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第262話 白国での再会と新たな仲間

ーーー聖愛ーーー


『白蓮っ!。』


 苛立ち。怒り。屈辱。怨み。憎しみ。

 様々な負の感情が入り乱れ、混ざり合った表情を浮かべる黒牙。

 その視線は一点に。仮想世界で自らを殺した男。白蓮(ハクレン)に向けられている。


『ふふ。君は相変わらずだね。あの時のままだ。何も変わらない。君の中には君しかいない。』


 真っ白い独特な装飾が施された軍服。

 純白のマントを靡かせ、白く輝く聖剣を握る。

 白髪と黄金の瞳を持つ美形な男子。


 白蓮。

 仮想世界で最大のギルド。白聖連団のギルドマスターであり、クロノ・フィリアとの全面対決の際、閃さんに倒された。

 神々が支配する世界で、仮想世界で生きる人々を守るために非情に振る舞い、あらゆる手段を用いてクロノ・フィリアを追い詰めた人。


 実際にこうして会うのはゲーム時代以来ですね。

 あの頃はプレイヤーとして、そして、敵対ギルドとして戦っていましたが、私との接点は余りありませんでした。


『聖愛さん。今、傷を治しますね~。』

『動かないで下さい。』


 私の身体を支え治療を始める2人の少女。

 白蓮の側近だった方々。白聖連団の時は幹部でしたね。

 銀さんと白雪さん。

 どうやら彼女達も白蓮と共にリスティールに転生したようですね。


『こうして、また自らの手で殺した相手に出会うなんてね。不思議な感覚だよ。感想としては…あまり、嬉しくはないかな。』

『ちっ……………ふぅ…。ああ。俺もだ。だが…そうだな。俺は嬉しいぞ。これで漸くあの時の復讐が出来ると思うとな。良くも俺を殺してくれたなぁ?。白蓮?。』

『君の思想。自らを中心として他者を利用するやり方。最終的に自分が勝者になれば良いと、その為の手段として他者を駒として利用する。僕はそのやり方が気に入らなかった。君のその考えは必ず僕の計画の障害になっていた筈だからね。』

『ふっ。聞いたぞ?。結局、お前の計画は無駄に終わったと。必死に計画を立て、念入りな準備を行ったのにも関わらず、最後には敗北で終わったそうではないか?。どんな気分だ?。』

『敗北か。ああ。僕は敗北した。負けたんだ。クロノ・フィリアに。閃さんに。けどね。敗北はしたけど、失敗はしなかった。神の本当の目的を知った今、僕の行動は間違っていなかったんだと実感したよ。』

『………貴様の後ろに…誰がいる?。その核。誰から貰った?。』

『君に教えると思うかい?。』

『………だろうな。なら、力ずくで聞き出すか。』


 黒牙が翼を広げた。

 仮想世界での種族のままなら黒牙は【八咫烏】です。漆黒の羽が月明かりに照らされて美しさと共に不気味さも感じさせる。

 禍々しくも神々しいエーテルが翼に宿る。


『貴様の力。見せて貰う!。』


 高速の急降下から硬化し刃とかした翼を伸ばし白蓮へと斬りかかる黒牙。


『そうだね。未知の敵に対して全力は出せないだろう。君の性格なら特に。故に、その程度では無駄だよ。僕には届かない。』

『っ!?。これは!?。クティナの!?。』

 

 あれは!?。

 白蓮の周囲に展開された何重にも張り巡らされた多重結界。クティナさんが、ゲームのラスボスだった時に使用していた防御スキルです。

 それが黒牙の翼を防ぎ…いえ、弾いた!?。


 どうして白蓮がアレを?。


『貴様…どういうことだ?。何故、貴様がそのスキルを持っている!?。』


 閃さんに聞きました。

 クロノ・フィリアと白聖連団の戦いで、白蓮は複数の強化を自らに施し圧倒的な力を手に入れました。

 クロノ・フィリアの皆さんのようにリスティナさんの恩恵を受けてレベルが150になったのではなく、己の立場を利用した情報収集から始まる。複数の研究や実験で生み出されたアイテムと、ゲーム時代に手にしたクティナさんを討伐した際のドロップアイテムをフル活用し、半ば、裏技のような方法で手にした神へと到るチケットを自力で入手した白蓮。

 レベルは170だったと聞いています。


 その力は…転生した後も失われていなかった…ということでしょうか?。


『君が仮想世界の住人…異界人でありながら神眷者となった特別な例外であるように。僕もまた例外さ。仮想世界で死に、この世界で転生した僕は前世で獲得していたクティナの能力を受け継いでいた。とある神曰く、自らの力で神の座へと到った者に世界から贈られたギフトだと聞いた。はは。要は本来この世界の神であるクティナの役割を引き継いだってことらしい。【神獣の神王】としてではない。ゲーム時代の設定であるリスティナと対を成す【終末神】としてのね。』

『お前にそれらの情報を与えた神。何者だ?。少なくとも、【絶対神】を頂点とした神階には所属していない神だろ?。』

『まぁね。けど、彼女は傍観者希望のようだよ。この星の戦いを見守ることに徹すると言っていたし。何より、孫の顔が見たいだけと語っていた。ふふ。この星の神様は人間味が強いよね。』

『はぁ…。まぁ良い。気が失せた。敵に貴様がいることが分かっただけでも、今宵の行動は無意味ではなかった。』


 踵を返す黒牙。黒い翼が広がる。


『逃げるのかい?。』

『そう思うなら勝手にしろ。今宵の目的は聖愛を殺すことだったが、それ以上の目的を定めることが出来た。お前は必ず俺が殺す。そう遠くない未来で再び相見えよう。』


 複数の羽が夜空に舞い散り黒牙の姿が闇へと消えた。


『やれやれ。退き際は間違いないか。要心深いのも相変わらずだね。仮想世界で僕がどれだけ君を表に出すために苦労したことか…。』


 黒牙…元恋人を殺すことよりも、自らの命を奪った白蓮に対する憎しみの方が強い…ですか。

 悲しいですが…貴方らしい。今にして思えばそういう一面は見え隠れしていましたし…。

 あの幸せだった日々は嘘で塗り固められた仮初めの日常だったのですね。


『うっ…あっ…。ああ…。うっ…。』


 気付けば私は泣いていました。

 思い出が粉々に砕け崩れていく、私は何のために、彼を愛し、彼の死を…あの時…あんなに泣いていたのでしょうか。

 黒牙…私も所詮は彼の欲求を満たす為だけに利用されていただけの存在だった。

 あの笑顔も…。優しさも...。全部、嘘。

 黒璃ちゃんに向けていた愛情も、慈しみも…。それも、全部が嘘。

 黒璃ちゃんもこんなことを知ってしまえば泣いてしまいますね…。


 ああ。ご主人様………矢志路さんに…会いたい…。

 今すぐにでも抱きしめて欲しい。


ーーー


『す、すみません。取り乱しました。』

『大丈夫だよ。えっと…聖愛さん。だよね?。【黒曜宝我】の幹部だった。黒牙とは…同じギルド。そして恋人だったんだろ?。黒牙の危険性は彼の近くにいるもの程気づきにくい。厄介なモノだった。そういう性質だったからね。君の想いが本物だったことは理解できるよ。』


 白蓮は私に歩み寄ると首輪を調べ始めた。

 傷は白雪さんが治してくれ、銀さんはボロボロになったシスター服を縫ってくれている。


『貴方方はどうして?。』

『それは後で説明するよ。まずは合流だね。』

『合流?。』

『その前に、少し失礼するよ。動かないでね。』


 徐に剣を振る白蓮。

 すると、私を縛っていた首輪が真っ二つに割れて地面に落ちた。


『首輪がっ!?。』

『これで君は自由に能力を使えるよ。ああ、タイミングもバッチリだね。君の仲間だ。』

『え?。』


 白蓮の後方から歩いてくる3人。あれは…。


『仁さん!?。春瀬さん!?。』

『やあ。聖愛さん。災難だったね。転生先が敵地のど真ん中だったなんてね。』

『私達がもっと早くに見つけることが出来ていれば辛い思いをされることもなかったでしょうに、申し訳ありませんわ。』

『い、いえ。こうして出会えたことで十分です。助けてもくれましたし。』

『変わらないね。聖愛さんも。また、会えて嬉しいよ。』


 前世と変わらない仁さんの笑顔と雰囲気。

 経営していた喫茶店で見たあの時のまま。落ち着いた雰囲気が私を安心させてくれる。


『彼女も無事だよ。ほら、そろそろ離してくれないかい?。』

『…わ、私が手を掴んでいるのは…お嫌ですか?。』

『そんなことないよ。君の…その…顔は…そうだな…。うん。少し複雑な感情が芽生えてしまうので困ってしまうんだ。』

『ふふ。仁様の素晴らしさに気付くとは、貴女も見る目がありますわ!。ですが、右側は渡しませんわよ!。』


 見ると、レティアさんが顔を赤らめたまま仁さんの腕の裾を握っていた。

 良かった…無事だったのですね。


『レティアさん…。』

『っ!?。聖愛さん!。』


 レティアさんは私と目が合うと勢い良く抱きついてきました。彼女の温もりが全身を包んでくれているみたいです。


『ご免なさい。助けられなくて…騙されて…危険な目に遭わせてしまって…。』

『レティアさん…。いいえ。結果論ですが。お互いに助かったのです。こうして仲間の方々にも再会できました。これもレティアさんが私をここまで連れてきてくれたお陰です。だから、泣かないで下さい。』

『聖愛さん…。はい…。…本当に無事で良かった。』


 レティアさんの瞳から落ちる涙を拭ってあげる。

 少し照れた表情の彼女は嬉しそうに笑った。


『それにしても、仁さんと知り合いなのですか?。先程の様子。初対面にしては距離が近かったような。』

『はぅ…そ。その…前世の知り合いの方に似ていまして…あ、あの…人違いというのは話して理解はしているのですが…やっぱり、雰囲気というか何処か知り合いと重なる部分がありまして…恥ずかしながら、少し、安心していました…。』

『そうなのですか?。前世の知り合いと…。仁さんも少し様子がいつもと違っていたようですが?。』

『僕の場合も彼女と似た感じだよ。昔の…いや、隠す必要はないかな。彼女が死んだ僕の妻にそっくりだったから。無碍に出来なくてね。彼女を助けた理由でもあるし、性格は違うけど、妻に似ているだけで放っておけなかったんだ。』

『仁さんの奥さん…ですか…。』


 亡くなっていることは仮想世界での生活の中で聞いていました。

 光歌さんのお母様のことですし、仲間であっても他人である私が、あまり表立って話す内容でもないですね。


『さて、と。白蓮君。彼女をありがとう。僕達だけじゃ手が足りなかったから助かったよ。』

『いえ。僕も貴方方の力になりたくて行動していましたので問題ありません。むしろ、かつて敵だった僕を何の迷いもなく仲間として迎え入れ、接してくれたことに感謝します。』

『前世での君の最期は閃君に聞いているよ。彼も言っていた。次、出会うことがあれば、アイツは仲間だってね。僕はその閃君の言葉に従っただけさ。』

『そうですか…彼が…。』

『銀ちゃんも、白雪ちゃんもだ。灯月ちゃんと代刃ちゃんから聞いていたよ。あの時は互いに敵だったけど、最期には友達になれそうだったって。君達さえ良ければ、この世界では仲間になろう。』

『…はい。仁様…宜しくお願い致します。』

『あらあら。楽しくなりそうですね~。』


 あの白蓮達が仲間になった。

 これ程、心強いことはありませんね。


『さて、積もる話しもあるだろうけど。取り敢えず場所を変えようか。僕達が使っている隠れ家があるんだ。そこまで移動しよう。』

『皆様。ご案内致しますわ。』


 その後、仁さんと春瀬さんに連れられて古びた地下室まで移動した。


ーーー


 地下室の隠れ家に移動した後、仁さんは全員分の飲み物を用意してくれました。


 私。レティアさん。仁さん。春瀬さん。白蓮。銀さん。白雪さん。


 集まったメンバーが各々の椅子に腰を下ろしたのを確認し、一息つくと、仁さんは静かな声で話し始めました。


『さて、まずは各々がこの世界で目覚めてからのことを簡単に教えてくれるかな?。』


 私はレティアさんと転生してからの話を伝えました。

 自分の状況も分からない拷問の日々とレティアとの脱出。

 レティアさんもまた、別の世界の転生者だということを説明していました。


『僕達はさっき話した通りです。仁さんと同じ。自分の身に起きた状況の確認と情報収集。仁さんの話を聞く限り俺達が死んでから仁さん達がこの世界に転生するまでに少なくとも2、3年は経過しているみたいですね。僕は信頼できる仲間を探すために白国を旅していました。運良く銀も白雪も白国に転生していたので合流することが出来たんです。』

『僕も情報収集がメインだった。この場所を拠点にして白国や仲間の情報を集めていたよ。神具や僕の身に起きた変化については白蓮君に聞くまで分からなかったけどね。一般人からの情報では限界があったんだ。』

『僕がエーテルの存在や神具のことを知ったのは、とある神に出会ったことが切っ掛けです。』

『とある神?。』

『ああ。この世界の勢力図は現在こうなっている。』


 白蓮は予め用意してあった紙に何かを書き始めた。


 【絶対神】と頂点に大きく書かれたピラミッド型の図。

 その下には仮想世界で戦った神々の名が記されていく。

 ピラミッドから下に矢印が引かれ、そこに【神眷者】と書かれた。

 数は不明だが、このリスティールの住人が住む場所。仮に【下界】と呼ぶとし、下界に干渉できない神々の代わりに私達、クロノ・フィリア…この世界では異神と敵対する存在として神々が力を与えた者達がいる。それが神眷者と呼ばれる人達。

 レティアさんがその1人です。


 神々と神眷者。神眷者の大半はリスティールにおける七大国家の重鎮が占めている。つまりは、七大国家が敵ということです。


 異神。クロノ・フィリアと白蓮達のように仮想世界での出来事を得て仲間になってくれた方々。白蓮達は【異界人】と呼ばれているみたいです。


 そして、その2つの勢力とは別にもう1つ。

 どこの勢力にも属さない。数体の神がいる。

 白蓮が出会ったのはその内の一柱。

 絶対神や創造神に並ぶ【最高神】の一柱。


『彼女は自分のことを【恒星神】と呼んでいたよ。僕達の戦いに干渉することはせず、傍観者希望だと語っていた。僕に様々なことを教えてくれたのは単なる気紛れだと言っていた。ああ、けど、こんなことも言ってたよ。』


「知らぬ間に、認識していなかった子やら孫が増えておる。お主もその一人だからな。今回だけ歓迎の意味も込めて助けてやるわ。」


『だってさ。何者なんだろうね。彼女の後ろには他にニ体の神が立っていたから他にもいるのかもしれない。何にしても彼女達に関しては現状は何も分からないままかな。』

『リスティナさんの関係者かもしれないね。この世界の住人は彼女から生まれたんだし。』

『敵でないことを祈ろうか。クティナの力を手にした僕でさえ、彼女の前に立った瞬間に 勝てない と理解させられてしまった。熟、神という存在は僕の予想の遥か上にいる。』

『そうだね。敵にせよ。味方にせよ。現状の僕らでは戦力不足だ。白蓮君達はこれからどうしたい?。』

『僕は貴方方と共に行動するためにクロノ・フィリアのメンバーを探していた。かつては敵として立ちはだかった僕らだけど。この世界では貴方方の力になりたい。』

『そうか。うん。心強いよ。僕はクロノ・フィリアの副リーダーとして君達を歓迎しよう。きっと無凱や閃君も同じ決断をすると思う。』

『良かった…うん。ありがとう。仁さん。』

『春瀬と聖愛ちゃんもそれで良いかい?。』

『ええ。問題ありませんわ。』

『は、はい。私も。』


 かつての強敵が味方になる。

 これ程心強いことはないでしょう。


『銀ちゃんも白雪ちゃんも。問題ないかい?。』

『はい。私は白蓮様の指示に従います。何処までも共にいると約束しましたから。』

『私も~。問題ありません~。ふふ。クロノ・フィリア…かつては敵でしたが、今度は本当に仲間になれるのですね。嬉しいです。』

『うん。宜しくね。』


 銀さん。白雪さんが同時に頭を下げた。


『それから、レティア…ちゃん。』

『は、はい!。』


 仁さんの呼び掛けに緊張を隠しきれない様子のレティアさん。

 顔が真っ赤に染まって、呼吸も荒くなっている。

 綺麗な動作で跳び上がり美しくも感じる正座を披露してくれた。


『君の話を踏まえての提案なんだけど。どうかな?。僕達と行動を共にしないかい?。君が聖愛ちゃんの脱走を手引きしたことは、おそらく彼等の口から瞬く間に白国に広がってしまうと思うんだ。こう言ってはなんだけど、君がいた大聖堂に帰ることは難しいと思う。』


 レティアさんの行動は明らかな裏切り行為。

 このまま大聖堂に戻った場合、シスター達に拘束され、私達の情報を聞き出す為に拷問されることは目に見えている。


『………そうですね。仁…さんと一緒にいたいです。』

『そ、そうか。うん。安心して君は僕が守るから。』

『っ!?。う、嬉しいです…。』


 本当に嬉しそうに笑うレティアさん。

 彼女の知り合いに仁さんが似ていると言っていましたが、今のレティアさんの雰囲気で分かってしまう。

 この世界に独りで転生して、見ず知らずの場所での生活を強いられたレティアさん。きっと凄く心細かったでしょうし、寂しかったのでしょう。

 仲間と呼べる人もいなかったでしょうし、今回の件で、心から信頼していたセラさんは本来存在しない催眠によって見せられていた幻だったのですから。彼女の心的苦痛は想像に難くない。


『それで、仁さん。これから僕達は何をしますか?。』

『そうだね…白国にはまだ見つかってない僕達の仲間がいると思う。それに白国を野放しにしてはいけない気がするんだ。これみたいにね。』


 仁さんの手には私の首につけられていた壊れた首輪。


『彼女が犠牲になってしまった。それが、事実なら神眷者には僕達を死に至らしめる能力と実力を持った者がいる。さっきの2人、そして黒牙。今回は退いてくれたから良かったけど、そう何度も戦闘を回避できるとも思えない。戦いになれば…うん。僕でも想像できないな。どうなるか…。』

『ええ。神々が各々に神眷者を生み出したのならばその数は十人以上。既にレティアさんを含め3人はこの白国に居ることが分かっている。』

『そう。僕達は何としても彼等より先に仲間を探し出し合流する必要があるんだ。何も知らない仲間に危険が迫らないように。』


ーーー


 仁さん達との会話が終わり、私は一人。

 外の空気を吸いに地上に出ていた。


 首輪が外れたことで身体からエーテルが溢れている。

 魔力よりも強力な力。改めて、自分が神になったことを理解する。


『この星にも月のような星があるのですね。』


 空を見上げると九つに光る星が輝いている。


 ご主人様、矢志路さん…。黒璃ちゃん…。暗ちゃん…。

 私が最もお世話になった大切な人達。

 種族によって転生先は変わる。種族を考えると多分、3人は白国にはいない。

 転生した際に、ご主人様との繋がりも切れてしまっています。


『3人とも…どうか。ご無事で…。』


 3人だけではありません。


『クロノ・フィリアの皆さんも…。また…皆で…一緒に。』


 私は目を閉じて静かに涙を流した。

次回の投稿は23日の木曜日を予定しています。

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