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第36話 白聖連団 帝都の闇

 黄華扇桜のエリアにある1つの扉。

 それを潜るとそこは遠く離れた裏路地の通路。

 無凱のおっさんの能力 箱 の効果。

 別々の 箱 の中を繋げる能力の応用。

 おっさんが一度でも行ったことがある場所に作ることが出来るこのゲートは、遠く離れた白聖連団のエリアに直行することが出来る。

 このゲートを利用して俺は白聖のエリアに忍び込み情報集めをしていたんだ。


『さて、着いたな。』

『わぁ。何度来ても広いね。』

『閃。これから。どうする?。』


 ゲートから出てくる氷姫と智鳴。

 俺たちは今、青法詩典の拠点の1つに囚われている仲間を救うために移動している。

 流石のおっさんも青の支配エリアまでは行ったことが無いので白聖のエリアを経由しなければならない。


『気を付けろよ?。いくら顔バレをしてないとはいえ、下手に動けば怪しまれる。』

『うん。そうだよね。気を付けないと。』

『うん。気を付ける。』


 俺は白聖連団のエリア地図を取り出す。

 ここは、日本という国の中心だった場所。

 白聖連団が支配してからは、ゲーム時代の奴等の拠点の名前をそのまま使い今は 帝都 と呼ばれている。


『ここから青の拠点まで隠れながら進むしかないな。』

『青。遠い。』

『1週間くらいは掛かっちゃうね。』

『公に行動できないからな。慎重に進むしかない。』

『そうだね。気を付けないと。』

『ああ…急がないとな。』

『閃?。』

『どうしたの?。』


 一瞬、足を止めた俺を心配すること2人。


『いや。ちょっとな。青の場所に居るのは多分、矢志路だろ?実際、囚われてるわけじゃなくて…どっちかと言うと避難してると思うんだよなぁ。』

『矢志路。引きこもり。』

『太陽の光が苦手だもんね。』

『それにアイツ強いだろ?。能力だけなら俺たちクロノフィリアの中でも上位だし。身の心配はしていない。けど、多分、俺たちを待ってるんだろうなぁって。』

『うん。矢志路も。閃のこと。好き。』

『そうだね。急がないと。』

『ああ、行こう。』


 俺たちは先を進んだ。

 と、言っても町の中を歩くだけなんだが。


『閃。お腹空いた。』

『私もぉ。』

『ああ、そろそろ昼にしようか。』


 大きな公園を見つけ、そこのベンチに座る3人。

 俺は出掛け際に灯月に渡された弁当をアイテムBOXに入れておいた。

 それを取り出す。


 どーーーーーーーーーーーーーーん!!!。


『……………。』

『何これぇ!?。』

『凄い。量。』

『あいつ…やりやがった。』


 この量はどう考えても1週間分はある。

 これは、厨房にあった食料を全部使ってると見て間違いないだろうな。


『ちょっと。仁さんに連絡するわ。』

『食べてて。良い?。』

『ああ、良いぞ。』

『やったぁ~。いただきま~す。』


 俺は小型の携帯端末を取り出し仁さんに連絡する。

 この機械は、クロノフィリア専用の通信手段、会話の内容を傍受されない利点がある。

 因みに、光歌が開発した。


『機美ネェがイればもっとスゴいのツクれるんだけどね。』


 とか、言っていたな。

 機美姉か…何処に居るんだか…。


 現在、この国が発電所から供給している電気は全て白聖連団が独占している。

 そして、その電気は六大ギルドを中心に供給されている。

 その為、俺たちクロノフィリアが拠点としている廃墟には電気が普及していない。


 この端末は、使用者の魔力を利用して端末同士で通信することが出来る。

 が、お互いが同じものを持っていること、距離に応じて必要な魔力が膨大になっていくことと、コスパがかなり悪い。


『…やぁ。そろそろかけてくる頃だと思ったよ。』

『すみません。仁さん。灯月のヤツが厨房の食料を全部使いましたよね。』

『ああ、最初は驚いたけど。灯月ちゃんならやりかねないしね。』

『食料の件は何とかしますので。』

『いいや。大丈夫だよ。ちょっとお願いしたら灯月ちゃんが本気になってくれたから。』

『え?。どういう?。』

『朝食はかつて見たことがない豪華な料理が並んだからね。この件に関しては閃君が心配することは無いから安心して。』

『は、はぁ。』

『それじゃあ。矢志路君をよろしく。じゃあね。』


 プツン。と通話が切れる。

 灯月のヤツが本気とか…そんな方法…いや、考えないでおこう。

 俺のプライバシーは安全なハズ…。


 空腹を満たし終え、裏路地から通りへ出る。


『この辺りは昔のままだね。』

『ああ、だが外を歩いているのは全員能力者だ。』

『じゃあ。全員。白聖?。』

『そう。関係者だな。』


 白聖の支配エリアの中心部は昔のままの賑わいを見せ、様々な店が営業している。

 ここでは、入手できないものは無いと言われるほど様々な物が売られている。

 ここだけは、世界が侵食される前のままのようだ。


『あっ…あの服可愛いね。』

『閃。服見ていい?。』

『あんまり時間ないぞ?。』

『少しだけ。』


 俺は2人に付いていき女性服売場に入る。

 今は女の姿なのだが、居心地は悪いな。


『これ、閃ちゃんに似合いそう。』

『閃。これも。』

『あっ。これも、これも、良いね。』

『閃。この下着。着けてみて。』

『下着は勘弁してくれ…。』 


 その後、俺は2人の着せ替え人形にされた。


『ほら!。そろそろ行くぞ。』

『はーい。』

『うん。』


 俺たちは店を後にし再び歩みを進めた。

 白聖には舗装された道路があり普通に車も走っている。


『本当にここら辺は2年前と全然変わらないよね。』

『ああ。だが、当時は無かった建物も増えてるし変わってないわけではないぞ。』

『あっ。そうだね。あの建物とか無かったし。』

『アレも。無かった。』


 町並みを観察しながら歩いていると、1台の車が地下に通じる階段の前に停止した。

 地下からは、白い仮面を着けた騎士姿の人物に連れら鎖に繋がれた人達が出て来た。


『閃。あれ。』

『ああ。おっさんが言ってた能力者を集めているっていう白聖の奴等じゃねぇかな。』


 周囲を歩いている連中は、その現場を見ても驚いたり、反応したりしていない。

 おそらく、日常の風景なのだろう。


『閃。どうする?。』

『あんま、表立って行動出来ないからな…。少し後を追うか。』

『そうだね。ほっとけないもんね!。』


 建物の屋根を伝い車の後を追う。


『あれだね。』

『病院?。』

『みたいだが。能力者は病気にはならないからな。病院だった場所…で、今は別の施設って考えた方が良いかもな。』

『さっきの人達が中に連れていかれてる。』

『閃。どうする?。』

『う~ん。あの施設についての情報が欲しいな。』

『じゃあ、情報収集する?。』

『ああ。3人でバラけて周囲を含めて白の情報を集めながら探索しよう。』

『わかったよ。』

『うん。』

『明日、同じ時間に、ここに集まろう。』

『『了解!。』』


ーーーーーーーーーーーーーーーー


 私は、さっきの人達が連れられて出てきた地下に続く階段に入っていく。


『うん…。地下鉄…。』


 そこは、地下鉄の跡地。当然、電車は走っていない。薄気味悪い空間が広がってる。

 周囲には誰もいない。

 けど、複数の視線を感じる。


『おい。姉ちゃん。止まりな。』

『ん?。』


 私を呼び止めた細身の男。

 道を遮るように立った大柄な男。


『姉ちゃん。てめぇは誰だ?見ない顔だが白聖の連中か?。』

『違う。』

『じゃあ、何よ?観光客か?』

『そう。』

『嘘つくんじゃねぇよ。』

『バレた。』

『変な姉ちゃんだな。ここには何も無いぞ。怪我したくなければ帰りな。』

『さっき。ここから。人が。連れていかれたの。見た。何があった?。』

『…ああ。それを知らねぇってことはマジで余所者なんだな。』

『そう。』

『………。姉ちゃん。強いのか?。』

『多分。』

『レベルは?。』

『120。』

『へぇ。1つ確認だ。何故…ここに来た?連れていかれた連中のことを知ってどうするつもりだ?。』

『助けたい。』

『はあ?。自分に関係の無い連中を、か?。』

『そう。』


 私が正直に自分の気持ちを言うと細身の男が私の目をじっと見てきた。

 私もじっと見つめる。


『ついてきな。』

『うん。』


 私は男達に付いて行った。


ーーー


 連れていかれたのは最奥にあった部屋。

 ここまでの薄暗い通路にも痩せ細った人達がいた。

 細身の男が扉を開ける。


『俺たちはここまでだ。この先にいる方に詳しいことは聞きな。』

『うん。ありがとう。』

『っ。とっとと行け。』


 私は扉の中に入る。


『あら?。どなた?。』

『氷姫。入り口にいた人に。案内された。』

『あら。あの人が案内?珍しい。』


 部屋の中は1人の女性。

 優しげな雰囲気の女の人。


『ええと。氷姫さん。貴女はどうしてここへ?。』

『さっき。ここから。白聖の騎士に。連れてかれた。人達を見た。詳しいこと。知りたい。』

『ああ。なるほど…それで。』


 女性は何かを考えている。


『ふっ。わかりました。初めまして。氷姫さん。私はこの地下を拠点にするグループのリーダーで水鏡(ミキョウ)と言います。レベルは100。』

『氷姫。レベルは120。』

『へぇ。凄いですね。』

『普通。』

『ふふ。面白い方ですね。貴女は…。』


 水鏡は私を部屋の中心にある対面式のソファーに座るように誘導した。


『貴女は、連れていかれた方々のことを知って…どうするんですか?。』

『助けたい。』

『……。』


 水鏡は暫く黙っていた。


『この場所は、無能力者達の避難所です。無能力者の方々はこの白聖連団が支配するエリアでは人権すらない扱いを受けます。だから、私が保護しているのです。』

『うん。良いこと。』

『ですが。無能力者たちの人数は数百を越えます。彼等を養うほど多くの資源はここにはありません。』

『大変。』

『それで。私は白聖連団と取引をしています。』

『何を?。』

『定期的に無能力者を白聖に譲り渡すことでの安定した資源提供です。』

『連れていかれた。人達。生け贄?。』

『………。そう…。言ってしまえば…そうですね。数百を救うための少数の犠牲…。』

『それは。良くない。』

『ここでは、そうすることでしか生きていけないのです。』

『………。』

『わかっていただけましたか?。仕方がないことなのです。貴女が仮に連れていかれた方々を助けたところで…何も変わらない。』

『水鏡の。本当の。気持ち。知りたい。』

『え?。本当の…気持ち…?。』

『うん。』

『………。』


 沈黙。沈黙が続く。

 少し経つと、水鏡が小さな声で話し始める。


『わ、私だって…。こんなこと…したくありません…。連れていかれた方には…小さな子供だっていたんですよ?。私は力の無い人達を守りたかったのに…事実上、誰も救えていない…。虚しくて…悔しいに決まってるじゃないですか!。』


 水鏡は泣いていた。

 何かをしたいのに、何も出来ない自分自身が憎らしいのだろう。


『わかった。』

『え?。』

『助ける。』

『な、何を言ってるんですか!?。聞いていましたか?。助けたら今度はここにいる人々が苦しむことになるんですよ?。』

『違う。水鏡。貴女を。助ける。』

『え?。』


 私は立ち上がる。


『嘘。言った。』

『嘘?。』


 私は神具を取り出す。

 青い宝石の埋め込まれた白い杖。

 それと同時に武装を展開。

 服装が真っ白な着物姿に変わる。


『私は。クロノフィリア所属。No.3。氷姫。レベルは150。』


 周囲の気温が数度低下。吐く息が白くなる。


『クロノ…フィリア…?。あの…伝説の?。』

『そう。貴女を。助ける。だから。力を貸して。』


 大きく見開いた目を瞑る水鏡。

 胸に手を当て静かに呼吸を整える。

 そして、床に座り土下座。


『氷姫さん。どうか…私を、私たちを…助けてください。』


 涙を流しながら願いを乞う水鏡。


『うん。任せて。』


 私は水鏡を立たせて、そう応えた。

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