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第22話 潜入 能力者研究所

『さて、優よ。準備は良いか?』

『うん。大丈夫だよ。』


 ウチの言葉に優が自分の全身を見渡して返答する。

 ちょっと裾が捲れているのに気が付かないのが可愛いな。

 

『ウチは必ずお前を守る。だから、優のお友達がいる場所まで案内頼めるか?』


 裾の捲れを直しながら優へ確認。


『うん。場所も多分だけど覚えてる。』

『うむ。偉いぞ。さて。』

『えっ!?』


 神具を発動し目障りなコバエを撃ち抜く。


『豊華さん。今、何したの?』

『何者かが優を監視しておったようでな。コバエを撃ち落としたのだ。』

『僕を?監視?』

『どうやら、上手く逃げきれたわけではないらしいの。』

『うん…。』


 不安そうにウチを眺める優の頭を撫でウチは改めて決意を固めた。


『大丈夫だ。心配するな。ウチがついておる。』

『…手を握っても良い?』

『勿論だ。なんなら抱っこでも良いぞ?』

『それは…恥ずかしいよ…。』


 これで少しは緊張が解れただろうか?

 優…。

 強がって無理をしているのが目に見えて分かってしまう。

 必ずウチが守って見せるからな!。


『ははは。可愛いぞ。まあ良い。行くか!案内頼むぞ。』

『うん。任せて!』


ーーーーーーーーーーーーーーーー


『ねえ。豊華さん。』

『何だ?』


 隠れ家を離れ、暫く歩いていると顔を赤くした優がウチを呼んだ。


『僕ね。大きくなったら。豊華さんと結婚したい。』

『む?結婚とな?』


 まだ幼い優から結婚などという言葉が出るとは思っていなかった。

 ウチは少し驚いて優に向き合った。


『僕ね。豊華さんのこと大好きなの。豊華さんは僕のこと嫌い?』

『大好きだぞ!』

『やった!』


 嬉しそうに笑いガッツポーズでピョンピョン跳んで喜びを表す優。

 ウチの母性を刺激しているのか…どうしても、甘やかしたくなってしまう。


『しかしな。優よ。』

『何?』

『優の嫁になってやるわけにはいかんのだ。何せウチは人妻だからな。』

『え!?豊華さんって結婚してたの?』


 そう言えば賢磨のことを話していなかったな。


『そうだぞ。ラブラブの夫婦だ。だがな。ウチは優の家族になりたいと思っている。』

『家族?』


 これは、ウチの本当の気持ちを伝えるチャンスかもしれんな。


『ああ。ウチは優の母親になりたいのだ。』

『お母さんに?』

『そうだ。優の本当の母様は優を見守る立場になってしまったがな。その代わりにウチが優を育て導く母親になりたいと思っとる。』

『お、お母さん…。』


 この子には幸せになって貰いたい。

 優を庇って亡くなった母様もそう思って守ったのだ。

 その、お想いをウチは繋げたい。


『ああ、優は辛いことを沢山乗り越えてきた。後は幸せになるだけだ。そのお手伝いをしたいのだ。だから、家族になろうぞ。』

『…家族…。豊華さんがお母さん…?。』

『そうだ。家族だ。それにな。ウチより良い女など星の数程いるからな。優にならウチより相応しい相手が必ず何処かにいる。まずは、その時の為に自分を磨くのだ。』

『むぅ…難しいね。』

『難しく考えることはないぞ。前に言ったであろう?泣いた分だけ前を向いて歩けと。優は沢山泣いた。そして、今、正に前を向いて歩き始めたのだ。このまま歩き続ければ良いだけのことよ。』

『…そう…なんだ…。』


 不安げな優を見ているとウチも悲しくなってくる。

 この子には笑っていて欲しい。


『ああ、それにな。歩いていれば。止まることも。間違えることも。逸れることも。戻ることだってあるだろう?その時は、必ずウチを呼べ。優が歩む道を違えぬよう手伝ってやる。それが、家族だからな!』

『豊華…さん…は良いの?。』

『当たり前だ。なんせ、ウチは世界で 2番目 に優を愛しているからな!』

『2番目?』

『1番は優の本当の両親だ。』

『っ!、うん…。』

『おっと。おいおい泣くな。ここは笑うところだぞ?』


 ウチは優を強く、強く抱き締めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


『このまま真っ直ぐ、道の通りに行った所に入り口があるよ。』


 ウチはスキルを発動する。


『ほう。どれ。…ああ。あれだな。白いシャッター式の入り口がある。』


 距離にして…500…600…700メートルというところか。


『え?ここから見えるの!?』

『ふふふ。凄いだろ?スキル【千里眼】じゃ。この程度の距離雑作もない。丸見えじゃ。ある程度障害物も貫通して見ることが出来るしな。』

『す、凄いね!』

『だろ?だが、見たところ門番のような人間はいないようだな?。』

『うん。あそこは全部機械が支配してるの。』

『なんと!機械とな?。』

『うん。研究する人も滅多に来なかったの。全部ロボットが色んなことを調べてた。』

『ほぉ。そこまでの技術があるのだな。』

『入り口には監視カメラが2つとレーザー銃が取り付けてあるって監視のロボットが言ってた。』


 再びスキルを使い、入り口部分の周囲を見渡す。


『監視…カメラ…レーザー…銃…おっ!あれだな見つけたぞ。』


 シャッターの上部両脇に2つのカメラ。その外側に2つのレーザー銃が見えた。


『僕たちが逃げれたのは、1ヶ月毎にあるメンテナンスの日だったんだ。その日ならちょっとの間、カメラとかレーザーは機能してないって研究してる人が話してるのを聞いてて。でも、見つかっちゃった。』

『そうか…。』


 ウチは千里眼を発動したまま右手の人差し指と中指を立て狙いを定める。


『では、始めるか。第2の魔弾!』


 合計4発の魔力弾を撃つ。


『よし!終わったぞ。』

『豊華さん、何をしたの?』

『ここから監視カメラとレーザー銃を狙撃した。第2の魔弾は硬質化させた魔力の弾丸を超遠距離から発射出来るのだ!』

『全然、遠くて見えないのに…凄い!』

『千里眼との併用だな。こういう使い方もあるということだ。』


 キラキラした真っ直ぐな優の瞳に少しドキドキしてしまう。

 はぁ。本当に可愛いぞ…。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


『さて、入り口に着いたようだが…このシャッターの中か?』

『うん。ここから地面の中に繋がってるの。』

『地下か。優。決してウチから離れるでないぞ。』

『うん。絶対。離れないよ!』


 ウチは優と手を繋ぎ優も握り返してくれた。


『良し!良い子だ!行くぞ』


 ここからが本番だ。

 ウチは小さく深呼吸し 第1の魔弾 でシャッターを破壊した。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


『第3の魔弾!。』


 潜入後、すぐに神具を発動する。


『この周りで光ってる玉は何?』

『魔力の塊。砲撃の為の台座だ。全部で10個ある。この1つ1つから第1の魔弾が撃てるのだ!。』

『これで。沢山撃てるんだね!』

『ああ、そこだな。』

『そっちにもあるな。』


 ウチは次々に監視カメラを破壊していく。


『妙だな。』

『え?』


 建物内を少しずつ調べながら下の階層に降りていく。

 特に重要そうなモノもなく、ただ真っ白な何もない部屋が並んでいるだけだった。

 だが、この建物自体には特殊な鋼材で建造されているようで千里眼が全く機能しないのだ。


『正直、上部のカメラを壊した時点で敵が攻めて来ると考えていたのだ…それに、これだけカメラを破壊してるのに建物自体が静か過ぎるし。優よ。ここにはロボットが居たのではなかったか?』

『うん。いっぱい居たよ。』

『む。それなのに警戒警報の1つも鳴らんとは…どういうことだ?…何か、イヤな予感がするな。』

『うん。変な感じ。』


 その予感は的中してしまう。

 咄嗟の判断で優を抱き抱え後ろへ跳ぶ。


『っ!優よ!こっちへ!』

『え?』


 ウチと優が今さっきまでいた箇所が振り下ろされた巨大な腕で床ごと抉られ粉々に粉砕された。


『何だ?コイツは?キモいのぉ。優よ知っているか?』

『知らない!こんな化け物!』


 そこに居たのは、2メートルを越える巨体と、ドロドロに溶けたような身体にギョロリと此方を見る大きな目玉を持つ化け物だった。異常に長い舌がだらだらと唾液を垂らしている。


『そうか。では、倒すぞ!第1の魔弾!』


 ウチは優を左腕で抱き抱えながら右手で神具を発動させる。


『やった!』

『いや。まだのようだ。』


 第1の魔弾は化け物の腕に命中し右腕を吹き飛ばす。

 だが、すぐに新しい腕が生え再生した。


『ええ。取れた腕戻ったよ?』

『再生能力か。厄介だな。優よ。しっかり掴まっておれよ!』

『うん!』


 ウチの身体に強く抱き付く優。


『がぁぁああああああああああああ!』


 再び放たれた化け物の左腕の攻撃を跳び退き躱す。


『第3の魔弾!これでどうだ?』


 今度は連弾を試す。

 十の砲台から放たれる数十の魔弾が化け物を呑み込んでいく。

 だが…。


『あっ…また…。』

『キリがないのぉ。ん?あれは?』


 それでも、化け物は失った部分を瞬時に再生させていく。

 しかし、再生の間際一瞬見えた輝き。


『豊華さん?どうしたの?』

『奴の 首の後ろ が光ったような気がしてな。』

『え?』

『狙ってみるか。第2の砲弾!』


 ピンポイントで光った位置を狙い撃つ。

 弾丸は的確に目標を捉え貫通した。


『がぁぁぁぁあああああああああああ。』


 唸り声を上げながら全身から煙を吹き出す化け物。


『やった!消えてく!えっ!?』

『どうやら、首の後ろが弱所だったようだな。む?』


 ドロドロに爛れていた部分が煙となって蒸発すると中から人間が力無くその姿を現した。

 年齢が50台くらいの白髪の男性。全身から肉が削ぎ落とされた骨と皮だけの肉体が生々しい。


『これは…いったい?。』

『この人…知ってる…。』

『何と?』

『僕と一緒にここに閉じ込められてた人だ…。』

『何と?それは本当か?』

『うん。でも、あんな姿になれるなんて知らないよ。』


 暫くすると、男の肉体も砂のようになって崩れて消えた。


『何か…あるのは確実だな。取り敢えず進んでみよう。』


 そう言って、優の手を取ろうとした時…。

 優が何かに反応した。


『え?』

『む?どうした優よ。』

『聞こえたの。』

『聞こえた?』

『うん。僕を呼んでる。』

『おい!優!待て離れるな!』


 突然、真剣な表情で走り出した優。

 ウチも慌てて、その後ろを追い掛けた。 

 この胸騒ぎは何なんだ…。


『ここから…聞こえたの。』

『ここ…。』


 大きな扉。

 ぴっ。という機械音と、左右に開いていく扉。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


 そこは、白い。真っ白な空間。

 広く、とても広い。


『地下にこのような場所があろうとはな。』


 周囲を見渡しながら空間内を進んでいく。


『あっ…』


 優が立ち止まり。声を上げる。


『優?』


 優はある一点を見つめ足を止めている。

 ウチは優の視線の先を辿る。


『優…ちゃん?』

『け…健…ちゃ…ん…?生き…てた…の?』


 空間の中心にいる1人の男の子。

 優の反応から、あの子供が友達の健という子だとわかる。


『優ちゃん!』

『健ちゃん!』


 お互いに走り出す2人。

 2人の距離が近付いていく。

 ゾワッと背筋に電流が駆け抜けた。

 その時、健という子供が僅かに笑った?ような気がした。


『待て!優!』

『え!?』


 急ぎ優を引き寄せた。


『豊華さん?』

『良く見ろ!危ないところだったぞ!』

『え?』


 優を引き寄せたことでその場に立ち尽くしている。


『優…ちゃん…何で…逃げ…るの?もう少しで…優ちゃん…のこと…食べれたのにーーーーー!』


 健の肉体が急激に膨張。

 肉の塊のようなものが健の身体を呑み込んむ。全身の肉は腐ったように爛れ床へと落ち続けてる。


『健…ちゃん…どう…して?』

『あは、ははははははははーーーーーー。』


 上階で倒した化け物と同じような姿に変化した健。だが、その巨体はゆうに3メートルを越えていた。

 理性があるのか無いのか…。

 笑いながら複数の目玉が優を見ている。


『これは…いかん、流れだな。』

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