第32話 黄華のお風呂事情
六大会議の後、私は一度ゲートを通り自分のギルド 黄華扇桜に戻った。
残念だけど、翡無琥ちゃんとは1度別れ。
今はひとときの休息の為、ギルド自慢の大浴場に向かっている。
ウチのギルドは女の子しかいないからかお風呂好きの娘が沢山いる。
だから、ギルド会館を建てる際、無凱に頼んで浴場には拘って拘って拘り抜いた。
その結果が、リゾートプール顔負けの施設が誕生してしまった。
流れるプール、子供用プール、ウォータースライダーなどの様々なアトラクションが用意された大浴場が完成したのだ。
『この時間じゃ誰も居ないかな?。』
時刻はもう日が変わっている。
ギルドの娘達はもう寝てる時間だろう。
いつも賑やかな大浴場も1人でいると少し寂しいかな。
『ふぅ…疲れた…。』
六大会議は、いつもしんどい。
周りは敵だらけ、クロノフィリアとの関係がバレれば集中砲火であっという間にギルドは崩壊。
私の行動1つに、ギルドの娘達全員の運命がかかっているのだ…重圧が半端じゃない。
『はぁ…。気持ちぃ…。』
広い浴槽に浸かって足を伸ばす。
この瞬間が最高の幸せ。
『大会か…。』
六大会議で白蓮が話していたクロノフィリアを誘き出す為の大会。
明日の昼過ぎには、仁が経営するクロノフィリアの喫茶店へ行く予定になっている。その時に、大会のことも話すつもりだ。
『私はどういう立場で参加すれば良いのかな?』
難しい問題だ。
ギルドの娘達を守るには大会に参加、もしくは、運営側でクロノフィリアのメンバーを探すフリをしなければならない。
何人かには会場に出向いて貰わなければならないだろう。
『ブクブクブクブク…。』
私のギルドは六大ギルドに名を連ねているがレベルが120にいっている娘が3人しかいない。
能力もあまり戦闘に役立つモノではなくサポート寄りの娘達ばかり。
残りの五大ギルドに比べるとひ弱過ぎるのよねぇ。
『運営…側かな…。』
運営側に回り、大会を観戦何事も無く終われば儲けもの。
けど…『何か』が起こってしまった時は、ギルドの娘達を危険に巻き込んでしまう。
それだけは…なんとしても避けたい。
『はぁ…めんどくさーい。』
誰も居ないことを良いことに大きな声で本心を叫んだ。
『あららぁ~。珍しいぃ~。黄華ちゃんがぁ~弱音を吐いてるわ~。』
『え!?。』
タイミング良く、浴場に入ってきた人物に聞かれてしまった…恥ずかしい…。
『つつ美さん…。』
『お疲れさまぁ~。』
つつ美さんはゆっくりとした動作で近付いてくる。
いつ見ても物凄いスタイルの良さ。
思わず全身を凝視してしまう。
あまりにも完成された 美 そのものが形を形成しているような…。
確か種族は聖淫魔神族だったよね。
これがサキュバスの力か…。
押し倒して無茶苦茶にしたいような…押し倒されて無茶苦茶にされたいような。
そんな衝動がムラムラと沸き上がってくる感覚。
女の私でさえ、こんな感じなんだ。世の男性達が見たらどうなってしまうのか…。
私、自分のスタイルには少々自信があったけれど、つつ美さんと出会ってからは、そんなモノは吹き飛んでしまった。
『あら~。あら~。黄華ちゃん。何かあったの~?。』
浴槽に入り、私の隣に座るつつ美さん。
行動の1つ1つの色気が凄すぎます。
『え?。何か?。』
『悩んでる~。みたいだったよ~。』
つつ美さんの目は全てを見透かしているように澄んでいて真っ直ぐ私を見つめてくる。
つつ美さんなら、悩みを聞いてくれる。
そんな、考えに至らされてしまう。
『まあ、ええ。今日…あ、昨日行われた六大会議での内容が私の手に追えるモノではなくて困っていました。』
『あら~。あら~。六大会議で~?。』
『えぇ。』
私は大会についての内容を、全てつつ美さんに話した。
『あら~。なるほど~。それで悩んでたんだね~。』
『え?。』
隣に座るつつ美さんは私の肩を持ちそっと自分の方に引き付ける。
私の身体を抱き締める形になり、私の頭はお湯に浮かんでいるつつ美さんの豊満なバストに包まれた。柔らかい感触、そして、優しい手付きで頭を撫でられた。
『つつ美さん?。』
『黄華ちゃんが~。責任感強いのは~。知ってるしぃ~。偉いと思うわぁ~。でもね~。何でも自分1人で抱え込むのは~。ダメなことよぉ~。』
『ですけど…。私のギルドのことですし…。』
『違うでしょ~?。もう、今は私達のギルドなのよぉ~。助け合うって~。約束したでしょ~?。』
『…そう…ですが…。』
『私もいる~。閃ちゃんもいる~。無凱君も~。仁君も~。み~~~んな~黄華ちゃんのお友達で~。仲間なんだから~。いっぱ~い頼って良いんだよ~!。』
普段儚げな印象のつつ美さんが真剣な表情で私に語り掛ける。
『良いんでしょうか?』
『当たり前です~。もし~頼ってくれなかったら~。怒るよ~。』
『そうですね。失礼なことをしてしまいました。これからは、相談させて貰いますね。』
『そうだよ~。嫌がる人なんていないんだからね~。』
『はい。』
つつ美さんの身体を離れてお湯に頭まで潜る。
『ぷっはぁぁあああ!。スッキリしました。』
『うん~。良い表情だ~。』
『つつ美さん。ありがとうございます。』
『良いんだよ~。何か悩みがあったら相談にのるよぉ~。ということで~。さっそく大会の~ことだけどぉ~。それは、多分、大丈夫だよ~。』
『大丈夫とは?』
『黄の娘達は出なくて良いよ。私達で~なんとかするから~。』
『え?なんとか出来るんですか?』
『じゃあ、呼んじゃいましょ~。』
『え?え?。呼ぶ?え?え?。』
10分後。
『失礼いたします。』
『わーい。お風呂ー。』
『瀬愛ちゃん。走ると危ないです。』
大浴場に入ってきたのは。
灯月さん。瀬愛ちゃん。翡無琥ちゃん。
の3人でした。
『あっ。お姉ちゃんの気配がします。』
大浴場に入った瞬間私の存在に気が付いた翡無琥ちゃん。
『翡無琥ちゃん。』
私も声をかける。
翡無琥ちゃんは目が見えないと言っていたけど迷わずに私の方へと歩いて来る。
翡無琥ちゃんの目には会議の時に見た包帯は無い。けど、目は閉じている。
『お姉ちゃん。』
浴槽まで辿り着いた翡無琥ちゃんを優しく抱き締めてお湯の中に入れる。
翡無琥ちゃん。軽いなぁ。
『えへへ。ありがとうございます。』
『いいえ。』
そして、2人でお湯に浸かる。
『失礼します。』
『つつ美さんだぁ。』
静かに浴槽に入る灯月さん。
つつ美さんには劣るけど親子だけあって灯月さんも凄い綺麗…。
背は小さいのにしっかりと女性的な部分は主張して…。
私の…自信…今は…彼方へ。
つつ美さんに抱き付く瀬愛ちゃん。
『あら~。あら~。』
つつ美さんも瀬愛ちゃんを優しく抱き締め嬉しそう。
『それで、母様。こんな時間に何故お呼びになったのですか?』
『瀬愛、翡無琥ちゃんと遊んでたらびっくりしたよ?。』
『お姉ちゃんがいるの知りませんでした。』
つつ美さんは瀬愛ちゃんを抱っこしながら立ち上がり告げる。
さっき話した大会のことを皆に説明してくれるのかな?。
『それは~。女子会よぉ~。』
えええええ…。なんでぇえええええ。
『どうやら~。黄華ちゃんは~。私達とのぉ~。間に~壁が~あるようなのよ~。なので~裸のお付き合い~親睦深めよ~。』
珍しい。つつ美さんのどや顔。
『本当は~。光歌ちゃん~。豊華ちゃんや~。智鳴ちゃんや~。氷姫ちゃん達も~呼びたかったのだけど~。今いるメンバーで始めましょ~。』
『母様はお祭り好きなんです。』
そう小さく耳打ちしてくれる灯月さん。
ああ…そうなんですね…。
それから、色んな話をした。
ーーーーー
私は伸ばした足の間に翡無琥ちゃんを座らせた。
翡無琥ちゃんは柔らかいなぁ。
『翡無琥ちゃんは中学生くらい?』
『いいえ。私は小学生で5年生です。あっ、でも2年前のことなので今は中学1年生ですね。』
『でも、2年前から成長は止まってるよね?』
『そうですね。大人になりたかったです。』
『そうだね。』
私は翡無琥ちゃんを後ろから抱き締めた。
翡無琥ちゃんは小学5年生で成長が止まっているけど…スタイル…良いよね?
中学生の1、2年生って言われても信じちゃいそう…。
『お姉ちゃん。いい匂い。』
『そうでしょ?今ね。翡無琥ちゃんの好きそうなリラックスできる優しい香りにしてるんだよ。』
『すごく落ち着きます。』
『へへへ。私の種族は 花香聖霊王族 だからね。スキルで色んな花の香りを身体から出せるんだよ。』
『凄いです。だから、お姉ちゃんずっといい匂いだったんですね。』
『そうだよぉ!。』
ーーーーー
湯船から上がり足だけお湯に付けて座る。
『私も隣に座って良いですか?』
『もちろん!。おいで。』
私は翡無琥ちゃんを隣に座らせた。
『お姉ちゃん…。』
翡無琥ちゃんが私に寄り掛かるように甘えてくる。
可愛すぎる。何か小動物みたいなのよね。
頭を撫でる。
『えへへ。ありがとうございます。』
少し照れながら、でも嬉しそうに笑う翡無琥ちゃん。
やっぱりこの娘。お持ち帰りしたいよ。
ふと、反対側を見ると、つつ美に抱っこされていた瀬愛ちゃんが羨ましそうに翡無琥ちゃんを眺めてた。
ああ。
『瀬愛ちゃんも、おいで。』
『っ!良いの?。』
『当たり前だよ。おいで。』
瀬愛ちゃんは、つつ美さんの方を見る。
『良いよ~。行っておいで~。』
『うん!。』
瀬愛ちゃんがパシャパシャとお湯をかき分けながら翡無琥ちゃんとは反対側に座って私に体重を預けてくる。
『ふふ。良い子。良い子。』
瀬愛ちゃんの頭も翡無琥ちゃんと同じように優しく撫でる。
『んーーー。いい匂い。』
『瀬愛ちゃんもこの香り好き?。』
『うん!大好き!。』
『へへ。そっかー。』
瀬愛ちゃんの、おでこ、手の甲、胸元にあるキラキラ光ってる赤い目。
瀬愛ちゃんの種族は女王蜘蛛だったよね?。
『瀬愛ちゃんの赤い目、凄く綺麗だね。』
『え?』
『キラキラ光ってて凄く良い感じ。』
『………き、気持ち悪くないの?。』
『え?全然、むしろ宝石みたいだなぁ。って思ってるくらいだよ。瀬愛ちゃんは宝石も似合う美人さんだね。』
『………。』
その直後、瀬愛ちゃんは何も言わずに私の胸に顔を埋めて来た。
一瞬ビックリしたけど…瀬愛ちゃん。
これ…泣いてる?。
『わっ!?ごめん。何か変なこと言っちゃった?。ごめんね。泣かないで。』
『大丈夫よ~。瀬愛ちゃんは~今~嬉しくて~泣いてるから~。抱き締めて~あげて~。』
『え?ああ。嬉しくて…そうなんですね。傷つけてしまったのかと思ってビックリしました。』
瀬愛ちゃんがゆっくりと泣き顔を私の胸から離す。
『瀬愛のね。本当のパパとママはね…私の…赤い目を見て…化け物…って言ったんだ…。お喋りもしてくれなくなって…ご飯も作ってくれなくて…瀬愛のこと…み…見て…くれなく…なって…。』
『………。』
瀬愛ちゃんの過去。
『瀬愛ね…捨てられちゃったんだ…。』
私は無意識に瀬愛ちゃんを抱き締めていた。
もう強く、それはもう強く。
『良く頑張ったね。瀬愛ちゃん。』
『黄華お姉ちゃん?』
『瀬愛ちゃんは何も悪くない。辛い思いもいっぱいしたからね。だから、私で良ければいっぱい甘えて。』
『良いの?。』
『良いに決まってる!。』
『…うん。えへへ。黄華お姉ちゃん…お母さんみたい…。』
この娘は幸せになるべきだ。
本当の親が与えてあげなかった愛情をいっぱい受けるべき子だ。
私は瀬愛ちゃんを今まで以上に大切にするって今決めた!。
『黄華お姉ちゃん…大好き…。』
『良かったね。瀬愛ちゃん。』
『うん。』
瀬愛ちゃんと翡無琥ちゃん…こんな可愛い娘達が同時に抱き付いてきて私は凄く幸せです。
『黄華ちゃん~。これで黄華ちゃんも~。ちゃんとした仲間~ですからね~。』
つつ美さんが私達のことを見て嬉しそうに笑う。
『なるほど。母様は…。』
灯月さんは何かを理解したように頷いていた。
ーーーーー
『灯月さんは気になっている男の子はいるの?うちのギルドの娘達はたまに恋バナして盛り上がってるよ?』
『にぃ様です。』
『にぃ様ってことは閃君?。』
『そうです。私は、にぃ様の為なら全てを捧げることも厭いません。』
『そ、そんなに…好きなんだね。』
『はい。既におでこに口づけも経験済みです。次こそは…。』
『ほっぺにちゅーかな?。』
『結婚です。』
『わお。飛んだね。』
『ね~。灯月ちゃん~。面白いでしょ~?。』
『………。そ、そうですね。ちょっと心配になるレベルで…。』
ーーーーー
『大会の~ことだけど~。』
『あっ、はい。』
『皆に話せば解決するから~。大丈夫だよ~。』
『え?そうなんですか?』
『そ~。だから、もう悩まなくても~。大丈夫だよ~。』
『なんか…つつ美さんは凄いですね。何でも分かってるみたい…。』
『ふふふ。凄いでしょ~。』
この後も少しだけ女子会?は続いた。
つつ美さんは私が抱えていた不安を一瞬で消してくれた。
『この人には、勝てないなぁ。』
『そんなことないよ~。黄華ちゃんは~。とっても優しいから~。私よりも~凄いよ~。』
って言ってたけど。
自分のことは良く分からないや…。




