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番外編 恋人達との旅行 温泉旅館編③

『ふぅ~。良い汗かきました。』

『そうじゃな…食後の運動…というには些かハードじゃったが。』

『けど。楽しかった。旅行というのはこんなにも心踊るものだったのだな。いつもよりも皆との距離が近く感じるのも、また良い。』

『そうですね。風景も綺麗ですし空気も美味しい。ご飯も美味しかったですし。この温泉も最高です。クロノ・フィリアの皆さんと仲間になれて本当に良かったです。』

『だな。神さまと一緒にいられるだけでも幸せなのに、灯月や睦美と一緒に遊べるのも嬉しい。』

『ふふ。満足して下さって嬉しいです。これこそ私が思い描いた幸せの形。忙しい皆さんとのひとときの安らぎ。旅行を計画したのは正解でしたね。』

『最初は驚いたがな。いざ、来てみて大満足じゃよ。』


 寝湯に入り、四人で寝転びながら肩から背中、腰へと噴出される水圧で疲れた身体を癒していく。

 硝子で覆われた天井から眺める満天の星空が視界いっぱいに広がっている。


『灯月。さっきはすまんな。』

『ん?。何のことですか?。睦美ちゃん?。』

『いや、その…少し言い過ぎた。』

『そんなことないですよ。まぁ、にぃ様は私のですが。クロノ・フィリアは皆で家族です。親しき仲にも礼儀あり。ですが、お互いに胸の内はちゃんと言葉にしないと伝わりません。まぁ、にぃ様は私のですが。互いにぶつかり合うことで本音を言い合うのも時には必要なことなんですよ。まぁ、にぃ様は私のですが。』

『………そうか。なら、もう謝らん。閃はワシのじゃしな。』


 カポン…。


『だが、残念だ。神さまと一緒に、もう一度温泉に入りたかったのだが。』

『えへへ。そうですね。ですが、それではお兄さんに気を使わせてしまいます。私達の身体を魅力的って言ってくれましたし、折角の温泉ですから、お兄さんもゆっくりして欲しいです。』

『じゃな。閃も、一人の時間が必要じゃろう。』

『むぅ。襲ってくれても良いのですが…。いいえ、むしろ、今この状況でにぃ様を呼ぶというのはどうでしょう?。裸体の恋人が四人並んで仰向けに寝ているのです。にぃ様の鋼のように堅い強固な理性も一瞬で吹き飛ぶのではないでしょうか?。』

『灯月…お前、天才か!?。』

『はい。自負しております。』

『そ、それは…ちょっと、恥ずかしいですよぉ。』

『アホか!。こんな姿見せられるか!。』

『二対二ですか。ふぅ、嫌がるメンバーがいる時点で、しませんが…残念です。』

『閃は絶対に来ないと思うぞ。』

『そうですね。お兄さんは勘も鋭いですし。何よりもどうやって呼ぶんですか?。』

『それは…もう、裸でちょちょっと。』

『ちょちょっと!?。』


 カポンッ。


『そうです!。良いこと考えました!。』


 何かを閃いた灯月が勢い良く上半身を起こすと大きな胸が揺れた。


『揺らすな!。って、何を閃いたのじゃ?。』

『例のお酒です。』

『ああ。あれか。あれがどうしたのじゃ?。』

『ししし。あれを使ってにぃ様をベロンベロンに酔わせるんです。』

『ふむ。それで?。』

『私達も加減して適度に酔います。』

『ほぉほぉ。それで?。』

『後は、もう決まってるじゃないですか。にぃ様を誘惑するんです。』

『ゆ、誘惑ですか!?。』

『はい。かなり強いお酒です。にぃ様には沢山飲んでもらいましょう。それはもう皆で御酌するんです。にぃ様なら断らないでしょう!。そして、酔っていい気分になったにぃ様は…。』

『神さまは…。』

『私達の身体を、欲望のままに…。滅茶苦茶にしてくれるんです。』

『滅茶苦茶に…。きゃあああ…。恥ずかしいですね!。』

『灯月…お前…神か?。』

『はい、近年、神になりました。』

『よしっ!。私は乗ったぞ!。神さまにいっぱい飲ませるんだ!。そして、いっぱい滅茶苦茶にしてもらうんだ!。』

『はい!。八雲ちゃんならそう言ってくれると思っていました!。』


 固く握手をかわす灯月と八雲。

 そんな彼女達を見ながら睦美が溜め息をする。


『そう上手くいくかのぉ。』

『何となくですが。お兄さん。お酒強そうですよ?。』

『ワシもそう思う。勘じゃがな。』


 運動の汗を流し終え脱衣所へと移動した少女達。


『灯月お姉さんは本当に下着を着けていなかったんですね…大胆です。』

『はい!。いつでもにぃ様に襲って貰うために準備をしていました。脱衣卓球やりたかったです。』

『脱衣ゲーム好きじゃのぉ。』

『勘違いしないで頂きたいのですが、にぃ様とする脱衣ゲームが好きなんです。』

『勘違いなどしてないわ。』

『ふむ。睦美はサラシか?。珍しいな。』

『そうじゃ。昔からそうじゃった。まぁ…普通の下着もあるのじゃが…もごもご。』

『そうか…失言だったな。睦美の気持ちは良く分かる。夢伽は、キャミソールか可愛らしいな。特にレースの部分がオシャレだ。』

『えへへ。ありがとうございます。そういう八雲お姉さんは…だ、大胆な下着ですね。』

『そうじゃな。お主、Tバックとは…攻めすぎではないか?。』

『神さまが好きそうな下着を選んだんだ。私自身は何でも良いのでな。何なら神さまに会う前は下着すら殆んど持っていなかったくらいだ。興味なくてな。』

『興味とか、そういう問題なのでしょうか?。』

『今は下着の大切さも理解している。こんな貧相な身体の私でも下着を着ければ神さまが興奮してくれるからな。』

『絶対に間違っとる…。』

『お兄さんはむしろ普通にしてくれって言っていましたが…。』

『八雲ちゃん!。貴女の心意気素晴らしいです!。にぃ様を喜ばせたいと思う貴女の気持ち!。ふふ。二人で酔ったにぃ様を沢山誘惑しましょうね!。』

『ああ!。神さまが喜んでくれるなら何でもやるぞ!。共に滅茶苦茶にして貰おう!。』

『駄目じゃ。この二人…。』

『ああ。お兄さん。頑張って下さい。』


 浴衣を着た四人は部屋へと向かった。

 途中、灯月と八雲はお酒を取りに調理場の方へと向かう。

 睦美と夢伽はそのまま部屋へと向かうが、途中、旅館の庭にある大きな池のほとりで空を見上げている閃を見つけた。


ーーー


 汗を流すために温泉に向かった灯月達と分かれた俺は旅館の中を散歩していた。

 何度かスタッフとすれ違い軽く挨拶をするも、貸し切りだけあって静かな空間が広がっていた。

 売店のお土産を眺めたり、休憩所に置いてあるレトロな筐体のゲームで遊んだりして時間を潰していた。

 ふと、フラフラ歩いていると旅館の庭に続く扉が見えた。そこから中庭に行けるみたいだ。

 俺は興味本位で中庭へと歩みを進めた。


『おお。池だ。結構大きいな。』


 庭の中心には大きな池。

 等間隔に設置されたライトに照らされ、舞い散る落ち葉と相まって独特な雰囲気に包まれていた。

 耳に心地よい虫の声に。夜の涼しげな風。木々のざわめき。森の青い香り。そして、天を仰げば雲一つない満天の星空。

 全身が自然に溶け込んだような感覚。自分も自然の一部なんだと改めて実感する。


『旦那様。』

『お兄さん。』


 俺を呼ぶ聞き知った声に振り向いた。

 睦美と夢伽が近付いてくる。ほんのりと赤い頬や肌が妙に色っぽく感じてしまう。


『こんなところでどうしたんですか?。』

『ちょっとな。折角、旅館に来たから探索していたらここを見つけたんだ。見ろよ。綺麗な星空だ。本当に来て良かったよ。』

『ふふ。旦那様にそう言って貰えて嬉しいです。私も、いいえ。灯月も夢伽も八雲も同じ気持ちです。』

『はい!。お兄さんとの思い出が増えました。一緒に来てくれてありがとうございます!。』

『お礼を言うのはこっちだ。旅行の計画を立ててくれて、ありがとう。後で灯月達にもお礼を言わないとな。』

『そうですね。灯月が発端ですから旦那様にお礼を言われたらきっと跳び跳ねて喜びますよ。』

『ははは。かもしれないな。さて、そろそろ部屋に戻るか。』

『はい。』

『灯月お姉さんと八雲お姉さんは今、晩酌用のお酒を取りに行ってますよ。』

『酒か…。久し振りだな。どんな酒を用意したんだか。』

『ふふ。楽しみにしていて下さい。』

『ああ。』


 俺は二人の手を握る。

 指を絡めた恋人繋ぎだ。


『旦那様…。』

『お兄さん…。』

『戻ろう。』

『『はい!。』』


 俺達は部屋へと戻った。

 和式の部屋には布団が五人分敷かれ、寝る準備が整えられていた。


『旦那様。此方に晩酌用のおつまみです。』

『お、おお…。』


 睦美が用意してくれたのは、一口サイズのチーズや豆、肉に魚などなど。これ食べきれるのかってくらいの量がテーブルの上に置かれた皿に盛られていた。


『ふふ。夜は長いですからね。ゆっくり、沢山食べましょうね。』

『残しても持って帰りますので大丈夫ですよ。』

『そうか。なら、心配ないかな。』


 睦美が引いてくれた椅子に座る。

 右側に睦美が、左側に夢伽が座る。


『お待たせしました。ぐふふ。にぃ様!。ぐへへ。これがとっておきです!。』

『ああ!。リスティールでも最高級のお酒だ!。』


 ドンッ!。と、テーブルの上に置かれる酒瓶。


『伝説のお酒!。その名も【神をも酔わす!。リスティール最強の酒!。【神殺し】】です!。』


 か、神殺し!?。

 なんて、不吉な名前だ…。


『おお。もう用意が出来ているじゃないか!。』

『早速頂きましょう!。ぐふふ。ねぇ、にぃ様ぁ~。えへ…えへへ。いっぱい飲みましょうね。』

『はい!。神さま。沢山ありますので!。ぐびぐび行きましょう!。』


 正面の椅子に座る灯月と八雲。

 灯月のあの笑い…何かを企んでいるな。


『はぁ…。旦那様。お猪口です。お注ぎ致します。』

『あ、ありがとう。睦美。』


 睦美が全員分の器にお酒を注ぐ。


『それでは頂きましょう。』

『わぁ。私、お酒初めてです!。』


 神になった今、人間の時の、肉体、年齢、精神の枠組みから完全に外れてしまった俺達。

 今更、人間の時の年齢や縛りに従う必要はない。…ということで夢伽も人生初の飲酒に挑戦という訳だ。


『えへへ。にぃ様を酔わせて…滅茶苦茶…に。』

『滅茶苦茶。滅茶苦茶。』


 目をキラキラさせた灯月と八雲。

 ああ…キラキラというかギラギラしてて怖いんだけど。


『それじゃあ。皆。いくぞ。かんぱーい!。』

『『『『かんぱーい!。』』』』


 一斉に【神殺し】を飲む俺達。

 おっ。香りが強く、辛口で焼けるようだ。度数も高い。コクのある味わいだな。身体の芯が熱くなるのを感じる。

 これは酔えるな。無凱のおっさんも好きそうだ。


 てか、これエーテル混ざってないか?。

 純度の高いエーテルが液体の中で渦巻いているのを感じる。


 バタッ!。バタッ!。

 目を回しながら突っ伏す灯月と八雲。


『おっ!?。おいっ!?。大丈夫か!?。』

『あわ~。お兄ちゃんが~。いっぱい~。滅茶苦茶だぁ~。』

『神さまが~。滅茶苦茶~。』


 滅茶苦茶?。どゆこと?。意味不明なことを呟き続ける二人。

 神が…死んだ。恐るべし【神殺し】。


『あっ…これは味わい深いですね。クセが強い…ですが、不思議と飲みやすい?。今まで口にしたお酒とは違う感じがします。けど、美味しいですね。』

『不思議な味です。ですが、嫌いじゃないですよ。はふっ…これがお酒なんですね。思ったより飲めますね。』


 対して、睦美と夢伽は自分で器におかわりを注いでるし。


『はぁ。灯月と八雲は弱かったんだな。お~い。意識あるか~?。』


 ぺちぺちと二人の頬を叩く。


『だ、だめだよ~。お兄ちゃん~。えへへ~。灯月のおっぱいは~。逃げないよ~。』

『神さまぁ~。もっと~。ぺろぺろして~。』

『………何言ってんだ。コイツ等は…。はぁ…一口で酔い潰れるとかどんだけ弱いのか…。仕方ない。』


 灯月と八雲を抱き抱え敷かれた布団の上へ運ぶ。


『えへへ。お兄ちゃん…大好き~。』

『神さまぁ~。ずっと一緒~。』


 幸せそうな寝言を呟く二人の頬を撫でて戻る。


『旦那様。此方に移動しませんか?。』


 睦美が広縁を指差し俺を案内する。


『ああ。星空を見ながら飲む酒も良いな。そうしようか。』


 移動し用意された椅子に座る。

 睦美と夢伽がおつまみとお酒を持ってくる。


『旦那様。お注ぎ致します。』

『ああ、ありがとう。』

『お兄さん。あ~ん。して下さい。』

『あ~ん。』もぐもぐ。ぐびぐび。

『如何ですか?。』

『はぁ~。上手いな。』

『ふふ。良かったです。』


 俺と睦美と夢伽。

 特に喋ることもなく、ゆっくりとした時間が流れていく。

 器が空になると睦美が何も言わずに酒を注いでくれ、夢伽が適度におつまみを口に運んでくれる。

 俺…自分で何もしてなくないか?。

 二人に甘えっぱなしだ。何となく介護されてる気分…。


『ふぅ。美味しいですね。』

『はい。ふわふわしてきました。』


 両手で器を持ち、ゆっくりとした上品な動作でお酒を飲む睦美。酒で紅潮した顔が随分と艶かしい。


『旦那様ぁ。私の身体に満足して頂けていますかぁ?。』

『ん?。睦美?。酔ってるのか?。』

『はいぃ。旦那様ぁ。私…旦那様の為ならどんなことで致しますぅ。こんなぁ~。こともぉ~。しちゃいますぅ~。』


 そう言うと、睦美は俺の手を取り浴衣がはだけた自分の胸に直接持っていった。

 手のひらに広がる柔らかい感触。


『お、おい。睦美?。』

『私…灯月達みたいに…大きくないですけど…旦那様は…。』

『んん~。身体が暑いです~。服邪魔ですぅ~。』

『は!?。ちょっ!?。夢伽!?。』


 いきなり浴衣を脱ぎ始め、下着姿になる夢伽。

 しまった。仕掛けられた爆弾は、灯月や八雲だけではなかった。

 こっちはこっちで地雷だったか。


『旦那様ぁ。聞いていますかぁ?。もっともっと、命令して下さいぃ。どんなことでもぉ。旦那様の為にしますよぉ。色々とぉ。それはもう色々とぉ~。エッチなことでもぉ~。何でもぉ~。しますよぉ~。』

『むぅ。下着も暑いですぅ~。脱いじゃおうかなぁ~。えへへ。ふぅ~。暑いぃ~。』


 駄目だこりゃ。


『二人とも、すまん。』

『『あうっ!?。』』


 エーテルを流して二人の意識を刈り取る。

 そのまま二人は寝息を立て始めた。

 飲み過ぎだな。


『はぁ…。そろそろ俺も寝るか。』


 本当はもう少し飲みたかったが、一人で飲むのは寂しいからな。また、皆で飲める時にしよう。


 睦美と夢伽を布団に寝かせ。俺も横になる。

 俺も酔ってるみたいだ。すぐに睡魔に襲われ夢の中へと意識は沈んでいった。


~~~


 僅かに明るくなった窓の外。

 瞼に光を感じ、意識が覚醒する。

 目覚めてからすぐに違和感に気づく。


『動けない…。』


 おかしいな。全員が川の時で寝てた筈なのに。


『にぃ様…。すぅすぅ。』

『旦那様…すぅすぅ。』

『えへへ…神さまぁ…。』

『お兄さん…。すぅすぅ。』


 左に灯月。右に睦美。胸の上に夢伽。足…というか下半身に抱きつく八雲。

 全員の抱き枕にされていた。しかし、八雲はいつもその位置ですね…顔の位置が際どい。

 はぁ…。動けないなら仕方がないか…。本当なら少し早朝の空気を吸って来たかったけど。


『二度寝だな。』


 俺は意識を手放した。


『にぃ様。起きて下さい。朝ですよ。』


 旅館を出発する時間は朝の九時を予定していた。

 灯月に起こされた俺は周囲を確認。時刻は六時三十分を過ぎたくらい。

 既に着替え終わっている彼女達。

 灯月と八雲は昨日の晩酌用のお酒やおつまみを片付け、夢伽は全員の荷物を整理。睦美は全員の布団をたたみ、来た時と同じように移動させた内装を元の位置に戻していた。

 本当に何から何まで彼女達にやって貰ってしまったな。


『何か手伝おうか?。』

『いいえ。旦那様。もうすぐ終わりですので顔でも洗って来て下さい。』


 などと言われてしまったので、渋々、洗面台へ。

 顔を洗う終え部屋に戻ると、全員が部屋を出る準備を整えていた。


『お兄さん。朝御飯はバイキング形式みたいですよ!。楽しみですね!。』

『フルーツがあると良いのだが。』

『ふふ。期待して良いと思いますよ。八雲ちゃん。』

『参りましょう。旦那様。』

『ああ、行こう。』


 俺達は食堂へと移動する。

 そこには数多くの様々な料理が並び俺達の目を釘付けにした。

 各々で食べたいものを皿に盛っていく。

 俺の分は睦美が取ってくると言ってきたのでお言葉に甘えることにした。てか、睦美が譲らなかった。頑なに俺に皿を渡してくれず、強制的に椅子へと座らされる。

 何も出来ずに椅子に座りながら灯月達が料理をよそう様子を眺めていると、四人は次々に料理をテーブルの上に置いていく。


『こ、こんなに食えるかな…。』

『安心して下さい。旦那様。昨夜の夕食、晩酌時に食べたおつまみを含めて、そこからの時間経過による旦那様の空腹度を計算しました。丁度、もう…食べられない。と感じる程度で用意しましたので。』


 何それ。怖い。どうして睦美にそんなことが分かるんだ?。

 てか、それって限界ギリギリってことだよな?。


『ふふ。誰が旦那様の食生活を管理していると思っているのですか?。旦那様の…特に食生活に関することなら灯月にだって負けませんよ。』


 ええ…もっと怖くなった。

 睦美って、こんなキャラだっけ?。


『むぅ。悔しいですが。睦美ちゃんの配膳は完璧です。見事ににぃ様の空腹状態を把握しています。』

『くっ。私はまだその領域に至っていない。悔しい。』

『私もです。』

『旦那様の胃袋は誰にも渡しません!。私のです。』


 俺のだが?。


 皿に盛られた料理を完食した俺は、膨れた腹を擦りながら部屋で仰向けに寝転がっていた。

 計算されたかのように完食出来るギリギリの量。俺が苦しみで料理の味が分からなくなる一歩手前の量を用意した睦美。恐ろしや~。


『ふふ。旦那様。どうです?。』

『うん。気持ちいい。』


 そんな様子の俺を微笑みながら睦美は俺の足をマッサージしてくれている。

 流石に、朝風呂する時間は無かったのだが、僅かに残った時間を部屋で寛ぐことにした俺達。

 荷造りは終わり、後はチェックアウトの時間である九時までのんびり過ごすだけだ。


『神さま。気持ちいいですか?。』

『ああ、極楽だよ。』

『そうですか。痛かったら言って下さいね。』


 八雲は俺の手のひらをマッサージ。


『はぁ…夢伽ちゃんは、肩もみ上手ですね。マッサージチェアよりも的確に凝りを攻めています。ああん。そこ。良いです。もっと~。』


 灯月は夢伽に肩を揉まれていた。


『灯月お姉さん。ちょっとエッチです。』

『んっ。だって…んっ。夢伽、ちゃんが、あんっ。上手、なので…声が出ちゃう…んっ。』

『ふふ。なら、手加減無しです。弱いマッサージよりも強く短い時間でピンポイントでほぐした方が効果的なんですよ!。』

『え?。ちょっと?。夢伽ちゃん?。』

『え~~~い。』

『んきゃあああああぁぁぁぁぁ!?!?。』

『滅べ!。巨乳!。滅べ!。巨乳!。』

『痛いです!。痛いです!。やめて~。』


 暴れる灯月を笑顔でマッサージし続ける夢伽。


『俺にはアレやめてね。』

『しませんよ。旦那様には気持ちよくなって貰いたいですから。それにあれは報いですから旦那様は気にしなくても大丈夫です。』

『神さまはリラックスしていて下さい。』

『ああ…ありがと…。』


 暫く、灯月の悲鳴を聴きながらリラックスしていた。


『どうです?。楽になったと思いますが?。』

『は…はい。とても軽く…なりました…。で、ですが…少々…う、ごけません…。』


~~~~~


『さて、皆。忘れ物はないか?。』

『はい。問題ありません。』

『よし、じゃあ。』


 俺達は旅館の外に出て一列に並ぶ。

 旅館に対し全員で頭を下げた。


『『『『『ありがとうございました。』』』』』


 楽しませて貰った感謝を伝える。


『さぁ。帰ろう。家に帰るまでが旅行だからな。』

『はい。にぃ様。帰り道も楽しみましょう。』

『はい。旦那様。』

『楽しかった!。また来たいな!。』

『そうですね!。また…今度は皆で来ましょうね!。』

『そうだな。また、来よう。』


 各々に思い出を作り俺達は帰路につく。


~~~終わり~~~ 

次回の投稿は18日の木曜日を予定しています。

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