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第258話 聖愛の転生

 私は………ええ。分かります。覚えています。

 名前は…聖愛(セイア)です。

 元 黒曜宝我所属。現在は、紆余曲折を経て、クロノ・フィリアに所属していました。


 私は…ああ、そうです。

 死んでしまったのでした。

 自分に出来ることは出し尽くした。

 それでも命を落としてしまった。

 神との戦いで殺されてしまったのですね。

 クロノ・フィリアの皆さんは?。

 黒璃ちゃんは?。暗ちゃんは?。

 ご主人様は無事でしょうか?。

 何よりも…何故、私は意識を失っていないのでしょうか?。

 いいえ。それもそうですが…。私は今、横たわっている?。身体の感覚もあって…。

 これでは、まるで…生きているみたいな。

 現状が良く分かりません。

 早く起きて確認しないと…。


 そして、私は目を開け…立ち上がった。


~~~


 白国 ホシル・ワーセイト。


 場所 白国の街道。


 多くの種族が行き交う活気溢れる長く広い道。

 多くの商店や露店が連なり賑わっている。

 続く道の先には高く聳える白国の象徴である塔が建っており、更にその先には白国の王が住む王城へと延びる煉瓦状の道がある。


 街道に、長い長い人の列が出来ていた。

 多くの人々がその列を眺めていた。

 いいえ、皆さんの視線の先には私がいるのは確実ですね。

 大きく街道の両端に分かれた2つの人々の列。

 間を通るのは、何人もの修道服に身を包んだシスター達。


 その中央。中心。


 多くの住人の目をくぎ付けにするのは、拘束された私の姿。

 首には機械的な首輪をつけられて、両手には手枷。足には足枷と鎖で繋がれた鉄球。

 全身が日々の拷問による傷だらけ。

 一枚布に近い薄い服を着せられ、ほぼ引き摺られるように歩かされている。もちろん下着なんて着せてもらえていないから、角度によっては身体の色々な部分が丸見えになっていることでしょう。

 私を見る様々な視線。

 憎悪、嫌悪、恐怖、畏怖、卑猥、欲望、歓喜などなど。

 一ヶ月も強制的に晒され続けていれば羞恥心などの感情も消えてしまいましたが…。


『まるで罪人のようですね…。』


 猿轡までされている口。

 声にならない声で呟いた。閉じれない口の端からは唾液がゆっくりと地面へと垂れていく。


 私は何をしたのでしょうか?。


 首の首輪に繋がっている鎖を引っ張られ、重い鉄球を引き摺り、ゆっくりと移動していく。

 この世界で目覚めてから一ヶ月間ずっと繰り返されている行進。

 訳も分からないままシスター達の言われるがままに、されるがままに、この状況。


 同じ毎日の繰り返し。

 

 寝ている。

 いいえ。気を失っている私は午前4時に叩き起こされる。

 文字通り、鞭で身体を打たれて起こされるのだ。今では自然と4時前に自分で起きている。

 拘束されたまま乱暴に水をかけられ、無理矢理身体を洗われる。まるで、洗濯物でも洗うように強く、加減なしに。

 その後は、薄い布のような白い服を着せられて外に出る。髪も身体も乾かされない、濡れたままの状態で。拘束されたまま歩かされ行進が開始される。

 時刻はこの時点で6時を過ぎたくらい。

 ゆっくりと、ゆっくりと歩かされる。

 靴など履かせてもらえない。

 そのせいで足の裏から出血している。唯一の救いは道が舗装されていることかな?。

 4時間をかけて 大聖堂 から人々で賑わう街道の到着。

 そして、見せしめのように人々の前で身体を晒す。


 この進行を1日2回。朝と夕方に行われる。


 進行が終わったお昼過ぎ。

 鉄の檻に入れられ観衆の前に晒され続ける。

 残飯のような昼食が用意されるがとても食べる気にはならない。

 多くの人々の目に晒され、たまに石とかが飛んで来るし、私を見て厭らしいことをしようとする人までいる中で午後3時まで地獄のような時間が続くのだ。


 そして、大衆の見守る中。

 大聖堂へと再び行進が始まる。


 大聖堂につくのは午後6時くらいでしょう。

 陽は傾きかけ、夜が近付いています。

 そこからは更なる地獄の時間です。


 首、手足の拘束で大の字に括られ立たされる。

 無理矢理に口を開かされ、液体の食事を流し込まれる。

 苦しくて吐き出しそうになってもお構い無く。私が完全に飲み込むまで続くのです。


 食事が終わり、一時間後。

 地獄の拷問の時間です。

 白い布すら奪われ完全に全裸の格好にされます。

 いつも4、5人のシスター達による様々な苦痛を与えられます。

 鞭打ちから始まり、ひたすら冷水をかけられ続け、指の爪を剥がされ回復。指先、手首、腕の骨を折られて回復。ハンマーのような鈍器で足の骨を砕かれ回復。電流や高熱の鉄を押し当てられもしましたか。

 痛くて、苦しくて、何が何なのか分からないまま質問をされるのです。


『さぁ。質問に答えろ。お前の名前は?。』


 赤髪の気の強そうなシスターが私の髪を掴み頭を持ち上げ質問する。

 彼女の後ろには4人の様々な器具を持つシスター。


『せ、聖愛…。…です。』

『お前は異神だ。違うか?。』

『分かりません…異神とは…何なんでしょう?。』

『………やれ。』


 その私の言葉に赤髪のシスターが後ろのシスターに命令を出す。

 4人の内の1人が私の脛を鈍器で力一杯振り抜いた。


『あがぁぁっ!?。』


 激痛。悲鳴にならない声を上げる。

 涙なのか、唾液なのか。分からない液体で顔が滅茶苦茶になる。

 全身から汗が滴り落ち、複雑に折れた足からは大量に出血し、皮膚を突き破った折れた骨が見える。


『治癒を。』

『は、はい。』


 魔力を用いた治療が行われ折れた足が治る。


『次の質問だ。お前の仲間。他の異神は何処にいる?。』

『…分かりません…知りません…私の…方が…知りたい…。』

『チッ。やれ。』

『は~い。』

『っ!?。ぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁ…ぎぎぎ…いだい!?。いだい!?。や、やめ…ぎゃぁぁぁぁぁあああああ!?。』


 全身に流される電流。

 魔力による電撃が全身を駆け巡る。全身を焼き付けるような熱さと痛みに視界がチカチカと点滅し始め、カチカチと歯がぶつかる。手足も指も複雑な方向に曲がり、全身が跳ねる。

 数秒なのか、数分なのか。時間の感覚を失った私はそのまま気を失った。


『水っ!。』


 バシャッと勢い良く冷たい水がかけられる。

 その水流と冷たさで意識を強制的に覚醒させられる。


『あっ…はぁ…はぁ…。』

『次の質問だ。お前達の目的を言え、何故、この世界を滅ぼそうとする?。』


 滅ぼす?。目的?。


『わ、分かりません…。何も…。』

『はぁ…。おい。やれ。』

『はい。』


 高熱で周囲の空気が歪んでいる鉄の塊。

 彫られているのは白国の刻印?。

 それを私の下腹部に押し当てられた。


『がぁぎゃぁぁぁあああああ!?!?。あぐっあがあああああぁぁぁぁぁ!?!?。や…ぎゃぁぁぁぁぁあああああ!?。あ…。』


 自分の皮膚、肉が焦げる臭い。

 痛いのか。熱いのか。理解すら出来なくなり、再び気絶する。


『水。』


 覚醒。

 質問。

 返答。

 拷問。

 気絶。

 覚醒。


 繰り返される地獄の時間。


 バシャッ。意識の覚醒。

 靄のかかる頭と耳が赤髪のシスターの声を拾う。


『妙だな。魔力を封じられている状態にも関わらず、翌朝になれば大きな傷が癒えている。我々が施す治癒以上の自然治癒でも備わっているのか?。この異神には?。』

『……………。』

『さて、私の疑問など、どうでも良いか。次の質問だ。お前は………。』 


 気付くと私は拘束されたまま牢屋のような場所で目が覚めます。

 気を失った私は乱雑にこの場所に放り込まれて朝方まで放置されるのです。


 四方を石で囲まれた石造りの牢獄。

 フトンの代わりなのか大きめのシーツのような薄い布がニ枚あるだけの私の為に用意された部屋。

 

 4時になれば、またシスター達が起こしに来る。

 恐怖を感じていた時期もありましたね。

 今では、これが私の日常なのだと受け入れてしまっています。

 もしかしたら、心が死んでしまったのかもしれません。


 これが私の1日です。


~~~


 鉄の檻の中で現状を考える。

 幸いにも時間は沢山あるのだから。


 シスター達の会話、拷問による質問から導き出した私の現状。


 私は、どうやらこの場所に転生したということ。この場所は白国と呼ばれる大国で。

 私はこの場所では異神と呼ばれる存在になってしまった。

 異神は、この世界を滅ぼそうとしている存在。

 私の他にも異神がいて、シスター達は他の異神も敵対し探しているみたいです。

 魔力があるようですが、私はこの首輪のせいで魔力を練ることも外に出すことも出来なくなっています。

 この首輪…まるで、あの娘の神具みたいですね…。


 現状分かるのはこれくらいでしょうか。

 いいえ。もう1つ、ありましたね。


 これが、私にとって最も重要なこと…それは、私が…目覚めてから90日後…。つまり、あと2ヶ月後に処刑されることとなっています。


~~~


 そして、更に一ヶ月が経過した頃。

 処刑まで4週間を切った時、私の周囲と日常は激変することとなった。


~~~


『………きて………さい。』


 身体が揺さぶられる感覚。

 あら?。どうしてたのでしたっけ?。

 確か、昨日も拷問の末に気絶して…。

 もう起床の時間でしょうか?。

 ですが、いつものように暴力的に叩き起こされるのではなく、優しく自然に目を覚ますのを促されている感じです。


『起きてください。』

『ん?。』


 身体が軽い?。

 痛みも、辛さも消えている?。


『あ、目覚めましたか。聖愛さん。』


 目の前には私に手を添えている綺麗な金髪の女性。

 誰?。見たことない?。いえ、私はこの方を知っている。


『貴女は…確か…。ここの…大聖堂の…。』

『はい。私はここ、白国、大聖堂の最高責任者です。』

『どうして…ここに?。』


 いいえ。大聖堂の管理者がここにいるのは別に不思議なことではありませんが。

 何故、この場所に。私の前にいるのでしょうか?。


『はい!。私は、貴女をこの場所から逃がすためにここに来ました。』

『え?。』


 私を逃がす?。

 大聖堂の責任者が?。

 どうして?。いったいどういうことです?。


『遅くなってしまって、ごめんなさい。貴女を救い出す計画を実行する準備に時間を有してしまいました。…あら?。そういえば私からの自己紹介がまだでしたね。失礼しました。私は、この大聖堂を任されている者。』


 人間離れした美貌。

 整った顔立ち。大人びた雰囲気を漂わせる。

 なのに、その笑顔は人懐っこく柔らか。

 全ての男性を虜にしてしまうような魅惑的な身体。スタイルの良さはクロノ・フィリアの女性人と並ぶ…いいえ。もしかして、それ以上?。

 この人。女性姿の閃さんにも負けてない。

 凄く綺麗な人…。


 それにこの方が纏っているモノ。

 魔力じゃないですね?。何でしょう?。

 魔力よりも強いエネルギーを感じます。


『私の名前は、レティア・シル・フィーナ・シルシャインです。宜しくお願いしますね。聖愛さん!。』

次回の投稿は9日の木曜日を予定しています。

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