第23話 最後の能力
『ちっ!。』
健は腕を伸ばし、優を抱えているウチごと掴もうとする。
その腕を紙一重で躱し、距離を取る。
伸ばされた腕が行き場を無くし、そのまま千切れ落ちた。
『逃げるなぁぁああああああああ!!!。』
『逃げるわぁ!。第1の魔弾!』
上階で戦った化け物とは違い、第1の魔弾では命中した部位を吹き飛ばすまでにはいかなかった。
『豆鉄砲がぁぁあ。』
『ちぃっ!第1の魔弾では牽制がやっとか。』
『豊華さん。』
胸に抱える優が心配そうに叫ぶ。
『優。安心しろ!何とか健を助ける方法を探してやるからな!。』
『うん…。』
『第3の魔弾!1発でダメなら、これで!』
『効かなーいぞぉぉおおお!』
数十個の魔弾を放つも、健の身体を破壊できない。
『くっ!キツいな…。何とか解放する方法を探さねば!。』
『はははははははははは!よっわーい!。』
健の振り回す腕を掻い潜りながら反撃の機会を探していると、優が小さな声でウチを呼ぶ。
『豊華さん…。』
『む。どうした優よ?暫し待っとれよ!』
早く、何とかしてやらねば。
『違うよ。』
『ん?どういうことだ?』
『健ちゃん…泣いてる。』
『何?』
『はははぁ?どうしたの?逃げるの終わりぃ?』
見ると。言葉では笑っているが、複数ある大きな目玉からは涙が流れ続けていた。
巨大な身体も血のような赤い液体が吹き出し腐ったような異臭を放っている。
崩壊が始まっているようだな。
『成る程な…。』
『豊華さん。もう、健ちゃんを…助けてあげて…。』
『良いのか?辛いモノを見ることになるぞ?』
『うん。もう、あんな健ちゃんを見てられないよぉ…。』
『ああ、わかった。暫し目を閉じていろ!』
『うん…。』
『第6の魔弾!展開!』
第6の魔弾は、遠隔操作型の移動砲台。
ウチの意思で自在に動かせ各々が魔弾を発射できる。
『なんだぁ?これはぁ?』
『第7の魔弾!これで暫しの間動けまい!。』
第7の魔弾は、実体のある鞭の様に動くビームを出し続けるというモノ。
相手を拘束するのに重宝する。
『んんんんーーー。動けない!?動けない!?動けないぃぃぃいいいいいい!!!。』
『これで終いだ!。第4の魔弾!』
第4の魔弾は集束された貫通性のある魔弾。
指先から発射された弾丸は首の弱所を容易に貫通した。
『がっ!?がぁぁぁぁあああああああああああ!!!。』
崩れ落ちる肉塊。
肉片は蒸発し中から少年が姿を現した。
『健ちゃん!!!』
『…優…ちゃ…ん…?』
『健ちゃん!!健ちゃん!!』
『あ…あり…が…と…う…。』
健の身体も上階の男と同様に砂のように崩れ落ちた。
『あっ!健ちゃん!健ちゃん!』
『くっ…。』
『うわぁぁぁあああああああああん!!!。』
暫く泣いていた優。
泣くのを止め。ふっ、と立ち上がる。
『すまぬ。優。友達を救えず。』
『…豊華さんのせいじゃないよ。健ちゃんもありがとうって言ってた。だから…大丈夫。』
その瞳には強い意思が宿っているように見えた。
『そうか。』
ファーーーーーーーーーン!
ファーーーーーーーーーン!
ファーーーーーーーーーン!
『これは?今さら警報が!?』
『豊華さん…。』
『ああ、優。決して離れるな!。』
『うん。』
この広い空間の奥にある巨大なシャッターが開く。
そして、中からゆっくりと巨大な肉の塊が蠢きながら出てきた。
『1…2…3…全部で17体の化け物か…優、ここに捕らわれていた生き残りの人間の数は確か?』
『僕と健ちゃんを入れて20人だよ。』
『上にいた1体を含めて20か…なんということを…。』
『皆…改造されちゃったの?』
『ああ、そのようだ。』
『優。目を閉じていろ!』
『うん。』
『今、救ってやるからなっ!第5の魔弾!』
第5の魔弾は巨大な魔力弾。
敵を纏めて倒す時に使用する。
威力は第1の魔弾の5倍を誇る。
だが、連射は効かず、発射までに魔力を集束しないといけないため時間がかかる欠点がある。
『発射!!!。』
放たれた魔弾は17体の化け物を全て呑み込み消滅させた。
『…何とか終わったな…。』
『うん。皆…どうして?。』
『何かの実験をしたのであろうな。恐らく、強制的にレベル上げを行った、とかな。レベルを一気に上げたことで急激な肉体強化に身体がついていかなかったのではないだろうか。』
『ここで?そんな実験をしてたってこと?』
『あくまでも想像だがな。』
ファーーーーーーーーーン!
ファーーーーーーーーーン!
ファーーーーーーーーーン!
『豊華さん!?』
『くっ!またか!な!?床が!?』
『落ちる!?』
ウチたちがいた場所の足場が急に開き、更に地下に落とされる。
なんとか優の身体を抱き抱え着地に備える。
『ちぃ!優!離すな!第9の魔弾!』
『うん!。』
目を閉じ、しがみつく優。
ウチたちは更に落ちていった。
『ふぅ。かなり深く落ちたな。優、無事か?』
『うん。豊華さんが守ってくれたからどこも痛くないよ。』
『そうか。なら良い。』
『この周りに飛んでるのは何?』
優が周囲を旋回する魔力球を指差す。
『これは第9の魔弾だ。防御用の魔弾でな、これで落下の衝撃を防いだのだ。』
第9の魔弾は第6の魔弾と同じく自分の意思で動かせる9個の魔力弾だ。
各々がシールドを展開する防御魔弾。
また弱いが攻撃用の魔力弾も発射できる。
『さて、優よ。この場所に見覚えはあるか?』
『ううん。ないよ。こんな所初めて来たよ。』
周囲には数本の中身の無いカプセルが並んでいた。
ここも、何かの実験施設のようだ。
『少し調べて見るか。優。離れるな。』
『うん。』
探索を開始して5分程が経過した。
『何かの研究施設かのぉ?』
『豊華さん。あれ。』
優がある一点を指差した。
『むっ?これは…何故これが此処にあるのだ?』
台座の上に飾られている宝石。
この宝石に見覚えがあった。
『これ、知ってるの?』
『ああ、エンパシスウィザメントの裏ボス リスティナが持っていた宝石の1つだ。』
『裏ボス?』
『そうだ。ラスボス クティナを倒した後に現れたゲーム最後の敵。そやつが持っとったモノだ。それが何故…此処に?。』
ガタンッ!
『む!?』
『豊華さん!?』
『ああ、敵のようだな。』
3メートルくらいの機械の球体兵。
その中心にカメラのような赤いレンズ状の目が付いていて横360度、縦180度に動くようだ。
そして、4本の足が下半部に、2本の腕が上半部に取り付けてあり、腕の先端に赤いレンズのコアが埋め込まれていた。
『ピピピピピピピ…ピピ…ピピピピ…ピ…。』
赤い目がウチらを捉えヤツから機械音が響く。
『データ照合。手配書二データ有リ。Sランク犯罪者ギルド…クロノフィリア所属…豊華。及ビ…被験体4―E―12。確認。』
『ウチのデータも把握済みか。』
『侵入者ハ排除。実験ヲ開始スル。被験体4―E―12に投薬ヲ開始…。』
『痛っ!?』
『優!?』
『首の後ろが…熱い、痛いよぉ…がっ!?ぐっ!?がぁぁぁぁあああああああああああ!!!』
『優!しっかりせい!貴様何をした!?』
突然、首の後ろを押さえ苦しみ出す優。
『あああああああああああああああああ!。』
優の身体が変化し成人男性のような体格になった。
目は赤く…皮膚は赤黒く脈動している。
『………。』
苦しんでいた優が静かになった。
『これが…優…か?』
ウチは言葉を失った。
『被験体ヘノ投薬ヲ完了。投薬適合率100パーセント。実験…成功。肉体レベルノ上昇ヲ確認…安定。被験体…レベル100ヘノ上昇ヲ確認…安定。脳内コントロール…成功。脳波…安定。命令ヲ下ス。侵入者…クロノフィリア…ヲ殲滅セヨ!』
優の身体が動く。
『がぁぁぁぁああああああああああ!!!。』
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…気が付くと…僕の意識は身体から切り離されていた…
突然、首の後ろに痛みが走った…。
目の前がくらくらして白くなったり、黒くなったり…息も出来なくなった。
全てがぐちゃぐちゃになって…自分が…分からなくなった。
暑いのか…寒いのか…痛いのか…苦しいのか…不快な感覚が一気に押し寄せて来て…僕は意識を失った。
自分の身体を上から眺めているような感覚。
『がぁぁぁぁああああああああああ!!!。』
『優!止めよ!正気に戻れ!。』
必死に僕の名前を呼ぶ豊華さん。
そんな豊華さんを僕は太い腕で殴り付ける。
殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。
止まらない猛攻!。
身体能力が比べ物にならない程上がり、拳の連打が豊華さんを襲った。
『がぁぁぁぁああああああああああ!!!。』
『ちっ!聞こえぬか!。』
豊華さんは僕を攻撃出来ず、攻撃を躱し続ける。
『がぁぁぁぁああああああああああ!!!。』
『優!必ず!正気に戻してやるぞ!待っておれ!』
『がぁぁぁぁああああああああああ!!!。』
豊華さんの言葉は僕に届いている。
それなのに僕の身体は豊華さんを攻撃し続ける。
止めたい。止めたい。止めたい。
『ぐっ!速いっ!第9の魔弾!』
『がぁぁぁぁああああああああああ!!!。』
豊華さんの防御用の魔弾が展開されて僕の猛打を防ぐ。
『くっ!何とか…せねば!』
『がぁぁぁぁああああああああああ!!!。』
『ぐっ!優!暫しの間動きを封じる!少し痛いが我慢せよ!第4の魔弾!。』
貫通力のある魔弾が僕の足を貫いた。
僕の身体はバランスを崩して倒れる。
でも、すぐに元に戻ってしまう…。
『がっ!?がぁあああああ!?』
『くっ!再生能力も健在か!。ならば!あの機械兵を破壊する!第5の魔弾!』
豊華さんが今度は機械兵に標的を変えて魔弾を撃った。
『ピピピ…魔力弾…確認…防御…不要。』
豊華さんの撃った魔弾は機械兵の外部装甲に直撃したのに…当たった途端に消え失せた。
『なっ!?魔力を無効化しただと!?。』
豊華さんが驚いた声を上げた。
その一瞬の隙に僕の身体が動き豊華さんに攻撃してしまう。
僕の…身体…止められない…。
『がぁぁぁぁああああああああああ!!!。』
『ぐっ!』
防御用に展開していた第9の魔弾でなんとか攻撃を防ぐ豊華さんに僕の攻撃が続く。
連打。連打。連打。連打。連打。
終わらない拳の連打。
『がっ!がっ!がっ!がっ!がっ!』
『ぐっ!防ぎ切れん!』
僕の攻撃を防いでいる最中にも透かさず機械兵が左腕を豊華さんに向けた。
『標準…ロック…レーザー…発射!』
『っ!第9の魔弾!集え!』
9つある第9の魔弾の内3つを僕の防御に残りの6つを集めてシールドを展開。機械兵が放ったレーザーを防御した。
『ぐぅっ!なん…という威力…ぅ。』
『レーザー照射終了。目標ヘノダメージ0。』
レーザーをなんとか防ぎ切る。
『何とか。なったか。』
『がぁぁぁぁああああああああああ!!!。』
豊華さんが安心したのも束の間、直ぐ様、僕の攻撃が再開した。
『ぐっ!何とかしてあの機械を破壊せねば。仕方ない。優よ!暫し拘束させて貰うぞ!第6の魔弾!展開!第7の魔弾!発射!』
『がっ!?がっ!?がぁあああああああ!!!』
複数の魔力弾が発射され僕の周りを旋回すると各々の魔力弾から縄のような形のビームが放たれ僕の身体に巻き付いて拘束に成功した。
暴れている僕の身体。
でも、拘束を振りほどけないでいる。
『優!暫しの辛抱だ。この機械兵を倒すまで待っとれ!』
『ピピ…被験体…行動二制限…自力デノ…脱出ハ…不可能。解除ハ…能力者ヲ…倒ス事デ…可能…対象ヲ…排除スル。』
『ああ、ウチもそのつもりだ。オンボロよ。お前を破壊する!』
『標準…ロック…右レーザー…発射!』
『第4の魔弾!』
レーザーと魔弾の衝突。
その結果は相殺に終わった。
『ちっ!互角か!なら第5の魔弾!』
『魔弾…発射ヲ確認…防御…不要。』
高威力の魔弾でも機械兵にダメージを与えられない。
『くっ!魔力無効化。忌々しいっ!なら第3の魔弾!展開!第5の魔弾!発射!』
『防御…不要。』
複数の砲台から放たれた高威力の魔弾を放つも結果は同じ。
『これでも…ダメか。』
奥歯を噛み締める豊華さん。
指を機械兵に向け次の魔弾を撃とうとした…。
その時だった。
『え!?』
豊華さんの目にあるものが映った。
それは…。
『お姉ちゃん!助けて!』
カプセルが並ぶ奥から小さな子供たちが現れ豊華さんに助けを求めたんだ。
『まさか!まだ捕まっている者が!?』
『左…レーザー…発射…。』
機械兵の照準が子供たちに向く。
『ぐっ!間に合うか!?』
豊華さんは子供たちの前に飛び込み庇おうとした。
が、その瞬間、子供たちの姿が消える。
『な!?立体…映像…?ぐあっ!』
機械兵のレーザーが豊華さんの腹部に命中、貫通した。
止めどなく血が流れ出て、その場に蹲る豊華さん。身体の痛みを必死に耐えているようだ。
妖精族は、レベルの低い攻撃ですら当たりどころによっては致命傷になる程の紙装甲だ。気を付けろな?
豊華さんの教えてくれた言葉を思い出した。
血を流しながら、それでも立とうと…戦おうとする豊華さん。
その姿を見た僕の中で何かが変わるのを感じた。
『味なまねを…ぐぅ…はぁ…はぁ…かはっ!これは…ちと、不味いの…うっ!』
『右レーザー…照準…完了』
『ま…まだ…だ。第1から第7…第9の魔弾全展開!』
豊華さんの周りを数十の砲台が取り囲む。
『左レーザー…発射…。』
『全部持ってけ、全弾…発射ぁぁああ!!!!!』
今まで見た全ての魔弾が発射された。
圧倒的火力に機械兵が放ったレーザーはかき消され、そのまま機械兵まで魔弾が呑み込んだ。
だが…
『ピピピ…損傷…0パーセント…任務…続行…。』
『うぐっ。はぁ…はぁ…これでも…無傷…か。だがな…。』
豊華さんは、腹部からの血が止まっていない。口からも血を吐いてる。
それでも両手を突き出した。
『…右レーザー…照準…完了!ピピピ…魔力の異常感知ヲ…周囲…カラ…確認…防御…不要…否…防御…シールド展開…。』
周囲に散りばめられた残留魔力。
豊華さんが魔弾を撃つ度に散布され続けた微量の魔力が豊華さんの両手の中に集まっていく。
『これが…最後の一撃だ!。第10の魔弾!!!』
ドゴーーーーーーーーーーーーーーン!!!
その破壊力はこの地下空間から一気に地上までを貫く程の威力の魔弾。
全てを消滅させる極大の魔力砲は豊華の最大の切り札であり地上までの巨大な穴を作った。
だが、極大の魔力砲の攻撃でも機械兵は生き延びていた。
『ぐっ…はぁ…はぁ…まったく…はぁ…これでも…腕を…1つ…持っていくだけか…。』
『右レーザー破損。次弾装填不能…チャージエネルギー消失…左レーザー照準…完了。ピピピ…ターゲット…カラノ…魔力反応低下…ヲ…確認。』
豊華さんは全ての魔力を使い果たしたのか、僕を拘束していた魔弾が消失した。
もう動く力も無い豊華さん。
機械兵の左腕のレーザーがゆっくりと豊華さんへと向いた。
このままじゃ、豊華さんが撃たれる!
動け…動け…動け…動け…動け…。
『くっ…ここまでか…。』
『がぁぁぁぁああああああああああ!!!。』
『優!?そうか、拘束が…。』
走れ!走れ!走れ!
豊華さんの元へ急げ!急げ!急げ!
『ああ、優に殺されるなら…悪くは…ないな。』
豊華さんは、まだ僕が操られていると思っている。
でも、そんなことは『知らない』!。
『レーザー…発射…。』
『がぁぁぁぁああああああああああ!!!。』
豊華さんを助ける!。
『えっ!?!?優!?お前…意識が…。』
『がぁぁぁぁああああああああああ!!!。』
自分の身体を盾にレーザーを防ぐ。
『がぁぁぁぁああああああああああ!!!。』
身体が蒸発していく。痛い。
全身から肉の破片が散らばっていく。痛い。
腕が吹き飛んだ。痛い。
足が吹き飛んだ。痛い。
そして、顔が吹き飛んだ。
それと同時に、首の後ろに埋め込まれていた極少のデータチップが破壊された。
肉体を維持できない。
でも、今までの痛みに比べたら。
豊華さんを失っちゃう恐さに比べたら。
こんなもの、大したこと無い!。
レーザーの掃射が終わる。
『がっ…。』
ドサッ。僕は倒れた。
膨張していた肉体が消えていく。
そして、僕の身体も、手足の先から砂になっていく。
視界も霞む。
顔半分も、もう砂になっているみたいだ。
『優…お前…ウチを…庇って…?。』
豊華さんが這って僕に近付いてくる。
もう歩く力も無いんだね。
あんなに血を流して、それでも僕のことを助けようとしてくれる。
あっ。
『左レーザー…照準…完了。再チャージ…完了。左レーザー…。』
無情にも放たれようとするレーザー。
良いか優よ。どんな些細な力でも必ず使い時は来るものだ。使い方次第で、大化けすることだってある。何より自分の能力だ。自分が信じてやらんでどうする?諦めずに精進せよ。
『ぐっ!』
僕は残った腕を翳す。
うん!。強くなって!今度は僕がこの能力で豊華さんを守るからね!
これが、僕の…最後の…能力!!!
『…発射!!!。』
放たれたレーザーは豊華さんの数センチ横を掠めた。
『えっ!?優?』
『!!!。ピピピ…レーザー…照準…強制変更…確認…被験体4―E―12の魔力反応確認…レーザー…コアユニット…ニ…干渉。発射角度…7度…強制変更…。』
意識が薄れていく。
身体はもう砂になって消えてしまった。
もう…顔の半分しか残ってない。
僕は…最後に…豊華さんの…顔を…見た…。
涙を目に溜めて。僕に叫んでる。
ああ…最後は…豊華さんの…笑顔を…見たかった…な…。
…それは…わがまま…だね…
…豊華…お母さん…ありがとう…
大 好 き
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『優!優!消えるでない!優!優!』
優の全てが砂になった。
『あっ…ゆ…う…。』
優の消えた後に残ったモノがヒラヒラとウチの目の前に落ちる。
『あっ…こ…れ。』
ウチが優に作ってあげた服の切れ端。
優が恥ずかしいと言っていたヒラヒラ。
最後に残った…優…が居た…証。
『ぐっ!お前が…お前がぁあああああ!!!』
もう魔弾の1発も撃てない身体に鞭を打ち機械兵へ飛び掛かろうとした。
『レーザー…照準…完了。左レーザー…発射…。』
『やれやれ、やっと見付けました。何故、貴女はいつも厄介ごとに巻き込まれているのでしょうね。』
『!!!』
『なっ!?』
発射されたレーザーは小さな重力球によって屈折し地面に逸れる。
『探しましたよ。豊華さん。』
『賢…磨…。』