番外編 閃と恋人達のクリスマス③
一年前に書いたものの続きです。
12月25日。クリスマス、当日の夜。
灯月と代刃と八雲の三名によって企画され、突如として始まった王様ゲーム。
とはいえ、俺の恋人達、現状この場にいる面々は17人。
そんな大人数での王様ゲームは通常のモノとは異なりオリジナルルールに変更されていた。
内容はこうだ。
俺以外のメンバーで割り箸のクジを引き、そこに王様と書かれたモノを引いた人が王様、命令権を得られる。
それ以外の割り箸には番号が振られ、王様は俺を固定にし番号を指定して命令を下す。
俺と◯◯番が◯◯◯をする。
そんな感じだ。
そして、最後は必ずキスで締め括るという絶対ルールらしい。
まぁ、俺としては恋人達とイチャイチャ出来て役得なんだが、さて、どんな命令をされるのやら。
俺の心配を余所にゲームは開始され、
王様を無華塁、夢伽、砂羅、八雲、詩那、氷姫が行い。
命令を、瀬愛、燕、睦美、氷姫、累紅、砂羅のメンバーが実行した。
エロは禁止な筈…なのに、エロの境界線が曖昧なせいで普通にエロい命令が飛び交っている状況だ。
灯月達曰く。
自分じゃ恥ずかしくて出来ないことを代理にやってもらう絶好の機会とのこと。
クリスマスだし、多少は良いかなぁと思ってしまうあたり俺もテンションが上がっている証拠なのだろう。
正直な話。内心楽しんでるし。
『お~さま~だ~れだ。』
そして、俺の意思とは無関係にゲームは進んでいく…と。
次は、誰と何をやらされるのか。
平和的なのが良いなぁ。
『あ…私…。』
奏他か。
結構、常識的な方なので安心…かな?。
『おお。奏他ねぇ様ですか。いったいどんな命令が飛び出してくるのか。正直、想像出来ません。』
『奏他。エロだ!。エロで行け!。』
『八雲ちゃん…。主催者がエロを推奨しちゃってるよ…。』
『えぇ…。ど、どうしよう…。えっと…じゃあね。9番が閃君と愛してるゲームをする。で。』
愛してるゲームって、確か互いに 愛してる って言い合って先に照れたり笑ったりした方が敗けのヤツだよな?。
で。9番は誰だ。俺は誰とやらされるんだ?。
『私だな。』
八雲ね。
大丈夫かな?。アイツ、結構、受けに回ると弱いんだよな。
『おお。八雲ちゃん!。羨ましいです。』
『良いなぁ。ウチも先輩に愛してるって言われたい…。』
『駄肉は閃さんと二人きりの時に良く言わせているではありませんか。』
『いや、こういう場で言ってもらうのが良いんじゃん。…待って、何でそのこと知ってんの?。蝶女?。』
『ふっ。大切な親友のことです。知らないわけないでしょう?。』
『え?。あ…その…うん。大切…親友………もうっ!。そんな照れること言うなしっ!。けど、ウチも負けないくらい知ってるしっ!。このっ!。親友!。』
『チョロいです。』
『ああ。チョロいな。』
そんな和やか?。なムードの中。
すぅ~と。浮遊しながら近づいてくる八雲。
俺の前に降り立ち上目遣いで見つめてくる。
『神さまぁ。宜しくお願いします。』
『ああ。やるぞ。』
『はい。僭越ながら、私から。』
ふわふわっと浮き上がり。視線を合わせたまま顔を近づける八雲。
彼女の小さな顔が目と鼻の先にある。
『神さま。愛しています。………ぶふっ!?。』
あのぉ…既に顔が真っ赤なんですが…。
それに自分で言った言葉で照れて頭から湯気も出ているし…。
勝負になってなくないか?。
それだけ、八雲が愛してくれてるってことだから嬉しいんだけど…一応、ゲームなんだよね。これ。
『あらら。勝負アリですか?。』
『これで、次のにぃ様の攻めで八雲ちゃんが照れなければ引き分けですね。攻守交代です。』
俺もやるのか…。
仕方ないか。
『八雲。失礼するよ。』
『え?。あ…あの?。神さま?。』
普段の態度とは打って変わってオドオドしている八雲を壁際に誘導し壁ドン。
『っ!?。か、神さまぁ…お顔…ち…かぃ…です…。』
顔を覗き込むと潤んだ瞳で眼を逸らそうとするその小さな顎を指先で軽く持ち上げ顎クイ。
『か……みさま…あうあわ…。あぅ…。』
逃れられない八雲の瞳を真っ直ぐに見つめて。
『八雲。愛してる。』
出来るだけ優しく。耳元で呟いた。
『はぅ…あっ…。』
『八雲…ちゅっ。』
『神さまぁ…もう…駄目です…。あぅ…。』
『うおいっ!?。八雲!?。』
言葉とキスに一瞬肩が跳ねた八雲はその場に倒れた。
どうやら、限界を越え意識を手放したようだ。
てか、これだけで?。ゲームだよな、これ?。
お前…普段の言動や態度とは考えられないくらいウブだよ…。
『ごめん。一人脱落した。』
気絶した八雲を抱き抱える。
『仕方がありません。八雲ちゃんは我々【にぃ様大好きクラブ十九天王…言いづらいですね。後で何か良い名前を考えておきましょう。その中でも最弱。ですが、まだ私達がいることをお忘れなく。』
『お前、そんな感じの言いたいだけだろ!。』
何それ。てか、何気に増えてね?。
まぁ、細かいことは良いや。取り敢えず、気絶した八雲をソファーに寝かせてと。
『では、続きです。今のも良かったですが。もう少しエロいのが良かったですね。』
『うぅ…これでも精一杯考えたんだよ?。』
『はい。分かっています。奏他ねぇ様。ですが、これからはもっとオープンに自分をさらけ出すべきですよ!。恋人達の戦い。目指せ一番のにぃ様マスター!。』
『あ…うん!。頑張るね。』
何を言ってんだ?。我が妹よ。
『王様~だれだ~。』
そして、再び賽は投げられた。
『あっ!。瀬愛だ!。瀬愛!。瀬愛が王様!。』
嬉しそうに王様と書かれた割り箸を掲げて跳ねる瀬愛。
瀬愛なら安心だな。平和的なので頼むぞ。
『それでは瀬愛ちゃん。命令をどうぞ。』
『えっとね。えっとね。何だっけ?。お兄ちゃんとぉ~。1番がぁ~。大人なキスをするのぉ!。』
『なっ!?。』
今なんて?。聞き間違いか?。
『大人なキスって!?。』
『きゃあああ!。瀬愛ちゃん!。大胆です!。』
『瀬愛。お前、何処でそんな言葉を、いや、それより意味分かってるのか?。いったい何処でそんな知識を?。』
瀬愛にはそんな会話一度だってしたことない。
黄華さんだってしないだろうし…まだ、瀬愛には早いだろう…。
『うん!。瀬愛ね。智鳴お姉ちゃんと兎針お姉ちゃんのお部屋にある漫画の本ね。いっぱい読んだの。男の人と女の人がねぇ。服着ないで抱っこしてた。』
お前等かぁ~。
『マジか…。』
『それでね。ちゅ~。もいっぱいしてたよ。ペロペロブチューって。』
『おい…智鳴…兎針。』
『黙秘権を行使します。私。日本語。分かりません。』
『わわわ…私も…。日本語って難しいね。』
目を逸らす二人。
『後でお仕置きだ。』
『『っ!?。お仕置き…はぁ~い。』』
『何で嬉しそうなんだよ!?。はぁ…。なぁ、流石に瀬愛の前で…って今更な気がしてくるな。で?。この命令も有効なのか?。』
『勿論です。にぃ様。』
『即答かよ。はぁ…やるけど隠れてやる。良いか?。』
『むぅ。まぁ、良いでしょう。では、一番の方。前に出て下さい。』
てか、1番。誰だ?。
『えへへ。お兄さん。宜しくお願いします。』
『ゆ、とぎ…だと…。』
龍の尻尾をゆらゆらと靡かせた夢伽が前に出た。
恥ずかしそうに頬を染めているが、その表情には余裕が窺える。
反応から知識はあるようだが、夢伽だって年齢的にアウトだろう。
『ふふ。お兄さん…。』
『っ!?。』
しまった。考え事してたら捕まった。
背の低い夢伽は俺の頭を抱き寄せ唇を押し当ててくる。
同時に俺と夢伽を囲うように龍の鱗の盾を展開し周囲から見えなくした。
『ふふ。これで皆さんから見えませんよぉ。それに…ふふ。こうすれば、お兄さんは逃げられません。んっ。ちゅぷっ…んちゅ…ぁん…はぁ…お兄さん…大好き~。むちゅっ…はむ、くちゅっ…んは…。くちゅる…んぱ…ちゅっ…。』
互いの舌が口内で絡み付く。
『はわわわ…何か、エッチです…。凄くエッチな音がするです!。』
『灯月…これは…良いの?。何か…良くないことをしてるような…。』
『音だけなのでセーフです。はぁ…はぁ…。』
『もう、何でもアリじゃな…。』
『灯月。興奮中。』
求めるような強引な夢伽のキス。
音だけは漏れているようで、灯月達の反応が聞こえる。
恋人になっても健全に過ごしてきたのに、今日で終わってしまった…。
『はぁ…はぁ…はぁ…。満足したか?。』
『んふ。はぃ~。満足しました。』
自然と夢伽の方から唇を離す。
唇に唾液の糸が伸び、身を離すと同時に切れた。
同時に周囲を展開していた盾は消える。
『ど、どうでしたか?。夢伽ちゃん?。』
興味津々と言った形で王様である瀬愛が尋ねる。
『ふふ。堪能しました。んっ…。えへへ。あの夜のことを思い出してしまいました。お兄さん…ご馳走さまです。』
艶かしく自身の唇をペロリと舐め妖艶に微笑む。幼い見た目には似つかわしくないエッチさが増していた。
『てか、どの夜やねん!?。』
勿論、子供の夢伽とは肉体的な関係など断じて行っていない。神であろうと、俺達は自分達が生まれた場所のルールを破らないと決めているからだ。
それに、睡蓮がその辺が厳しく。夢伽にはきちんとその辺の教育を行っているのだが…。
何故か自分の下腹部を優しく撫で続ける夢伽に心配になってきた。
『えへへ。満足です。お兄さん。大人になるまで待っていて下さいね。』
『おませさんめ。』
夢伽はルンルンとスキップしながら元の位置に戻って行った。
睡蓮…何を何処まで教えたんだよ…。
『ふふ。これは将来が楽しみですね。』
『ドキドキしました。』
『何か…凄かったね。全然、見えなかったけど。』
皆の視線を受けて尚も余裕を崩さない夢伽は大物なのかもしれない。
『では、次です。お~さま。だ~れだ。』
クジを引いた全員が自分の番号を確認。
『ああ。私ですね。』
王様を引いたのは兎針か。
さて、どんな命令が下されるのか。
『では、早速。………5番が…。』
『やった!。ウチだ!。ロマンチックなのが良い!。』
『ふふ。駄肉ですか。命令前に名乗りを上げるとは愚かですね。此方に命令権がある以上、貴女をどうこうする権利は私にあります。ふふ。まな板の上の魚とはまさにことのと。』
『はっ!?。しまった!?。いや、てか、まな板はお前じゃん!。』
『かっちーん。もう、許しません。こほん。命令を下します。駄肉は女性の姿となった閃さんと押しくらまんじゅうして下さい。』
『え?。何で?。』
『どうして、女の子の閃ちゃんなの?。』
『ふふ。』
意地悪な笑みを浮かべる兎針。
『これは…兎針ねぇ様。なんという高度な戦術…。』
『何?。どういうことなの?。灯月?。』
『皆さんの知っている通り、女性姿のにぃ様の肉体は一言で言えばボンッ!キュッ!ボンッ!のナイスバディです。そして、常日頃から詩那ねぇ様は自身の美しいお体と比較し打ちのめされている。今までの人生。自分の身体に自信があったことでしょう。しかし、それを意図も容易く男性であり恋人のにぃ様に越えられてしまった。質も量も。完璧なにぃ様の前には敗北しかありません。つまり、否応なしににぃ様の肉体と比べられるという精神攻撃なのです。』
『えっと…。』
俺はどうしたら良いんだ?。
取り敢えず女の姿になっとくか。
『ああ…先輩が容赦無しに女の子に…。』
どうしろと?。
自分と俺の姿を見比べ俯く詩那。
いや、十分に詩那も魅力的なんが…。ふむ。なら、押しくらまんじゅうの勝利は詩那にあげよう。少しは俺に勝てたことを喜んでくれるかも。
『じゃあ。始めようか。詩那。』
『う、うん…はぁ…先輩、お手柔らかにね。はぁ…全然、エッチでも何でもないよぉ~。』
背中合わせに向き合う。
女の姿だと詩那との身長差が殆どなくなるな。
『『押しくらまんじゅう~。押されて泣くなっ!!!。』』
ポフッ。とお尻同士がぶつかる。
『え!?。』
詩那の突き出したお尻の勢いのまま自分の身体を差し出す。
俺の身体はそのまま床に転がった。
『うぅ…流石だ。詩那。強いんだな。』
『ふふ。駄肉の勝ちですね。閃さんを吹き飛ばすとは、素晴らしいお尻のお肉と大きさと弾力です。』
『ええ…嬉しくない…。え…めっちゃ嬉しくない。先輩…。』
『詩那は凄いな。圧倒的だったよ。』
『っ!?。う、うわあああああぁぁぁぁぁん!?。ウチが欲しいのはそうじゃないしぃ~。』
『うごっ!?。』
詩那にど突かれた兎針が踞る。
ああ…見事にみぞおちに…。
元いた位置に戻り体育座りでいじけてしまった。
どうやら。俺は何かを間違ったらしい。
『さてさて。主催の私も、ちょっと詩那ねぇ様に同情してしまいましたが、次、いきますよぉ~。せ~の。王様。誰だ。』
もう次のゲームに移ったらしい。
って、傷心した筈の詩那もしれっとまた引いてるし。
『あ、私だ。どうしよう。』
『燕ねぇ様ですね。では、命令をどうぞ。』
えーっと、全員の顔を見渡した後、部屋の一点に視線が動く燕。
『じゃあね。閃さんと8番が彼処のトイレの中で3分間イチャイチャする!。』
『『『『『密室で!?。』』』』』
『『『『『三分も!?。』』』』』
『『『『『イチャイチャ!?。』』』』』
『どうかな?。』
『これは、良いのか?。灯月?。』
『はい。問題ありません。』
もう、何が逆に駄目なんだ?。
『8番はどなたですか?。』
『ぼ、ぼく…だよ。』
『あ…代刃君!?。』
『あ、りがとう。僕、嬉しいよ。恥ずかしいけど、燕の命令で閃とイチャイチャ出来るなんて。』
『ぅ…若干、納得いかないけど…。楽しんで来てね。』
恥ずかしそうに手を上げるのは代刃だ。
『宜しくね。閃。』
『ああ、けど。イチャイチャするだけだぞ?。エッチなことはしないからな?。』
『う、うん。分かってるよ!。き、期待なんかしてないよっ!。』
俺と代刃が個室。
部屋にあるトイレに代刃と入る。
さて、イチャイチャするか。
~~~
残された少女達。
『入っていっちゃったね。』
『うん…良いなぁ。ウチもあんなのが良かった。』
『どんなことしてるんでしょうか?。』
『しーーー。何か聞こえます。』
『えっ!。本当?。』
『代刃ちゃんは普段、お兄様とどんなことしているのでしょうね。』
『気になりますね。』
『代刃。恥ずかしがり屋。』
『そうだね。はは…私もだけど、あんまり閃ちゃんとのこと教えてくれないよね。』
『興味ある。代刃が普段どんな戦いをしているのか。』
『戦いって…。無華塁ちゃん…。』
『あはは…相変わらずですね。』
『それよりも、しーです。』
『聞こえますよ。お二人のイチャイチャ。』
~~~彼女達が聞いたトイレの中の音
『閃!?。ちょっと、いきなりだよぉ~。あっ。んっ!?。はぅ、うっ…もう…強引なんだから。え…あの、うん。イチャイチャしたいよ。』
『え?。あっ…その、ごめんなさい。ご主人様ぁ。あの…うん。イチャイチャしたいです。その…ね。優しくして…ね?。あんっ!。』
『あんっ!?。ちょっ…優しくって…ご主人様!?。あぅ!?。にゃっ!?。いやんっ…あん…。んん!?。んちゃっ…んっ…ご…ごしゅんっ…さ…まぁ、んちゅ、んうっ、んんん…。』
『ああ!。駄目だよ!。ご主人様ぁ。僕まだ王様やってないのにぃ~。』
~~~
ーーー灯月ーーー
『すまん。また一人脱落した。』
にぃ様は気を失った代刃ねぇ様をお姫様抱っこしてトイレから出てきました。
代刃ねぇ様の顔はとても幸せそうでした。
乱れたであろう衣服もにぃ様に元通りに直して貰っているようですし。
代刃ねぇ様が喜んでくれたのなら良かったです。
果たして、何をされたのでしょうか…。
『うぅ…あんな代刃君の顔、私と二人きりのときじゃ見たことないよぉ…。』
命令した筈の燕ねぇ様はダメージを負ってしまったようですが…。
ふふ。皆さんが楽しんで頂けているようで…良かった…。
くくく。まだまだ。ゲームは続きますよ~。
次回の投稿は29日の日曜日を予定しています。