第33話 黄華ママ誕生
『あっ…朝…。』
カーテンの隙間から射し込む光が目に当たり目が覚めた。
『…今…何時…。』
近くにあった時計を確認。
AM7時。
寝たのは3時だったから4時間の睡眠。
『もう…ちょっと寝れるかな…。』
『ん…。』
『んんー。』
私の両脇にいる2人の天使が動いた。
『…お姉ちゃん…いい匂い…。』
『…お姉ちゃん…お母さん…。』
右に翡無琥ちゃん。
左に瀬愛ちゃん。
『可愛い…。』
起こさないように2人の頭を撫で、おでこにキス。
『えへへ…。』
『ん…。』
寝ているのに反応してくれる2人に癒されながら、もう少し夢の中へ。
私は、幸せです。
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時刻は午前11時。
翡無琥ちゃんと瀬愛ちゃんを各々の部屋に送り届け喫茶店に向かう。
と言ってもゲートで繋がってるので廊下を歩くだけなんだけどね。
『ほら!。しっかり歩いて下さい。また、遅くまでお酒飲んでたんですね?。今日は大事なお話があるって言ってたから、お酒隠してたのに!。』
『隠し方が優しいよね。棚の奥とかさ。性格の良さが出てて見つけるの簡単だったよ。おじさん嬉しいなぁ。』
聞き覚えのある声と、聞いたことの無い声。
『無凱。』
その男の名前を私は呼んだ。
『ん?。ああ、黄華さん。もう来てたんだ。早いね。』
『え?。あ…。』
ひらひらと手を振る無凱と私を見てあたふたする少女。
『まぁ、とりあえず言いたいことは沢山あるけど。やっ!。』
『いてっ。』
無凱をグーで殴る。
グーの拳は無凱の顔面を的確に捉えめり込んだ。
『はぁ…。』
コイツわざと当たりやがった。
避けようと思えば簡単でしょうに。
こういうところが、昔から…。
『よくも緊張させてくれたわね?もっと事前に説明とか色々あるでしょ?。でも…翡無琥ちゃんは、嬉しかったから1発だけ殴っとくわ。』
『ああ、やっぱり好かれたみたいだねぇ。翡無琥ちゃん、ずっと君のこと気にしてたみたいだからさ。』
『ええ。私のギルドに迎え入れたいくらいよ。』
『ええ。それは困るな。君がこっちに入ればって前から言ってるじゃん?。』
『貴方ねぇ。昔からそういう分かってて聞いてくるの直しなさいよ!。』
『僕の意見は昔から変わらないよ。』
『でしょうね。』
コイツはいつも私を自由にさせてくれる。
そのクセに、こっちが困ってたら迷わず助けてくれるし、導いてくれる。
そういうところが…今でも…。
『あのぉ?。』
『ん?。どうした、柚羽ちゃん?。』
『この女性は?。凄く綺麗な方ですね。』
『ああ、紹介まだだったね。この人は僕の奥さん。』
『元…奥さんです。初めまして、ギルド 黄華扇桜のギルドマスター 黄華です。』
『ギルドマスター!?。』
『そうよ。貴女は?。』
『元 緑龍絶栄の小隊長 柚羽です。』
『あら?。緑…てことは、美緑ちゃんのところの?。』
『あ、はい。美緑様にはあまり会ったことありませんが。今はクロノフィリアで無凱さんにお世話になってます。』
『酷いんだよ。黄華さん。柚羽ちゃんは昔の黄華さんみたいに僕のお酒を没収するんだぁ。』
あっ…もしかして、私のスキル 花占い で無凱を占った時に出た…。
近いうちコイツのことを監視する優秀な人材が現れる
って出てた娘かな?
確かにさっき話してた感じ昔の私にそっくりだったかな。
なんとなく親近感。
この娘も駄目な男に引っ掛かるタイプかな?
『無凱。ちょっとあっち行ってて。』
『ええ。急にどうしたのさ。』
『良いから。しっしっ。』
『えーい。』
無凱が階段を降りていく。
それを確認して柚羽ちゃんを呼ぶ。
『柚羽ちゃん。』
『は、はい。』
『アイツ。だらしないでしょ?。お酒ばっかり飲んでるし。ずーっとテーブルに突っ伏してるし。』
『は、はい。何とかシャキッとさせようとするんですが…なかなか上手く行かず、すぐお酒に手が伸びてしまうんです。』
『けど、やる時はやるでしょ?。』
『はい。正直格好良かったです…。』
少し照れながら言う柚羽ちゃん。
なんか…自分に重なっちゃうなぁ。
『私は元、の妻だし、立場上あんまり無凱には会えないからね。』
私は柚羽ちゃんの両手を自分の手で包む。
『黄華さん?。』
『アイツのこと支えてあげて。』
『…。黄華さん、貴女は無凱さんのこと…。』
『嫌いよ!。』
『…。』
『何でも分かってる態度も、常に気を使ってくれてる態度も、普段の自堕落な態度も、たまに真面目になる格好良さも…全部嫌い。だから、お願いね。』
『は、はい。ありがとうございます。精一杯支えてみせます!。』
『うん。よろしくね。』
柚羽ちゃんは一礼すると無凱の後を追った。
『ふぅ。さて、行きますか。』
『あ、お姉ちゃんの気配…。』
『あら?。翡無琥ちゃん。』
『また会えました。』
『そうだね。翡無琥ちゃんも喫茶店?。』
『はい。そうです。』
『じゃあ、一緒に行こうか。』
『はい。嬉しいです。』
『手…繋ぐ?。』
『あ…はい。』
私は翡無琥ちゃんと手を繋ぎ喫茶店に向かった。
少し歩くと今度は遠くから瀬愛ちゃんが走って来た。
『黄華お母…あっ、間違えた。お姉ちゃん!。』
あら?可愛い。言い間違えちゃったね。
『あっ、瀬愛ちゃん。』
『あ、翡無琥ちゃんもいる。』
『朝から元気だね。あと、私で良ければお母さんって呼んでも良いよ?。』
『え?。…良いのかな?。本当のお母さんじゃないよ?。』
『私は、瀬愛ちゃんも翡無琥ちゃんも大好きだし。大人として2人を導いてあげたいの。だから、いっぱい頼って欲しいし、いっぱい甘えて欲しい。呼び方も、瀬愛ちゃんが、好きな呼び方で良いよ。』
まあ、戦闘面での実力はこの娘たちの足元にも及ばないけど…。
『私は、今まで通りお姉ちゃんで良いですか?』
『勿論良いよ。』
私は翡無琥ちゃんの頭を撫でた。
『えへへ。ありがとうございます。お姉ちゃん。』
その様子を見ていた瀬愛ちゃん。
私のところまで歩いて来て、抱き付いてくる。
瀬愛ちゃんの身長だと、私のお腹辺りに顔が来る感じ。
『黄華…ママ。』
あっ、ママ呼びだ。
お母さんよりママって呼びたかったのかな?。
『うん。瀬愛ちゃん。』
『っ!。ママ…。』
『うん。』
『ママ。ママーーー。わぁあああああああああああ。』
『わっ。また、泣いちゃったよぉ。』
私は泣いている瀬愛ちゃんを抱き締めた。
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『お久し振りです。仁さん。』
『やあ。黄華さん。久し振りだね。…はは。これはまた大人気だね。』
喫茶店に入ると仁さんがいた。
挨拶すると笑顔で応えてくれた。
けど、両手にある2輪の花を見て優しく微笑んだ。
『えへへ。』
『ママ~。』
私、めっちゃ幸せです。
今、クロノフィリアのメンバーは散らばっている仲間を集めるために各地に出掛けているらしい。
この場に居るのは。
長いソファーに座る私。
右に翡無琥ちゃん。
左に瀬愛ちゃん。
カウンター内に仁さん。
カウンター席に無凱。
その横に柚羽ちゃん。
私の反対側のソファーに座る、つつ美さんと灯月さん。
個別の席には見慣れない青年2人。
さっき聞いたら涼君と威神君。
どっかで聞いたことある名前だ。何処だったかな?。
以上がこの場に集まったメンバー。
『瀬愛ちゃん。今日は凄いご機嫌だね。』
私の腕に抱き付いてニコニコしている瀬愛ちゃんに無凱が尋ねる。
『うん。ママねぇ。今日から瀬愛のママになってくれたんだぁ。』
『おお、それは良かったね。』
『うん。ママね。瀬愛の赤い目のこと宝石みたいで綺麗って言ってくれたの。お兄ちゃんと同じで褒めてくれたの。』
『ああ、閃君も言ってたね。』
『そうなの?。』
流石、閃君。わかってるわね。
『世界がこのような状態になってしまった頃、まだ皆が集まっていなかった時に、にぃ様が一番最初に探し回ったのが瀬愛ちゃんでしたからね。』
『へえ。そうなんですね。』
『瀬愛ちゃんがきっと危険な目にあってるんじゃないかって今までに見たことが無いくらい慌てていました。』
『結局、瀬愛ちゃんは大変な目に合ってたわけだ。』
『うん。お兄ちゃん。助けてくれたの。その時に目がキラキラしてて綺麗って言ってくれたの。』
『もう~。それから~。瀬愛ちゃんはぁ~。閃ちゃんに~。べったりなのよ~。』
『なるほど、それで…。』
瀬愛ちゃん。閃君が居なくてさみしそうだったもんね。
そんな会話をしながら時間は過ぎ、正午となる。
『それでは、六大会議の内容をお話しします。』
クロノフィリアの話し合いが始まる。
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ーーーお風呂女子会ーーー
『灯月さんは、閃君と普段何して遊んでたの?。』
『それはもう、濃厚な時間を過ごしていましたよ?。』
『濃厚?。』
『朝、にぃ様は私の胸の中で目を覚まします。可愛らしい寝顔を見ていた私は優しい声でにぃ様を起こしお着替えを手伝います。にぃ様は私にされるがまま、汗のかいた下着を丁寧に脱がす私に恥ずかしがりながらもお礼を言って下さるにぃ様。新しい御召し物を着させていただきます。その後は朝食。私の(飼っている牛)搾りたてのミルクと私の(飼っている鶏)卵で作った目玉焼き。私の(育てた野菜)サラダを盛り付け、私の(作った)ふわふわなトーストを食べていただきます。食事の後は軽い運動です。私を押し倒した、にぃ様は私を使って軽いストレッチ。私は主様であるにぃ様の言いなりですので抗うことなく軽いストレッチをお手伝いします。その後は、やはり アレ ですね。 アレ は、絶対欠かせません。私と、にぃ様にとって アレ をしない日など考えられないですので午前中は アレ の時間に全て割きます。それから昼食の時間になるとお腹を空かしたにぃ様は私の部屋で手作りのサンドイッチを食べるんです。その頬が溶け落ちてしまう美味しさのサンドイッチを頬張るにぃ様を見ながら私はにぃ様の口の横に付いた食べかすをペロリと舐めとりにぃ様を困らせるんです。それでも優しいにぃ様は私にお礼を言い。私の唇に口づけをしてくれるんです。ありがとうの言葉で私の心は満たされとても幸せです。昼食後はぽかぽかな太陽の陽気を浴び満腹になったにぃ様と私は一緒のベッドに入りお昼寝です。にぃ様は私を抱き枕のように抱き締めて幸せそうに眠りにつきます。お昼寝の途中、私はにぃ様が起きないように抜け出し、小腹が空いて起きてしまった時用に軽いオヤツのスイーツを作ります。急ぎながらも丁寧に作り出来上がったモノをテーブルに運び再びにぃの寝ている横に忍び込みます。もちろんこの時に物音は立てません。スイーツを食べ終わるころ、にぃ様と私は一緒にゲームを始めます。夕食までの時間は昔から2人のゲームタイム。レース、アクション、シュミレーション、パズル、格闘ゲームなどを極めた私達はそれはもうレベルの高い内容のプレイをします。夕食は私が腕によりをかけて作成した世界各地のグルメフルコース。にぃ様のもう食べられないよという声が聞けるまで世界料理は旅行をしているように食卓に並んでいきます。夕食後、私とにぃ様のお風呂タイムです。2人でお互いの身体を隅々まで洗い1日の汚れを落として湯船に浸かります。湯船の中ではイチャイチャタイム突入です。私とにぃ様はお互いの身体を触り合いのぼせる直前まで堪能するのです。入浴後は再びゲームの時間です。この時間は年齢制限のあるゲームをにぃ様がプレイし私は座るにぃ様の足の間でゲーム画面を眺めます。ゲームの内容に理性が飛んでしまったにぃ様は私をベッドに押し倒し寝る前のストレッチをし身体をほぐし、温かいミルクを飲んで眠りにつきます。』
『………。』
『ふふ~。灯月ちゃん~。面白いでしょ~?。全部ぅ~。妄想なのよぉ~。』
アレってなんでしょう?
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『ねえ~。黄華ちゃん~。』
『何ですか?つつ美さん?。』
『黄華ちゃんは~。まだ~。無凱君ことを~。好きよね~?。』
『え?………嫌いです。』
『そう~なの~。』
『はい。アイツは…だらしなくて…お酒が大好きで…何でも出来るクセに何もしない…私のことを一番に考えてくれて…私の言うことを何でも聞いてくれて…困った時はどんなモノよりも優先して助けてくれて…たまに格好いいのに、すぐふざけて…嫌いです。』
『ふふ~。そうなんだね~。』