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番外編 1日お部屋デート 代刃の場合②

 交代で閃とシャワーを浴び終えて着替えた後、僕達は昼食を食べた。

 朝の約束通り昼食は二人で作った。

 メニューはトマトクリームパスタとワカメと長ネギのスープ。

 僕がパスタ担当で閃がスープ担当。

 二人で並んでお喋りしながら料理とか本当に新婚さんみたいでドキドキしたよ。


『ふふふ~ん。ふ~ん。』


 鼻歌を奏でながら服を脱いでいく。

 綺麗に畳んで、こっちの棚に置いておこう。


『それで…こっちは…。はぅ…。』


 折角、閃からプレゼントして貰った服。

 それなのにもう汚れてしまった。シワも凄い…雰囲気に流されちゃった僕が悪いけど。

 もっと大切にしたかったなぁ。

 取り敢えず、後で綺麗にしてアイロンもかけないとだね。

 これから大事に保管しないと。僕の宝物。

 閃との思い出がまた一つ増えちゃった。


『えへへ。嬉しいなぁ。』


 そして、今。僕が何をしているのかというと!。

 じゃ、じゃあ~ん。

 衣紋掛けにズラリと並ぶ衣装の数々。

 午後は閃に僕のコスプレを見て貰うんだぁ。

 閃、喜んでくれるかな?。

 僕の趣味に付き合わせちゃってるみたいで気が引けるけど、閃も楽しみにしてるって言ってくれたし…大丈夫だよね。

 

 用意したコスプレ衣装に袖を通していく。

 まずは、これにして~。装飾と小物を用意して~。


『これ………どうしよう。』


 僕の手には…その…赤いロープ。

 夜な夜な、このロープで縛られた僕を閃が虐めてくれる妄想を………はっ!?。ブンブン!。

 ヤバい。想像しただけで興奮しちゃうところだった…。

 また、閃に引かれちゃう…。

 うぅ…いつから僕はこんなヘンタイさんになっちゃったんだろう。


「代刃ねぇ様は最初からヘンタイですよ?。ムッツリスケベのドMさんです。そろそろ自覚なされては?。」


 はぁ…何故だろう。

 いない筈の灯月の声が耳元で聞こえるよ。

 やっぱ、そうなのかなぁ…。


『出来た!。閃出来たよ~。』

『おお。待ってたぜ。』

『えへへ。じゃあ、行くよ~。』


 カーテンを勢いよく開ける。 


『じゃ~ん。まずは巫女さんだよ。』


 最初は巫女さん。

 清楚な感じが良く出てると思う。流石、光歌と豊華の力作だよ。


『おお。可愛いな。凄い似合ってるじゃん。』

『えへへ。そう?。』

『ああ。特に髪飾りが良いなぁ。代刃も普段から前髪で顔を隠さないで髪結べば良いのに。』

『うぅ…それは…まだ、恥ずかしくて…無意識に癖になってるんだよ。長年そうしてたから…。』

『まぁ、ゆっくり慣れていけば良いさ。何せ、俺達には時間が有り余る程あるんだ。』

『そうだね。うん。僕、頑張るよ。』

『ああ。その息だ。けどな。』


 閃は僕の両頬を両手で包む。

 温かい…。そして親指を動かし僕の垂れた前髪をかき上げる。

 完全に露になった僕の瞳を優しい笑みで見つめてくる閃。

 ドキッとする胸を無意識に押さえた。


『俺の前では早く慣れろよ。ずっとお前の顔を見ていたい。それくらい好きなんだ。』


 そう言って、またキスをしてくれた。


『うん…。けど、それは大丈夫だよ…僕、閃が望んだら何でも出来る気がするから。』


 きゃっ。何でもって言っちゃったよ。ちょっと大胆だったね。

 今度から閃と二人の時は髪を持ち上げよ。

 えへへ。うん。いっぱい褒めて貰うんだぁ。


『じゃあ、次ね。』


 その後も、コスプレ衣装の披露会は続いた。

 基本的にはアニメや漫画のキャラクターが着ていた衣装が中心。

 チャイナドレス。


『おお。可愛いな。代刃はスタイルが良いから身体のラインがハッキリした服を着ても問題ないな。それにお団子ヘアーも似合ってる。』


 褒められて。キスされて。


 次はバニーガール。


『ヤバい。一気にエロくなった。チャイナドレスと一緒で細いお腹から腰、そこからの長い足のラインが芸術的だ。それにウサミミも似合ってる。可愛いなぁ。』


 褒められて。キスされて。


 次はミニスカサンタ。


『可愛い…。今度のクリスマスもそれ着てくれよ。マジで似合ってるわ。』


 褒められて。キスされて。


 その後は、踊り子、女騎士、女侍、ゴスロリ、水着、黒服、軍服、学生服、体操服、チアガール、ドレス、ナース、魔女、ビキニアーマー、シスター。などなど。

 その度に閃は、『可愛い』『似合ってる』『綺麗』『エロい』と反応してくれる。

 特に髪型への褒め言葉、それに追随して僕の顔が如何に閃の好みなのかを力説してくれる。


『でへへ…。』


 途中から褒められ過ぎて気持ち良くなっちゃった。

 可愛いかぁ~。今までそんなこと言われたことなかったから閃に言われるとドキドキが止まらない。

 閃。僕のこと好きすぎたよぉ~。デレデレ。


『最後はこれだよ!。これはね。光歌と豊華と灯月に教えて貰いながら僕が自分で作ったんだ。見て見て。』


 閃の前でくるりっと一回転。

 ロングスカートの裾がフワッと持ち上がる。


『おお。メイド服だな。それも灯月のと同じ作りだ。てか、上手すぎじゃね?。コスプレにしては出来すぎだろ?。普通に売ってても問題ないレベルだ。』

『ふふ。でしょ。灯月のお陰だよ。灯月に、閃にメイド服姿を見せたいって言ったら………やる気スイッチが入っちゃって………三週間寝れなかったよ。』

『お、おう…。』


 あれは地獄のスパルタ授業だった。

 今じゃ目を閉じていても縫い物が出来るくらいだよ。

 もう灯月に教えを請うのは止めよう。


 背中と胸元が大きく開いたメイド服。

 睦美は余りに露出が多くて好きではないって言ってたけど、僕は結構好きなデザインなんだよね。

 可愛いし、適度に露出がアクセントになってて清楚感の中に大人な大胆さが見えて。

 まぁ、灯月や睦美と違って僕には翼がないから背中が開いている意味がないんだけどね。


『どうかな?。メイドカチューシャも作ったんだぁ。』

『ああ。可愛いわ。今すぐにでも抱きしめたくなるくらいだ。』

『えへへ。良いよ。はい。ご、ご主人様。私の身体を召し上がれ~。』

『言い方…。』


 僕は閃の胸にすり寄って体重を掛ける。

 すると、閃は僕を包み込むように抱きしめてくれた。


『えへへ。今日はこのままで良いかなぁ~。』

『ああ。それ良いな。じゃあ、片付けて夕食の準備でもするか。』

『うん!。任せて!。ご主人様!。』

『その呼び方は固定なのな。』

『う、うん。嫌だった?。』

『全然。寧ろ嬉しいわ。何か、メイド喫茶に来た気分。まぁ、行ったことないけどな。はは、もっとお前を手離したくなくなった。代刃。可愛すぎるぞ。』


 抱きしめる腕に力を込めて、僕の顔を見つめる閃。

 あ。これ分かるよ。

 閃。僕とキスしたいんだ。


『ん。』


 僕は目を閉じて唇を近付ける。今日はいっぱいキスしてる。

 キスをしたいのは僕もだよ。

 飽きるどころか、もっとも~っと、して欲しくなる。何度しても求めてしまうんだ。キスって不思議。

 興奮と高揚。そして幸福感。それが温もりと一緒に全身で感じられるんだ。

 僕。今までの人生で今日が一番幸せ。


『えへへ。じゃあ、一緒にいようね。ご主人様。』

『ああ。一緒な。』


 閃と二人で今度は夕食作り。

 メニューはクリームシチューと閃の部屋から持ってきた手作りパン。

 僕が野菜を切って炒めて、閃が煮る。

 閃の部屋からは、パンと一緒に持ってきたちょっと珍しいお酒【魔境の神酒】をグラスに注ぐ。

 こんなお酒どうしたのと聞くとホワイトデーの時にパパ活して無凱さんから奪ってきただって。

 閃もなかなかやってるよね…。

 時折、行動の大胆さに灯月がチラつく、やっぱり兄妹なんだなぁ…。


『『いただきます。』』


 二人で作ったシチュー。

 閃の手作りパンも相まって凄く美味しかった。

 こんな生活がずっと続いて欲しい。

 そんな考えが頭を過る。

 デートを終えたクラブのメンバー達が次を待ちわびている気持ちが分かるなぁ。


 今日が終わったら、またいつもの日常。

 僕の閃じゃなくて皆の閃に戻っちゃう。

 

『代刃?。どうした?。不味かったか?。』

『え?。』

『いや、何で泣いてるんだ?。』

『あれ?。僕…泣いてた?。』


 頬を触ると確かに濡れてる。

 そうか…僕…今日が本当に楽しかったんだ。

 閃と本当の意味で恋人の一日を体験して、この時間がずっと続いて欲しいって思って…。


『ほら。何があったか言ってみな。』

『閃…閃!。』

『おっと。まぁ、落ち着くまでそのままでいな。』


 いつの間にか隣に移動していた閃。

 僕は我慢できずにその胸に抱きついた。

 すると閃は僕を受け止めて背中を擦りながら、頭を撫で続けてくれる。

 僕はそれが嬉しくて、今日一日の思い出が一気に溢れてきて恥ずかしいけど閃の腕の中で泣いちゃったんだ。


『僕ね。今日が凄く楽しくて…もう少しで…今日が終わったら、また閃が皆のモノになっちゃうって思ったら…泣いちゃった…。』


 閃の胸に顔を埋めながら素直な気持ちを伝える。

 要するにこれは独占欲なんだ。

 ずっと僕だけの閃でいて欲しい。

 恋人になる前に、普通の恋人のような関係にはなれないって言われたのにも関わらず、僕はその普通に憧れて…求めてしまった。


『そうか…。ごめんな。お前の想いに応えられなくて。けど、今日だけじゃないさ。また、二人きりの時間を作ろう。俺だって代刃とまた今日のような特別な一日を過ごしたい。』


 僕達にとっての特別は、過去の普通なんだ。

 あの日、世界が変化した日から日常は崩壊した。

 それでも崩壊した世界で戦い続ける僕らは今の世界で日常を求めている。


『閃…僕ね。閃に僕の全部を知って欲しい。好きなことも、嫌いなことも、苦手なことも。だから、もっといっぱい二人の時間を作ろう?。』

『当たり前だ。俺だって代刃のことをもっと知りたい。勿論、俺のことも沢山知って欲しい。』

『うん、僕も知りたい。沢山教えて。』

『ああ。これからもいっぱいこうしてデートしような。』

『うん!。約束だよ!。』

『ああ。約束だ。それとな。お前、忘れてるぞ。』

『何を?。』


 閃が顔を見ている僕にキスをする。

 何となく閃がしてくタイミングが分かって、僕も唇を準備しちゃってる。

 それだけ今日沢山キスをしたんだよね。


『今日はまだ終わってない。まだまだ。夜は長いぞ。』

『うん。そうだったね。』


 この後…。何となくやることを想像して顔が熱を帯びる。


 夕食を食べ終えた僕達は、食器の片付けを済ませた。

 そして、それから30分後。


『温かいな。』

『うん…。』


 僕と閃は湯船の中にいた。

 午前中にソファーの上にいた時と同じ姿勢で。

 つまり、浴槽に座る閃の足の間に…閃に背中を向けて僕が座っていた。

 ただ一つ違うのは、僕も閃もお互いに裸だということ。


 僕はこれまで何度も閃に見られているにも関わらず恥ずかしくて身体を隠すように体育座り。

 そんな僕の肩に手を回して後ろから抱きしめてくれる閃。そんな構図。

 閃の身体が僕の背中に密着する。

 硬くて厚い胸板とか、太い腕とか………その色々な部分と熱が僕の背中に伝わってきて胸の動悸が激しくなる。


『なぁ、代刃。』

『え?。な、何?。』


 閃の声に思わず裏返った声で応えてしまう。

 僕、物凄く緊張してる。


『これから、どんなことがあっても俺がお前を守るからな。』


 その言葉に、僕の思考が一気にクリアになった。

 これからのこと。

 僕達の今の状況。束の間の平和。いや、平和なんかじゃない。

 敵が…神が襲ってこないだけで、僕達の日常が戻ってきた訳じゃない。戦いはまだ僕達を取り巻いているんだ。


『閃。』


 肩から回されている閃の腕を両手で包む。


『何だ?。』

『閃はね。色んなモノを背負ってる。クロノ・フィリアのメンバーも、避難してきた人達も、それに僕達、恋人なった娘達も。皆の居場所を…閃は守るために常に考えてくれて、戦ってる。僕知ってるよ。閃がどれだけ頑張ってるのか。』

『……………。』

『僕の口から他の人の気持ちを言うのは違うと思うから。僕の気持ちだけ…ね。閃が皆を守ってくれてる。だから、僕は閃を守るからね。』


 この命を懸けて、でも…ね。


『閃は僕にとって、それくらい…とっても大切な人だから。』

『代刃。………そうだな。お互いに助け合おう。そして、元の生活を取り戻そうな。』

『うん。閃…大好きだよ。』


 これからどんな未来が訪れるのか分からないけど。

 僕の閃に対する想いは変わらないから。


 その後、何度もキスを交わしてお互いの身体を洗い合いっこした。


ーーー


ーーー閃ーーー


 風呂から上がった俺。

 代刃はもう少し入っているということで先に上がる。

 全身をタオルで拭きながらベッドの上に置いてある着替えに手を伸ばした。その時。

 ベッド上に無造作に置いてある箱気が付いた。

 さっきまでは無かったよな?。

 代刃の私物か?。

 まぁ、代刃のだろうし俺が勝手に触るのも違うだろう。

 しかし、微妙に蓋がズレている。

 これくらいは直してやろうと、蓋に手を掛けた。


『あ…やべ。』


 軽く指先に当たった蓋が落ち、箱の中身が丸見えに…って、何だこれ?。


『閃。見ちゃったんだね。ふ、ふ、ふ。』


 風呂場のドアの隙間から顔だけを覗かせた代刃がこっちを見ていた。


『あ、代刃。すまん。勝手に中身を…。』

『うん。大丈夫だよ。ご主人様に見て貰う為にそこに置いておいたんだ。』

『………何の為に…てか、呼び方、ご主人様かよ?。いやいや、そんなことより何だこの箱の中身は!?。』

『…んー。強いて言えば、さっきのコスプレ衣装の…付属品?。』


 ええ…。


『この赤い紐は?。』

『巫女服のだよ?。』

『何に使うんだ?。』

『…僕の身体をギュッと。』


 ええ…。


『この手錠は?。』

『警官服のだよ?。』

『何に使うんだ?。』

『…僕の手足をガチャッと。』


 ええ…。


『この蝋燭は?。』

『え?。んー。多分、シスター?。』

『何に使うねん!?。』

『…僕の身体にポタポタと。』


 ええ…。

 その他にも用途は分かるが何故?、みたいなモノが沢山入っている。

 その全てが口では言えないようなプレイに使う用の道具なのだが…。

 

『ご主人様。さっき言ったよね?。僕の全てが知りたいって。』

『まぁ。言ったな。こんな方向性とは思ってなかったが。』

『僕ね。ご主人様に虐められるのが好きみたいなの。恥ずかしいけど、ご主人様に知って貰いたくて。僕の全部をね。勿論、それは性癖もだよ。』

『ええー。』


 いや、何とな~く。そんな気はしてたんだ。

 本人多分自覚無いと思っていたんだが…。


『ねぇ。ご主人様?。』

『うっ…。』


 全裸姿。

 前だけタオルで身体を隠したメイドカチューシャを着けた代刃に近寄られる。


『こんな僕だけど。好きでいてくれる?。』

『そりゃあ、お前にどんな趣味があろうが、俺が愛していることは変わらないが…。』

『そっか。良かったぁ。えへへ。』


 安堵したように笑う代刃。

 そして…。身体を密着してくる。

 代刃の柔らかさが、まだ服を着ていない俺の全身に伝わる。


『その…僕を虐めて下さい。ご主人様。』

『………。』

『め、滅茶苦茶にして下さい。』


 はい。終了。

 この世界で最も好みの顔が裸に密着状態、更に上目遣いでおねだりしてきました。

 そんなもん我慢できる訳ないだろうがああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!。


『後悔すんなよ。』

『うん!。しないよ!。えへへ。ご主人様~。大好き~。』


 この夜。

 代刃の部屋では、艶かしく甲高い、悲鳴にも似た歓喜の声が響き渡った。

 そして、この日を境に二人きりの時に代刃は俺のことをご主人様と呼ぶようになった。


 こうして代刃との一日デートは終わりを迎えたのであった。

次回の投稿は13日の木曜日を予定しています。

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