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第25話 メイド天使の憂鬱

『はぁ…はぁ…はぁ…何で私がこんな目に…。』

 

 私は、クロノ・フィリア所属 No.23 神無。

 閃様の忍びです。

 閃様の命令でクロノ・フィリアのメンバーを探す為に各地を奔走。

 渡された地図に記された場所にいたメンバーは、よりによって私の幼馴染みで喧嘩馬鹿の煌真。

 予想通りに喧嘩を売られ朝まで戦うことになりました。

 こっちは全力で戦ったのに、このバグ男は終始楽しそうに…。ムカつく!。

 倒れそうになる身体をなんとか支える。

 マジで疲れた…。


『はぁーーーー。スッキリしたぜ。サンキューな!』


 スポーツでもしたように爽やかな汗を流す馬鹿。ムカつく!。


『ストレス発散で清々しい笑顔を見せてるけど、その為にビルが1棟…崩壊したのだけど?。』

『気にすんなって。どうせ此処ともおさらばだ。ごみの掃除も出来たし一石二鳥よ。』


 本当に興味がなさそうにしているし。この馬鹿!。ムカつく!。


『はぁ…。溜め息しか出ないわ。』

『で、この紙に書いてる場所に誰が居んの?』


 数時間前に渡した地図をヒラヒラを指で挟み聞いてくる馬鹿。ムカつく!。


『そこは、矢志路よ。』

『はぁん?あの陰キャかよ?めんどくせぇな。てか、紙に書いてある場所が分からねー。』


 信じられないことを言ってのける馬鹿。ムカつく!。


『はぁ?あんた、青法詩典の勢力圏の位置くらい知ってなさいよ。』

『青法詩典?はぁ…ゲーム時代にそんな名前のギルドあったような気がするが…。なんで、現実にそのギルドがあんのよ?』


 コイツはぁ…馬鹿。ムカつく!。


『…もしかして、あんた…今、世界で何が起きてるか知らないとか言わないわよね?』

『知らん。』

『…閃様。今、戻ります。』

『おいおい、何、泣いてんだよ?』

『一応聞くけど。あんた、この2年間…何してたわけ?』

『ああ?特に何も、何故か俺の顔を見た雑魚が喧嘩売って来てよ?懸賞金が何なのと訳の分からねぇこと言って能力使ってきやがったから返り討ちにして持ち物奪って生活してたわ。』

『…野蛮過ぎる…。』


 この馬鹿。ムカつく!。


『お前はどーしてたよ?』

『私は閃様たちと一緒にこの世界の情報収集よ。』

『この世界?』

『てか、あんた能力使われたんでしょ?この現実世界でよ?少しは、おかしいと思わなかったわけ?』

『そりゃ、思うだろう。当然だろ馬鹿か?』


 こ、コイツ!?私に馬鹿ってぇ?この馬鹿!ムカつく!。


『裏ボス倒したと思ったら次の日には、この状況だ。だが、この辺りだと情報を入手しようにも有力な情報なんか手に入らなかったわ。雑魚に聞いても本当のことなのか嘘なのか今一はっきりした答えは返ってこないしな。』

『まぁ、こんな田舎の廃墟を拠点にするようなバカだしね。』


 ええ。そうよ。馬鹿よ!馬鹿。ムカつく!。


『ああ?バカだと?もう一度喧嘩するか?』

『やめとくわ。ああ、そう言えば。』

『はぁ?』

『矢志路の所に閃様が向かってるから、今から向かえば丁度良いくらいで合流できると思うわよ?』

『おっ!マジか。それは良いこと聞いたぜ。』


 嬉しそうにしちゃってさ。ムカつく!。


『私は別の仕事があるから行くわ。…あ。』


 まあ、目的は達したし次の任務に行こうかしらね。コイツと居ると疲れるし。ああ、ムカつく!。


『ああ?何だ?』

『一応聞いておくけど、姉さんの居場所、あんた知らないわよね?』

『姉さん?ああ、機美か?知らねぇな。いつもみたいに引き込もってんじゃねぇか?』

『私もそう思うんだけどね。まあ良いわ。それじゃあね。閃様によろしく。あっ…これでも読んで歴史の勉強してよね。』


 私は、この馬鹿に、この2年間のことを簡単に記したメモを渡す。

 はぁ…手間が掛かるわ…。


『おっ。サンキューな!。神無!。』

『…うっさい…。』


 ちょっと気恥ずかしくなったので急いで影の中に入る。


『ふぅ…何が何だか…。あっ…タバコ切らしてたか…ちっ。』


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 私はクロノ・フィリア所属 No.10 灯月です。

 時刻は深夜2時。丑の刻。

 誰もが寝静まった頃、私は行動に移した。

 昨晩の夜、緑龍絶栄の刺客だった 涼様たちの奇襲により、急遽、クロノ・フィリアのメンバーを全員集合させることとなった。

 未だに姿を隠しているメンバーを探すために、現存のメンバーが手分けして捜索することとなり、私の愛しのにぃ様も夜明けと共に旅立つことに決定した。

 悲しいことに私は居残り組となり、にぃ様とは当分会うことが出来ない状況となってしまう。

 そんな今日日、私は思い立ったのだ。


『夜這い(ヤる)か…。』


 と。


 静かな廊下。

 誰の足音も聞こえない。もちろん、私自身の足音さえも…。

 某漫画で読んで学びました。

 部屋の前で気配を消すと突然消えた気配に、にぃ様が気づいてしまう可能性があると。

 だから私は夕刻、浴場に入った時点で【気配隔絶遮断】のスキルを使用し、気配、音、魔力に至る全てを消しました。

 途中、智鳴ねぇ様と瀬愛ちゃんが入って来ましたが私に気付くことはありませんでした。


『完璧ですね。』


 そして、今はにぃ様の部屋の扉の前。

 ついに、この時が来ました。

 既に出発前に食べられる朝食と数日分の朝食、昼食、夕食、夜食、果ては10時と15時のスイーツまで準備済みです。

 食堂の食品が全て無くなってしまいましたが些細な問題でしょう。


『いざ!。』


 私は静かに扉を開け部屋の中へ。

 私が触れたモノの音も消してくれるのが気配隔絶遮断の素晴らしいところです。

 私は、スキル【暗視 極】を発動します。

 部屋の中を観察。

 うん。異常はありません。

 にぃ様の寝込みを襲おうという不埒モノの気配も無く、いつも通りのにぃ様の部屋。

 平和ですね。

 にぃ様の寝息だけが聞こえます。


『よしよし。良く寝てますね。』


 私は、スキル【静暗転歩】を発動します。

 このスキルは音を発生させずに高速移動が出来ます。

 このスキルと気配隔絶遮断を合わせて使い、明日、にぃ様が着るお洋服を準備します。


『これで 良し です。』


 これで、にぃ様が朝に慌てることはありません。ひと安心です。

 

『ついに、この時が…来ましたね。』


 私はにぃ様の為ならあらゆる努力を厭わない。

 にぃ様の為に、料理を学び。

 にぃ様の為に、裁縫を学び。

 にぃ様の為に、掃除を学び。

 にぃ様の為に、洗濯を学び。

 にぃ様の為に、服の早脱ぎを学び。

 にぃ様の為に、瞳の中にハートマークを出す方法を学び。

 にぃ様の為に、ぶつかった時に、パンツの中に、にぃ様の顔が入る様な こんなの有り得ないだろう になるようなポーズを学び。

 にぃ様の為に、邪魔なモノを排除する暗殺術を学び。

 にぃ様の為に、毒薬について学び。

 にぃ様の為に、秘孔について学び。

 にぃ様の為に、サバイバルで生き残る方法を学び。

 にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に、にぃ様の為に…………………………………………………………………………………。


『はっ!?いけません。私としたことが、にぃ様とのハネムーンの想像をしてしまいました。』


 ふぅ。冷静に、冷静に。


 まずは結婚式ですね。少し焦り過ぎました。


 良し!気合いを入れて、にぃ様に接近します!。


 に ぃ さ ま っと。


 あらあら、今日のにぃ様は、ねぇ様の姿で寝ているのですね。

 明日からは身バレのしていない女性の姿で行動するため慣れるまでこの格好でいると仰っていましたが。

 寝ている時も、とは…徹底してますね。

 でも、そこが素敵です。

 でも、にぃ様。そのナイスバディのお姿でTシャツ、短パンはセンシティブ過ぎませんか?


『どれどれっと。はぁ…。美しいです。』


 女性の姿のにぃ様は、それはもう美しいの一言では言い表せない絶世の美女です。

 私とにぃ様の欲望…いえいえ…願望…いえいえ…希望のお姿。


『はぁ…一緒に…湯浴みしたい…。』


 頬っぺただって、つるつるで、もちもち…。


『ぷにぷに…。あぁ…。ぷにぷに…。』


 そろそろ、お身体の方を…いえいえ…まずは口づけですね。


『それでは、にぃ様。いただきますぅ。』


 目を閉じ、にぃ様の顔が唇は近付いて…。


 触れ…触れ…触れ…てない?


『あら?』

『あら、じゃねぇ。』


 目を開けるとにぃ様と目が合う。


『あっ…にぃ様ぁ…。』


 にぃ様の胸元には Ⅰ の刻印が…。ということは無凱様の能力を…つまり、ここは 箱 の中で、私のスキル…無効化されている?。


『にぃ様じゃねー。こんな時間に何してるんだよ?』

『夜這いです。』

『隠す気もないのか。』

『はい。』

『………。』


 私は、にぃ様と向かい合うようにベットの上の正座させられました。


『にぃ様。』

『何だ?』

『おかしいのです。私は、にぃ様に口づけをしようとしたのですが…届かなかったのです…。』

『お前、俺のスキルの【初撃無効】があるの知ってるよな?それで、行動にキャンセルが入ったんだよ。』

『む?初撃無効?つまり、私の口づけは攻撃という判定にされたと?そういうことですか?』

『みたいだな。』

『ぷぅーーーーーーーーー。許せません!運営は運営は何処ですか?』

『安心しろ。現実だ。』

『ぷぅ…。』


 納得いきません。


『まあ、当分の間会えなくなるしな。寂しかったんだろ?』


 そう言うと、にぃ様は男性のにぃ様の姿になり私の頭を撫でてくれました。


『気持ちいいですぅ。』

『俺たちのいない間留守番頼んだぞ?』

『はいぃ。』

『良い子だ。』

『えっ!?』


 にぃ様が私のおでこに、おでこに、キキキキキキキキ…キスを…


『きゅぅーーーーーーーー。』

『ああ、灯月!?。ったく。こんなんで気絶するヤツが夜這いとか…。』


 私は、にぃ様の匂いに包まれて、にぃ様と結婚式を挙げる夢をみました。えへへ。

 幸せです。

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