第306話 過去からの増援
ーーー睦美ーーー
黒牙。
仮想世界でギルド【黒曜宝我】の初代ギルドマスターだった男。黒璃の実兄じゃ。
世間的にはあまり良い噂を聞かなかった男。
白蓮に殺されたと聞いておったが、まさかコイツも転生していたとはな。
多少驚きはしたが、まぁ…トゥリシエラの話を聞いた限り不思議ではないか…。
奴の神技とワシの神技が衝突する。
他者の命を利用すること前提の能力。
許せん。よりにもよって人族…旦那様の種族を犠牲にしたじゃと?。
断じて許せん。この戦い、絶対に負けられん!。
『ぐっ…負けん、ぐ、ぐ………らあああああぁぁぁぁぁ!!!。』
全身に流れるエーテルを注ぎ、神技を強化。威力を後押しする。
その甲斐あって、ワシの最強の技は黒牙の神技を弾き、削り、霧散させながら漆黒の太陽ごと貫いた。
『馬鹿なっ!?。俺の神技が?。敗れただと?。』
『当たり前じゃ。貴様は一つ忘れているぞ?。ワシの能力を。』
『……………っ。ああ、成程。そういうことか。同じ性質だった故の敗北か。』
『そういうことじゃ。利用させて貰ったぞ。』
魂を燃やすことで己の力に変換するワシと黒牙の神具。
ならば、相手の燃えている魂を取り込み自分の力とすることも可能。
ワシはそう考え実行した。
奴が支配する炎を横取りする。
それを実行する方法。
それは、ワシ自身のエーテルを奴と奴が取り込んだ魂を無理矢理引き離す為に注ぎ込んだのじゃ。
奴の支配から解き放たれた魂を瞬時に吸収し続けることによって奴の神技を無事撃ち破った。
『油断した。まさか、そのような方法で俺の神技を突破してくるとは。しかし、次はない。』
『っ!?。これは?。奴の神具が復活したじゃと?。』
神技に貫かれ活動を一時的に停止していた疑似太陽が自転を開始する。
魂を…命を集めている?。
しかし、ここは僅かな草木が生える渓谷が連なる山の境。
生き物は殆んどいない。奪える命は無い筈。
『くくく。それはどうかな?。貴様の思う【命】とは生物だけか?。』
『何?。なっ!?。』
岩や石、僅かにあった草木が徐々に崩れ落ちていく。
渓谷を形成している岩肌までも次々と砂に変わり雪崩のように下へと流れ、同時に自然から発生したエーテルの輝きが黒牙の神具へと集められていく。
『自然界を形成している命…星のエーテルを吸収しているじゃと?。』
『くくく。そうだ。その物質が形を保ち、自然の働きを与えられている以上、紛れもない【命】だ。俺はそう定義し、神具にその情報を取り入れた。よって、この世界に俺が吸収出来ない命はない。形あるものは全ての命を奪われ砂へと還る。』
ワシの神技によって貫通した損傷も修復される疑似太陽。
『ならば、もう一度破壊してくれるわ!。神技!。』
再び神技を発動する為にリングを集める。
『それはダメ。もう、君の好きにはさせないよ。異界の神様。』
『なっ!?。』
突然、真後ろからの女の声に驚いて飛び引く。
不意打ちだった。
僅かに肩口を掠めたのは何者かの抜き手。
下手な刃物よりの鋭利な切れ味じゃ。
『早いね。避けられるとは思ってなかった。もう少しで殺せたのに。』
黒と赤を主体としたドレスに身を包んだ少女。
赤い髪と黒い瞳。その幼そうな外見からは嫌な気配のエーテルが感じ取れる。
雰囲気からして、こやつ、神獣か…いや、何かが違う?。
どちらかというと、神具のような無機質さを感じる。
『誰じゃ?。貴様?。』
『私達の計画に彼はまだ必要なの。だから、邪魔しないで。』
攻撃してきた。そして、黒牙を彼と呼んだ。
紛れもない。この女。ワシの敵じゃ。
『ほぉ、そうか?。ならば、貴様から倒すまでじゃ!。』
リングを広域に展開。
命を燃やす能力によって周囲を炎が包む。
敵の能力は未知数。しかし、事実上、二対一になった今様子見などと悠長なことはしてられん。
最初から命を奪う前提で攻撃を仕掛ける。
『無駄だよ。私には効かない。けど、あまり強い力を使うと邪魔が入るから。手加減。』
少女が軽く右手を持ち上げた。
すると、炎が…神具ごと切断され、能力が強制解除される。
『な…にを?。した?。いや、ワシは知っている。この現象…貴様…【絶】ったのか?。』
ああ。何度も見た。何度も聞いた。
忘れる訳もない。我等クロノ・フィリアで最も強いとされる神具の能力だ。
『貴様…絶刀か?。』
『うん。絶刀の映し身。貴女が知ってる絶刀さんのコピー。妹みたいな感じ…かな?。』
『まさか、二本目の絶刀がこの世界にあろうとはな。』
『うん。絶対神がマスターに私をプレゼントしたの。おまけに神獣としての能力も与えられたから自我もあるし、自分で動けるんだ。名前も貰った。エレラエルレーラ。宜しく。』
黒牙が絶刀…エレラエルレーラの元に降り立つ。
疑似太陽の照準はワシを狙ったまま、流石に神技を生身で受ければ不死鳥のワシでさえ無事では済まない。
何よりも、敵に絶刀か…。
閃の持っていた絶刀の能力をそのまま持っているのならばワシに勝ち目がない。
背中に嫌な汗が流れる。
『何故ここにいる?。』
『時間切れ。マスターの伝言。そのまま伝える。「不死鳥の一匹捕まえるのにどんだけ掛かってんだ?。早いとこ戻ってこい。一応、何人か送ってやるから。とっとと片付けろ。」だって。』
『………そうか。そろそろ動くのか…。仕方がない。ならば、手を貸せ。不死鳥はこの渓谷の麓に数匹確認した。あの異神を殺し、全員で掛かればすぐに終わるだろう?。』
『良いよ。マスターもそう言うだろうって言ってたから。手を貸すよ。』
どうやら、戦闘は避けられないようじゃな?。
奴等の目的は不死鳥…。ワシが殺されればフェリティス達の身にまた危険が及ぶ。
『そんなこと、絶対にさせん!。』
翼を広げ空に舞い上がる。
『無駄。貴女は完全に包囲されてる。』
『何っ!?。ぐっ!?。』
突然、警戒していなかった方角からエーテルの砲撃が放たれワシの身体を掠めた。
何じゃ?。何処から、何より誰じゃ?。
『あれ?。外しちゃったな。まだまだ、この神具を上手く使えないみたいだ。』
余りにも陽気に、静かに、軽い。そんな感覚を覚える青年が立っていた。
知らない顔。優しさすら感じる爽やかな青年だ。しかし、ワシに攻撃をしてきたとなると、間違いなく敵じゃ。
また…敵。これで三対一か…。絶望的な状況か…。
『なら、得意な方で。』
『っ!?。身体が!?。』
動かない?。
青年が掌をワシに翳すと、途端に身体の自由を奪われた。
『うん。こっちの方が得意だ。』
そのまま下へと腕を振るとワシの身体が地面に向かって引っ張られ叩きつけられた。
『うがっ!?。』
顔面から叩きつけられ激痛が全身に走る。
『ぐっ…。』
ダメじゃ。まだ、動けん。何なのじゃ。この青年は?。
『わぁ。もう再生してる。不死鳥って凄いんですね。はは、こんなに近いなら、今度は上手く当てられるかな?。』
『っ!?。な、な…んで…貴様が…それを…。』
笑顔で人差し指を向けてくる青年。
人差し指にエーテルが集中していく。
この青年…殺気がない?。いや、楽しんでいる?。遊びだと思っておるのか?。
何よりも、ワシを驚かせたこと。それは、青年の手の指にはめられた十の指輪。
見覚えがあるなんてものじゃない。
あれは、仲間の…豊華が仮想世界で扱っていた神具…【十の円環】じゃ。
『…持っているのじゃ?。それは豊華の神具じゃろう!。』
『豊華?。ああ、僕のお母さんのことですか?。』
『は?。お母さん?。』
豊華に子供がいたか?。
いや、欲しがってはいたが…いなかった。
良く子供が欲しいと賢磨に話、奴を困らせておった。
ならば、目の前の青年は誰じゃ?。
『仮想世界で僕のお母さんになってくれたらしい人だと聞いていますよ。一度お会いしたので間違ってはいないと思いますよ?。凄く驚いていましたから。ですが、僕には何のことだか?。僕にはそんな記憶ありませんし、正直、鬱陶しかったですね。ああ、自己紹介がまだでしたね。僕の名前は優と言います。これから宜しく…まぁ今から死ぬ方には必要ありませんが。では…。』
指先に収束したエーテルが一気に放たれる至近距離からの砲撃。
動かない身体では防御も儘ならない。
『あれ?。拘束が外れた?。っ!?。』
自身の砲撃に呑まれる優。
咄嗟に体勢を低くし防御するも、その身体は地面に激しく叩きつけられ数メートル転がった。
『へぇ。あの神具。転移機能もあるのね。しかも、敵の攻撃までも別のリングに繋げられるなんて。とっても便利ね。』
『冷静に解説しておる場合ではないぞ!。』
ワシはリングを繋げエレラエルレーラの目の前に転移し至近距離から炎を放射した。
だが、それも漆黒の炎によって掻き消された。
『お前こそ俺がいるのを忘れるな。』
『忘れる訳がなかろう!。』
黒牙の鎌が迫るが、その先端をリングに合わせ、奴の後ろに忍ばせていたリングへと転移させた。
『ぐっ!?。』
背後のリングから出現した自身の鎌が背中に突き刺さる。
魂を直接攻撃できる神具じゃ。暫く動けんじゃろう?。
『へぇ。器用ね。』
『自らの能力を喰らえ。』
『けど、私はどうするの?。』
エレラエルレーラの手刀。
速い!。避けられんか!。
首を傾け回避。頬が斬られるが致命傷は避けられた。
『凄い反応。けど、最初から勝ち目ない。』
『ぐっ…また…か。』
再び、身体の自由が奪われる。
そのまま冷たい地面に落ちる。
『酷いなぁ。僕初めてですよ?。自分の攻撃喰らったの。ねぇ、お姉さん。とっても痛かったんです。なので、もっと強いのをお返ししますね。』
優は多少負傷しているようだが、余裕を見せている。
十の円環。五指が広げられ掌がワシに向けられる。
あれは【第五の魔弾】か…。威力を上げたエーテル砲。先程の数倍の威力か…。
『あれ?。まだ、終わってないの?。』
『俺達を貶めた奴の屍でも見てやろうと思ったのによ。』
『っ!?。』
恐らく、この日一番の驚愕だったじゃろう。
自分でも呼吸が苦しくなるのを感じる。
記憶の奥底に仕舞い込んだ悔しさと虚しさが一気に解放されたような感覚に全身が震えた。
この期に及んで、更に敵の援軍が二人。
『お前達も…転生していたのか…。』
『ふふん。そうよ?。どう、消えたと思っていた相手が目の前に現れたご感想は?。嬉しい?。それとも悲しい?。それとも恐ろしい?。』
『貴様のせいで俺達は一度消された。だが、この通りだ。この世界に新たな命として地に足をつけることが出来た。生まれ変わったのだ。』
見覚えのある男女二人の顔。
忘れるわけがない。
トゥリシエラの話では、この世界に転生する仮想世界の住人だった異界人にはルールがあるらしく、それは、【命を落とした段階でレベル120以上】というのが条件と推測されていた。
彼等二人はワシと戦い。ワシの能力で子供の姿に戻りレベルが【1】に戻った。
故に仮説通りなら彼等が転生することは有り得ない。
だが、彼等がここにいる以上その仮説はハズレていたということか?。
『彗…修…。』
渇き、詰まりそうになる喉から必死に絞り出した声で彼等の名を呼ぶ。
『なぁ、教えてくれ。お前達はワシを恨んでいるのか?。』
『当たり前ね。私達が受けた屈辱。子供にされ奪われた自由と地位。お前には死をもって償って貰うわ。』
『ああ、本当は俺達で殺してやりたいところだが、今は役割を与えられた身だ。過去の因縁はお前の死を見届けることで良しとするさ。』
『………そうか。お前達は自由に生きられる世界で幸せにしてやりたかった。ワシが転生してからずっと心残りだった。仮想世界と共に消滅してしまったと思っていたからな。………お前達は、ワシをあんなに慕ってくれておったから。じゃが、それも、忘れてしまったか?。』
『何を、言ってるの?。子供になった私達を奴隷みたいに扱ってた癖に。』
『飯もロクに与えられず、まともな服も寝床も与えられなかった。それでも自由を与えてやりたかった?。幸せにしてやりたかっただと?。どの口が言っている!。』
『何を…言っておる?。ワシとも、つつ美や灯月達とも楽しそうに遊んでいたではないか?。』
『何それ?。そんな記憶ないんだけど?。』
『死が目前に迫って気でも狂ったか?。気が変わった。なぁ、エレラエルレーラ。』
『何?。』
『確実に異神を排除する為に俺達も神具を解放する。良いか?。』
『うん。構わない。』
『やったわ。なら、お言葉に甘えて神具!。』
二人が神具を発現させる。
『そんな…馬鹿な…。お前達が何故、それを?。』
持っているのじゃ?。
二人が発現させた神具。
修が出現させたのは、
代刃の【魔柔念金属】。
煌真の【戦神の円環】。
賢磨の【重力刀】の三つ。
彗が出現させたのは、
春瀬の【破邪聖光剣】。
基汐の【竜宝玉】
そして…ワシの【聖五獣装甲】の三つ。
かつて、仮想世界とゲーム内で共に戦場を駆け抜けた相棒。転生の際に別れた分身とも言える存在。
失われた神具が彼等の手の中にあった。
『ああ。お二人とも全てを出されるのですね。じゃあ、僕も出し惜しみはしません。』
優は【十の円環】の他に更に神具を取り出した。
光歌の【獣神魔弾爪填銃】。
機美の【重装機甲ホイール】。
全員が各々三つの神具を出現させた。
『ふふ。面白いものを見せてやろう。』
そして、新たな所有者を手にした神具は、所持者のエーテルを吸収し彼等の性質を取り込んでいく。
その者が最も扱いやすい形にその姿を変化させる。
三つの神具は一つとなり。新たな姿と所持者に合わせた在り方を得た。
『ははは。ぶっつけ本番だったがこれは良いな。自分の手に良く馴染むぜ。』
軽く振り下ろしただけで地面を砕く重さの大剣。そして、それを軽々と振り回す腕力。
これが修が手にした力…。
『ふふ。私のはアンタの神具だったんでしょ?。自分の神具で殺されるなんて幸せじゃない?。』
銀色の鎧。蝙蝠のような羽は堕天使を連想させる。そして、手には輝く宝石が散りばめられた聖剣が握られていた。
彗の神具…彼女と一体化したことで完全に見た目を変えてしまったワシの神具。新たな姿となり、その剣がワシへと向けられた。
『ふふ。自分達が使っていた神具で殺されれば本望ですよね?。』
優もだ。
身体よりも長い砲身を持つ槍のような銃を構え照準をワシへと合わせた。
『く…。』
『さようなら。お姉さん。』
『お前が俺達にしてきたこと、その身に刻んでやるよ!。』
『バイバイ。ムカつく女。』
万事休すか。
身動きは封じられたまま、三人分の神具の攻撃。とてもでないが、不死鳥の再生力を持ってしても抗えん。恐らく、核を破壊されての死。
ここまで…じゃな…。
ワシが死んだら、フェリティスや母様や父様達が酷い目に合わされる。
じゃが、この状況…ワシ一人では…悔しいが何も出来ることが残されておらん。
最後の抵抗で動かしたリングも黒牙とエレラエルレーラに押さえられた。
ワシには…もう…抗う術がない…。
旦那様…。
『助けて…。』
神具の攻撃が放たれかけたその時だった。
『ん?。エーテルの反応?。っ!?。皆、危ないかも。』
『は?。何を言って…っ!?。』
いち早く異変に気がついたのはエレラエルレーラだった。
彼女が淡々とした口調で仲間に危険を告げた瞬間。
『ゆ、揺れ!?。』
『地面が!?。』
『何だ?。エーテルが!?。形を保てねぇ!?。』
『地面だけじゃないわ!。空間も全部が振動してる!?。』
突然の地震。
平衡感覚すらも奪い、地面は揺れながら裂け次々と地割れが発生。
持ち上がる、沈む、動く、浮かぶ。
天変地異。
そこかしこの地面が不規則に揺れながら変化していく。
空中に逃げようにも、空間そのものまでも振動してるせいで身体が自由に動かない。
エーテルも形を保てず霧散し、更に肉体へのダメージまで与えてくる。
その場にいる全員が自由を奪われ、地面に叩きつけられた。
『こんなタイミングで厄災?。これも異神の力なのね。』
厄災。トゥリシエラに聞いた。
七つの厄災。それは、ワシ等の仲間が現象となっている状態らしい。
つまり、この地震の厄災は…。
これ程の力を持つ奴など一人しかおらんな。
『無華塁か?。』
ワシの呼び掛けに呼応するように更に揺れが大きくなる。
器用にもワシのいる場所だけ揺れが起きていないとこを見るに、この地震に無華塁の意思が宿っているのは明白じゃ。
『ワシを助けてくれたのか…。』
『仕方がない。一回しか使えないけど。使う。』
激しい揺れに耐え立ち上がるエレラエルレーラ。
その手には一振の刀。
見間違える訳はない。あの漆黒の刀身。
絶刀だ…。
『揺れを絶つ。』
『っ!。無華塁!。』
振り下ろされる絶刀。
その一振で揺れは途端に止み。先程までの騒音が嘘だったかのように静寂さが訪れた。
『はぁ…。厄災…強い…。打ち消すのだけで精一杯。』
無華塁が絶たれた。
敵は多少のダメージを負ったようだが全員が無事。現状、ワシの状況は何も変わっていない。ピンチのままじゃ。
『続き。異神にトドメさそう。』
『ああ。そうだな。』
『はぁ…興が削がれちまった。とっとと済まそうぜ。』
『そうね。身体が痛いわ。』
『はは。皆さんボロボロですね。』
五人がワシに近付いてくる。
『この人、何処を見ているのです?。』
『はは。これから殺されるからって空でも眺めてんじゃねぇ?。』
しかし、ワシの目には五人以外のモノが映し出されていた。
自分達を視界に捉えていないワシを不審に思った五人はワシの視線を追って頭上を見た。
『あ…これ、マズイかも。逃げないと。』
状況判断の速いエレラエルレーラが他の四人に撤退の合図を飛ばす。
四人も頭上の異変に気付き、顔を引き吊らせながらワシの前から四散した。
『行くよぉ!。私!。』
『ええ!。いつでも、主人!。』
極大の、それこそ目に見える空を覆い尽くす程の炎の塊が空中に出現。そして、その炎を出したであろう良く知る見知った異神が目に映る。
『私の家族を虐めるな!。【極神仙技】!。【炎天光陽】!!!。』
『あれは…智鳴か?。』
直径数キロの炎の塊。
まさに小さな太陽が地上に投下された。
その大きさ故に逃げ場などない。
どんなに黒牙達が逃走を図ろうとも逃げ切れない。
『おい。エレラエルレーラ!。あれぐらい斬れねぇのか?。』
『出来るけど。無理。やると状況悪化する。諦めて。』
『マジか!?。』
極大の太陽が迫る最中、反撃を試みるも攻撃は全て呑み込まれるだけ。圧倒的な大きさと質量に押し潰され、地面に衝突と同時に辺り一帯は大爆発の後、岩をも溶かす炎によって灼熱の地獄へと変貌を遂げた。
次回の投稿は10日の日曜日を予定しています。