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第208話 緑国での再会

 人族の隠れ里、地下都市から出発して7日。

 途中、地上に住む人族を地下都市の場所へ導いたり、夢伽、詩那、燕と人功気の扱い方を練習したりと時間を費やし、やっと緑国の支配エリアに到着した。


『ここが、緑国…か。』


 山道を抜けた先。

 崖の上に俺達は到着した。眼前には緑色の広大な大地が地平線の彼方まで続いていた。


 広いな…。話では七大国家の中でも二番目に広い支配エリアを持っているらしい。

 何よりも目を惹くのは雲よりも高く伸びる、巨大な、それはもう巨大な大樹だ。

 あれは、美緑の世界樹よりもデカイな。

 更に驚くべきは、木そのものが呼吸するようにエーテルを生み出しているということだ。

 だからか、緑国の周辺のエーテル濃度が異様に濃いのは…。


 大樹を中心に森が広がり、奥には草原、それを越え平地帯が広がる。

 そして、手前の方に一際深い緑が生い茂った樹海。中心の森よりも木々の背が高く、枝や根が各々に絡まり合う。一度入れば迷ってしまうだろうということがここからでも分かってしまう。

 

 あそこだけ、感じるエーテルの質が違う。

 懐かしい感じに安心感を覚えつつ視線を下げる。国境に沿うように草木の枝や蔦が網のように絡まっている分厚い壁が地平線まで伸びていた。高さも20…30メートルいや、もっとだな。50メートルはあるだろうか?。


『はい。ちょうどこの崖の下に私が目覚めた虫族の小国があります。』


 俺達は兎針の案内のもと国境内へと向かう為に崖を下る。

 しかし、そこには俺達を待っていた手厚い出迎えでも、敵意を剥き出しにした警戒でもなかった。


『何だ…これ…。』

『こ…これは…。ああ。そんな…。』


 入り口である木製の大きなゲートは無惨にも破壊されていた。


 おそらく、虫族達が育てていたのだろう。

 様々な種類の果物、作物、草花には、火が放たれた痕跡。黒く焼き焦げた悲惨な状態だ。


 何よりも俺達の目を釘付けにしたのは…。


『なぁ…兎針。あれ…この国の住民達か?。』

『え?。あっ…。ああ…。まさか…。そんな…なんてことを…。』


 俺の指差す方へ視線を向け…目の前の状況に

驚愕の顔で座り込む兎針。

 視線の先には…。


『酷いな…。』


 肉体の内側から植物に食い破られ、干からびたように死んでいる。それは、その身を養分として育った花を頭上に咲かせる虫の特徴を持つ人型のモンスターだった。冬虫夏草だったか?。それに似ている。

 おそらく、彼等がここに住む住人だったのだろう。


『他の人達は…。』


 蝶を四方八方へと飛ばし周囲を調べ始める兎針。しかし、結果は…。


『皆…死んで…います…。生きている方々は…いません。』

『いったい…何があったんだ?。』

『わかりません。けど、【樹界の神】が民を守ってくれていた筈なのですが…。』

『樹界の神か…。』


 遠く見える森林。

 多分…アイツがいる。何があったか聞かなければ。


『兎針。立てるか?。』

『はい…。』

『皆も聞いてくれ。ここから見える樹海に俺の仲間がいる。一先ず、合流しよう。ここで何かあったのか、アイツなら知っている筈だ。』


 俺の指差した方角は木々が生い茂る樹海。

 あの一角だけ、巨大な大木からのエーテルの影響を受けていない。

 俺の提案に皆が頷いた。


『止まりなさい。』


 樹海に差し掛かろうとした。その時。

 突然、木の上から声を掛けられた。


 殺気を放つ鋭い眼光が複数。


 その正体は10体のハーピィだった。

 人の身体に鳥の手足を持つモンスター。空中での高速戦闘を得意とし、群れで行動する性質を持つ。


『お前達は…。』

『この先に部外者を通す訳にはいかない。直ちに立ち去れ。さもなければ…。』


 ハーピィ達が鋭い爪を光らせる。


『この先に異神がいるだろう?。』

『っ!?。何故それを外部の…人族の者が知っている?。』

『俺達も異神だ。ここにいる仲間に会いに来た。』


 ざわつくハーピィ達。


『もしかして…閃さんですか?。』

『は?。』

『な…我が神よ。何故、この場に!?。』


 とある人物の登場に10体のハーピィ達が一斉に跪いた。


『美鳥か?。』

『ええ!。覚えのある雰囲気のエーテルを感じたので来てみたら…良かった。無事だったのですね!。燕ちゃんも!。元気そう。』

『久し振りだね。美鳥さん。』

『はい。お久し振りです。』


 現れたのは美鳥(ミドリ)だった。

 そうか。美鳥はハーピィの種族だったもんな。【鳥人精霊神族】。この世界だと【鳥人神】か。


『あの…神よ…この者達は…。』

『安心しなさい。心強い助っ人です。ええ。考えられる限り最強の…。』

『っ!。』

『私はこれから彼等を案内します。貴女達は警戒を強めなさい。何者も中には入れないように。』

『は、はい!。』


 ハーピィ達が一斉に飛び立った。


『お待たせしました。』

『美鳥…。』

『詳しい話しは後程。ふふ。皆さん、閃さんに会いたがっていますよ。』


 やっぱり数人のメンバーがここにいるんだな。


 俺達は美鳥に連れられ樹海の奥へと入っていった。


ーーー


ーーー夢伽ーーー


 地下都市での戦闘。

 出会って間もなかった私とお姉さん方は戦いを乗り越えて、今までよりも仲良くなれた気がします。

 互いに信頼して、背中を預け合える友人。

 そして、同じ男性を好きになった同士でもあります。

 加えて、緑国までの7日間の旅。

 閃さんのいないところで私達は互いに交流を重ねることで強い絆が生まれました気がします。


 旅の間はお兄さんのお世話になりっぱなしでした。

 常に気配を感じ安全な道の確保に始まり、兎針お姉さん、八雲お姉さん、燕さんと協力しての食料の確保。安全な休息場を探して、寝所の確保まで。

 お兄さんと奏他お姉さん、詩那お姉さんが協力して食材を調理して美味しい料理を私達に用意してくれました。


 うう…。やっぱり私は…お役に立てません…。

 何をやっても中途半端になってしまいます。

 お兄さんはそんなことない。と言ってくれますが、私だって役に立ちたいんです。


 心の変化もありました。

 奏他お姉さんがお兄さんに惹かれ始めているんです。

 何でも、一緒に食材を調理している時、凄く楽しかったらしく。気付いたら好きになっていたそうです。元々少し惹かれていたのは見ていて分かりましたが、やっぱり恋心を自覚した女性は凄く素敵になります。

 奏他お姉さんも最近凄く綺麗になってます。

 それは見た目以上に行動や仕草に現れていてお兄さんのことが好きなんだなぁと思わせてくれるんです。


 皆がお兄さんに惹かれてる。

 けど、同時にお兄さんの恋人の方々に対する緊張が高まっていくのを感じます。


 そして…ついに…。今日、緑国にたどり着き。そこで…。


 美鳥さんという方が現れました。

 黄緑色の長い髪。緑色のドレス。優しそうな笑顔がとても印象的な凄く綺麗な人です。腕から羽が生えているハーピィっていう種族なんだそうです。


『あ、あの…燕さん。』

『ん?。何?。』

『あの方はクロノ・フィリアの方なのですか?。』

『それ!。ウチも知りたい!。』

『『私も。』です!。』』


 私の質問に詩那お姉さん、兎針お姉さん、奏他お姉さん、八雲お姉さんが反応した。


『うん。そうだよ。美鳥さんも私と同じで途中からクロノ・フィリアに入った組。けど、元々クロノ・フィリアの皆とは繋がりがあって昔からの知り合いだったみたい。』

『はぁ。そうなのですね。』

『じゃあさ。じゃあさ。先輩とは…どんな関係なの?。もしかして…。11人の…。その…恋人の一人…なの?。』

『『『『『っ!?。』』』』』 


 詩那お姉さんの質問に私達の中に緊張が走りました。


 そうです。もしかしてお兄さんの恋人なのかな?。ついに…対面の時が!?。


『違うよ。美鳥さんは別の恋人がいるからね。閃さんとは単純に仲間として仲が良いだけだよ。』

『そ、そっか~。』

『うぅ…き、緊張した~。』

『けど…この先に…いるみたいだよ?。一人。ああ。けど、比較的安心かも?。』


 燕さんが小さな声で呟いた言葉に安堵が一気に緊張へ変わった。


『お~い。皆も行くぞ。離れたら迷子になっちまうらしいからな。離れるなよ?。』

『『『『『『はいっ!。』』』』』』


 私達はお兄さんにくっついた。

 だって離れるなって言われたもん。


『いや、確かに離れるなって言ったが…くっつき過ぎじゃね?。てか、動きづらい…。』


 私はお兄さんの背中に抱きついた。

 詩那お姉さんと兎針お姉さんはお兄さんの腕にしがみついて、奏他お姉さんは恥ずかしそうにお兄さんの服を掴む。八雲お姉さんはお兄さんの胸に張り付いてる。


 蔓や枝で出来たトンネルを進んでいく。そこは少しずつ下り坂になっていて等間隔に光る花が灯り代わりに置いてあった。

 暫く歩いていると奥の方に木の扉が見えてきました。


『ふふ。相変わらずモテモテですね。閃さんは。』

『う、うん。凄いよね。閃さんというより周りの女の子達の熱量が…。こんなところ灯月ちゃん達に見られたら…。』

『ふふ。想像しただけで恐ろしい…。けど…。もう遅かったかもしれません…。』

『あっ…。もしかして…。いるの?。』

『はい…。この先に…お一人…。』


 後ろで話す燕さんと美鳥お姉さんの会話から不穏な雰囲気を感じた瞬間でした。


『おっ!?。』


 奥に見えた扉が勢い良く開いて、中から無数の蔓が伸びてきて…。


『きゃっ!?。な、きゃははは。』

『何これ!?。はぅ…服の中に…んっ…。』

『きゃははははは!?。やだっ!。くすぐったいよっ!?。ははははは。』

『いやぁぁぁぁぁ!?。パンツの中に入ってくるんだけど!?。』

『これは?。何?。』


 私達の身体は伸びてきた蔓に巻き付かれ閃さんから引き離された。そのまま、身体のあちこちをまさぐられ、くすぐられます。

 

『はぁ…。美緑…。コイツ等は俺の仲間だ。その辺にしてやってくれ。』

『………。』


 お兄さんの一言に蔓の動きが停止。

 ゆっくりと全員が地面に下ろされました。

 何だったの?。今の…。


 その後、開いた扉から現れたのは手のひらくらいの大きさの妖精さん?。

 緑色の髪。純白のドレスと緑色の装飾。金色の飾り。そして、葉っぱのような4枚の翼。


『せんさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああん!!!。』

『おっと!。ああ。美緑…。また会えて良かった…。』


 妖精さんは一瞬で人の大きさに変身するとそのままお兄さんへと抱きつきました。お兄さんはそのまま妖精さんの身体を受け止めて地面に倒れた。

 あの人…見たことある。前世で、緑龍絶栄のギルドマスターだった…。確か…美緑(ミリョク)さん?。


『閃さん。会いたかったです。』

『俺もだ。ごめんな。最後に一緒にいてやれなくて。』

『ううん。また。会えたから…。』

『美緑…。』

『閃…さん…。』


 見つめ合う閃さんと美緑さん。

 普段から優しい顔をするお兄さんだけど、あの顔は私達には見せていない顔だ…。本当に美緑さんが大切だという気持ちが伝わって来るみたい…。

 ズキンッ!。

 っ!?。何でしょう…あのお兄さんの笑顔を見てると胸が苦しい…。モヤモヤする。

 その気持ちは私達全員が同じだったようで、お姉さん達全員が2人の様子を見つめていた。


 暫く見つめ合っていた2人。そのまま、顔が近づいていき唇が重なりました。


『『『『『っ!?。』』』』』

『あらあら。大胆。羨ましいですね。私も早く威神さんにお会いしたい。』

『うう、代刃君…。私も…会いたいよぉ。けどぉ…。ふえぇぇぇん。』

『お兄さん…。』

『先輩…。』

『閃さん…。』

『閃君…。』

『神さま…。』


 2人には、もう周囲の様子が見えていないのでしょう。完全に2人だけの世界で互いの唇を求め合っていました。


『あのさ。閃。そろそろ止めてやんなよ。』

『ん!?。』

『まぁ。アンタがモテモテなのは今に始まったことじゃないから驚きはしないけどさ?。そろそろ止めないと後ろの娘達が凄い顔してるよ?。羨ましいそうな。悔しいようなね。てか、嫉妬だね。あれ。』

『み、光歌(みつか)。』

『うん。ちっす。閃。相変わらずね。』


 突然、お兄さんの横に現れて顔を覗き込むようにしゃがむお姉さん。誰?。知らない人だ。

 銀の髪。猫?の耳と尻尾が可愛い、綺麗なお姉さん。

 お兄さんの反応から仲間の方だってことは分かるけど。


『光歌さん…すみません。ちょっと、自制が効かなくて…。』

『す、すまん…。』

『まぁ。良いけど。私だってダーリンと再会したら、きっとそうなるだろうし。まぁ。けど…。』

『ああ。そうだな。わりぃ。』


 猫耳のお姉さんは光歌さんと言うそうです。

 お兄さんに何やら耳打ちすると、お兄さんは頭を掻きながら謝罪しています。

 美緑さんは小さな妖精の姿に戻るとお兄さんの肩の上に座りました。その頬をつんつんとつつくお兄さんと、くすぐったそうに笑う美緑さん…。

 彼女が11人の1人ですか…。強敵ですね…。


『すぐ、イチャつくし…。ほら、奥に来なよ。あと、もう一人相手してあげてよ。私等じゃ元気付けられそうにないからさ。』

『?。誰がいるんだ?。』

『すぐ分かるよ。燕も久し振り。元気してた?。』

『うん。光歌さんも元気そうで安心したよ。美鳥さんも美緑ちゃんも。』

『元気…かは、微妙だけどね。まぁ。話しは後にしよ。ついてきて。』


 光歌さんの後についていくと広い部屋に到着しました。暖かい部屋。テーブルや椅子。暖炉まで。ここで生活をしていたのでしょう。色んな物が木で作られている部屋でした。


『適当に座って。』


 光歌お姉さんは私達を長椅子や柔らかい草が敷き詰められたソファーに誘導してくれます。

 美鳥お姉さんが各々に甘い香りを漂わせたカップを置いてくれました。中身は紅茶かな?。


『閃。アンタはその娘をお願い。』

『ん?。おっ。ラディガルか?。』


 部屋の隅を見たお兄さん。

 そこで頭を抱えて丸くなっている女の方がいました。お兄さんの呼び掛けにビクッと身体を跳ねさせてゆっくりと振り返ります。


『あ、主…様…。』

『良かった。お前も無事だったんだな。』

『も…。』

『も?。』

『申し訳ない!。主様!。』


 物凄い速さでお兄さんに近づき、勢い良く床に自分の頭を叩きつけたお姉さん。木製の床には頭を打ち付けたことで凹んでいます。


『え?。は?。いきなりどうした?。』


 お兄さんも困惑してる。


『お、俺…全然、役に立てなかった…。相手にならなくて…殺られちゃって…。主様の言い付け守れなかった…。』


 泣きながらお兄さんに土下座をするお姉さん。耳と尻尾がペタンって力無く垂れてる。


『お前は悪くないよ。神の奴等が強すぎただけだ。お前の頑張りはちゃんと 視て た。だから、そんなに自分を責めるな。俺だって神に殺されたんだ。だから、お前は全然悪くない。泣く必要もないよ。自分に出来ることを全力でやってたのを俺は知ってるからな。』

『主様…。』


 土下座しているお姉さんを起き上がらせて頭を撫でるお兄さん。


『それより、再会できて良かった。』

『主…様…。わぁぁぁぁあああああん。俺も。俺もずっと会いたかったぁぁぁぁぁあああああ!!!。』


 お姉さんと抱き合うお兄さん。

 この方も…恋人?。けど、主様って呼ばれてたよね?。


 後から聞いた話しで、女性はラディガルお姉さん。お兄さんと契約している5体いる神獣の一体でゲーム時代のボスモンスターで【雷皇獣】というモンスターだそうです。私も名前だけは聞いたことがあります。確か…イベントのボスだったような?。


 …それから一段落して。全員がテーブルを囲んで椅子に座る。

 お兄さん。肩に美緑お姉さん。後ろにはラディガルお姉さんがいます。

 私、詩那お姉さん、兎針お姉さん、奏他お姉さん、八雲お姉さんはお兄さんに近い位置にある長椅子。

 向かえの椅子に光歌お姉さん、その横に美鳥お姉さん。そして、私達の向かい側に燕さん。


『それにしても…。』


 光歌お姉さんが私達を一瞥する。

 鋭い視線に思わず目を逸らしてしまいます。


『閃…アンタのモテ具合が怖いわ。仮想世界での各ギルドの綺麗所を連れ回すとか。呆れる通り越して感心するわ。』

『こっちも色々あったんだよ。まぁ。取り敢えず自己紹介からか。夢伽から頼む。』

『えっ!?。あ、はい。お兄さん。』


 いきなり話を振られて驚いたけど、そうだよね。光歌お姉さん達とは初対面だし。これから仲間になるんだよね。私達を知って貰わなくちゃいけない。


『夢伽といいます。前世の記憶を持っています。人族です。』


 私の後に続いて詩那お姉さん達も簡単に挨拶していく。


『そ。宜しく。私は光歌。閃とは幼馴染み。けど、安心して私は閃とは男女の関係じゃないから。』


 短めの自己紹介。

 光歌お姉さんはお兄さんの恋人じゃないことに安堵する。

 この方も、凄く美人なんだもん…。クロノ・フィリアの女性の方々…美人ばっかりだよぉ。


『美鳥です。宜しくね。皆さん。私も閃さんとはそのような関係ではありませんので安心して下さい。』


 美鳥お姉さんも恋人じゃない。


『美緑です。宜しくお願いします。』


 小さな身体で目一杯お辞儀をする美緑お姉さん。


『前にも少し話したが、美緑は俺の恋人の一人だ。』


 お兄さんの言葉に、詩那お姉さん達の視線が美緑お姉さんに集まる。


『っ!?。………。』


 その視線から逃げるように美緑お姉さんはお兄さんの後ろに隠れてしまった。


『どうすんのよ、これ…。閃。ちゃんと考えてんの?。』

『一応はな。だが、勝手には決められねぇだろ。それに今はそれどころじゃない。』

『そ。なら良いわ。泣かせるんじゃないわよ?。』

『分かってる。』


 光歌お姉さんとお兄さんが話し終えると本題が始まった。


『取り敢えず。俺達の今までを話すか。』

『そうね。じゃあ、情報共有といきましょうか。』


 お兄さんの口から、この世界、リスティールに来てからのことが話される。私達との出会い。人族のこと。無凱さんとの再会。ここに来るまでの経緯が順番に説明されていく。


『へぇ。無凱さんに会ったのですね。それに、人族による地下都市ですか…。この短期間で人族をまとめるなんて、流石ですね。』


 美鳥お姉さんが驚いている。


『ああ。黄華さんを探す為に黄国に向かった。人族の件は成り行きだな。おっさんが居たから出来たことだ。』


 お兄さんの周りを飛び回る美緑お姉さん。


『………そ。おじさんらしいと言えばらしいわね。』


 何かを考えている光歌お姉さんが呟いた。


『珍しいな。光歌がマジになってるなんて。』

『ん?。ええ。この世界のことを知らないと安心出来ないじゃない?。それにこっちの問題もあるし、ダーリンも探さないといけない。』

『つまり、光歌自身が動かないといけない状況か…結構、切羽詰まってんな。よし、次はそっちの番だ。この緑国に何があった?。』

『ええ。今の閃の話に私が知りたかった情報も含まれていたわ。ありがと。そうね…その情報を踏まえて順を追って話すわ…と、その前に。兎針だっけ?。貴女に会わせたい人達がいるわ。入ってきて。』


 光歌の合図に部屋の中に入ってきたのは、虫の特徴と人の身体を持つ虫族の住民だった。

 さっき見た植物に寄生された人達と同じ外見だ。

 兎針お姉さんは立ち上がって彼等に近付いて行く。


『あ、貴殿方は…。無事だったのですか!?。』

『はい…。貴女様も…よくぞご無事で…。』


 10人くらいの虫族の人達。

 兎針お姉さんが言っていた人達だよね?。


『何が…あったのですか…。虫族の国が…。』

『はい…。それは…。』

『それは、私から話すわ。少し長くなりそうだし…まぁ、虫族の国に関して先に結論だけ話すと…見せしめにされたのよ。』

『見せしめ?。』

『ええ。私達…異神を誘き寄せる為と、異神と戦うための戦力を集める為にね。ああ。私達の戦力を低下させる目的もあるか。まぁ。そんなところ。利用するための皆殺し。詳しい話を最初から話すわね。』


 用意されたカップに口をつけた光歌お姉さん。

 溜め息をついて。話を始めた。

次回の投稿は2日の木曜日を予定しています。

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