番外編 1日お部屋デート 代刃の場合①
ベッドの上で転がる。
右へ左へ。くるくる。くるくる。
全身で抑えきれない、溢れんばかりの感情を表現する。
灯月に作って貰った閃の等身大抱き枕を抱きしめながら転がり続け最後はベッドから落下した。
頭をぶつけ、鼻も打った。
『はうっ!?。痛い…。………えへ。えへへ。』
痛みよりもワクワクした楽しさと嬉しさの方が勝り自然と表情が緩む。
口からは、多分他の人が聞いたら引かれるレベルの変な笑い声が出ているよぉ。
ベッドの上に戻り、天井を眺めながら抱き枕を強く抱きしめた。
『はあん。ついに明日かぁ~。楽しみだなぁ~。………ふふ。ああ、もう!。楽しみすぎるよ!。閃とのデート~。えへ。えへへへ。』
明日は待ちに待った閃との一日お部屋デートの日。
一日中、閃と一緒にいられる夢のような一日。
灯月達クラブの閃じゃない。
正真正銘の僕だけの閃との時間なんだ!。
じゃんけんで僕が引いたのは六番目。
既に終わっている灯月や睦美の満足そうな笑顔を見ていて羨ましかったんだ。
そんな待ち焦がれたデートの日がついに明日なんだ。興奮しない訳がないよぉ~。
今日寝られないかもぉ~。
『はぁ~。閃と一緒…。ずっと一緒…。えへへ。閃~。』
何しようかな?。どんなことしようかな?。
閃は何をしてくれるかなぁ~。
えへへ。けど、別に僕は特別に何かをしてして欲しい訳でも、したい訳でもないんだ。
勿論、何かをすることも楽しみだけどね。
ただ、閃と一緒にいる。
同じ空間。近い距離。お互いの温もりを感じられる距離でお喋りしたり、触れ合ったりするだけで満足なんだよぉ~。
『えへへ。光歌に貰ったコスプレ衣装、閃に見て貰おうかなぁ~。いっぱい用意したんだよね~。』
一緒にご飯食べて。遊んで。イチャイチャして。
その後は…。その後?。
『ん?。あっ!。そうだよっ!。もしかしなくても…僕と閃は恋人同士だもん。………その、きっと…そういうこと…だって、するよ…ね?。』
しないわけないよね?。
いや、どっちかっていうと僕がして欲しいし。求めちゃう気がするけど…。
『あれ、そう考えると…普段の格好じゃマズイよね?。服もだけど…下着も…スポブラとか全然可愛くないし…可愛いのにした方が…てか、ジーパンよりスカートの方が良いかな?。閃ってどんなの着た方が嬉しいの?。あれ、全然分かんないよ?。』
ベッドの上で転がってる場合じゃなかったよ!。どうしよう!。早く準備しないと!。
僕はタンスの中身をひっくり返し明日着る服や下着を夜遅くまで吟味し続けた。
結果は…。
ーーー
着ては脱いで捨て。着ては脱いで捨て。
次第に広がる脱ぎ捨てられた服達が足下を埋め尽くしていく。
動く度に絡まる衣服に徐々に行動範囲を奪われながら明日着る服を選んでいく。
そして、足に絡まった下着の紐にバランスを崩した僕は…。
『わっ!?。うぎゃっ!?。』
タンスの角に足の小指をぶつけて倒れ込む。
『うごっ!?。あぐあっ!?。』
続いてタンスに頭をぶつけてそのまま床へとダイブ。
ついでに床に顔面を強打。
『いてて…。うげっ…うそっ…。』
トドメに衝撃で倒れてくるタンス。
逃げようにも手足に脱ぎ捨てた服が絡まって動けず僕の身体はタンスの下敷きとなった。
そして、僕の意識はそこで途絶えたのだった。
ーーー
コンコン。
ノックの音が聞こえる?。
あれ?。僕、何してたんだっけ?。えっと…確か…明日、閃とのデートがあって着る服を…。
『あれ?。鍵開いてる…代刃ぁ?。入るぞぉ~。って、何だ?。この状況は?。おいおい。代刃!。大丈夫か?。』
身体の上にあった重い塊が退かされて軽くなる。
僕の身体を抱き抱えて揺する閃。
うっすらと目を開けると閃の格好いい顔が目の前にある。
ああ…最高の目覚めかもぉ~。
僕このまま…。いやいや、幸せに包まれてる場合じゃないよ!?。
閃が僕の部屋に来たってことは?。
『ん…閃。お早う。デート、楽しかったね。』
『いやいや。デートはこれからだ。お前が体験したそれは多分妄想で夢だぞ?。』
『えへへ。けど。目覚めて最初に閃の顔が見れるなんて幸せだよ。』
『その台詞自体は嬉しいがシチュエーションが最悪だ。ほれ。立てるか?。』
『うん。大丈夫。』
『念のため治癒しておくな。』
僕の身体を包む三色の暖かな光。
睦美のスキルを使って閃が僕を治療してくれた。
『ありがとう。閃。』
『どういたしまして。てか、何だ?。この有り様は?。戦闘でもあったのか?。』
『えへへ。ある意味そうかも。今日という日を閃に楽しんで貰おうと思って頑張った結果だよ。まぁ…伴ってはいないけど…。』
倒れたタンス。散らばった引き出し。
撒き散らされた衣服。
部屋の中は大惨事だ。
服選びを始めてから気を失って数時間。
既に約束していた七時を過ぎて閃が来てしまった。
『ねぇ。閃。』
『ど、どうした?。』
『閃は僕がどんな服を着たら嬉しい?。脱がしやすいのが良いかな?。それとも清楚系?。大人っぽいエッチなの?。』
『まぁ、この部屋の惨状でだいたい何があったかは想像できるけどな。』
『あはは。ごめんね。僕、ドジだね…。閃。僕のこと、あんまり見ないでね。』
色々、着ては捨てを繰り返し、そのまま気絶したせいで今は下着姿。は、恥ずかしいなぁ…。折角、見られるんだったらもっと可愛いのが良かったよぉ~。
普段からその辺りに気を回しておければ…。
僕、全然ダメじゃん…。
閃に適当に落ちていたタオルを肩に掛けられて一先ずベッドに腰をおろす。
『ははは…ごめんね。折角のデートなのに…。うぅ…。』
最初から失敗しちゃった…。
僕は何て馬鹿なんだよぉ。
『気にするな。そんだけ代刃は今日を楽しみにしてくれてたんだろ?。俺はそれが知れただけで嬉しいよ。でだ。まぁ、灯月達から話は聞いてると思うけどコレな。代刃に似合うと思って作った俺の手作りの服だ。デートのプレゼントとしては恩着せがましいが、一応、彼氏からのプレゼントってことで着てくれないか?。』
『閃が…僕に?。』
『ああ。俺の趣味が入っちまってるが、お前を想って作ったんだ。着てみてくれないか?。』
『うん!。嬉しいよ!。ありがと!。閃!。待ってて今着てくるから!。』
僕は部屋にある洗面所へと入り、着替えを始める。
そっと隠しておいた取って置きの可愛い下着を…灯月に選んで貰った…その…えっと…しょ、勝負下着を装着!。
似合うかな…。閃…気に入ってくれるかな…。
そんな心配が頭を過るけど。
えい!。当たって砕けろだ!。
閃が僕に作ってくれた服…。僕は目の前でそれを広げる。
ゆったりとしたオフショルダーのセーターと動きやすいショートパンツ。
広い袖はフリル状になっていて、所々に可愛らしい星の刺繍がされている。
『可愛い。けど。僕に似合うのかな?。』
取り敢えず着てみる。
鏡に映る姿を確認。うん。僕にぴったり。
閃はこういうのが好きなのかな?。
『んー。けど。これじゃあ、下着の紐が見えちゃうなぁ…。折角の勝負下着だからギリギリまで隠しておきたいけど…まぁ…閃なら気にしないかな?。』
僕はついでに顔を洗って、歯を磨いて、髪を梳かして急いで準備を始めた。
それから十五分後。
『閃。お待たせ~。』
『ん?。ああ、お帰り。』
『わっ!。ごめんね。片付けてくれたんだ。』
『まぁな。あのままじゃ何も出来ないからな。それより。』
閃が僕へ近付いて来る。
閃の視線が下から上に、上から下に。
『どうかな?。貰った服。似合ってる?。』
『ああ、最高だ。可愛いの。普段、ボーイッシュな服装な代刃だけど、幼く見えるな。』
『わっ!。んっ!。』
え?。え?。閃に抱き寄せられてキスされちゃった!?。
短目の触れるだけのキスだったからすぐに離れちゃったけどビックリしたぁ。
『ど、どうしたの?。急に?。』
『すまん。代刃が可愛すぎて我慢できなかった。』
『っ!?。もう!。そんなこと言われたらテレちゃうよぉ~。けど、嬉しい…えへへ。』
『ああ、もっとテレてくれ。そんな慌てる代刃をもっと見たい。』
『はう!?。っ!?。』
もう一度、抱き寄せられてキス。
『凄く似合ってる。着てくれてありがとう。』
『えへへ。閃に喜んで貰えて嬉しいよ。今日はいっぱい閃が喜ぶことしてあげるからね。』
『はは。そうだな。楽しみだ。ん。』
『んっ。』
三度目のキスは少し長めだった。
『ねぇ、本当に手伝わなくて良いの?。僕も閃のために何かするよ?。』
『ああ、気持ちだけ貰っとくよ。まぁ、朝だけな。折角だ。ゆっくり待ってな。』
『うん。ありがと。』
ソファーの上で体育座りする僕は、キッチンで朝食を作ってくれている閃の背中をボーッと眺めている。
エプロン姿の閃…良いなぁ…格好いいなぁ…。
不器用で、要領の悪い僕とは違って、閃は淀みなくテキパキと動いている。
何か…新婚さんになった気分。
働き者の旦那様。そんな姿を眺める僕。
お嫁さん~。
『はぁ…閃と結婚か~。』
僕の旦那様。
どんな家庭になるのかな?。
閃は何でも出来ちゃうからなぁ…。僕も頑張らないと嫌われちゃうよね。
子供は何人が良いかな?。僕は男の子と女の子二人ずつくらいが良いなぁ。
閃は何人が良いかなぁ~。もっとって言われたらどうしよう。僕…身体、大丈夫かな?。
閃って凄く激しいしなぁ…。僕いっつも閃に翻弄されっぱなしだし…滅茶苦茶にされちゃうし…。
耳元で可愛い。可愛い。って、何度も言われて頭の中グルグルになって閃のことしか考えられなくなっちゃうんだよね…。
でも、閃に乱暴にされるの嫌いじゃない僕もいて…。はぅ…僕…前から思ってたけどMっ気があるのかなぁ。
そんな僕でもきっと閃は可愛いって言ってくれるのかなぁ…いや、もう言われちゃってるよね。
嬉しいんだけど、僕も閃に尽くしたい気持ちが強いんだよ?。
閃…僕は閃の望むことなら何でもするよ?。
『きゃ~。僕大胆だよ~。』
『ど、どうした?。いきなり暴れて?。』
『あれ?。閃?。』
見ると両手に料理の乗ったお皿を持った閃が僕を不思議そうに眺めていた。
あぅ~。袖を腕まくりしてるせいで閃の腕が見えてる。筋肉質で太くて、血管が浮いてる…すっごいエッチだよぉ~。
『えへへ…。』
『………。ん。』
『んっ!?。』
またキスされちゃった。
『無防備過ぎてな。嫌か?。』
『ぜ、全然嫌じゃないよ。寧ろ…。』
『寧ろ?。』
『もっと………して、欲しいなぁって。』
『お安いご用だ。ん。』
『ちゅっ。』
強引に、それでいて優しくキスされる。
何度も何度も。僕の唇が閃の唇で弄ばれてるよぉ…。それなのに気持ち良さと安心感を感じるんだからキスって不思議だなぁ。
『ほら、呆けてないで。朝飯にしよう。』
『う、うん。作ってくれてありがと。』
『気にするな。俺がお前に作りたかったんだ。簡単なモノですまないが勘弁な。』
『ううん!。全然!。そんなことないよ!。嬉しいよ!。』
『そうか。』
ふっ。と、僕を見て笑う閃。
その顔はいつも優しい。けど、僕って閃に何かをしてあげたことあんまりないんだよなぁ。
閃は何でも出来ちゃうし、僕なりに閃の為に何かしてあげたいとは思ってるんだよ?。
だから閃にこの前相談したんだ…そうしたら…。
「代刃は、ちゃんと俺の為になってるよ。だから、あまり思い詰めるな。一緒にいてくれ。それだけで嬉しい。」
だってさ。
むぅ。納得いかないよね。
もっと灯月や睦美達みたいに閃の為に色んなことしてあげたいのに…。
でも、料理も掃除も身の回りのお世話だって皆がやれちゃうし、何だったら閃が自分自身でしちゃうからなぁ…。
これは難しい問題だよぉ。女の子として…。
『さぁ、食べようぜ。』
『うん。いただきます。』
『いただきます。』
閃の作ってくれ朝食。
フレンチトースト。
お皿には野菜サラダとスイートポテト。スクランブルエッグにベーコンとソーセージ。
飲み物はアイスコーヒー。
『おいしい。』
『ははは。そうか。沢山食え。』
『うん。』
僕はあっという間に閃の作った朝食を食べ終えた。
『ねぇ。閃。』
『何だ?。』
僕は食器を洗う閃の背中に抱きついていた。
正確にはしがみついていた。
ぐでぇ~と肩に腕を巻き付けて下半身はぶら下がる。
そんな体重を預けた状態にも関わらず閃は何事もないように食器洗いを続けていく。
『僕がするって言ってるだろぉ。どうして閃が後片付けまでやっちゃうのさ。』
『俺がしたいからだ。代刃はゆっくり休んでろよ。』
『むぅ。僕も閃の為に何かしたいのにぃ。』
『そうか?。そのまま抱きついていてくれ。』
『え?。な、何で?。』
『柔らかくて気持ちいいから。』
『うぅ。それって役に立ってるのかなぁ?。』
『立ってる立ってる。代刃は癒しだなぁ。』
『えぇ…どういう感想なのそれ?。』
『まんまの意味だ。よし、終わった。さて、やるか。』
手をタオルで拭き、エプロンを外す閃。
やるか。って、何するのかな?。
流石にこんな朝早くからエッチなことはしないと思うけど。ま、まぁ、僕はいつでもウェルカムだけどね!。
ふぅ…冷静に、冷静に。
お部屋デートって言っても出来ることは限られちゃうから。一応、灯月達がやったデートの内容を参考にして映画とか、マッサージや耳掻きの道具とか、ゲームとかを用意したんだけど…。
振り向いて向かい合う形になった僕を軽々と抱き上げお姫様抱っこをする。
『え?。え?。何するの?。』
『決まってんだろ。ソファーだ。』
『え?。』
やっぱりエッチなこと~!?。
僕の部屋のソファーは椅子にもなるし、したの部分を伸ばして変形させれば足を伸ばせるようにもなる。背もたれを倒せばそのまま寝られるベッドにもなるんだ。
閃は僕を横に下ろすと、ソファーを操作して足を伸ばせるようにした。
『よっと。ほら、代刃。カモン。』
『ええ…。わっ!?。』
戸惑う僕の腕を取った閃は自分の方に引き寄せてそのまま僕の身体を抱きしめる。
『ねぇ。閃?。』
『ん?。どうした?。』
『あのね。これがしたかったの?。』
『勿論。』
僕のエッチな妄想とは裏腹に僕は閃に後ろから抱きしめられていた。
閃の足の間で足を伸ばして座る僕。
そして僕の身体を後ろから包み込むように抱きしめる閃という構図。
『一応、ね?。灯月達に聞いてゲームとか用意したんだよ?。閃ゲーム好きでしょ?。面白そうなの選んだつもりなんだけど?。』
『けど。それは灯月達の趣味だろ?。お前、あんまりゲームやらないじゃん?。てか、エンパシス・ウィザメント以外のゲームとか殆んどしたことないだろ?。』
『う、うん。それは、そうだけど…。』
『今日は俺とお前のデートなんだ。お互いが楽しめることをしないと意味がねぇ。』
『確かにそうだね。』
『だから、今は俺が代刃とやりたいことをやってる。』
抱きしめてくれている腕の力が強くなる。
けど、決して痛い訳じゃない。
優しくて、それでも離さないぞって感じ、愛情を感じる力の込め方だ。
もう僕の心臓はずっとバクバクしっぱなし。
『けど?。抱きしめてくれてるだけだよ?。』
僕は嬉しいけど、閃はこんなことで良いの?。
『ああ。代刃が温かい。柔らかいし。堪能してるよ。』
『そ、そうなんだ。あはは。テレるなぁ。』
どう返して良いか分からないよぉ。
恥ずかし過ぎて、ドキドキして…閃は僕が絶対、汗かいてるの気づいてるよね…。
全身暑いからか顔も身体も火照ってる。
『……………。』
『……………。』
暫く、無言で互いの体温を感じ合う。
沈黙。静寂。けど、居心地の良い空間。
温もりと呼吸音だけが僕と閃を繋いでくれてる。
『代刃。』
『何?。閃?。ん!?。』
閃に呼ばれて顔を横に向けた途端、唇に柔らかな感触が伝わる。
不意打ち気味にキスされちゃった。
朝からもう数え切れないくらいキスされてるよ。
『………あはは。今日の閃はいつもより、優しいのに強引だね。僕、ビックリしちゃったよ。』
『ははは。ごめんな。代刃を見てたらつい…な。』
『嬉しいけど。普段は全然してくれないのにどうして?。僕、閃はあんまりキスとかしたくないのかなぁって思ってたよ。』
僕なんか毎日、閃と一緒にイチャイチャしてる妄想してるのにさ。
けど、今日の閃は僕の妄想よりも積極的で…いや、嬉しいんだよ?。けど、普段とのギャップが大き過ぎて困惑中です。
『そんなことあるわけないだろう。』
もう一度、今度は頬っぺたにキスをしてくれた。
『前にも言ったが、代刃は俺の好みドストライクなんだって。』
『う、うん。言ってたね。その…ありがと?。』
『はぁ...やっぱ分かってないな。よっ。』
『わっ!?。』
急に身体を入れ換える閃。
僕の身体はソファーの上に仰向けになって…えっ!?。せ、せせせせ閃の顔が目の前にぃぃぃぃぃ!?!?!?。
『代刃。よく聞け。』
『は、はい…。』
鼻と鼻がくっつきそうなくらい近くにある閃の顔。
僕の身体に覆い被さるようになった閃は僕の手に指を絡ませて、両手の動きを封じてきた。
はぁ…はぁ…閃が近い…。閃が目の前に…。
睫毛長いなぁ…。腕の力強いなぁ…。胸板厚いなぁ…。髪の毛サラサラで綺麗…。それに、いい匂い…何だろう、とっても広い空間にいるような大自然の香り?。いやいや、何を言っているのですか僕は!?。
『せ、閃?。』
『どうやら、俺の気持ちに気付いてないみたいだな。今日はお前が俺の唯一の恋人だから、本音を言うぞ?。』
『う、うん。どうぞ。』
心臓が痛い。ドキドキで頭の中がグルグルで…。
けど、乱暴にされてるのに何処か喜んでる自分がいる…閃にもっと…いじめられたい。滅茶苦茶にされたい。
って、何を考えてるねん!。僕、ヘンタイさんじゃん!。
『さっきも言ったが、お前の外見は俺の理想の女性像まんまなんだ。』
僕の外見。
以前から何回か聞いた。そんなに僕の外見が好みなの?。
嬉しい…けど、信じられなくて。僕なんかの外見を好きって…地味だし、暗いし…。可愛くだって…ない。
『もう見てるだけで心臓が高鳴りまくってる。改めて言うが、お前の髪も顔も、身体も、仕草も。全部が好みでドストライクなんだ。』
僕の前髪をそっとずらして顔を見つめてくる。
はわ…近い…閃の目が、鼻が、唇が…。
ぼ、僕…あわわわわわわわわわわ…。
『そんだけお前が好きな俺は、お前の行動の全てに、いちいちドギマギしちまう。全部が愛おしく感じちまうんだ。分かるか?。お前が俺の為に不器用ながら一生懸命何かしてくれようとするだけで、その場に押し倒して滅茶苦茶にしてやりたくなるんだ。』
『そ、そんなに…なの…?。』
『見た目好みの女が俺のことを大好きで俺の為に頑張ってくれるんだ。俺に近付く為に【男性化】のスキルまで獲得してくる奴だぜ?。惚れない訳ないだろう?。』
『……………。閃…僕…。』
『俺はお前が死ぬほど好きだ。今の状況から一番って言ってやれないのが俺の情けないところだが、二人きりの時はお前が俺の心の中心だ。俺が世界でただ一人だけ愛する可愛い女の子だ。』
『……………。』
『だから、俺と一緒にいる時だけでも自分を低く思うのは止めろ。』
『っ!?。』
『もっと自信を持て、お前は俺にとって最高の女の子だし、最高の恋人だ。』
そう言って唇を重ねてくる閃。
僕は抵抗せずに受け入れて暫くの間、唇を重ね続けた。
静かな部屋に布の擦れ合う音と、唇同士が接触する音だけが小さく鳴り続く。
『閃。僕。も。閃が好きだよ。初めて出会ったあの時からずっと、ずっと。僕は閃のモノに…彼女なりたかった。それが…叶った今、僕は凄く幸せなんだ。』
『ああ。俺もだ。』
そっと閃の胸に手を当てる。
大きく脈動する鼓動が手のひらいっぱいに広がった。
『閃…ドキドキしてる。』
『そりゃそうだ。惚れた女がこんなに近くにいて、今、改めて告白したんだぞ?。興奮しないわけないだろう?。』
『えへへ…僕で興奮してくれてるの?。嬉しいなぁ。けどね。』
僕も閃に負けないくらいドキドキだよ?。
もう、ずっと。なんなら昨日からずっと。
閃の手を自分の胸に当てる。
どうかな?。僕のドキドキ感じてくれるかな?。
『どう?。閃?。』
『そうだな…柔らかくて、弾力があって、手のひらに収まらない大きさで、ちょっと力を込めるだけで形を変える。それでいて押し返してくる。揉み心地最高の胸だな。』
『っ!?。ち、違うよ閃!。僕が求めてた答えじゃないよぉ~。』
『はは。分かってるよ。ちょっといじめたくなった。ちゃんと感じるよ。代刃の鼓動。』
『もう!。閃の馬鹿。けど…嫌じゃないよ。寧ろ、もっと触って欲しいかな?。』
『止めろって。そんなこと言われたら、その…我慢できなくなるぞ?。これでも結構抑えてんだから。』
『えへへ。我慢なんかしなくて良いよ。だって今日は閃と僕の一日デートなんだからね。したいことしよ?。僕も…その、したいよ?。』
『まだ、午前中だってこと忘れてるだろ?。』
『えへへ。ちゃんと覚えてるよぉ。だから、午後は僕のしたいことに付き合ってね。』
『勿論だ。』
そのまま僕達は互いを求め合い身体を重ねた。
~~~数時間後~~~
『ねぇ、閃。』
身体にバスタオルを巻いた僕。
急に恥ずかしくなってベッドの上で丸くなっていた。
『何だ?。』
そんな僕に肩を優しく抱き寄せてくれる閃。
僕は、恥ずかしくても普段言えないことを沢山言おうと決めた。
いや、その…さっきからいっぱい言ってた気がするけど…。色々と必死だったから…改めてね。
『閃。大好きだよ。これからも。ずっと。』
『俺もだ。代刃。お前と恋人になれて本当に嬉しい。』
もう一度、深い口づけを交わし、シャワー室へと向かった。
えへへ。閃~。
午後は僕のコスプレを見て貰うんだぁ~。
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