番外編 閃と新しい恋人達とのバレンタイン
暗がりの部屋に集まる複数の人影。
中央に設置されたテーブルの上に置かれたランタン。
その灯火が点火と共に部屋全体を淡く包み、それを取り囲むように集められたメンバーの顔が露になった。
詩那を最奥に、兎針、夢伽、八雲、奏他、紗恩がその場にいた。
『それで?。駄肉。どうして、私達は集められたのでしょう?。』
『駄肉って言うなし!。蝶女!。』
『私も知りたいです。詩那お姉さん。急に連れてこられて困惑中です。』
『また、お姉のくだらない悪巧みなんじゃないの?。』
『ふむ。詩那がここまで行動するのは間違いなく神さま絡みだろうな。』
『内容が閃君で、しかもこの時期なら内容は一つしかないよね?。私、準備してた途中だったんだよね。』
『バレンタインですね!。私もお兄さんの為に用意してたんです!。えへへ。喜んでくれるでしょうか。』
『夢伽さんなら大丈夫ですよ。頑張っていましたから。』
『えへへ。ありがとうございます。兎針お姉さん。』
『皆!。静かに!。』
詩那の言葉に静まる面々。
『皆も知っての通り、もうすぐバレンタイン!。とある筋から面白そうな話を入手したから皆でやろうと思ったの!。』
『とある筋?。』
『十中八九、灯月達だよね?。』
『それで?。どの様な内容のお話ですか?。』
『ふふん!。ウチが入手した情報では、転生する前に灯月達はバレンタインでゲームをしたんだって。』
『ゲーム…ですか?。』
『それはね!。自分達で各々作ったチョコレートを順番に先輩に食べて貰って点数をつけて貰うんだって。』
『ふむふむ。』
『それでね!。点数が一番高かった人は…。』
『ひ、人は?。』
『先輩との一日デートを獲得出来たらしいの!。』
『『『『『!?。』』』』』
全員の表情が真剣な眼差しに変化する。
『そ、その時は…誰が勝ったの?。』
『それが教えてくれなかったの…でね。それをこの場にいる皆でやりたいなぁ~って。』
『どうして、この面子なの?。』
『そのゲームに参加していなかった。それで、この世界で新しく先輩の恋人になった面子よ。』
『あれ?。じゃあ、燕さんや睡蓮さんは?。ああ、アクリスさんは…微妙なところだね。』
『燕さんは代刃先輩達と一緒にチョコを作るんだって。睡蓮さんはつつ美さん達と。アクリスは分かんないや。先輩に頼まないと会えないし。』
『成程な。つまり、神さまとの一日デートを賭けたこのメンバーでの勝負ということか。腕が鳴る。』
『閃君にはこの話はしたの?。』
『うん!。微妙に渋い顔をしてたけど。了承してくれたよ?。別にそんなことしなくてもデートくらい、いつでもしようって言ってたけど。』
『まぁ、そうだよね。』
『それで?。貴女は何と答えたのです?。』
『優勝したら特別感があるご褒美デートが欲しいって言った。』
『特別感!。』
『それは…どんな…。』
『それは先輩に任せたよ。ウチだってサプライズにして欲しいし。』
『お姉。もう勝った気?。それは早すぎるよ?。』
『そうですよ?。駄肉。特別なデートが賞品である以上、私達も手は抜きません。全力で満点を目指します。』
『じゃあ。皆参加で良い?。』
『はい!。頑張ります!。』
『わ、私も!。閃君との特別デート!。楽しみ~。』
『ふむ。止むを得ない。全力で神さまへのチョコを作るとしよう。』
各々が握り拳を掲げその怪しげな密会は解散となった。
各個室、キッチン、調理場。
来る数日後のバレンタインまでクロノ・フィリアの拠点は甘い匂いが充満することになった。
ーーー
ーーー閃ーーー
自室へと向かう為に廊下を歩いていた俺。
今日はバレンタインだ。
先程、代刃と燕、美緑、砂羅、累紅からチョコを貰ったばかりだ。
二ヶ所共に、その場でのお茶会になってしまい、そろそろ腹がキツイ。
午後には灯月達と約束もあるし、部屋に戻って少し休むところだ。
『お兄さん!。発見です!。』
『確保ぉ~。』
『失礼します!。』
『神さまぁ~。』
しまった。
このタイミングで来たか。
詩那と約束をしていたが時間までは指定していなかった。
俺の身体はあっという間に夢伽、紗恩、兎針、八雲に囲まれ抱きつかれた。
『ふふふ。覚悟して下さい!。お兄さん!。逃がしませんよ?。』
『いや、逃げないよ。てか、逃げれないよ。』
完全に四方を囲まれ身動きが取れない状態だ。
『すぅ~。はぁ~。すぅ~。はぁ~。』
『おい!。兎針、匂いを嗅ぐなよ。』
『閃兄。私達頑張ったんだよ?。いっぱい褒めてね。』
『ありがとな。紗恩。』
『うん!。』
『神さまぁ~。私も頑張りました。私のチョコを食べて下さいね…ふふ。色々を混ぜたので。』
『何を混ぜた!?。』
『内緒です。』
怖っ。
そのまま四人に抱きつかれたまま空き部屋に連れていかれた。
そこには、綺麗なテーブルの上に各々のチョコレートらしきものが用意され、テーブルナプキンが被せられていた。
『先輩。お待たせ!。待ってたよ!。』
『閃君。時間作ってくれて、ありがとっ。』
詩那と奏他の出迎え。
特等席っぽい一番奥の椅子に案内され座らされた。
そして、恋人達が各々に作ったであろうチョコの前に移動する。
『じゃあ、先輩。今から順番にチョコを食べて貰うね。それで、点数をつけてね。点数は0~100点。一番美味しかったチョコを作った人が先輩と一日でデートだよ?。』
『ああ。約束だからな。全力でプランを考えるよ。忘れられない一日をプレゼントするな。』
『忘れられない…。』
『一日…。』
俺の言葉に全員の目がキラキラと期待に満ちて輝いている。
こんなこと前にもあったな…前世のバレンタイン…。
あの時は、ご褒美とかはなかった筈なんだけど…詩那は灯月に何を吹き込まれたのか。
『では、予め決めていた順番で。』
『と言ってもジャンケンだったけどね。』
一番は紗恩みたいだな。
『うぅ…最初、緊張する。閃兄…その、お手柔らかにね?。』
『ああ。』
紗恩なら心配ないかな?。
真面目だし、努力家だしな。
『そ、その…これ、私からのバレンタインだよ。』
小さなお皿の上に置かれているのは、ロールケーキみたいだな。
チョコの生地。
チョコ味の生クリームとミルクのクリームが重なって縞々になっている。
『せ、閃兄。そ、その…あ~ん。』
『あ~ん。』
フォークで一口サイズに切り、俺の口へと差し出す紗恩。
照れて赤くなった頬と真剣な眼差し。
差し出されたケーキを口の中に入れる。
もぐもぐ。
生地に混ぜられているのは苦めのチョコレート。ふわふわとした舌触りにビターな苦味が広がる。しかし、それを包むように甘いクリームが舌を刺激する苦味を抑え、混ざることで絶妙な風味へと苦味を変化させた。
『おお。美味しい。』
『ほ、本当?。』
『ああ。旨いよ。これ。頑張ったんだな。これならいくらでも食べられるよ。』
『やった!。いっぱい。食べてね。あ~ん。』
『あ~ん。』
『えへ、えへへ。』
嬉しそうに口に運ぶ紗恩は満足そうだった。
『それでは、先輩。紗恩の点数はいくつですか?。』
『100点。』
『うそっ!。やったぁ!。』
珍しく跳び跳ねる程喜ぶ紗恩。
普段、冷静で大人びている態度からは想像つかないくらい年相応の女の子の喜びを身体全体で表現していた。
『えへへ。閃兄とデート~。楽しみ~。』
『紗恩さん。まだ勝った気になるのは早いです。次は私ですので。同率ならば問題ないでしょう?。』
『む。確かに…。』
次は兎針か。
前に出た兎針の持ってきたチョコを開封。
『これは…バウムクーヘン?。』
『はい。そして、上に止まるのは私の蝶をモチーフにした飴細工です。どうぞ。召し上がり下さい。』
チョコのバウムクーヘンが木の切り株を表現し、所々にメープルシロップが挟まれ、木の樹液を表している。
そして、それに引き寄せられた飴細工の蝶達。
味も見た目も楽しめる。
『それでは早速。失礼しますね。あ、あ~ん。』
『あ~ん。』
一口サイズに切られたチョコ生地のバウムクーヘンは優しい控え目な甘さ。
適度に強い甘さが混ざっているのがメープルシロップだな。甘さのアクセントになって…うん、美味しい。
そして、この飴細工の蝶。
羽の模様までもリアルに作り込まれた精巧さ。
味だけでなく見た目でも楽しめる器用な兎針らしいチョコだった。
『何か、綺麗すぎて食べるのが勿体ないな。』
『そんなこと言わずに、私だと思って食べて下さい。』
『ええ…。まぁ、頂くよ。』
『ふふ。閃さんの困り顔も可愛いですね。はい。あ~ん。』
『あ~ん。』
うん、やっぱり旨いな。
『閃さん。点数をお窺いしても?。』
『100点だ。美味しかったよ。ありがとう。』
『ふふ。喜んで貰えて良かったです。デート。楽しみにしてますね。』
『ああ。任せな。』
ヤバい。腹がキツくなってきた。
ロールケーキとバウムクーヘン。なかなか腹に溜まるのばかりが続いたからな。苦しくなってきた。
『じゃあ、次は私ね。』
次は奏他か。
どんなチョコを用意したんだろう。ケースに入ってるみたいだけど?。
『じゃあ、閃君。あ~ん。して。』
『あ~ん。』
『はい。チョコ入りま~す。』
ケースの中に入っていたのは一口サイズのチョコが十二個。
その一つが口の中に。
もぐもぐ。おっ。
『これは…なかなか…クルな。』
苦味の強いチョコの中に濃厚で芳醇なお酒の香り。
しかも、結構強目な…ってこれ【神殺し】じゃねぇ?。
『どうかな?。きっと今日色々な甘いのを食べると思ったからちょっと苦くてお酒の効いた大人なチョコにしてみたんだけど?。』
『ああ。美味しいよ。クセが強くて驚いたけど、ああ。旨い。初めての味だけど、こういうのも好きだわ。』
『えへへ。良かった。色々と試して美味しかったチョコと組み合わせて作ったから味わって食べてね。ふふ。はい。後でゆっくり食べて。』
『ああ。ありがとう。』
ケースごと渡された。
流石にこれだけ食べたら酔っぱらってしまうからな。部屋に戻ったら頂くとしよう。
『奏他も100点だ。』
『やったぁ。えへへ。デート。いっぱい甘えさせてね。』
『勿論だ。楽しみにしてな。』
すぃ~。すぃ~。
『神さまぁ~。失礼しま~す。』
『ん?。ああ。次は八雲か。宜しくな。』
『はい。一生懸命作りました。その…僭越ながら、此方をどうぞ。』
八雲が用意したチョコレートは…チョコスティック?。
『チョコスティックです。中はスティック状にしたビターチョコで、その周りをミルクチョコでコーティングしています。最初から最後までチョコしかありません。』
『おっ。おお…?。』
『これでは持つところがありませんよね?。』
『そうだな。持ったら手にチョコが付着しちゃうもんな。』
『そこで…。はむっ。』
八雲がチョコスティックの先端を口に咥える。
『どおほ。えひははえ。(どうぞ。召し上がれ。)』
何とポッキーゲームのお誘いだ。
確かにこれなら手は汚れない。しかし、八雲にしては大胆な行動だな。
『じゃあ、食べるな。』
『コクンッ///。』
反対側の先端を口に咥え、ゆっくりと食べ始める。
カリカリ。カリカリ。カリカリ。
目の前にある八雲の顔が更に近付いてくる。
まぁ、ポッキーゲームなら途中で口を離すんだろうが、生憎と俺達は恋人だ。
鼻と鼻がくっつき真っ赤に染まる八雲の顔。
恥ずかしいのか瞳が渦巻きみたいにグルグルと泳ぎ腰が引き掛ける。その腰を支え、残りのスティックを全て口の中に入れ、そのまま八雲の唇を奪う。
チョコが小さく可愛らしい唇に付着しているのを舐め取り、数回唇を重ねた後に静かに離す。
『……………。』
『八雲。100点な。美味しかったよ。』
『はぃ…。お粗末様です…。神さまぁ…。』
ふわふわと浮かび上がった八雲は自分の椅子に戻り放心していた。
『うぅ…私もそうすれば良かった…。』
『あ~ん。で満足してた自分が憎いですね。』
『八雲は大胆だね。ふふ。真っ赤になって。あんなに作ってる時は張り切ってたのに可愛いね。』
『残るはウチと夢伽だね。』
『はい。八雲お姉さんの覚悟見せて貰いました。私も本気を出さなければなりません!。』
ガサゴソとテーブルの影で何かの準備をした後、手ぶらで前に出る夢伽。
妖しく笑いながら、ゆっくりと揺れながら近付いてくる。
『次は夢伽なんだな。』
『はい。お兄さん。私のチョコを召し上がって下さい。』
『ん?。何処にあるんだ?。』
『ふふ。お兄さんの目の前ですよ。えいっ!。』
『はい?。っ!?。』
唐突にキスをされる。
首の後ろに手を回し、動きを封じ手からのキス。夢伽の小さな身体が俺の腕の中にすっぽりと収まり、唇同士が接触し合う。
夢伽の口の中から送られてくる甘いチョコの味。夢伽の口の中で溶けたのか、とろりとした舌触りが夢伽の舌に絡まり俺の口内を侵略していく。
舌に、歯に。口の中で夢伽の舌が暴れ溶けたチョコを塗りたくっていった。
『はぁ…はぁ…はぁ…。どうですかぁ?。お兄さん?。私のチョコ。美味しかったですかぁ?。』
自身の唇に残ったチョコと唾液を舐め取った夢伽。
乱れた呼吸と上目遣いの眼差しが外見年齢を意識させない面妖さを醸し出す。
『ああ。美味しかったよ。』
『ふふふ。ありがとうございます。喜んで貰えて嬉しいです。まだ、100個程チョコを用意しています。なので、あと100回。キス出来ますよ?。』
『しません。チョコは美味しかったから100点だけど、やりすぎだ。後で睡蓮にお説教して貰うからな。』
『えぇ…そんなぁ…酷いですぅ。お兄さん…。』
まったく。
夢伽のおませには困ったもんだなぁ…。
何処であんな知識を学んでくるんだか?。
『うぅ…結局、皆100点だし…。ここで、ウチが100点じゃなかったら…ウチだけデート無しとか?。そんなの嫌だし!。先輩に!。ウチの本気見せてあげる!。夢伽や八雲よりも喜ばせてあげるんだから!。』
勢いに任せて気合いを入れた詩那。
その手には溶けたチョコが入った綺麗な模様の器。
『先輩!。この器!。ウチの手作り!。見て!。』
差し出された器には、綺麗な花弁が舞う絵が彫られていた。
おお、凄いな。本当に情景が想像できるみたいだ。
『ふふん。どうだ!。凄いでしょ!。』
『ああ。凄いけど…。凄いんだけど?。チョコは?。』
『え?。器に入っているでしょ?。』
『ああ。溶けたチョコがな。』
『ふふふ。とある人が教えてくれた先輩を落とす最終奥義!。このチョコを!。』
『このチョコを…まさか!?。』
詩那が取り出したのは、刷毛…。
その先端にチョコをつけ…はだけさせた自分の胸元に…。
『塗った…。』
『先輩。どうぞ。召し上がれ。』
胸の谷間に塗られたチョコを指差し、迫ってくる詩那。
『お前…つつ美母さんだろ?。そんなこと教えたの?。』
『はえ!?。な、なななな何でバレたの!?。』
そんなことする奴はつつ美母さんしかい………いや、良く考えたら結構いるかも。
灯月や氷姫だってやりそうだしな…場合によっちゃあ…砂羅や美緑も…。
まぁ、今回は偶然当たったみたいだし…深く考えるのは止めよう。
『そ、それで…先輩?。そろそろ恥ずかしくなってきたから…その、舐めて欲しいなぁ…なんて。』
『はぁ…。分かった。じゃあ、有り難く頂くな。』
ーーー
『あれ?。何で周りに盾を?。あっ!?。先輩っ!?。いきなり過ぎだよ!?。あんっ!。くす…くすぐっ…きゃうっ!?。先輩!。そんなにっ!?。にゃっ!?。ダメだよぉ~。そこにチョコ…んあっ…ないからぁ~。きゃっ!?。そんなとこ、噛んじゃ…な、舐めるのもぉ…ダメェ!?。こ、声…我慢出来な…ああああああああああぁぁぁぁぁ………カクッ。』
『詩那。100点な。』
『あへぇ~~~~~。』
ーーー
『あはは。主催者の詩那がダウンしちゃったね。』
『ちっ。駄肉め。幸せそうな顔して呆けて。だらしなく涎まで垂らして…羨ま…いえ、憎たらしいですね。今の内に匂いでも嗅いでおきましょうか?。』
『八雲お姉さんも、戻ってきませんね。虚空を見つめたまま笑ってる…ちょっと怖い…です。』
『けど、閃兄。結局、全員100点にしちゃったね。デートはどうするの?。』
『ん?。そんなの決まってるだろ?。皆が俺の為に作ってくれたんだ。甲乙なんて最初からつける気ないよ。それに、詩那に話を切り出された時からここにいる全員とデートするつもりだったからな。各々にデートプランを考えとくから楽しみにしててくれ。』
『閃兄…うん!。』
『お兄さん…楽しみにしてます。』
『閃さん…。すぅ~。はぁ~。』
『あはは…楽しみだなぁ。閃君。ありがとっ。』
『あへぇ~~~。』
『神さまぁ~~~。』
若干約二名心ここにあらずだが…まぁ、何とか食べ終えた。うぷっ。
ーーー
皆と別れ、自室へと向かう。
午後からは灯月達との約束があるからな、少しでも休まないと…お腹が苦しい…。
カチャリッ。
『……………。』
えぇ…。
自室の扉を開けた俺は言葉を失った。
部屋の中心に巨大な…人一人が入れそうな大きさのカップが置いてあった…。
『せ、閃君…おかえり~。』
『何をしている?。アクリス。』
カップから顔だけを出したアクリス。
『えへへ。つつ美に教えて貰ったの。裸にチョコを塗ったら閃君が喜ぶよって、だからカップにチョコを溜めて中に入って待ってたんだ~。』
お前もかい!。
てか、つつ美母さん何嘘の情報を教えてんねん。
『え?。けど、閃君の記憶だと、つつ美さんがチョコを出してきた時凄くドキドキして…。』
『勝手に人の心を読むな。過去を蒸し返すな。はぁ…いい加減そこから出ろよ。』
『あはは…そうしたいんだけど。出たら裸だしねぇ~。』
『はぁ…分かった。俺は外に出てるから出たら呼んでくれ、ここにタオル置いておくから。』
『あっ!。待って閃君…行かないで。』
『は?。何で?。恥ずかしいんだろ?。』
『いやぁ~。違くてね。あのね。閃君を待ってる間にチョコが固まっちゃってね。ほら、私の身体って神具のせいなのか体温が低いでしょ?。その、身動きが取れないの。閃君…助けて。』
『……………。』
『あ~ん。無言にならないでよ~。』
その後、一度俺の中に戻ることで簡単に脱出出来たのだった。
後に残ったのは、アクリスの裸体を型どったカップに入ったチョコレートだった。
『てか、このチョコどうするんだよ…。』
次回の投稿は20日の木曜日を予定しています。