神具出す。皆。運ぶもん。』


 紫音が出現させた神具。


『UFO?。』

『兎針乗せる。奏他乗せる。むぅ…定員オーバーギリギリ。兎針。太った?。』

『失礼な!。うぐっ…うぅ…傷が…。後で覚えてなさい。紫音。』

『忘れた~。』

『このっ…。ロリ巨乳がぁ…。』

『ははは…仲が良いね。』


 紫音か…確か、兎針と一緒のギルドにいた娘だよね。会うのは初めてだけど、名前は聞いたことある。

 それに珍しく兎針も素を出してるし信頼できる相手ってことだよね。


『急ぐ。基汐。追う。レッツゴ~。』


 つくづく、やる気のない声だね。


ーーー


ーーー閃ーーー


 交差する俺と冴の身体。

 狙いは首のチョーカー型の神具。


『うぐっ…。』

『くっ…。』


 突進の勢いを殺し切れず、身体が地面を転がる。

 神力の使用によって身体が限界を迎えている。

 やっぱ、こっちの神力は慣れてねぇな。

 身体への負担が半端じゃない。

 油断したら意識も持っていかれそうだ。

 それにしても…。


『あの一瞬で俺の足に触れたのか…。』


 片足は結晶化し、地面を転がったことで粉々に砕けた。

 神力でエーテルを使い果たした今、再生すらまともに行えない。

 何よりも、セツリナたちの実体化させるだけのエーテルすら使っちまった。

 一体分だけは何とか残したが、残された奏他や兎針は大丈夫だろうか?。


『先輩…どうして…私のモノになってくれないの?。』

『はぁ…はぁ…言っただろ?。俺は世界を守るために戦っている。だから、個人的な目的で行動している冴の考えを受け入れることは出来ない。』

『酷いです。先輩。神具まで…壊して、私の想いまで拒否して…。私…。先輩しか…いないのに…。うっ…。』


 絶対神の神力。消滅の力で冴の神具が破壊される。

 神具の破壊は持ち主にも精神的なダメージとなって跳ね返るため冴は意識を失いった。そして、崩れる冴の身体。


『ふふ。不安定な精神状態ですね。冴ちゃん。まだまだ、調整が必要みたいね。』

『っ!?。………お前は…誰だ?。いや…。』


 倒れそうになった冴の身体を支えた少女。

 見覚えのない顔と姿。だが、コイツの纏っているエーテルは…神眷者や冴の纏っていたモノとは明らかに異なっていた。

 いや、アリプキニアの記憶にあるな。

 青国にいるリスティナもどきが造り上げた純エーテルを扱える造られた偽りの神。


『エーテリュアか。』

『あら?。流石ですね。義兄様。お婆様と神合化したのでしたね。記憶の共有。私のことも知っていましたか。』

『ああ。』


 マズイな。

 今はこんな奴と戦えねぇぞ。

 エーテルも底を尽いて、片腕、片足も失ったままだ。神獣たちも呼び出せないし、神具も使えない。

 敵は下手をすればゼディナハ以上の化物だ。


『ふふ。安心して良いですよ?。私は義兄様に手を出しませんので。それはこの娘にお任せします。』

『お前が、その娘に適当なことを吹き込んだのか?。』

『適当なことではありませんよ。事実を伝えたまでです。まぁ、少しだけ脚色はしたかも?。ふふ。しれないですが。』

『その娘をどうする気だ?。』

『そうですね~。義兄様が私たちの味方になって他の異神たちを殺してくれれば教えてあげますよ。』

『教える気はねぇのな。』

『はい。』


 とびきりの笑顔で返される。

 コイツ…何を考えているんだ…。


『さて、それでは私達は退散しますね。ふふ。母親も違う。父親も違う。ですが、定義上、【リスティナの子供】という繋がりの兄妹。ふふ。私、義兄様と話せて良かったですよ。また、機会があればお会いしましょう。』


 赤の他人じゃん。それ。


『御免被りたいな。』

『ふふ。そんなこと言っては駄目ですよ。』

『っ!?。』


 突然、目の前に移動したエーテリュアの顔が目と鼻の先にある。

 一瞬で距離を詰められた。


『今、義兄様が生き残れるのは私の気紛れです。私自身がお母様から受けた命令が敗北した冴ちゃんの回収ですから。それ以外のことをするつもりがないだけなんですよ。』

『………。』


 つまり、俺が生きていれるのはエーテリュアの気分次第だって言いたいのかよ。

 こんな状態の身体だ。事実なのが、余計に悔しいな。


『ふふ。なのであまり生意気なことを言わないで下さい。今の義兄様なら、このまま殺すことも、連れ帰り私のモノにすることも可能だということをお忘れなく。ちゅっ。』

『まぁ、そうだろうな…。』

『本当は、貴方とは争いたくないんですよ?。まぁ…何かの間違いが起こることに淡い期待を胸に秘めておきましょうか。』


 エーテリュアが冴を抱えて立ち上がる。

 

『それでは、義兄様。失礼しますね。』


 小さく手を振ったエーテリュアの姿が消えた。

 そして、彼女と入れ替わる形でやって来た赤い鎧が戸惑いの声を上げた。


『おい。大丈夫か?。閃。珍しくボロボロじゃないか?。』

『基汐?…どうしてここにいるんだ?。』

『まぁ、色々あってな。詳しい話しは後でしよう。それより、閃を安全な場所に運ぶぞ。』

『ああ。頼むわ。流石に…疲れた。動けねぇ。』


 久し振りの親友との再会。

 気心の知れた相手に安心し意識を手放した。

 

 それから、目覚めるまで丸一日が経過していたらしい。

 場所は人族の地下都市で唯一無事だった場所。

 イグハーレンが使用していた地下の教会だ。

 どうやら、守理達によって緊急時の避難場所に改装されていたようだった。


『そうか…ゼディナハは赤国を…。』

『ああ。目的は仙技と不死鳥の能力を得ること。火車に喰わせることで二つの能力を覚えさせようとしていたみたいだ。最終的に不死鳥の能力は奪えなかったけどな。仙技は俺たちに仙技を教えてくれた恩人、飛公環のお爺さんを殺して獲得しやがった。』

『その火車も、ゼディナハに吸収されちまったもんな。最初からそれが目的だったんだろうが…胸くそ悪い話だな。』


 俺と基汐はお互いのこれまでの情報を共有していた。

 赤国の出来事は流石に記憶には無かったからな。助かる。


『それにしても、閃の周りにはいつも驚かされるな。兎針に奏他。仮想世界では敵だったのに仲間になっているなんてな。』

『ああ。今は離れ離れになっちまったが、詩那に八雲、夢伽も仲間だ。』

『ははは。色んなギルドから集まったみたいだな。』

『改めて、初めまして。基汐さん。兎針です。閃さんとは恋人になる関係です。』

『マジで?。』

『わ、私も!。そうなれたら良いなぁ~、って思ってるから!。』

『奏他まで!?。閃…。』

『うっ…。』


 基汐の視線が痛い…。


『初めまして。閃さん。奏他さん。お久し振り。兎針。基汐の二番目の嫁の紫音です。宜しくお願いします。基汐とは既に同衾したり、一緒にお湯に浸かる仲です。もう隅々まで基汐に知られてしまいました。ポッ。』

『え…。基汐?。』

『は?。いや、確かに一緒に寝たし風呂にも入ったが…や、疚しいことはしていない!。』

『俺が言えた義理じゃねぇけど…。光歌には素直に言えよ。』

『うぐっ…。』

『全く、貴女は引っ込み思案のクセに変に行動力があるんですから…。』


 立ち上がった兎針が紫音を優しく抱きしめる。

 同じギルドの仲間。しかも同性の友人だ。

 互いに心配していたんだろうな。


『本当に…無事で良かった…。』

『うん。兎針も。………けど、おっぱいは小さいままだね。全然変わってない。』

『……………。』

『転生しても私の方が大きい。基汐も満足。』

『ふふ。貴女も生意気なところは変わっていませんね。』

『あ…痛い。苦しい。兎針。そんなに抱き締めたら、あででででで…胸じゃなくて肋骨がゴリゴリしてる。いだだだだ…。』

『うぅ…。酷い…。閃さん…。』

『はい?。』


 急に話を振られた。


『私の胸でも…満足して下さいね…。』


 答えずれぇ。てか、まだ恋人になってないんだが…。いや、気持ちには応えるつもりなんだが…今はまだ余裕がないって…。


『無理。兎針のじゃ小さすぎて閃さあででででで!?!?!?。』

『殺す。いや、捥ぐ!。』

『わにゃ~~~おっぱい取れる~。』

『あはは………なんか、兎針。嬉しそうだね。』

『だな。素直に喜んで良い状況なのかは難しいところだが、取り敢えず目は逸らしとくか。』


 美少女二人が縺れ合ってる状況は目の毒だな。


『ははは。………なぁ、閃。これからの行動は、どう考えてる?。』


 話題を戻した基汐に俺は考える。

 情報は照らし合わせた。

 クロロやアリプキニアからの記憶の共有で世界の真実を知った。

 そして、それらの情報を今までの目的と合わせて考える。

 これから俺がすべき行動を…。


『基汐は緑国に向かってんだよな?。その機械を届けるために。』

『そうだ。赤国と緑国を繋げれば戦力的にも強化出来るからな。それに閃の話なら光歌もいるんだよな?。』

『ああ。基汐に会いたがってたぞ。』

『そうか…楽しみだな。』


 転生して、やっと恋人に会えるんだ。

 基汐は内心とても嬉しいだろうな。


『俺は白国に囚われている灯月を助けに行きたい…だが、その前に青国に置いてきちまった詩那たちと合流したいんだよな。』

『青国か…。』

『けど、閃君。まだ、エーテルが全快じゃないでしょ?。まだ、神獣たちも外に出せないみたいだし。急ぎたい気持ちも分かるけど、少し休まないと。』

『ああ。回復するのに美緑にお願いしようと考えている。』

『美緑ちゃん?。…そうか。なら、閃も緑国に行くことにしたんだね。』

『ああ。少しやることも出来たからな。』


 俺は睡蓮に顔を向け安心されるために微笑む。


『閃様?。』

『さっきも言ったろ?。様はいらない。』

『そ、そうやんな…えんと…閃はん。』

『睡蓮は緑国で保護して貰えるように頼んでみるよ。地下都市はもう住める状態じゃないし、旅に同行させる訳にはいかないからな。美緑や累紅たちと一緒なら安心だからな。』

『閃…はん…。』


 それらな睡蓮も安心出来る環境で過ごせるだろうし。


『それに緑国にはもう一つ、やることが出来たからな。』

『やろこと?。』

『ああ。』


 アリプキニアとの話で各国の惑星神と話す必要が出てきたからな。

 まずは緑国にいるアイツからだ。

 そこから各国へ移動して惑星神と対話していく。


『閃の目的が青国なら、この機械で赤国に移動した方が早いな。』

『赤国に?。』

『ああ。赤国から黄国に移動してそこから青国に向かった方が緑国から向かうより数日早く青国に到着できるよ。』

『それは良いな。ここから青国は滅茶苦茶遠かったからな。それに…。』


 赤国には睦美や智鳴がいるらしいし。


『その顔は決まりだな。』

『ああ。その案で行くわ。ああ。あと、兎針と奏他にお願いがあるんだが。』

『はい。何でしょうか?。』

『何かな?。閃君。』

『ああ。実はな………。』


 まずは緑国へ。そして、赤国へ渡り青国へと辿り着く。

 待っていてくれ。詩那、八雲、夢伽。

 アイツとの繋がりでは、まだピンチにはなっていないようだが、早く合流しないとな。


 油断はできない。青国にはリスティナもどきやエーテリュアがいる。

 運良く他のクロノ・フィリアメンバーと会えていることを祈ろう。


 俺の行動に未来が、世界が懸かっている。

 これからの行動にミスは許されない。

 そう心に誓い俺は覚悟を決めた。

次回の投稿は15日の日曜日を予定しています。

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