第214話 魔水極魚星 シルクルム・アクリム
ーーーアクリスーーー
コオオオオオォォォォォォォォォォン………。
私の神具【魔水極魚星 シルクルム・アクリム】で呼び出した白鯨が高く何処までも届くような透き通った声を奏でる。
エーテルで創造した白鯨の巨体は空中を水中のように泳ぐことが出来る。
そして、巨大な身体と牙を武器に閃君へ飛び掛かった。
『で、でけぇ!?。く、鯨かよっ!?。』
『はは!。これならどう!。』
圧倒的な大きさから繰り出される突進。躱されたとしても巨大で鋭い牙の追撃が来る。閃君でもそう簡単には凌げないでしょう?。
『この野郎がぁっ!。』
『は?。え?。な、なななんで受け止めてるの!?。』
私の創造した白鯨は普通の鯨じゃない。
全長は100メートルもある。重さだって500トン以上だ。
それを受け止めた!?。
『ぎぎっ…ぐっ…さ、流石に重てぇな!。』
閃君の身体から溢れ出るエーテル。
そして、人族の里で会得したって聞いた人功気。
その2つが合わさって別の…閃君のみが操れる独自の途轍もないエネルギーになって渦巻いている。
『らっ!。』
『うそっ…。投げるの!?。』
コオオオオオォォォォォォォォォォン………。
どんな馬鹿力なのよ!?。有り得ない。単純な肉体強化しかしてないのに!?。
なら、これならどうだ!。
『っ!?。』
投げられた勢いのまま海の中に飛び込む白鯨。海の中ならこっちの方が有利な筈!。
『やっちゃえ!。』
コオオオオオォォォォォォォォォォン!。
海水を操り巨大な津波を生み出す白鯨。
『呑み込まれちゃえ!。』
『今度は津波か!。何でもありかよ!?。』
『それはこっちの台詞だと思うよ!。閃君!。』
50メートルを越える大津波が閃君の立つ砂浜を呑み込む。あっという間に閃君が居た場所が波の中に消えた。
私はトビウオの力で空に逃げる。
砂浜は海の下に沈み、一面が海の水で侵食され、閃君の姿はない。
コオオオオオォォォォォォォォォォン!。
喜びの声をあげる白鯨。
けど…閃君のエーテルが消えてない。どこ?。全然、衰えてない感じがする。ダメージを負ってない?。
『っ!?。上っ!。』
閃君は私の遥か頭上へと跳躍して津波から逃れていた。
ジャンプ力まで桁違い…本当に…もう!。楽しませてくれるなぁ!。
『あぶねぇ…。』
『凄いね!。やっぱり、凄い!。』
『いやいや。すげぇのはお前だろ?。あんなデカイ鯨を操ってんのに全然エーテルが減ってないぞ?。』
『それは閃君も同じでしょ?。けど、次の攻撃はどうかな?。』
パチンッと指を鳴らす。
それを合図に水中の白鯨から大量の水の塊となった潮吹き。ジェット噴射のように発射される。
『はは!。空中じゃ避けられないでしょ?。これで終わりだよ!。』
『はっ!。舐めんな!。』
『っ!。』
エーテルの噴射を利用した方向転換。
並外れたエーテルの量があって初めて出来る芸当だ。姿勢制御だって難しい調整が必要な筈なのに?。
『おっと。まだ慣れねぇな。』
『そうか…君の仲間にいたね。確か八雲ちゃん。だったっけ?。』
閃君は仮想世界で仲間の能力を使って戦ってたって言ってっけ?。器用にも程があるよ。
『ああ。緑国まで来るのに時間があったからなコツだけ教えて貰ったのさ。ということで追撃させて貰うぜ!。』
『っ!?。くっ!?。速い…。』
エーテルの噴射を繰り返し空中を高速移動する閃君が急接近し私を蹴りつける。
しまった。トビウオが破壊された。
バランスを崩した私はそのまま落下。エーテルで新しいトビウオを生み出さないと!。
『させねぇ!。』
『ぐっ!。』
再び、追い付いて追撃してくる閃君の拳をなんとか防ぐ。
くっ…重くて…痛い…腕が痺れる…。
エーテルでの強化がなかったら今の一発で両腕が粉砕骨折だよ!。
『くっ!。お願い。白鯨。』
『っ!?。またか!?。』
白鯨の潮吹き。
私と閃君の間を撃ち抜き距離を作る。
『もっと…もっと!。』
『くっそ。しつけぇ!。』
潮吹きの連射。連射。連射。
なんとか態勢を立て直さなくちゃ。
コオオオオオォォォォォォォォォォン………。
浮上する白鯨。その背中に乗る。
『今度は何をする気だ?。』
『この白鯨の最大の技だよ。今度の攻撃は避けられる?。』
『っ!?。空が!?。』
上空に打ち上げ散布した大量の水。
それを冷えきった大気で凍らせた氷の槍。
『貫けぇ!!!。』
『なっ!?。馬鹿やろう!。多すぎだろうが!?。』
空を埋め尽くす程の氷の槍が降り注ぐ。
次々に発射され地面へと吸い込まれるように突き刺さっていく。
ドドドドド。ドドドドド。ドドドドド。
地面を揺らす轟音が、けたたましく鳴り響いた。全ての槍が降り終わった頃。視界に映るのは氷の柱が並ぶ幻想的な光景だった。
『はは!。これなら、流石の閃君でも防ぎ切れないでしょ?。勝った。勝ったよね!。これ!。』
『いんや。まだだ!。』
『っ!?。』
うそ…あの攻撃でも無傷なの!?。
僅かに服が破れているけど、閃君の身体には目立った傷は確認できない。
『その鯨、倒させて貰うぜ!。おらっ!。』
コオオオオオォォォォォォォォォォ…。
拳が白鯨の真横を捉えた。
その威力は、白鯨の身体を容易く裂き、内蔵を抉り、真っ二つに分断した。
『くっ。星に戻れ。』
白鯨の身体を7つの星に戻して水の上に着地する。まさか、私の白鯨を一撃で倒しちゃうなんて…。
閃君はまだ本気を出していない。それは理解できる。口では全力って言ってたけど。今の 状態 の私の強さじゃ、確かに閃君の足元にも及ばない。
イグハーレンを倒したって聞いてたけど…イグハーレンごときじゃ相手にならないよね。この強さは…。
折角、神様に力を貰ったのに…。
折角、命を貰ったんだ。負けない。
『終わりか?。』
閃君の狙いは分かっている。
こっちの攻撃を凌ぎきることで、何をやっても通用しない。勝てないって思わせようとしている。
心を殺すことで敗北を相手に認めさせようとしているんだ。
聞いていた通りだ。
戦闘自体を避けようとするって言ってたもんね。
『まだ。終わらないよ。私は、君を倒して自分の力を証明するんだ。』
今度こそ、全力だ。
私の全てを出し尽くしてでも閃君を倒す。
『【魔水極魚星 シルクルム・アクリム】よ。十一の星を束ね。その輝きを天に捧げなさい!。そして…真の我が世界を創造せよ!。』
『っ!?。これは!?。』
閃君…私の本当の世界を君に見せてあげる。
ーーー
ーーー閃ーーー
鯨の化け物を粉砕してもアクリスの戦意を削ぐことは出来なかった。
つまり、まだ切り札を隠している。余裕があるってことだ。
相手の攻撃を悉く防ぎ、敗北感を与えることで戦闘を終わらせようとした。
アクリスは俺の知らない情報を持っている。
それは間違いない。灯月のことは確実だ。俺達の情報も誰かに教えられているようだしな。
敗北を認めさせれば色々聞けると思ったんだが、彼女の何かしらの 決意 には通じなかったらしい。
『十一の星よ…。』
まだまだやる気のアクリス。
十一つの星がアクリスの周囲で回転を始める。
同時に砂浜と海で創られた世界が歪んでいき、新たな…いや、本来のアクリスの世界が創造され始めている。
何なんだ?。この能力は?。
世界そのものを創造しているのか?。世界に干渉しているのか?。どちらにせよ。今までの能力者でこんなこと出来る奴はいなかった。
世界は一瞬で輝きに包まれた。
砂浜と海の世界は一転。
視界に飛び込んできた映像は…。
『ようこそ。私の世界へ。【魔水極星 海底楽園 シルクルム・アクリム・フィシルセロ】。この世界で閃君。君を倒すよ。』
地面は細かな砂。
おとぎ話に出てくるような美しい世界。浦島太郎の物語に出てくるような海の生き物達の楽園だ。
見上げた先には揺らめく水面。
そこから優しい太陽の輝きがこの楽園を照らしている。色とりどりの珊瑚。様々な模様の魚達。海亀、サメ、エイなどが優雅に泳ぎ。足下には貝や甲殻類が砂の中に潜んでいた。
驚くべきは、ここが水中ではないってところか。確かに魚達は泳いでいる。この空間の周囲にあるのは海水ではない。エーテルによって満たされている。故に呼吸も出来るし普通に抵抗なく動くことも出来る。
エーテルの海だ。
『どうかな?。私の世界は?。』
『ああ。凄く綺麗だ。』
『っ!。そうかぁ。えへへ。閃君のそう言って貰えると嬉しいね。』
5メートル先にいるアクリス。
また周囲に星が集まっていく。
『この世界では私の能力に制限がかからない。使い放題ってわけ。今まで本気じゃなくてごめんね。君を甘く見ていたわけじゃないんだ。自分の力を試したかっただけなの。』
『お前の…力、か。』
『これからは本当に隠し事はなし。私の本当の全力を君にぶつけるから。閃君。どうか。受け止めて欲しい。』
覚悟を決めた瞳。
纏うエーテルが力強さを増していく。
『神具【魔水極魚星 シルクルム・アクリム】よ!。全ての星の力を解放せよ!。』
十二の星。アクリスの神具が彼女自身の願いに呼応するかのように、十二の方向に飛び散っていった。
世界が揺れ動き、エーテルが乱れる。
『一の星。二の星。三の星。四の星。五の星。六の星。七の星。さぁ。現れて。』
あれは、アクリスの周囲に次々と現れたのは、今までの戦いでアクリスが召喚していた生き物達。
金魚、鉄砲魚、飛び魚、甲冑魚、一角、鯨。
そして、戦いではいなかったがイルカまで召喚された。しかも、その全てが 群れ となって。
『八の星よ。海底より眠りし双頭の龍よ。その双頭の顎門で我が敵を屠り去れ!。海底の渦より目覚め、【海神界】へ顕現せよ!。』
出現したのは2つの頭を持つ巨大な双頭の龍。大きさはさっきの鯨以上。白い鎧のような鱗で覆われた胴体。刃物のように鋭い鉤爪のついた2本の腕と連なるように並ぶヒレ。長い尻尾は尖端に棘までついている。
『九の星よ!。海底より現れ、世界を渡る為に浮上せよ。【魔水極星船 シルクルム・アクリム・アルグファシル】!。』
今度は巨大な船が出現する。
巨大な帆でエーテルの流れを受け海上へと上がっていく木製の船。幾つもの大砲が俺に照準を合わせていた。
『十の星よ!。生きとし生ける生命を生み出す全ての母。海の城。神の城。命の始まりにし帰る故郷。さぁ。顕現せよ!。海神なる母神の住まう居城!。【魔水極星城 シルクルム・アクリム・サルメルト】!。』
城まで出現しやがった。
氷か水晶か。海上からの光に輝く美しい白銀の城。城が出現した瞬間、周囲のエーテルが更に濃度を上昇させ周囲を泳ぐ生物達の動きが活発になった。
『最後だ。十二の星よ!。我が身を守る鎧となり、我が敵を滅ぼす槍となれ!。【魔水極星鎧槍 シルクルム・アクリム・ボルュリグ】!。』
最後はアクリス自身を包む鎧と槍。
彼女自身を強化する能力か。
数万の生命を内包する世界。巨大な海の生命群。見下ろす船。聳える城。
これが彼女の…アクリスの完全戦闘態勢。
『お待たせ。閃君。改めて名乗るね。』
鎧姿のアクリスが魔水を身体の周囲へ展開する。
その姿はまさしく海の神に相応しく。あまりにも神々しい。
『我が名はアクリス!。我が神、カナリア様とナリヤ様により神の力を授けられた神眷者だ!。』
カナリアとナリヤ。
2柱の神から力を貰ったのか。どおりで強い筈だ。
『行くよ。閃君。私の全部を受け止めて!。』
ーーーーー
ーーー緑国 神聖界樹 中枢ーーー
神聖界樹の最も重要な場所。
神聖界樹から溢れる無限のエーテルを生み出している核。
何重にも強固な枝や茎に守られている巨大な赤い水晶は休みなくエーテルを生み出し続けている。
ーーーエンディアーーー
準備は整った。
異神との戦い。これに勝てば私達夫婦の理想の世界を実現できる。
あともう少しで…。
『あなた。ついに始まりますよ。』
『ああ。彼の者達を倒し理想の世界を手に入れる。例え、どの様な犠牲を払ったとしても。』
『ええ。私達の世界を…。理想の世界を創りましょう。』
巨大なモニターの映像には樹海の様子が映し出されている。
あの場所だけは神聖界樹のエーテルの影響を受けていない樹界の神が支配するエリア。
もし、樹界の神が私達が神眷者になる前にこの地を支配してしまっていたのなら私達には勝目すらなかったでしょう。
映像を見ると、映像越しに此方を睨み付ける異界の神達の姿も確認できる。
全部で10名。数日の小競り合い、昨夜の戦闘では見なかった娘もいる。そして、異神ではない娘もいるわね。おそらく、異界人でしょう。
確かに、この世界の住人よりは強力な力を持っていると聞き及んでいます。ですが、異神に比べると取るに足らない存在です。緑国の最高戦力であれば十分に対応し勝利することが出来るでしょう。
懸念すべきは、やはり異神の存在。
数だけなら戦力の差は歴然。しかし、異神の力を我々は図りかねている。実際にその力を見るのは初めてなのだ。
せめて、一度でも能力を確認できていれば、作戦もより念入りに練ることが出来たでしょうに…。
『あの者達が我々の敵か…。』
『ええ。その通りよ。異神、異界人、神獣もいるわね。』
『準備の方はどうなっている?。』
『完了しています。皆さん各自の持ち場で待機中です。万が一に備え、私の軍隊を各国に五小隊ずつ配備していますし、神聖界樹の根元付近にも同様です。』
『本当に彼等はこの場所まで来るのか?。』
『はい。それは間違いないかと。』
事実です。
彼等の置かれている状況、心理状態、立場を考え、我々に勝利するとなると答えは1つしかありません。
しかし、答えが分かっていても方法が分からない。
『もう少し彼方側の情報が欲しかったですね。方法までは分かりません。』
『そうか。』
『ですが、ご安心下さい。神聖界樹の周囲には我が樹装軍隊の空軍部隊を配備しています。敵がどの様な手段を持ち入ろうと迎撃は可能です。』
『ふむ。期待している。』
『はい。』
ええ。そうよ。
敵はここに攻め込むしか活路を見出だせない。ここを攻め落とすしか勝利は無いのだから。
方法は分からないけど。必ず迎撃してみせる。
ーーー
ーーー光歌ーーー
『想像以上ね。見てよあの軍隊の数。ここからでも、うじゃうじゃ確認できるわ。やっぱり敵に此方の作戦がバレてるわね。』
敵に頭の切れる奴がいる。
私達の置かれている状況を考察して的確に作戦を練って来る奴が…。
はぁ。やりづらい。
私、美緑、美鳥、ラディガル。
燕、夢伽、詩那、兎針、奏他、八雲。
こっちの戦力は10人。対して緑国は…はぁ。数えたくもない。
広範囲で気配を探っても敵敵敵。何処を探っても敵しかいない。
神聖界樹の根元付近にも、昨日の軍隊が配備されているし、巨大な神聖界樹の周囲にもヘリが何機も飛んでる。ここからじゃ、黒い点にしか見えないけど、黒い塊が気持ち悪いくらいいるのは確認できる。
そして、予想通り各小国は神聖界樹に近い位置で兵を待機させている。外から攻めても中から攻めてもすぐに、それでいて連続的に駆け付けられる位置取り。小国の中にもあの軍隊がいるし…敵の配備は完璧みたいね。
大きな強さを持った気配は神聖界樹に集中しているところを見ると、敵も私達が神聖界樹を狙っていることに気付いているってことね。
狙いもバレてるか…。
『美緑。準備は良い?。貴女がこの戦いの要なんだけど?。』
『はい。問題ありません。敵がかつての仲間でも…私は戦います。』
口では強がっているけど、吹っ切れたわけじゃない。痩せ我慢なのが伝わってくる。本当は休ませてあげたい。
けれど、私達が勝つには美緑の力が必要不可欠なのも事実だし…。四の五の言っていられない状況だしなぁ…。
『皆も準備は良い?。作戦は昨日伝えた通り。援軍は期待できない。時間も限られている。完全にスピード勝負ってことで、宜しく。』
敵に包囲されるのが先か。私達が神聖界樹を手にするのが先か。
『はい。空のことは任せてください。』
美鳥が翼を広げる。
美鳥には、空中で停滞しているヘリをお願いした。あの邪魔なヘリをなんとかしないと安全に神聖界樹へ侵入できないし。
『私も、全力で行くよ。雑魚敵駆除は任せて。』
燕には神聖界樹の根元にいる軍隊の排除を任せた。あの場所に配備されている軍隊さえ居なければ増援が来るまでの時間を大幅に稼ぐことが出来る。
『貴女達もお願いね。決して1人で行動しては駄目よ。』
『はい!。必ず敵を倒します!。お願いしますね。奏他お姉さん!。』
『うん。今度は必ず役に立つからね。』
夢伽と奏他は一緒に行動させる。
異神でない2人には荷が重いかもしれないけど、少しでも戦力が欲しい状況だからね。出来れば弱い敵と当たって欲しいけど…。
『宜しく。ラディガル。』
『ああ。お前は俺が守るぜ。』
『違うし、一緒に戦うだし!。』
詩那にはラディガルを付けた。
ラディガルの雷を強化出来る詩那の能力は相性が良いから。
ラディガルが一緒だし大丈夫だとは思うけど…。
『此方はお任せください。』
『私も助けはいらない。』
異神である兎針は心配していない。
けど…。
『八雲。本当に大丈夫なの?。』
『構わない。神さまが1人で戦っているのに私だけが数人の友と共に戦う訳にはいかないからな。』
めっちゃ心配なんだけど…。
頑なに1人で戦おうとする八雲。コイツ、閃の言うことしか素直に聞かないんじゃない?。どっかの誰かさんみたいね。
はぁ。本当は異神に関係のない娘達は巻き込みたくないんだけど。
恥ずかしくて口には出さないけど…皆…どうか無事でいて…。
『さぁ。行くわよ。美緑。お願い!。』
『はい!。分かりました。』
葉の翼を羽ばたかせて美緑が前に出る。
『行きます。神力…発動!。望む結果は【緑国の地中に張り巡らされた世界樹の根よ 緑国を覆う壁となれ】!。』
ゴゴゴゴゴ………ドドドゴゴゴゴゴ!!!。
その瞬間、緑国全体が揺れ始める。
2千万平方キロメートルを越える大地を持つ緑国の全てが大地震に見舞われた。
緑国の中央に存在する神聖界樹、その周辺以外の大地の表層が陥没し地下の空間に次々と崩落した。
森も、林も、草原も、平野も…全ての地面が崩れ、落ちていった。
配備されていた兵も軍隊も例外なく崩壊に巻き込まれていった。
『誰だか知らないけど。確かに作戦は読まれていたわ。けどね。アナタが用意した軍隊含め小国の兵の数、配置。その全ては対人用でしかない。アナタ達が相手するのは 神 なわけよ!。私達の力を見誤ったこと、その身に刻みなさい!。』
ここに神と緑国との戦いの火蓋が切られた。
次回の投稿は23日の木曜日を予定しています。