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第253話 睦美の転生

 あれ?。わた…いや、ワシは…どうしたんじゃったか?。

 ワシは…えっ…と。ワシは 睦美 じゃ。

 名前は覚えとる。

 確か………何をしておった?。ああ…っと、おぉ…思い出した。

 ワシを拐った男に能力を奪われて、最期は旦那様の腕の中で命を散らした…筈…なのじゃが…。

 ん?。しかし、何故、ワシは意識を持っておるのじゃ?。

 天国にでもついたのか?。

 いや、待て待て。何か苦しくないか?。

 身体にも感覚がある?。

 砂のようなさらさらとしたモノに包まれておるような?。砂風呂みたいな感覚か?。

 取り敢えず呼吸じゃ。苦しい…。息が…。


 ワシは勢い良く息を吸った。…と、同時に呼吸に失敗し咳き込んだ。気管に大量の砂っぽい細かな粒子が入ってきたからじゃ。


『わぶっ!?。ごほっ…ごほっ…。ごほっ…ごほっ…。な、何じゃ、これ?。』


 呼吸と同時に起き上がったワシが見た光景。

 祭壇のような装飾が施された高い場所。周囲には灰が敷き詰められ、ワシは灰の中に居る。

 見知らぬ場所じゃ。それに、何故ワシは裸なのじゃ?。いや、確か…旦那様の腕の中では裸じゃった。そのままの状態か?。


『ワシ…生きてるのか?。』


 自分の手のひらをグー。パー。グー。パー。

 …動く。ぺたぺたと身体を触っても傷一つない。何が起きておるのじゃ?。

 状況を飲み込めぬまま戸惑っておると…。


『あ…。え…。あ、貴方!。う、生まれました!。やっと、今度こそ…やったぁ!。』


 女性と目が合う。

 綺麗な人じゃ。美しく燃えるような赤く長い髪。優しそうな顔立ち。優雅な佇まい。

 誰じゃ?。

 すると、驚いた表情を浮かべ瞳に涙を溜めながら女性は少し離れた場所に居た男性を呼んだ。


『ほ、本当か!?。はは。ついに!。』


 男性も驚きの声を上げ駆け寄ってくる。

 女性と同じ赤い髪。

 女性に負けず劣らずの優しそうな雰囲気を纏う男性。

 嬉しそうに近付いてくる2人。

 赤い着物に似た衣服に身を包んだ男女じゃ。

 誰じゃ?。このお二方は?。

 何故にワシを見て嬉しそうなのじゃ?。喜んでおるのじゃ?。


『ああ。本当に…。良かった。』

『ああ。良く頑張ったな!。』

『え?。え?。あぅ!?。』


 近付いてきた女性の方に抱きしめられる。

 そして、女性ごとワシを男性が被さるように抱きしめてきた。

 しきりに良かった。おめでとう。という発言を繰り返し、嬉しそうに涙を流していた。


『す、すまぬが…今一状況が分からぬのじゃが?。』

『え?。喋った!?。もう?。それに、少し成長が早いような?。』

『何?。まさか、天才か?。この子は!?。』

『ええ。そうよ!。私達の子だもの!。天才なのよ!。』

『ああ。そうだな!。間違いない!。おお!。愛しい我が子よ!。生まれてきてくれてありがとう!。』

『ええ。ええ。いい子ね。私が貴女のママよ。』

『僕が君のパパだよ。』


 えぇ…。何がどうなっておるのじゃ?。

 分からないことだらけなのじゃが…何よりも今切実に願うことは…。


『くちゅんっ!?。』


 何か着るものが欲しいのぉ。


『あらあら?。いつまでも裸では寒いわね。』

『すぐに着るものを用意しよう。』


 用意された着物に袖を通す。

 着物に似ておるな。袖の長さも丁度良い。

 柔らかで、肌触りの良い生地。じゃが、使われている反物も糸も知らぬ素材じゃ。帯もワシの知っているモノとは違う。

 それに、背中が大きく開いておる。まるで、そこから翼でも出せるような構造じゃ。

 灯月のメイド服に似た感じじゃ。

 じゃが、着心地が良いので気にすることもないか。


~~~~~


『はい。あ~ん。沢山お食べ。』

『こっちに飲み物もあるぞ。』


 見知らぬ男女に挟まれ食卓へ。

 死ぬ前に見た中華に似た料理が並んでいる。

 女性に口元まで運ばれた春巻きに似た食べ物を頬張る。モグモグ。モグモグ。


『おぉ。旨い。これは、貴女が作ったのか?。ぜひ、レシピを教えて欲しいのじゃが。』

『ふふ。良いわよ。何でも教えてあげるわ。』

『ほら、こっちは新鮮な魚だ。今朝獲ってきたばかりだぞ。』

『ふむ。おぉ。これも旨いのぉ。辛味と甘味の味付けが絶妙じゃ。』

 

 記憶に残るのは度重なる拷問の記憶。

 久しく手料理など食べていなかったからな。

 それも、他者に作って貰うなど本当に久し振りじゃ。


『ふぅ。お腹いっぱいじゃ。御馳走様でしたのじゃ。』


 瞬く間に用意された料理を完食した。

 こんなに満腹になったのはいつぶりか?。


『ふふ。お粗末様です。』

『沢山食べたな。きっとすぐに大きくなるぞ。』


 さて、そろそろ本題に入ろうかのぉ。


『すまぬが。幾つか質問をさせて欲しいのじゃ。』

『…そうね。私達も貴女が何者なのか知りたいわ。』

『さっきは、嬉しさで舞い上がってしまったからね。私達の本当の子…という訳ではないんだよね?。』

『ああ。おそらく違う。では、まずワシのことを説明させて貰おうかのぉ。』

『ふふ。そんなに畏まる必要はないわよ。飲み物でも飲みながらゆっくりお話ししましょう。今、お茶を煎れますね。』

『そうだね。時間は沢山あるのだから。』

『そ、そうか。助かる。』


 男女に案内されソファーのような長い椅子に案内される。

 羽毛が敷かれた柔らかな長椅子だ。クッションまで完備で足まで伸ばせる。凄いのぉ。


『さぁ。こっちにおいで。』

『ふふ。真ん中にどうぞ。』

『お、おぅ…。』


 躊躇いながらも2人の間に入る。

 ワシの身体を優しく抱き寄せてくれる2人。


『え…っと。まずは自己紹介からじゃな。ワシは睦美という。おそらく、一度死んでこの場所に生まれ変わった…のだと思う。』


 ワシは旦那様の腕の中で生涯を終えるまでの流れを説明する。

 ゲームを通じて出来た大切な仲間の話や、仲間達と共に過ごした時間。神との戦い。戦いの中で訪れた死。そして、目覚めた現在。


『す、すまぬ。つい。長話になってしまった。』

『いいえ。そんなこと全然気にしないで良いわ。睦美ちゃんがお友達のことをとても大切にしていたのが伝わったもの。』

『ああ。最期は辛かったね。許せないな。睦美ちゃんを酷い目に遇わせた男は…。』

『そ、そうか?。』


 思ってた反応と違うのぉ。

 何故か。2人とも自分のことのように共感してくれた。そのせいか、つい自分でも驚く程多くのことを語ってしもうた…。


『ふふ。その話の中に出てきた、閃さんって男性の方が好きなのね?。』

『彼のことを話している時の睦美ちゃんは本当に幸せそうだったよ、』

『っ!?。』


 そ、そうかのぉ…。いや、つい会いたいという気持ちが溢れた気がするが…。


『だ、旦那様とは…その…。愛し合っていますから…。』

『あらあら。旦那様だなんて呼んでるのね。』

『そっちの口調が素なのかな?。』

『いいえ。きっと心に決めた殿方にのみ使うと決めている睦美ちゃんのルールなのよ。可愛いわ。』

『そうか。睦美ちゃん。辛い経験を沢山したんだ。今度はちゃんと幸せになるんだよ。』

『あぅ…。』


 この2人、良い人過ぎやしないか?。


『色々教えてくれてありがとう。睦美ちゃん。』

『次は私達の番ね。では、自己紹介から。私の名前はフェリス。そして、こちらが夫の…。』

『フェネスだよ。僕達は不死鳥という種族なんだ。』

『不死鳥…。』


 ワシの種族と同じか。


『ここは私達。不死鳥が住む山脈の奥地。滅多に他種族とは巡り遇わない秘境なの。』

『種族と言っても、僕達夫婦と。もう一家族しかいないけどね。僕達の種族はほぼ永遠の寿命を持つ長寿の種族だからか個体数が極端に少ないんだ。昔はもっと居たらしいんだけどね。』

『睦美ちゃんも不死鳥だよね?。』

『ああ。そうじゃ。そうか…ワシ以外にもおったのじゃな。いや、当然か。むしろ、ワシがイレギュラーなのかもしれんのぉ。』


 ゲーム開始時に与えられた種族じゃ。

 当然、純粋な不死鳥ではない。


『しかし、ワシは何故この場所で目覚めたのじゃろうか?。』


 都合良く、同種の棲みかに?。


『睦美ちゃんの話と、僕達が知っていることを照らし合わせた憶測になってしまうけど良いかい?。』

『無論じゃ。問題ない。今は少しでも情報が欲しい。お願いしたい。』

『ええ。それじゃあ、最初に、この星はリスティールという惑星なの。』


 リスティール…何処かで聞いた名前…。

 ワシは知っている。確か…リスティナが語っていたエンパシス・ウィザメントの舞台となった。

 神々に襲撃され滅ぼされたリスティナが創造した星だったか。

 つまりここが…この世界こそが、現実の世界。


『この場所は、七つある巨大な国家の1つ。【赤国 レディ・アッドレス】という国の端の端にあるんだ。』


 七つの大国。

 ・赤国 レディ・アッドレス

 ・青国 ブリュセ・リオ

 ・緑国 グレブ・リーナズン

 ・黄国 イセラ・エシルローナ

 ・紫国 パリーム・プルム

 ・黒国 ブセエル・ラック

 ・白国 ホシル・ワーセイト

 …か。まるで、ゲームだった頃の六大ギルドのようじゃな。名前に色があるのも似ておるし。


『互いの国の力は拮抗していると言われていてね。互いに牽制しながらも危うい状態で平和が維持されているんだ。』

『けど、今はその他国に向けられていた警戒心が他の対象に向けられているの。そして、それにおそらく睦美ちゃんが関わっているわ。』

『ワシが?。』

『睦美ちゃんは、おそらく異神と呼ばれる存在…だと思うの。』

『異神?。』


 知らぬ単語じゃ。


『少し前のことになるわ。この世界を創造した神様から、この世界に住むあらゆる種族に信託が伝えられたの。【近い将来、異世界の神々がリスティールへと顕現し、この世界に破壊と絶望を振り撒くであろう。異界の神…異神は、その有する種族の元に現れる。この星に住む者達よ。この世界を異神の魔の手から救え。】みたいな感じだったかしら。』

『この誰も来ないような辺境の秘境にまで伝えられたんだから、多くの種族が暮らす都市部や国の中心は異神に対して強い敵対心を持っていると思うよ。異神を狩る為の特殊な戦力まで用意されているらしい。』


 異界の神か…。

 確かに、この世界がリスティールだとして、ワシのような仮想世界からやってきた存在はそう呼ばれても不思議ではない…のか?。

 何を持ってワシのような者を神と定義しておるのじゃ?。特段、ワシの身体は普段と変わらぬが?。

 いや、待て…。魔力を練れぬぞ?。

 もしかして…。


『ふん~~~。にゃぁぁぁあああ!。』


 目一杯力を込める。


『はぁ…はぁ…だ、駄目じゃ、翼が出ぬ…。』


 不死鳥の特徴である炎の翼が出ない。

 それどころか…。


『っ!。』

『睦美ちゃん!?。』

『何を!?。』


 自分の親指を噛む。

 じわりと血が滲む。今までならば傷口から炎が発生し即座に傷を癒したのだが。再生の力が消失しておる。

 更に色々試す。今まで出来たことを。

 アイテムBOXが消滅。

 ステータス画面も出てこない。

 神具も出ない。スキルも発動しない。


 ……………。言葉が出んな。落胆じゃ。


 ん?。それに心臓が止まっておる?。脈動していない?。ワシはこうして生きておるのに?。

 いや、心臓のあった箇所に何かが…ある。熱く熱を発する何か…。

 これが何かは分からぬが、一先ず言えることは。


『…どうやら、ワシは全ての力を失ったままのようじゃ。』


 端骨の実験とやらで奪われた能力は死しても戻りはしなかったようじゃな…。

 魔力も練れぬとなると…いよいよを持って戦う術がないのぉ。再生が出来ないとなると壁にもなれん。

 普通の人間以下じゃな…。


『睦美ちゃん。そんな悲しそうな顔をしないで。』

『睦美ちゃんが悲しいと僕達も悲しいからね。君には笑っていて欲しいんだ。』

『な、何故。そこまでワシに?。してくれるのじゃ?。』

『決まっているじゃない。貴女は私達の身体から作られた灰の中から生まれたのだもの。』

『過去の、前世の記憶があっても。睦美ちゃんが僕達を家族として見られなくても。睦美ちゃんは僕達の子供だよ。』

『ええ。こうして生まれてきてくれたのですもの。貴女が別の世界から転生してきた存在だとしても、私達にとって念願だった大切な子供であることに変わらないわ。』

『…しかし。ワシは…この世界で危険視されている異界の神の可能性だってあるのじゃ…。恐ろしくはないのか?。』

『全然そんなこと思わないわ!。』

『そうだよ。他人がいくら睦美ちゃんを恐がろうが、拒絶しようが、敵意を向けてこようが、僕達は君を子供として愛するよ。』

『ええ。睦美ちゃんは私達の愛しい子よ。いきなりこんなことを言われて困っちゃうかもしれないし、受け入れるのも難しいかもしれないけど、私は睦美ちゃんのママ。』

『僕が睦美ちゃんのパパだ。僕達が君を嫌うことなんかないよ。』


 フェリスとフェネス。

 2人はワシを優しく抱きしめてくれる。

 不死鳥の子供は、親となる2対の雌雄が互いの身体の一部を肉体から切り離し、その部分が炎となって燃え、残り、混ざり合った灰の中から極低確率で生まれるらしい。

 長年子供が欲しかった2人は、何度も何度もこの儀式を行ってきたという。

 そして、念願が叶い生まれてきたのがワシだったということじゃ。


 両親か…。

 ワシの仮想世界での親はとても厳しかった。

 あらゆる作法を学ばされ、学園に通う以外にも習い事の日々。花嫁修行も女性としての在り方も、男性に対する接し方も叩き込まれた。

 そこに愛があったのかは分からん。

 しかし、今の自分があるのも、旦那様に出会え、恋人としてお慕い出来るのも、あの厳しい日々があったからこそじゃ。

 そこは感謝しようかのぉ。


 フェリスとフェネスから向けられる両親の愛。本当の両親からは与えられなかった直接的な愛情。初めての感覚。

 何だか、くすぐったく、恥ずかしく…けど、嫌ではない。


『あ、甘えても…良いのじゃろうか?。本当の家族では…ない…のじゃが?。』

『いいえ。貴女は私達の娘よ。貴女が良ければ、私達夫婦を貴女の親と認めて欲しいわ。』

『ああ。沢山甘えて良いよ。愛しい娘。』


 2人はワシの両頬に軽くキスをする。

 旦那様との恋人の口づけではない。

 家族としての軽くて深い愛情のキス。

 そうか…では、今だけでも一時の家族愛を味わおうかのぉ。

 力を失ったワシでは、どの道お二人の世話になるしかないしのぉ…。

 いや、誤魔化すのはよそう。

 ワシは…家族の愛に飢えているのかもしれん…さっきから胸が苦しいから…。


『では、母様と父様とお呼びしても宜しいでしょうか?。』

『あらあら。嬉しいわ。』

『睦美ちゃんの呼びたいように呼んで良いよ。』


 私は2人の前に移動し頭を下げる。


『畏まりました。ふつつか者ですが、今後とも宜しくお願い致します。私に出来ることでしたら何でもお手伝い致しますので何なりとお申し付け下さい。』

『あらあら。礼儀正しいわね。けどね。』

『睦美ちゃん。僕達にそんなに畏まらなくて大丈夫だよ。さっきまでの感じで良いよ。』

『そ、そうか?。で、では、母様。父様。宜しく頼むのじゃ。』

『ええ。宜しくね。睦美ちゃん。』

『宜しくね。睦美ちゃん。』


 再び、2人に抱き寄せられる。

 2人が本当に子供を求めていたことが伝わってくる。

 ワシが子供役では、期待に添えられるか分からぬが…今はこの温もりを大切にしたい。


~~~~~


『ふぅ…。』


 適度な温かさの天然の温泉。

 岩の隙間から流れ落ちる湧水をシャワー替わりに頭から浴びる。


『ふふ。今日は色々あって疲れたでしょ?。この家の裏に天然の温泉が湧いてるのよ。身体を温めて、ゆっくり寛いでおいで。』

『タオルと着替えはこっちに用意してあるよ。』


 母様と父様に言われるままに温泉で汗を流す。


『はぁ…。ワシ…これから…どうしようかのぉ…。』


 他の仲間達はこの世界に来ているのじゃろうか?。

 それとも…ワシだけ?。


『旦那様…に…会いたい…。』


 勢い良く顔を洗う。

 やめじゃ。やめじゃ。ここで悩んでも仕方がない。ここは別のことを…そうじゃ、ワシは転生したのじゃった。

 仮想世界で読んでいた物語では、転生した主人公には何か変化が起こっておる筈…。


『んんーーーっ!。』


 駄目じゃ。やっぱり能力を使えん…。

 身体に変化は…。


『むっ…。』


 むにむに。もみもみ。

 むにむに。もみもみ。


『………。』


 ぺたーん。


 いや、ぺたーんではない。断じてない。

 ちゃんと膨らみはある。旦那様の大きな手には余ってしまうが、ちゃんと…ある。

 ある…。ある…もん。


『か、変わっておらん…。』ズーーーン。


 べ、別にな。気にしてなんかないぞ?。

 ただ、ただな?。もっとな?。折角、転生したんじゃぞ?。

 せめて…せめてな?。胸くらい…灯月程と贅沢は言わん。

 せめて、智鳴くらいの大きさくらい授けてくれても良いではないか?。神様よ…。


 ガサッ!。


『何じゃ?。』


 誰かが後退り、枝か何かを踏んだ音。


『だ、誰じゃ!?。』


 慌てて近くにあったタオルを身体に巻き付け、音のした方に歩み寄る。

 こういう時に翼があれば追い付けるのじゃが…くっ。慣れていたものが消え、力を失ったことがここで悔やまれるとは…。


『くっ…いない…か。逃げられたな。ん?。』


 足跡?。

 何者かが逃げていった先に点々と続いている足跡。

 この小ささ、歩幅の間隔。成人ではない。

 それと、動きの素早さ…。


『子供?。』

次回の投稿は21日の日曜日を予定しています。

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