第336話 女神の再会
『ちょっとねぇ。新しい娘に挨拶と、会わせたい娘がいてね。入っても良いかしら?。』
『うん。良いよ。』
メリクリアに導かれ入室してくる女性。
本当に綺麗な方だぁ。立ち振舞いの一つ一つに気品があるっていうか、流麗な動きには無駄が一切なく上品さと丁寧さが所作から窺える。
美の女神。そんな言葉が自然と脳裏に浮かぶ。
『初めまして。えっと…代刃ちゃんだよね?。私はシルリチャシエールです。長いからシルリって呼んでね。』
『あ、はい。初めまして、代刃です。シルリさん。』
『ふふ。宜しくね。』
僕に近付くと微笑むシルリチャシエール。
何だろう。彼女の瞳を見てると全てを見透かされているような気がする。
『ふふ。貴女も良い子ね。』
『え?。』
『ママはね。【全知神】なの。対象を視るだけで、その全てを知れるんだって。』
『へぇ。そんな神もいるんだ。凄いね。って、もしかして今、僕のこと知られちゃったってこと?。』
『ふふ。そうよ。けど大丈夫。代刃ちゃんがどんな性癖を持っていても私は引かないわよ。ふふ。可愛いわ。とても真剣で。一生懸命で。彼のこと本当に好きなのね。』
『うわあああああぁぁぁぁぁん!。僕の秘密視られたあああああぁぁぁぁぁ~。』
『ふふ。ごめんね。誰にも言わないから許して。ふふ。けど、便利なようで、なかなか不便なのよ?。未来を視るには制約が掛かるし、不確定の要素が含むと真っ暗で何も分からないし。』
『うぅ…そうなんだ…。しくしく…。』
全てを知るかぁ。
けど、分からないこともある。それって、つまり、神の力が及ばない領域があるってことなんだね。きっと。
『ふふ。その通りよ。私という神の存在以上のことを知ることは出来ない。不確定な未来や世界そのもののこともね。メリちゃんに話を聞いたと思うのだけど。今回の世界がどの様な結末を迎えるのかは分からないのよ。』
『え?。僕、今、声に出してた?。』
『いいえ。少し貴女の心を覗いただけ。ふふ。けど、そんなことしなくても代刃ちゃんは表情に出やすいから分かりやすいわ。可愛い。』
『えぇ…。あぅ…。』
『私は、絶対神が自分の補佐として最初に創造した神なの。だから、皆のお母さんみたいな立場かな?。ほら、絶対神は不器用でしょ?。説明も下手だしね。』
『ママは優しいんだ。何でも知ってるしね。たまに怖いし隠し事出来ないけど…。』
『ふふ。さぁ、私の挨拶はこの辺にして、代刃ちゃんに会わせたい娘がいるの。』
『え?。僕に?。』
『ええ。ほら。入っておいで。』
シルリさんが手招きをすると、見知った顔が室内を覗き込んだ。
『代刃…君?。』
『燕!?。』
僕は反射的に跳び出していた。
燕の身体を強引に抱きしめて、その身体を、その存在を確かめる。
大切な恋人が…仮想世界じゃ最期まで一緒にいてあげられなかった恋人との再会。
『本当に燕なの!?。良かった!。無事だったんだね!。』
『うん。絶対神に此処に連れて来られて…この部屋までシルリさんに案内されたの。』
『燕ちゃんも最高神に覚醒したみたいでね。流石に下界に放置する訳にもいかなくなったみたい。絶対神は、また強引に場を掻き回して来たみたい。閃君達に混乱を招いただけの結果になっちゃったわ。』
『そうなの?。燕…人族だったよね?。』
『うん。けどね。今は違うみたいなの。えっと今は【時間神】になったって教えてくれたよ。』
【時間神】
時間の神か…。また凄そうな神の名前だね。
『時間神は観測神と同じで人族からの派生で誕生する神なの。今回は燕ちゃんだったみたいね。』
『今回は?。』
『何度も繰り返される世界の流れの中で、今回のように貴女達の中から時間神が誕生したのは何度かあったわ。前回は、夢伽ちゃん。その少し前は詩那ちゃんだったかしら?。そして、今回は燕ちゃんだったのね。』
夢伽?。詩那?。
どっかで聞いたことあるような名前だけど…燕が知り合った人達のことかな?。
『ふふ。これまでの経緯については後で燕ちゃんに聞くと良いわ。ああ。一つ聞きたいのだけど、二人は恋人同士なのよね?。』
『え?。あ、うん。そうです。』
『………はい。』
あれ?。燕の表情が暗い?。
元気がないみたい?。どうしちゃったのかな?。
『部屋はどうしようか?。個別に用意する?。それとも一緒にする?。』
『僕は一緒でも構わないけど、燕はどうする?。』
『え?。えっと…一応…別々の部屋を用意して貰おうかな?。ははは…。』
『そう?。なら僕もそれで構いません。』
『分かったわ。すぐに行き来できるように隣同士にしておくから。それとね、燕ちゃん。』
『え?。』
シルリさんが燕を抱きしめる。
『あの…シルリさん?。』
『大丈夫よ。貴女の想いをそのまま伝えれば良いわ。ちゃんと分かってくれる。私が保証するわ。だから、安心して。』
『っ。はい。ありがとうございます。』
『ふふ。そうよ。貴女は元気な顔が良く似合ってるわ。』
燕の頭を撫でるシルリさんが少し離れた。
『さてと、可愛らしい娘達の顔も見れたし私は戻るわね。メリちゃん。あんまり二人を困らせちゃ駄目よ。』
『わ、分かってるよ!。ママ!。』
『ふふ。それじゃあね。困ったことがあればすぐに呼んでね。』
小さく手を振ったシルリさんが笑顔で退室していった。
何か…凄い包容力がある人だなぁ…。
『代刃。今日は色々とお話を聞いて疲れたでしょ?。折角の恋人との再会だし、今日はこの辺でお開きにしようよ。』
『うん。そうだね。』
燕を見ると、自然と僕の腕に抱きついてくれた。久し振りの燕の感触。柔らかくて温かい。
『じゃあ、部屋まで案内するよ。もうママが準備してくれてる筈だから。』
『え?。早くない?。』
『ママだからね…。さっきの質問、一応形だけ二人の部屋のことを聞いてたけどママは答えが分かってたんだと思うよ。けど、改めて答えを確認したくて質問したんだと思う。』
『そうなんだ。ちょっと怖いかも?。』
『はは…うん。怒ると怖いよ。他の神もママの前じゃ大人しくなるし。』
『はは…。』
僕達を殺した神が大人しくなるんだ…。
『じゃあ、案内するからついてきて。』
メリクリアに案内されて辿り着いたのは、部屋が沢山並ぶ居住区?。みたいな場所。
あっ。扉に代刃ちゃんって書いてある。
隣の部屋には燕ちゃんって。
これ書いたのシルリさんだよね。分かりやすいけど、ちゃん付けなんだね。
『じゃあ、僕は部屋に戻るね。何かあったら呼んでね。それと、明日は他の神に会わせてあげるから。それとこの城の案内もしてあげる。』
『色々とありがとね。メリクリア。』
『こっちこそだよ。代刃のこと沢山知れて嬉しかったもん。ありがとっ!。代刃。また、明日ね。バイバイ。』
『うん。バイバイ。』
メリクリアはスキップしながら廊下を移動して行った。
………はて、女王とはいったい?。
威厳も何もない。普通の女の子な後ろ姿が見えなくなって行った。
~~~~~
わぁ…。
用意された部屋は、仮想世界で使っていた僕の自室のままだった。
ピンク色の壁も、ベッドも同じもの。
細かな小物とかは流石にないけど、僕のことを知らないとここまで再現できないよね…。
これもシルリさんがやったのかな?。
全知神か…。
備え付けのシャワーを浴びる。
用意されていた部屋着に着替えてベッドの上に腰を下ろす。
メリクリアから聞いたことを頭の中で整理していく。
コンコン。
扉がノックされる。
あっ。来たね。そろそろだと思ってたんだ。
僕は扉を開けて訪問者に笑顔を向けた。
『し、代刃君。今、良い?。』
『勿論だよ。こっちにおいで。』
予想通り、燕がそこにはいた。
燕をベッドに誘導し座らせ、その横に座る。
燕もシャワーを浴びたのかシャンプーの甘い匂いがする。
『本当に久し振りだね。元気そうで良かった。』
『うん。代刃君も。えへへ。また再会できて嬉しい。』
『僕もだ。』
僕は燕の唇に自分の唇を重ねる。
最初はピクリと身体が跳ねた燕だけど、すぐに僕を受け入れてくれた。
『燕は今まで何処にいたの?。僕はここで目覚めたばかりなんだ。だから、他の仲間達の状況が今一把握できていないんだ。』
『分かった。それから話すね。』
燕はゆっくりと順序立てて話し始めた。
人族の里で目を覚ました後、情報を集める為に噂を頼りに人族の地下都市へ辿り着いた。
そこで閃や無凱さん、そして閃が新しく仲間にした仮想世界の転生者と再会する。
人族の地下都市での戦い。
そして、緑国へと迎い、そこで美緑や光歌、美鳥と再会。再会も束の間、緑国との戦いが始まってしまった。
各々の戦いを乗り越え、皆の神としての覚醒や閃の活躍によって緑国を支配していた神眷者セルレンを倒した。
緑国は現在、セルレンの娘のレルシューナと美緑の兄 律夏が王と女王となり戦いの末に崩壊した緑国を建て直しているとのこと。
その後、青国へと向かおうとした時、迷いの森の中で燕は閃に似た謎の男と出会い。戦闘。
全く相手にならずそれでも立ち向かった最中、突然、現れた少女 クロロの導きにより時間神に覚醒した。
『時間の神になった私を見た謎の男がね。急に絶対神に姿を変えて。そのまま気絶させられちゃったんだ。気付いたらここに連れて来られてたの。』
『そうなんだ。きっと燕が最高神になったからだね。』
『どういうこと?。』
僕はさっきメリクリアに聞いたことを燕に説明する。
僕自身も半信半疑なところがあるから、仮説を含めて話していく。
『じゃ、じゃあ、リスティールは私達を最高神に育てるために用意された………修行の場所…って、ことなの?。そこに住んでる人達も、人族や緑国の人達も…神眷者も…全部?。皆の意思を無視した?。』
『そうみたい。けどね。そうしないといけないみたいなんだ。このままじゃ、世界が…僕達の知る世界が滅ぼされちゃうから。今までの繰り返しの世界と同じように。』
『それが…その原因が…ダークマター…。』
『うん。それがどういう存在で、どんな姿形をしているのかは分からないんだって、けど、放っておけば僕等は皆死んで絶対神以外の全てが終焉を迎えるんだって。』
『神の行動は世界を救う為だったんだ。仮想世界の時も、リスティールを襲った時も、転生した私達とリスティールの住人達を戦わせているのも…。』
『うん。終焉という最悪の結末から世界を守る為にだって。』
『……………。』
複雑な表情を浮かべる燕。
その気持ち分かるよ。誰の視点に立つかで見方が変わってしまう。
真実を知れば知る程、何を守り、何を切り捨てれば良いのか…それが分からなくなっていくんだ。
『あのね。代刃君。』
『何?。』
深く深呼吸の後、燕が真剣な表情で僕に身体を向ける。
何故か正座した燕の只ならない雰囲気に僕も正座した。何故かベッドの上で二人。正座して向かい合っているという謎の構図となった。
『ごめんなさい。』
『はえ?。いきなりどうしたの!?。』
燕が勢い良く頭を下げた。
いや、もうこれ土下座だよね?。ベッドの上じゃなかったら床に全力で頭突きしてる勢いだよ!?。
『私は、代刃君という恋人がいながら閃さんに心ときめいてしまいました。一緒に旅をして、少しずつ惹かれていく心に戸惑いながらも、彼と一緒にいることに幸せを感じてしまいました!。』
『はえ?。えっと…んー。燕も閃を好きになったの?。』
『はい。けど、想いは伝えていません。けど、好きになってしまいました。』
『そっか。うん。嬉しいよ。』
『ふえ?。嬉しい?。』
僕の言葉が予想外だったのか、ぽかんっとした表情で顔を上げる燕。
『怒ってないの?。私…浮気しそうになったんだよ?。』
『怒ってないよ。それより、僕と同じ気持ちになってくれたことの方が嬉しいんだ。僕は燕が好きだよ。けど、同じくらい閃も好きなんだ。燕もそうなんだよね?。』
『え?。あの…私は代刃君と比べるなんて出来ないけど…代刃君は私の中で特別な存在だから…けど、閃さんに惹かれているのも事実で、自分の気持ちに整理がつかなくて…正直…困ってます。』
『僕は、燕が閃を好きになってくれて嬉しいよ。僕だけが二股みたいな感じになってたのが実は燕に凄く申し訳なかったんだ。』
『代刃君は悪くないよ。私が無理を言って男の姿の代刃君と恋人にして貰ったんだから。文句なんて何もないよ…。』
二人で互いの顔を見つめ合う。
『代刃君。今はもう男性の姿になれないんだよね?。』
『え?。あ、どうだろう。試してなかったよ。』
ちょっとやってみよ。
目を閉じて感覚を切り替えるイメージ。
女性の身体が男性の身体へと変化していく。
『ん~~~~~。あれ?。出来ないや。』
『やっぱり、そうなんだね。』
『やっぱり?。燕は何か知ってるの?。』
『うん。私達はゲームの時に与えられた種族の神になっているでしょ?。』
『そうだね。僕は時空間神になった。』
『それが問題でね。種族に関する最初から持っていたのとレベルアップで覚えたスキルしか今の私達は使うことが出来ないんだって。ゲームの中でレベルアップのポイントで入手した獲得スキルは失われちゃったみたいなの。』
『あ…そう言えば、僕の男性化は幾つもの高難易度クエストをクリアして手に入れた獲得スキルだった。』
それらのスキルが消えちゃったってことか…。
じゃあ、もう男の姿には…。
『ごめん。燕…。』
『ううん。覚悟してた。閃さんが代刃君のスキルは獲得スキルだから今は失くなっている可能性が高いって教えてくれたからね。』
『はは…閃は何でもお見通しだね。』
『けど、例え男性の姿の代刃君が消えちゃっても、私の中で代刃君はヒーローなのは変わらないから!。だから、女の子の姿でも良いから…これまで通り…私と恋人でいて下さい…。』
『燕…。うん。勿論だよ。僕が燕を好きな気持ちも変わらない。これからも一緒だよ。』
『はい…代刃君。これからも宜しくお願いします。』
『うん。それと、燕も閃の恋人になっちゃおう!。灯月や睦美も歓迎してくれるよ!。きっと!。』
『え?。え!?。』
『だって閃のことも好きなんでしょ?。』
『それは…惹かれているのも事実だけど…好きに…なってしまったけど…。』
『じゃあ、一緒に閃の恋人になろうよ。そうすれば僕とも閃ともずっと一緒にいられるよ!。』
『うっ…代刃君…凄く良い笑顔…。』
『えへへ。嬉しいな。燕と一緒にご主人様にご奉仕できるなんて。』
『え?。ご主じ…ふえ?。代刃君…今何て?。』
『ふふ。今度一緒にメイド服着ようね。』
『し、代刃君、目が怖いよ?。獲物を見つけた狩人みたいな目をしてる…。』
『えへ。えへへへへへ。』
『笑顔も怖い!?。ヨダレ垂れてるよ!?。』
『逃がさないよ~。』
『きゃあああああぁぁぁぁぁ。助けて、閃さ~~~~~~~~~~ん!?!?!?。』
コンコン。
そして、またノックの音。
『くっ。燕、命拾いしたね。』
『うぅ…代刃君が壊れたぁ…。私のヒーローがぁ~。』
泣きながら掛け布団にくるまる燕。
むぅ。何故に泣くのかな?。
『は~い。』
僕は扉を開けると。その瞬間、軽い重さが僕にのし掛かって来た。
『代刃お姉ちゃん!。』
『わっと!?。え?。え!?。』
『うそっ!?。翡無琥ちゃん!?。』
僕も燕も驚きの声を上げる。
部屋に飛び込んできたのは翡無琥。
そういえば、メリクリアが僕の仲間がここにいるって言ってたけど…そうか、てっきり燕のことだったと思ってたけど、燕は連れて来られたらしいし最初からここにいた訳じゃない。
メリクリアが言ってた 娘 って翡無琥のことだったんだ。
『翡無琥もここで目覚めたの?。』
『はい。リシェルネーラさんにこの世界のことと私自身の身体に起きた変化を教えて貰いました。さっき、シルリさんが来て代刃お姉ちゃんと燕お姉ちゃんがいるから会っておいでって言ってくれて…走って来ました。』
『そうだったんだね。一先ず部屋に入ろう。』
『はい。へへ。お姉ちゃん達が元気そうで良かったです。』
『うん。元気だよ。翡無琥も元気そうで安心したよ。』
僕達はベッドの上に三人で並んで情報の共有をした。
僕がメリクリアに聞いたことと同じことを、翡無琥はリシェルネーラに聞いていたみたいだ。
世界のこと。神々のこと。リスティールのこと。僕等のこと。そして、終焉のこと。
『じゃあ、翡無琥も最高神になったんだね。確かに翡無琥の能力は凄く強かったけど。』
『はい。【天神眼神】という神だそうです。この眼は世界の真実を視ることが出来ます。私の眼には今現在、リスティールに黒い影のようなものが忍び寄っているように見えています。今はまだ小さな波紋のような存在ですが…その内、あれは世界の全てを包み込みます。』
『………それが…ダークマターなのかな?。』
『恐らくそうです。』
『そんなことまで分かるんだね。翡無琥ちゃん。凄い。』
『燕お姉ちゃんも最高神なんですよね?。』
『うん。あまり自覚はないけど【時間神】なんだって。確かに意識を集中するとこの時間軸じゃない私の記憶が頭の中に映像として浮かび上がるんだよね…。エーテルを封じられて深いところまでは分からないけど。』
『僕の時もそうだったけど。僕と燕の力は世界そのものに影響を与えてしまうから暴発を防いでいるみたいなんだ。』
『成程。私はリシェルネーラさんに既に自身の力をコントロール出来ていると言われました。何が違うのでしょう?。』
『ん~。僕じゃ分かんないなぁ。』
『これからコントロールの方法を教えてくれるって言ってたよね。』
『うん。言ってたね。頑張らないと、だね。世界を…僕達の居場所を守るために。』
『私もお手伝いします。頑張ります!。』
再会の喜びを分かち合った僕達。その日は三人、同じベッドで眠りについた。
そして、次の日。
メリクリアに起こされた僕等は用意された衣服に着替えて朝食を済ませた。
用意された服は各々の好みと外見に見合ったものが用意され、朝食は各々が好きな好物がテーブルに並んでいた。
メリクリア曰く、ママにかかれば普通のことだよ。
だ、そうです。
シルリさん…恐るべし。
『こっちだよ。はぁ。あんまり気が進まないけど、アイツを最初に紹介しないと後々面倒臭いことになりそうだしなぁ。仕方がないかなぁ…。』
肩を落としながら文句を言うメリクリアの後ろをついていく僕達三人。
何でもこれからこの居城に住む神々に僕達のことを紹介するんだって。
それで最初の一柱がメリクリアと同じでもう一人の最高神【無限神】ガズィラム。
仮想世界で最も僕等を殺した神だ。
緊張してきた。
いきなり殺しに来たらどうしよう…。
きっと神の中でもトップの強さだよね…。
『お~い。ガズィラム~。いる~?。』
『あれ?。メリクリアは女王様モードじゃないんだね?。』
『だって、アイツすぐに演技だって見抜いちゃうんだよ。こっちが必死にキャラ作ってるのにさ。「ははは、何だ?。その様にならん演技力は?。幼児の演劇の方がまだ見応えがあるぞ?。」って、言うんだよ?。馬鹿馬鹿しくなってアイツの前じゃあ素で良いや。ってなったんだ。』
『ああ…そうなんだ。メリクリアも色々と大変なんだねぇ…。』
扉が自然に開いていく。
『『『っ!?。』』』
『あわわわ!?!?!?。』
『余の聖域に来訪とは…ふむ。だが、余は今し方、肉体の美を追求していたところだ。用があるなら後にせよ…ん?。ほぉ。これは…その純エーテル…最高神が三柱か…。しかし、見知らぬ顔だな。メリクリア。この可憐な女神等は何者だ?。』
僕達の前に現れたガズィラム。
シャワーでも浴びたのか、その身体は火照り僅かに上る湯気と滴に濡れていた。
引き締まり濡れた肉体は、光の輝きを反射し筋肉の凹凸をより鮮明に浮き彫りにする。
タオルを肩に掛け、髪をかき上げながら不適に笑う。
その笑みは、あまりにも…無駄な程…苛立ちを覚える程の…自信と威厳と貫禄と豪胆さ、王としての威光。そして、品格に満ち溢れていた。
僕達の視線は、自然とガズィラムの顔から首筋、胸、腹へと流れ、降りていき………そして、これだけの女性に囲まれながら隠そうともしない彼の股の間にぶら下がっている自己主張する アレ に行き着いて…。
次の瞬間。
『『『きゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?。』』』
『ごぶふっ!?。』
僕とメリクリアの拳と燕の蹴りがガズィラムの肉体へめり込んだ。
『あわわわわわ…。』
翡無琥だけは七色に輝く瞳を両手で覆い、指の隙間からチラチラと覗きながらアタフタしていたのであった。
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