第207話 緑国 ーーグレブ・リーナズンーー
ーーーーー異界から顕現する神ーー異神が世界を滅ぼす為に侵略を開始する。我が子らよ。異神を世界から排除せよ。異神を殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せーーーーー
『きゃぁっ!!!。』
また…あの夢を…いえ、神託が降りた。
最初は1年くらい前だった。その頻度は徐々に増え始め、1ヶ月くらい前からだ。毎日のように神託が降りるようになったのは。
しかも、その声は大きく。重く。霞む。頭痛と吐き気を同時に味わうような不快感に、いつも目が覚め心臓の鼓動が速くなる。
『はぁ…はぁ…はぁ…。また、神託が…。もう…。嫌だよ…。』
涙が流れる。辛い。
睡眠が怖い。眠ることが恐怖でしかない。
何で私は巫女なんかに生まれてしまったんだろう…。
それが私の…巫女として生まれた者の運命だと言われて育てられた。
受け入れたつもりだった。けど…。神託はそんな仮初の決意など一瞬で洗い流した。
のしかかる責任と重圧。神託を貰わなければ国が…民が…家族が…皆が死ぬ。異神に殺される。
巫女とは、この世界で神の言葉を王に伝える運命を与えられたメッセンジャー。
生まれた時から神託を与えられ神の意思が頭の中へ流れ込んでくる。
そこには神の感情らしきモノも含まれているらしく頭痛や吐き気といった嫌気に襲われる時がある。異神に関する神託には特にそれが含まれていた。
『はっ。はっ。はっ。はっ。はっ。』
部屋を抜け出し屋敷を飛び出す。
走り。走る。
森を抜け開けた場所。大きな湖が眼前に広がる。
湖に反射する優しい光。私を見下ろす丸い月の輝きが夜の暗闇を淡く覆う。
『はぁ…。』
水面に映る自分の顔…。酷い…。
涙で腫れた目尻。血の気の引いた青白い肌。乱れた髪。身体は汗に濡れて服が肌に張り付いている。
毎晩、授かる神託による寝不足から目の下のクマも目立つ。
とても巫女として人々の前に立てる状態じゃない。
『眠れないのか?。』
『また、神託が降りたの?。』
背後からの気配に振り返る。
そこには私の大好きな2人がいた。
『お兄様…お姉様…。』
私は2人に抱きついた。
優しく私の身体を包み込んでくれる2人。
『わぁぁぁぁぁあああああん!!!。』
『大丈夫だ。俺達はここにいる。いつも。いつでも。お前の側にいる。だから、泣くな。』
『ええ。シュルーナ。私達はどんなことがあっても貴女の味方よ。ええ。そう。例え、相手が神であっても…。』
2人の優しい声が私の心を軽くする。
巫女として生まれた私には神の声は恐怖でしかない。
『うん…うん…。ありがと。レルシューナお姉様。律夏お兄様…。』
私の大切な家族。
誰よりの信頼できる2人。
『安心しろ。お前を苦しめる大元を断つ。俺が…いや、俺達が必ず異神を滅ぼす。』
『ええ。緑国の全てを使い、貴女の平穏な睡眠を取り戻しましょう。』
大好きな2人が私の手を取ってくれる。
温かい。2人の温かさに安心を貰い私は部屋に戻る。今日は2人が一緒に寝てくれた。
その日。それ以上、不思議と神託は降りてこなかった。
ーーー
ーーー閃ーーー
『じゃあ。ここでお別れだ。無事を祈ってるよ。』
地下都市から地上に出ると、おっさんとはここで別行動だ。
俺達は緑国へ。おっさんは黄国へと向かう。
『おっさんもな。朗報を待ってるぜ。』
燕達とも挨拶を交わしおっさんは歪めた空間の中に消えていった。
さて、俺達も出発だ。
当初の目的通り燕を見付けることが出来、尚且つ、おっさんにも会うことが出来た。
俺達にとって人族の里を探す目的は、好調な滑り出しだった。
おっさんからは有益な情報と、アイテムを得ることが出来た。
特に【現象】となってしまっている仲間がいる。この情報は本人に聞かないと得られる機会のない情報だ。
そして、特殊なアイテム。魔力やエーテルなどのエネルギーを注ぐことで、その性質を一度だけ発現させることの出来る【魔石】を3つ貰った。この世界では比較的ポピュラーな物らしく市場などに普通に売っていたらしい。
これは結構役に立ちそうなアイテムだぞ。
もっと色んな道具があれば様々な物を作れそうなのに…時間も場所も道具もないからな。残念だ。
そんな感じで、俺、夢伽、詩那、兎針、奏他、燕、そして、何故か仲間になった八雲。この7人で緑国を目指す。
途中、人族が隠れ潜む場所に立ち寄り地下都市への地図を渡しながら進むこととなる旅路だ。
順調に行けば、7日程で緑国の領内へ入れるらしい。緑国で目覚めた兎針を中心に歩を進めていく。
ーーー
ーーー緑国 グレブ・リーナズンーーー
ーー王の間ーー
『皆。急な呼び出しにも関わらず。良く、集まってくれた。』
王の登場。発せられた言葉に全員が頭を垂れる。その場には緑国が誇る最高戦力が全員招集されていた。
『面を上げて構わないよ。』
『はっ!。』
各面々が顔を上げた。
王座に座る緑国の王。
【エルフ】という森の精霊の上位種。
【樹聖霊神】セルレン・リーナズン。
樹海、草原、森林、平原からなる豊かな自然に囲まれた支配エリアを統べる王である。
また、異神が出現の際。神々から異神を世界から排除する役割を与えられた神眷者の1人でもある。
『此度は、我が娘にして巫女であるシュルーナへ。神からの神託が授けられた。それを皆に伝えようと思う。』
王の横に立つ2人のエルフの少女。
姉のレルシューナ・リーナズン。
緑国の第一王女。
そして、妹のシュルーナ・リーナズン。
第二王女であり、巫女として生まれた存在。
前に出るシュルーナ。
『皆様。この度、神から賜りし神託をお伝え致します。』
こほん。と可愛らしい咳払いの後、シュルーナは言葉を紡ぐ。神が自らに語った言葉をそのままに、神の言を皆々に伝えた。
『これより7日後、複数の異神が緑国内へと侵入する。中には最高神が1柱【観測神】が含まれる。緑国の我が子等よ。異神を滅ぼし世界に平和をもたらせ。』
小さく溜め息をするシュルーナ。
『以上です。』
小さなお辞儀の後、後退し元の位置へと戻る。
『聞いた通りだ。ついに我が国に異界の神が訪れる時が来たのだ。報告によれば私と同じく神から力を賜ったイグハーレンは、先程の神託に語られた観測の神に為す統べなく敗北した。』
ざわつく周囲。
『静まりなさい。』
そして、立ち上がったのは王の横に座る女性。
美しい金髪。美しい容姿。誰もが目を奪われる美貌と容姿を持つ純白のドレスに身を包んだ絶世の美女。
緑国が女王。エンディア・リーナズン。
レルシューナ、シュルーナの母親、緑国における軍事全般を任された天才軍師。
更に神から力を賜った緑国2人目の神眷者でもある。
『何も、私達は異神の恐怖に怯える毎日を過ごしてきた訳ではありません。この時の為に万全の準備を整えてきました。強大な異神にすら負けない力が我々にはあるのです。』
異界の神。
魔力よりも強力なエネルギーであるエーテルを使い。【世界の奇跡】と呼ばれる 選択した結果を引き寄せる 力、神力を行使できる神。
普通に考えれば魔力しか操れないリスティールの住人には勝ち目がない。
それは誰もが理解していること。
『ですが、現実に我々は異神を退けることに成功しました。あれは先日のこと。草原、森林、樹海を支配していた異神から樹海以外のエリアの奪還に成功したのです。彼等に支配されていた虫族、獣族、鳥族に属する種族の救出に成功し異神を樹海エリアに追い詰めたのです!。』
ここにいる最高戦力を総動員し異神との戦いに勝利した。女王は誇らしげに言い放つ。
『更に言うのであれば、我々は全力ではなかった。様々な作戦プランを用意し準備も万全。それでいて、20ある作戦の内の3つしか実行せずに異神を敗走に導いたのです。皆さん。今から私が言う言葉は事実です。』
一息つく女王。
『我々は強い。異神になど負ける筈はありません!。只今、神託に語られた【観測神】。確かに侮ることなど出来ぬ相手。しかし、我々が力を合わせれば打倒出来る!。その為の力を皆さんに与えましょう。ですので、皆さん。私達に…いえ。緑国の、民の為に力をお貸しください。』
女王の言葉に全員の意思が1つになる。
『『『『『『『『『『はっ!。』』』』』』』』』』
頭を垂れた10人全員が一丸となった。
『皆さん。ありがとうございます。』
頭を下げる女王。
王座に腰をおろす。同時に王が立ち上がった。
『さて、我が妻が語った通りだ。異神との戦いは近い。よって、我々は持ち得る力の全てを使い異神へ挑むこととなる。』
王が合図を送ると、従者のエルフ達12人が各々に武器を持って現れた。
『父上…それは…。』
第一王女のレルシューナが声を上げた。
無理もない。打ち合わせにも、このような武器の話しは一切出てこなかったのだから。
『これは君達の為に用意したモノだ。私が神から賜いし神具【神聖界樹 ユゾライドグラ】が実らせた木の実を材料とし各々の武器に混ぜ合わせた武装。【神聖界十二樹宝】だ。』
緑国には広大な国の半分を占める巨大な大樹が聳え立っている。
それは、仮想世界で美緑が育てていた世界樹よりも巨大であり、その大きさは雲を突き破り成層圏まで届く程だ。七大国家で二番目に広い支配エリアを持つ緑国だからこそ与えられた神具なのだ。
『さぁ。受け取るが良い。』
最初に樹宝を受け取ったのは王の右にいた男。
王の右腕。【樹人狼】ヴァルドレ。
体毛の半分が植物の葉で構成されている銀の人狼。緑国に住まう四足獣の頂点に位置する強さを持つ。
神聖界十二樹宝は鉤爪。
『有り難き幸せ。』
次に王の左に立つ女。
王の左腕。【樹蟲】ベルスクア。
黄金に輝く瞳を持つ蠢く蟻の集合体。軍隊蟻の王。
神聖界十二樹宝は宝玉。
『必ずやこの力で異神を倒してみせます。』
続けて、レルシューナ、シュルーナの王女に各々与えられた。
黄金に輝く弓を強く握りレルシューナが覚悟を決める。
シュルーナには、腕輪が与えられた。
『ありがとうございます。父上。母上。』
『ありがとうございます。パパ。ママ。』
頭を下げたレルシューナを見て慌てて頭を下げるシュルーナ。
『お礼を言われることではない。父親としては戦場に娘達を送ることなどしたくはない。だが、異神による侵略が始まれば緑国に安全な場所など失くなるだろう。故に、お前達にも戦う術を与えたまでだ。』
『2人とも。此方へ。』
女王に招かれ2人は前に立つ。
すると、女王は2人の娘を優しく抱きしめた。
『王は勿論ですが。私もこの国の軍事を預かっています。大事な娘だからと言って貴女達だけを特別に守ることは出来ません。』
『はい。理解しています。』
『私も…。』
『そうですか。ですが。これだけは忘れないで下さい。私も夫も、貴女を心の底から愛していると。』
『はい。母上。』
『はい。ママ。』
『異神を倒すには貴女達の力も必要です。ですが、決して無理はせず自分の身の安全を第一に考えて下さい。』
女王の言葉に頷いた2人は頭を下げ、元の位置へと戻った。
『さぁ。貴方達もです。共に平和な日常を異神の手から取り戻しましょう!。我が国の最高戦力!。【リョナズクリュウゼル】の皆さん!。』
【リョナズクリュウゼル】
緑国の最高戦力。高い戦闘能力を有する異界人を中心に構成された8人の戦士。
リーダー。
【樹合人】律夏。
甲冑武具に身を包んだ侍風の男。
神聖界十二樹宝は刀。
『感謝致します。この刀に誓い、必ずや緑国を異神の脅威からお守りします。』
副リーダー。
【樹合人】空苗。
軍服に身を包んだ女。
神聖界十二樹宝はスナイパーライフル。
『ははは。安心しろよ。王様、女王様。俺達が姫さん達を守ってやるからよ。』
『おい。口を慎め。無礼だぞ。』
『ん?。ああ、それこそ安心しろよ。空苗。お前は俺が守ってやるよ。この命に代えてもな。』
『っ!。ば、ばか…時と場所を考えろ…。』
【樹合人】獏豊。
律夏と同じく侍の格好をした男。
神聖界十二樹宝は鉾。
『異神ねぇ。俺等と同じ世界出身らしいけど、全然、記憶ないなぁ~。』
【絵巻人】多言
女物の和服に身を包むくねくねと舞う男。
神聖界十二樹宝は巻物。
『しかし、我等の敵であることには変わりない。我等は緑国を守る護神であるのだから。』
【神言人】徳是苦
改造し動きやすさを重視したような袈裟を着た男。
神聖界十二樹宝は錫杖。
『ふふふ。かつては仲間だったかもしれないということでしょう?。大丈夫なのですか?。』
【鳥獣姫】フリア
白い翼を生やした鳥族の姫。
神聖界十二樹宝は鞭。
『記憶がないのでは仕方がないのでは?。それに敵だった可能性もある…と思います。』
【樹獣姫】ライテア
軽装な動きやすさ重視した服を着た少女。ヴァルドレの娘。
神聖界十二樹宝は短刀。
『……………。』
【樹甲虫王】ゼグラジーオン
複数の甲虫の特徴をその身に宿す甲虫の王。
神聖界十二樹宝は大剣。
以上8名が最高戦力。各種族で最も強い者が集められた選りすぐりだ。
『そして、今回の異神の襲来に対し心強い助っ人が来てくれた。私と同じく神眷者の1人であるアクリス君だ。』
セルレンの紹介。
天幕の奥から現れた純白と水色の髪を持つ少女。金魚の尾ひれのような輝く鮮やかなスカートを靡かせ優雅にお辞儀をした。
『初めまして、緑国の皆様。神眷者の1人アクリスと申します。私の目的は観測神のみです。ですので、皆様と馴れ合うつもりは御座いません。』
坦々と目的のみを伝えるアクリスの姿にざわつく面々。
『聞いての通りだ。彼女には観測神を抑えて貰う。我々はその間に他の異神の排除をすることになっている。』
『ええ。その通りです。なので、私には関わらず皆様は皆様のことだけを考えて下さい。私は皆様を助けません。なので私のことも助ける必要はありませんので。』
言うことは終わったとばかりにその場から消えるアクリスに緑国の面々が文句を言いそうになるがセルレンが制止した。
『ふふ。君達の気持ちも理解できる。けど、此方としても好都合な人物だ。精々利用させて貰おうではないか。』
『ええ。そうね。一番厄介な存在を任せられるのだから。仮に彼女が力及ばず敗北することになっても時間は稼いでくれるでしょう。その時間で私達は異神の討伐に全力を注げば良いのです。』
あくまでも緑国の為に。外部の者は利用する。王と女王の言葉に全員が頭を下げた。
彼等の願いは緑国の平和なのだから。
ーーー夜ーーー
シュルーナを寝かしたレルシューナは外に出て、空に浮かぶ満月を見ていた。
月明かりに照らされた金色の長い髪がキラキラと輝いている。
『レルシューナ。どうした?。眠れないのか?。』
『律夏…。ええ。そうね。少し…いえ。不安なの…。』
僅かに震えているレルシューナの肩をそっと抱く律夏。
『異神か…。』
『ええ。シュルーナに平穏な夜を与えたい。その為に私は戦うと決めたもの。けど。皆で暮らしていた時間も、私にとって同じくらい大切だったの。それが異神との戦いによって壊されてしまう。そう考えると…。』
『そうか…。確かに異神に勝つことは難しいだろう。勝つには緑国の力、総戦力で挑まなければなるまい。』
『………。私は…。』
『分かっている。』
レルシューナ。本来なら戦いたくないのだろうと律夏は悟る。
国を愛し、民を愛し、家族を、仲間を大切にしている優しいレルシューナ。神との戦いは、謂わば戦争だ。大切な人達を戦いに巻き込みたくないと考えている。しかし、それでは異神を倒すことが出来ないことも理解している。
そんな、どうしようもない悲しみと悔しさにレルシューナは震えていたのだ。
『俺には全てを守ることは出来ない。』
『律夏?。』
『俺に出来るのは手の届く範囲で…大切な者を守ることだけだ。俺にとって何よりも大切なのはお前と…シュルーナだ。』
『………。』
『俺の命に代えても、お前達は俺が守る。俺の大切な 家族 を。絶対に…。』
『律夏…。私も…貴方を守ります。そして、2人でシュルーナを…。』
『ああ。そうだな…。今度こそ守ってみせる。』
最後の方の言葉は小さく呟いた程度。
レルシューナの耳には届かなかった。
月明かりに照らされた2人の影が重なる。
互いの存在を確かめるように何度も口付けを交わした。
ーーー
ーーー王の寝室ーーー
『ふふ。ついにこの時が来たのか…。長かったような…短かったような。』
神具 神聖界樹 ユゾライドグラの実から抽出した液体をグラスに注ぐ男。バスローブに包まれた身体で深々と椅子に座っている。
緑国が王。セルレン。
『あら?。ふふ。レルシューナちゃんと律夏君ね。お熱いことね。』
全身が透けたランジェリーに身を包む女王 エンディアが2人の様子を眺め静かに笑う。
『ふむ。今の内に幸せを満喫すれば良い。そして、精々命を懸け、異神を殺して貰うとしよう。最悪、相討ちでも構わぬしな。』
『あらあら。そんなことを言っては娘達に嫌われてしまいますよ?。ふふ。』
『それも、構わぬ。神眷者となった今。今さら生物としての幸せを望んでどうする?。』
『あら~。酷いお人。』
『善人ぶるのはよせ。お前も同じ考えだろう?。』
『ふふ。あら?。バレちゃってたのね。残念。』
レルシューナを見つめていた時の母としての笑顔は唐突に消え、怪しくも妖艶に笑う1人の女神がそこにはいた。
『神との契約。神眷者が神の力にて異神を倒す。そして、最も多くの異神を倒した神眷者に与えられる 報酬 の前には、今まで育み、培ってきた全てが無に期すこととなる。』
『ええ。報酬とは【新世界】。自らの自由に生命を生み出し、ルールを決めることの出来る世界を与えられる。』
『文字通りの白紙の世界だ。何もない。自分色に染められる世界の神となる。それが、神から与えられる報酬だ。』
『ふふふ。ええ。素晴らしいわ!。私達が神として顕現する世界になるのです!。新世界を手にする為ならば、例え緑国の全てを犠牲にしてでも異神を殺しますとも。ええ。ええ。娘でさえも犠牲に…いえ。糧にしてしもね!。』
2つのグラスを持ち立ち上がるセルレン。
その内の1つをエンディアへと渡す。
『私は必ず神となる。』
『ええ。私達の世界の為に…。』
互いのグラスが当たり綺麗な音が鳴った。
ーーー
そして…月夜に笑う。もう一人の少女。
金魚の尾ひれのようなスカートを風に揺らし、神聖界樹の枝の先に座っていた。
その周囲を、魔水で身体を作られた12匹の金魚が自由に泳ぎ回っている。
月と夜空。星と地上の灯り。その光を交互に見つめながら想いを馳せる。
『ああ~。観測の神か~。楽しみだな~。』
清楚な見た目とは裏腹に好戦的な瞳の輝き。
『早く君と戦いたいよ。くすっ。閃君…。』
アクリス。
緑国の王と王女。その2人とは別の目的で彼女は動いていた。
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