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第341話 次元の狭間の牢獄で

ーーー次元の牢獄ーーー


 絶対神 グァトリュアルのせいで次元の狭間に創られた限定的な空間に隔離された私…ご主人様である閃様の忠実なる下部、神具 クロロ・ア・トキシル。

 この牢獄はアイツの適当なエーテルの構成で造られている。

 適当すぎてアイツ自身にしか解除できないクソ仕様。

 中からは決して開くことはなく、中にいる私には出来ることがない。

 唯一の楽しみは、自身の能力で下界の様子を眺めながら過ごすこと。


 相方だったセツリナはどうしたかしら?。

 急に私が帰ってこなくなって泣いちゃってるかも。

 あの娘、寂しがり屋だから。

 ご主人様が映像で映る度に瞳を輝かせて食い入るように見てたしね。


 それにしても…。


『はぁ…。まさか、グァトリュアル自らが下界に干渉してくるなんてね。ご主人様が覚醒して、神眷者を全員倒すまで動かないと思っていたけど…やっぱ、燕に気紛れで助言したのがマズかったなぁ。』


 燕が【時間神】へ覚醒するのは、本来ならまだ先だった。

 正確には、燕の覚醒を機に閃はこの世界が繰り返し終焉と再生を繰り返していることを知る…筈だったのだけど…はは、私がそれを壊しちゃったのよね~。


 あんな早期に【時間神】の出現は、世界のバランスを崩しかねない。

 それは分かる。【時間神】がその力を発現させれば、ご主人様の成長と覚醒が成功しなくなってしまう。

 何せ、時間を止めたり、戻したり、早送りしたり出来るのだから、しかもその力がご主人様側にある…燕は絶対にご主人様の為にその力を使おうとするだろう。

 【観測神】の顕現を渇望している絶対神にとっては、あの段階での【時間神】は邪魔な存在なんだ。


 逆さまになって下界を映している歪めた空間を眺める。

 ご主人様…折角、青国まで到着したのに強制転移でまた振り出しね。可哀想に。

 人族の地下都市が壊滅的な打撃を受けている今、アレがご主人様に助けを求めるのは必然。

 加えて、青国には、まだご主人様の力は必要ない。


『この展開も初めてのパターンか…。』


 無凱も黄国へと到着して…。

 基汐は人族の地下都市へ…ご主人様と基汐の道が交わろうとしている…今までならこれももっと先の話だ。


『もう何が何やら。私の知ってる知識に無いわ。』


 登場人物達…転生者達の行動。

 全てが絶妙にズレ、そして、今までに無い場所で交わる。

 この世界は、きっと特別なのね。


『だからこそ。グァトリュアルも慎重になっているのよね。』


 ダークマター。

 世界を終焉に導く未知のエネルギー。

 その侵食を防ぐ為に絶対神は試行錯誤している。

 何度も失敗し。何度もやり直した。

 繰り返すことで成功することもある。それらを繋いで、結んで、合わせて、より良い未来を形作る。

 そうして、今回に繋がっている…と。


 全ては世界の終焉から 皆 を守るために。


 アイツが期待する気持ちも分かる。

 行程はどうあれ終焉というのは、私ですら耐えられるものじゃない。

 神具の私も、終焉の前には涙を流し、必死にご主人様の名前を叫び、喚く。

 ご主人様の死を境に朧気で希薄な存在になっても、終焉の恐怖は鮮明に記憶に残っている。


 あんな最期は…嫌だ。

 神具の私もああなるんだ。

 記憶を引き継いでしまう あの娘 が私は凄いと思う。

 生物でありながらアレに心を壊されずに次に繋がる生を送り続けている。

 私がご主人様以外で唯一尊敬する相手だ。

 そんな彼女も無凱との再会に子供のようにはしゃいでいる。


 ふふ。本当に嬉しそうに…。


 あの娘だけは気になってしまう。

 あの娘が嬉しいと私も嬉しい。感情移入とまではいかないけど…無凱との再会…良かったわ。

 

 あと、羨ましいわ。キシルティア。


 はぁ…。けど…。今は…。


『暇ね…。』

 

 ぼぉ~っと、下界で起きている里亜と初音の戦いを眺めながら、そんな言葉を呟いた。

 戦っているのは白国からの刺客。

 七つの大罪をベースにしクティナが使役していた七体の神獣。

 それらの核を…転生者の肉体と融合させることで誕生した大罪神獣か…。

 奴等は、自らの【罪】を具現化した支配空間を操る能力を持つ。


 奴等の存在も珍しい。

 今回で三回目の登場だ。


『そんな奴等に異世界の神具を使わせる…ねぇ…。』


 正直、最悪の組み合わせだ。

 ご主人様側もそう簡単には攻略出来ないだろう。

 代刃が仮想世界で顕現させた神具の複製。

 本来ならありえないことだが、神工知能がリスティナのデータを基にして誕生した偽りの神。自らの意思を持ったことで一つの個体となった存在。

 あれが、仮想世界のデータを解析し神具の99%を再現。その複製を創造した。


 他世界の神具はその在り方が違う。

 そもそも世界の形が違うのだ。より純粋なエーテルに満ち溢れた世界。

 そんな世界の神々が扱う神具。

 仮に弱体化しているとしてもその力は計り知れない。


『はぁ…頑張れ…ご主人様…。』


 私も貴方の力になりたいです。

 

 再び。大きく溜め息…自分の無力を感じていた、そんな時だった。


『は?。』


 この次元の狭間にある牢獄の空間に亀裂が入った。

 そして、空間が硝子が割れるようにひび割れて次の瞬間、粉々に砕け散り、大きく穴が開いた。


『はて、絶対神の気配を辿って着いた先は、謎の空間。何も無かった空間に無理矢理隙間を作ったような雑な作りだが…ああ。娘。お前がクロロか?。』

『は?。何でアンタがここに来てんのよ!?。アリプキニア。』


 【恒星神】アリプキニア。

 リスティナ達、惑星神の姉妹の母親。

 リスティールを照らす恒星の神。

 幼い見た目だが、歴とした最高神の一柱。

 最高神に分類されるがその力は【世界神】に匹敵する。


『はて、妾と主は初対面だった筈だが…キキキ。噂通りのようだな。時間を操る閃の神具よ。』 

『へぇ。その事も知っているのね。それで?。どうしてここに来たのかしら?。』

『なぁに。絶対神が下界に干渉したことで残した気配を辿ってな。文句の一つでも言ってやろうと思ったが結局行き着いた先にいたのは別の者だった。そういう訳だ。』

『あら?。それだと私のことを知っている理由は…。ああ。そういうこと…。』

『クロロ!。』


 私に抱き付く少女。

 私と同じご主人様の神具である絶刀。

 セツリナ・ゼ・トキシル。


『心配したんだぞ!。急に帰ってこなくなったから!。』

『ああ。やっぱり泣いてたの…。』


 普段は凛々しく振る舞っているのに、一人になると泣くのよねぇ~。


『よしよし。良い子。良い子。』


 セツリナの頭を撫でる。


『それで?。アリプキニアはセツリナに私のことを聞いて、ここに来たのね。』

『ああ。もう一つの痕跡を辿ったらな。空間にぽっかり空いた歪みを見つけてな。ふむ。内側は堅く、外部は脆い。まるで誰かに外から開けさせるような作りだな。』


 絶対神の野郎…こうなることも想定済ってこと?。ムカつくわね。


『聞いたぞ?。クロロ。』

『ふふ。教えて欲しいの?。』


 彼女がここに来た理由。

 私のことをセツリナに聞いた彼女が私に求めることなんて一つよね。


『っ!?。ほぉ。話が早いな。ああ。この世界のことを知りたい。妾の知らぬ…いや、失った世界の記憶をな。』

『そう。それで?。世界の真実を知ってどうするの?。』

『それは内容によるな。少なくとも、閃の敵になることはない。安心しろ。』

『ええ、それを誓えるのなら問題ないわ。じゃあ、そっちの隠れている貴女の娘も一緒にどうぞ?。お茶も何も無い場所だけど。』


 空間の割れた歪みから此方を覗いている少女。

 リスティナの姉妹の一柱。チィ。


『良いの?。』

『ええ。貴女、チィでしょ?。別に構わないわ。貴女なら。』


 チィはどの世界でも此方側。

 今回はどの娘と【合神化】するのかしらね。


『私のことも知ってるんだ。』

『ええ。勿論。絶対神に怒っていることも知ってるわ。』

『っ!?。』

『まぁ、真実を知れば考えも変わるかもだけどね。さて、では、お話しないとね。』


 私、セツリナ、アリプキニア、チィと向かい合うように座ったのを確認して私は世界の真実を話し始める。

 私の行動の全てはご主人様の輝かしい未来の為に。


ーーー


『そうか、終焉と再生。絶対神の奴は…閃を完全な観測神へと覚醒させる為にリスティールという舞台を用意したのだな。』


 世界の真実を話し終えた。

 私の知る限りの前の世界でのアリプキニアやチィの行動も含めて。

 一気に話して疲れたわ。

 さて、全てを知った彼女達の反応と判断はどうなるのかしらね。


『ええ。そうよ。このままじゃ、世界はまた滅ぶわ。』

『…ふむ。』


 何やら考えているようね。


『チィ。どうする?。』

『私はママと一緒。閃ちゃんの力になりたい。絶対神は嫌いだけど、リスティナの子供の閃ちゃんは好き。』

『ふむ。決まりだな。』


 立ち上がるアリプキニアとチィ。


『閃には妾の力が必要のようだな。この流れも奴の手の平の上というのは癪だが、納得もした。奴が妾を自由にしたことも、この場に来る痕跡を残したのも…理解した。ふふ。だが、孫の為になれるのだ。満更、悪い気はせんな。』

『そうね。セツリナ。準備して。』


 それに続いて私も立ち上がる。

 空間から出られるようになった以上、ここに残る理由もない。

 それにアリプキニアがここに来たことは、きっとご主人様にとっても必要なことなのよね。


『は?。えっと…何の?。』

『決まっているでしょ?。ご主人様に会いに行くのよ。私達の力をご主人様に戻すわ。』

『っ!?。ご主人様…に…ああ。行く。』


 私達の意思は一つになった。

 ご主人様を観測神へと覚醒させる。


 それが私達の目的。

 その為に私達は人族の地下都市へと向かった。

次回の投稿は10日の木曜日を予定しています。

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