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第30話 呪血の神

『あの日はぁ。白蓮様の命令でぇ。そちらのぉお薬ぃ。リヒトの実験を秘密裏にぃ。行っていたんですぅ。』


 白聖連団の雪姫が語る。

 黒曜宝我の初代ギルドマスター 黒賀が殺された日の出来事。


『あの時はぁ。まだ薬の存在をぉ。外部に漏らすわけにはいきませんでしたからぁ。白蓮様が秘密を知ってしまった黒賀さんを始末したんですぅ。』


 その日は、深紅の呪毒姫が誕生した日でもある。


『白蓮様がぁ。黒賀さんにトドメをさした後ぉ。ギルドに戻られましたぁ。そのタイミングでぇ。お姫様が現れたのですぅ。その場にぃ残ったのはぁ。薬の副作用で能力やスキルを使えないぃ。ただの人間状態のメンバー達でしたぁ。』

『何?。じゃあ、あのガキは能力を使えなくなった、ただの雑魚を皆殺しにしたってことか?』

『なにそれぇ。楽勝じゃん。そんなんにウチらビビってたってわけ?だっさぁー。』

『ふん。フタを開ければ、こんなものか。』

『その後に俺たちが到着したんだねー。タイミング悪ぅー。』

『じゃあ~ますます~姫の行動が~わからなくなっちゃいましたね~クロノフィリアとも~密会してるみたいですし~。』

『ひひひ。そんな前からこの薬の研究をしていたんですねぇ~。ひひひ。』


 各々が黒璃に対する疑心暗鬼な考えを口にする様子を眺め雪姫が笑う。


『これがぁ。あの日の真相ですぅ。お役に立てたようで何よりですぅ。それでは私はこれでぇ。失礼しますねぇ。』


 そう言い残し、雪姫は溶けるように姿を消した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『それじゃあ、今日の朝の連絡会はこれで終わりだね。皆お疲…。』

『ああ、ちょっと良いか?。』


 連絡会を終了しようとした私の言葉を墓屍が遮った。


『な、何かな?墓屍君?』


 感情の色が黒になっている。


『俺等はよぉ。てめぇが多くの能力者を実力で皆殺しにしたと思ってたから警戒して従ってたわけよ。』

『え?何の話?。』

『てめぇの兄貴。黒賀の野郎が殺された日だよ。気付けガキが!。』

『っ!?。』


 あまりの迫力に後退ってしまう。

 感情の色が真っ黒だった。


『結局さぁ。それも、ウチ等の勘違いだったってことを知ったわけぇ。マジでダサいよねぇ。実力も無い奴の下についていたとかさぁ。』

『詩那ちゃん?』


 感情の色が黒。


『俺も同意見だ。貴様は我々の上に立つ器ではない。』

『禍面君も?』


 黒。


『ひひひ。僕はどっちでも。ひひひ。良いので。ひひひ。』

『寝蔵?。』


 黒。


『ごめんねー。黒璃ちゃん。俺は誰が上でも全然良いんだけどねー。でも、君はー。ちょっと俺の役には立たなそうなんだよねー。』

『嶺音君?』


 黒。


『……お前は……いらない……。』

『苦蜘蛛…。』


 黒。


『ごめんね~。姫様ぁ~。クロノフィリアと密会してるのぉ知っちゃったしぃ~。どう考えてもぉ~。姫様はぁ~ここでぇ~は~不利みたいだからぁ~。』

『巴雁ちゃんまで?』


 黒。


 黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒


 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い


『だからよぉ。お前を今から消す。』

『け…消す?』

『わからねぇか。はっきり言ってやるよぉ!このギルドにぃぃてめぇはいらねぇんだよクソガキ!死ねやぁ!。』

『ひぃっ!いやぁぁあああああ!。』


 私は逃げた。

 走って、走って、走った。


『逃がさねぇよ!。禍面!。』

『ふん!!!。』


 身体に巻いていた鎖を解き、分銅付きの鎖が私の足首に巻き付いた。


『きゃっ!?。』

『ひゃははは。やっぱ雑魚じゃねぇか!。死ねよぉ!!!。』


 短刀を取り出した墓屍が私に斬りかかる。


『ひぃっ!。いやぁぁああ!。』

『死ねぇぇぇえええええええ!!!。』

『させません!。』

『ん!?』


 墓屍の短刀は弾かれ遠くに落ちた。


『聖愛…?。』

『無事ですか?黒璃ちゃん?。』


 十字架型の剣を持つ聖愛が私を守るように立っていた。


 ジャラジャラ…。


『え!?。』

『…と……た…。』

『暗君?』


 足首に巻き付いた鎖を外す暗君。


『二人ともどうして?』

『ふっ。言ったじゃないですか?私は貴女のことが好きですって。他ならぬ、私が愛した人の妹ですから。私にとっても妹なのですよ?。』

『…僕……好…って…ぃ…た。』

『二人ともぉ…。』


 涙が流れた。

 2人の感情の色は紫…不安だ。


『いつかは…こんなことになるんじゃないかと 不安 に思っていたんです。まさか今日だったとは、皆さん、即断即決ですね。』

『…黒璃…守…。』


『はっ。てめぇ等はそっち側に付くわけか?』

『理解し難い。』

『はぁ~。めんどくさいことしちゃってさ?あんた等も死ぬよ?』

『ひひひ。数の差は歴然ですね。ひひひ。』

『……死ぬ人数…増える…だけ……。』

『あらーらー。これは面白いことになったなー。』

『でも~何となく~最初から~わかってたかなぁ~。』


 全員が各々の武装を取り出す。


『ここは私たちに任せて逃げて下さい。』

『…行っ…て…。』


 私の壁になるように庇ってくれる聖愛と暗君。


『でも、それじゃ…2人が…。』


 殺されちゃう。


『大丈夫です。これでも三隠の2人です。六影達になど遅れは取りません。』

『う…ん。』


『でも…。』

『行って!。』

『くっ!。』


 私は逃げた。

 2人を置き去りにして…逃げたんだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『ああ、行っちまった。それで、この人数差で俺達を止めると?』

『ええ。貴殿方をあの娘の所には行かせない。』

『…止…る…。』

『ねぇ。コイツらも殺しちゃっても良いんだよね。マジでムカつくし。』

『構わん。』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 遠くの方で爆発が起きた。


『聖愛…暗君…。』


 ギルド内にいる1000人近くの人間が私を探して動き回っていた。

 どうやら、全て仕組まれていたことらしい。


『聖愛…。』


 聖愛はお兄ちゃんのことを愛していたと言っていた。恋人だったんだ。

 あの日、部屋を訪ねて来たのも私を心配してのことだったんだ。

 私…感情の色にばっかり囚われて、気持ち まで考えてなかった…。


『暗君…。』


 暗君も私を好きって言ってくれてたのに…私…疑って…。


 コツコツ。


『っ!?』


 びくっ!


 誰かが…こちらに近づいて来る。


『聖愛?暗君?』

『よぉ。こんなところに隠れてやがったな?クソガキ!。』

『ひぃっ!?』


 姿を現したのは、墓屍だった。

 その後ろに、禍面と苦蜘蛛。


『ど、どうして?ふ…2人は…?』

『はぁ?残りの奴に任せてきたわ。たった2人だ。そろそろ死んだ頃じゃねぇか?。』

『先程の爆発聞いたであろう?あれは、詩那の能力だ。塵も残らん。』

『そ…そんな…。』


 私は崩れ落ちた。

 やっと、私を受け入れてくれていた人に気付けたのに。

 何で…もっと…早く…。


『さてと、鬼ごっこタイムは終わりだ。苦蜘蛛。』

『…うん…。』


 苦蜘蛛の包帯を巻かれた身体から複数の包帯が飛び出し、あっという間に私の首と両手足に巻き付いた。


『っ!?』

『…暴れても…無駄…もう…動けない…。』

『哀れだな。もう助けてくれる者もいない。』

『…助けて…。』

『無駄無駄。諦めろって。』


 墓屍が真っ赤に染まった剣を取り出す。

 刃の部分がブツブツと蠢いている。


『クソガキ!喜べよ!てめぇの血はこの剣が吸収して剣の強化に使ってやるからよぉ。』

『い…いやぁ…。』

『だからさぁ。諦めろって。クソガキ!。ん?何だこれ?』

『あっ…それはダメ!。』

『ペンダント?一丁前に色気付いてよぉ?』


 首から下げていたロケットペンダントを奪われた。


『ああ?写真?ぷっ。お前、マジでブラコンかよ?キメェ!こんなもん大事にしてよ?ゴミじゃん。』

『あっ!?』


 ペンダントは放物線を描いて地面に落ちた。


『さて、ヤるか!。』


 剣を振り上げる。


『助けて…。』

『だからぁさぁ。しつけぇぞ!クソガキ!てめぇは死ねぇ!。』


 振り下ろされた剣。


『…助けて…矢志路君!。』


 ガキンッ!と剣は何かに阻まれ、その衝撃で墓屍が後退る。


『何んだぁ?』

『あっ…。』


 突然、首と両手足の拘束が壊され、一瞬、無重力みたいな体感のあと静かに地面に下ろされた。


『やれやれ。泣くのは 夜 だけにしろ。』

『え!?。』


 聞き覚えのある声。


『本当に大切なモノに気が付かないくらい、周りが見えていなかった。そして…気付いた時には既に遅かった。と…。良くある話だが…。』

『矢志路君?』

『だがな。お前は、心の底からの願いを俺に告げた。』


 矢志路君がマントを翻す。


『ほら、大切なモノに気付いたんだ。もう手離すなよ?』

『あっ…。』


 矢志路君のマント中にくるまっていたのは、気絶している聖愛と暗君だった。


『聖愛!暗君!。良かった、気を失ってるだけだ。』


 私は2人を抱き締めた。

 もう離さない。離してたまるもんか!。


『で?てめぇは誰よ?』

『我々に気付かれずにここまで侵入するとは。』

『……こいつ……。』


 墓屍、禍面、苦蜘蛛が警戒心を上げたのが分かった。


『貴様等とは初対面だが。俺は売られた喧嘩は買う質だ。』

『売られた喧嘩だぁ?俺等がいつ、てめぇに喧嘩売ったよ?てか、まず名乗れよ?。』

『ついでに言うと面倒なことも嫌いでな。これから死ぬ奴等にわざわざ自己紹介などするわけがないだろう?』


 矢志路君が私のロケットペンダントを拾い上げる。


『貴様が何者かは知らんが…たった1人で我等、黒曜宝我の最高戦力を倒すと?』

『……笑える…冗談……。』


 矢志路君が私の目の前まで来る。


『俺がいる限り。お前は、もう何かを失うことでの 孤独 を感じることはない。』

『…あっ…。』


 私の首にペンダントを着けてくれる矢志路君。


『ああ、ついでに、これもあったな。』


 矢志路君が何かを私の顔に押し付けてきた。

 柔らかい。これ…。


『パンタ!。』

『肌身離さず持っていろ。』

『うん。』


 再び、3人に相対する矢志路君。

 だが、更に後ろから現れる六影達。


『ごめ~ん。何か変なのにいきなり横槍入れられてさ。あの2人を取り逃がしちゃった。マジなんなの?』

『ひひひ。あっという間の出来事。ひひひ。何が起こったのやら。ひひひ。』

『いやー。あれにはビックリしたねー。いきなり壁まで吹っ飛ばされてさー。』

『びっくり~仰天だ~。』

『おっ!来たか!てめぇ等!。』

『あっ!裏切り者達じゃん?何でここに居んの?』

『あれれー。まだ姫様殺せてないんだねー。』

『ひひひ。そこの謎の人の仕業でしょうか?。ひひひ。』

『誰~この人~?。』

『さてな、1人で俺等に喧嘩を売ってきたバカってことくらいしか分からねぇ。』

『愚かにも1人で戦うらしい。』

『へー。じゃあコイツも殺しちゃって良いんだ?ちょうどイラついてるしぃ。良いよね?』

『で?そこの乱入者。一応優しさで聞いてやる。今すぐ後ろの3匹のクズを引き渡せばお前は見逃してやるぞ?。』

『ふふ。そんな気無いクセに、よく言うねぇ。』


 矢志路君が小さく笑うと私にまた近付いてきた。


『おっ!渡す気になったんじゃねぇ?』

『ひひひ。ひひひ。』

『マジで?バカじゃん?。』

『戦力差は明白。仕方がないことよ。』


 矢志路君が私の前に来ると顔を近付けてきた。


『え?え?顔近いよ…。』


 カッコいい…。ってそうじゃないでしょ私!


『黒璃。今から指を鳴らす。そうするとお前は暗示状態だった時の記憶を 全て 思い出す。』

『え?』


 パチンッ。

 その音が聞こえた瞬間、私の頭の中に矢志路君にされたことが川の流れのように思い出された。


『え!?契約?血?約束?私!?あれ?何これ?え?。』


 情報の多さに混乱状態だ。

 でも、1つだけ。

 矢志路君は私を守っていてくれていたことは、理解できた。


『血を貰うぞ?。』

『は…はい。ど、どうぞ…。あっ…。』


 私は自分の意思で首を差し出していた。


『ええ…。何あれ。キモいんだけど…。』


 矢志路君は血を吸い終わると私の首に残った牙の痕を消してくれる。

 そして、雰囲気が変わる。


 『ふふ。ははは。さて、やはり気が変わった。名乗るとしよう。』


 一隠六影が驚きの表情で後退する。


『は?何だコイツ…雰囲気が変わった?。』

『この魔力~ちょっと~マズイ気が~。』

『何コイツ、マジでウザいんだけど?。』

『ひひひ。凄い魔力だ。ひひひ。測定不能…ひひひ。』

『皆油断するな!。』

『……これは……マズイ……。』

『逃げ時かなー』


 矢志路君の身体から溢れる異常ともいえる魔力の奔流。


『ああ、良いぜ。雑魚はそうやってビクビクしてりゃ良いんだ?そして、覚えておけよ。今からお前らは死ぬ。このクロノフィリア No.18 矢志路の手によってなぁぁ!!。』


 名乗りに反応する面々。


『クロノフィリア!?』

『あれーこれってーマズイのでは?』

『こ…怖い…。』

『そうか、あのクソガキの密会の相手はお前か!。』

『くっ!何という魔力!。』

『マジなんなのよぉ!あり得ないんだけど?』

『マズイ~ですね…。』

『ひひひ。これは…ひひひ。』


 矢志路君の威圧感に及び腰になる面々。

 その時、何かを思い出したように墓屍が叫んだ。


『寝蔵ぁ!例の薬だ!持ってんだろ!早く寄越せ!。』

『はっ!?ひひひ。そうでした。ひひひ。僕らには切り札があったんでしたね!ひひひ。』


 寝蔵の懐から取り出された薬。リヒト。

 全員に渡され躊躇い無く服用されていく。


『ははは!こりゃぁすげぇえええええ!!!』

『凄まじい。強化だ!!。』

『ひひひ。レベル上昇を確認!ひひひ。全員レベル140ですぞ!ひひひ。』

『マジで!パナいって!!これ!!。』

『……これなら……負けない……。』

『あら~こんなに~凄いなんて~びっくり~。』

『すごー。これ最高ーだねー。』


 目に見えて分かる強化された面々。

 嬉しそうに絶叫し矢志路君を見下した。


『こりゃ。てめぇに勝ち目はねぇな!澄ましたツラしてっけど内心恐怖で縮こまってんじゃねぇか?ああ?』

『ウチ等がこんなに強くなるなんて予想外でしょ?』

『ひひひ。彼のレベルは恐らく120。ひひひ。140の僕たちとはお話にならないですなぁ!ひひひ。ひひひ。ひひひ。』

『逃げても~いいよ~逃がさないけど~。』

『形勢逆転ー。絶対絶命だー。御愁傷様ー。』

『これが、現実。無情なり。』


 それを見て楽しそうに笑う矢志路君。


『はは…ははははははははははは!!!。』


『何コイツ?イカれてんじゃないの?この状況で笑うとか…キメェ!。』

『きっと~あまりの~力の差に~壊れちゃったんですよ~。』

『へ!これが六大ギルドが恐れるクロノフィリアかぁ?』

『哀れ。』


 自分達の優勢を確信している黒曜宝我最高戦力達。


『ははは…はぁ。いや、すまんな。余りにも雑魚に相応しい台詞の数々に堪えられなかった。』

『はぁ?雑魚だぁ?』

『ああ。最後に1つだけ教えといてやる。さっき、売った喧嘩の話だがな?アレはもう俺の女なんだわ。』


 アレと言って私を指差す矢志路。

 え?私…矢志路君の女?

 矢志路君の?矢志路君の…矢志路君の!

 何でだろう…言葉は最低なのに凄く嬉しいんです。


『つまり、あの女に手を出した時点で貴様等は俺の敵ってことだ。全員死ね。』

『はっ!。』


 このタイミングで鎖を束ね棒状にした武器で攻撃を仕掛ける禍面。


『おいおい。まだ話してる最中だろうがよぉ?』


 禍面の攻撃は矢志路君の身体を勝手に避けて地面を抉った。


『とりあえず邪魔だ。血だけ残して消えろ。』


 バッンッ!と巨大な風船が割れるような音と共に禍面の肉体は弾け散った。大量の血液だけを残して。


『ひっ!?何よそれ…?。』

『雑魚…1人目。』


 矢志路君が血を回収しようと手を翳したところに。


『赤喰剣よ!血を奪え!。』


 禍面の残した血液を吸収する墓屍。

 禍々しい形の剣はより強力な魔力を帯び矢志路を斬り裂いた。


『へっ!やったぜ!ざまぁみろや!』


 矢志路の身体を肩口から斬り裂いた剣はドクドクと矢志路の血を吸っているようだ。


『矢志路君!。』

『あえて受けてみたが…この程度か…それにさっきから言っているだろう?まだ、話の途中だってなぁ。』

『なっにぃ!死んでねぇ!?。ぐぼっ?。』


 流れるような自然な動きで指を墓屍の首に突き刺す矢志路君。


『な…何を…ずる?。』

『ああ?血が吸われてっから補給してるだけだ。見たら分かるだろう。雑魚がっ!。』

『ば…ばが…な…。』


 そのまま干からびた魚のようになった墓屍。


『この雑魚剣もいつまで吸ってんだ?』


 墓屍の残骸を投げ捨て剣を指の爪で真っ二つに斬り、折った。

 折られた剣から吹き出る大量の血液が矢志路君に吸収されていく。


『雑魚…2人目。ああ。もう何話してたか忘れちまった。で?次は誰が死ぬ?』


 矢志路君から放たれた殺気に残りの五影が反応した。


『ひひひ。ひひひ。ひひひ。』


 丸々と太った身体で逃走を試みる寝蔵。


『ああ?逃げるだぁ?はぁ。話し聞いてなかったのか?雑魚が!お前等は全員死ぬんだよ!』


 指先を逃走している寝蔵に向ける。


『死ね。』


 指先から放たれる圧縮された血液の刃が寝蔵の頭部を貫通。即死だった。


『雑魚…3人目。』


『…こいつ…危険…。』

『~これは~野放しには~出来ません~。』


 大量の包帯で矢志路君を圧し潰そうとする苦蜘蛛と光の輪を作り矢志路君に投げ付ける巴雁。


『雑魚が粋がるな。』

『!?ぎゃ!?』

『え!?ぐっぁ!?』


 2人は背後から串刺しにされた。大量の赤い槍によって。


『な…何…で?』

『う…後…か…ら~?』


 何とか首を動かし後ろを確認する2人。

 2人が目にしたのは…寝蔵の身体から吹き出す血液が自分たちを貫いた槍に繋がっていたところだった。


『雑魚…4と5。』


『あらーらー。本当にピンチだー。ここは素直に抵抗かな。』


 嶺音が指を鳴らすと大量のスケルトンが召喚される。


『この隙にー逃げまーすー。』

『雑魚が雑魚を呼ぶんじゃねぇよ。』


 矢志路君が血で結界を作り私たちと詩那を取り込んだ。


『さて、1人は逃げたがお前はどうする?。』

『ひっ!?。こ…来ないで…。』


 結界に阻まれ大量のスケルトンは中に入って来れない。

 結界内に閉じ込められた詩那に逃げ場は無かった。


『おいおい。あんなに粋がっといて、自分がピンチになったら失禁って…いくら雑魚だとしてもよぉ?流石にカッコ悪くないかぁ?』

『兎針…紗恩………先輩……助けて…。』

『おいおい。命乞いか?。止めろよ。俺が悪役みてぇじゃねぇか?。』

『ぐっ!お前が…いなければ!!お前なんか!。死ねぇ!え!?ぎゃーーーーーーーーーーーーーー!!!。』


 ドゴーーーーーーーーーーン!!!。

 詩那が腕を叩くと周囲が大爆発を起こした。

 が、矢志路君が結界内にもう1つ小さな、人1人が入れるくらいの結界を作る。

 結界内に閉じ込められた詩那は、その中で自分自身が発動した大爆発で消え去った。


『塵も残らなかったな。血ぐらい残して死ね。雑魚6。あと1匹と…。1人も逃がさねぇ。』


 パチンッ!と指を鳴らすと巨大な血で描かれた魔方陣が広がり瞬く間にギルド会館の全てを包み込んだ。


『クロノフィリア…悪組に喧嘩を売った者共の末路だ。』


 その瞬間、陣の内部にいた私たち以外の全ての人間の肉体が膨張し破裂。大量の血液が飛び散った。

 1000人以上いた全てのギルドメンバーは起きたことも解らぬまま即死する。

 そして、全ての血液は一滴残らずギルド会館の建物の中空に集まっていく。

 建物を覆い尽くし太陽の光まで遮る程の巨大な血液の塊となって。

 その場にいた死体の残っていた六影の肉体も次々に破裂していった。


『ここでー隠れてーやり過ごそうかなー。』


 ギルド内の1室に身を潜めていた嶺音も例外では無かった。


『ん?あれーこれ?詰んでない?ぎゃーーーーーーーーーーーー。』


 瞬間的に膨張し破裂し血液を撒き散らした。

 嶺音が死んだことで大量のスケルトンが消滅。


『さて、終いだ。』


 ギルドにいた全ての人間の集められた血液が数え切れない量の槍となってギルドの建物に降り注ぐ。


『ははははははははははははははは!!!』


 それは、上空の血液が全て無くなるまで続き。

 その頃には建物は消えて無くなり、真っ赤な湖が作られていた。


 こうして、六大ギルドの1つが世界から消滅したのだった。

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