第204話 休息
ーーー燕ーーー
ーー大浴場ーー
ふぅ…。
肩までお湯に浸かれるなんて…。それに足も伸ばせて…この世界に来てから初めてだわぁ~。極楽。極楽。
ここの大浴場は凄い。
見るからにメカメカしい壁が見えるし、壁には様々なボタンが並んでる。
あそこのボタンは押したら飲み物出てきた。
さっき試しに押してみてびっくり。
『はぁ…。気持ちいい…。』
束の間の贅沢ってヤツだわぁ~。
『では、皆に聞く。神さまはどんな人なのだ?。この身を捧げた人の好み等は知っておきたい。』
そんな安息は彼女の一言によって打ち消される。
早速、話を切り出したのは八雲。
夢伽、奏他、詩那、兎針、八雲は湯船の中でも円陣を組み閃さんのことについて話し始めていた。
………はぁ。そろそろ現実を見るかぁ…。その円陣の中に私は混ざっている。いや、強制的に巻き込まれたのだ。
前世の閃さんのことを知っているのは私だけ。そんな私を彼女達が逃がす訳はなかった。
嫌な予感が当たってしまった。
私だって、そこまで閃さんを知っている訳じゃない。代刃君とのアレコレを聞いていたくらいだ。
『先輩は格好いいの!。ウチ等のことを常に考えてくれて優しいし、守ってくれて強いし!。』
『ふむ。強いのは知っている。実際に神さまの戦いを見ていたからな。貴女達はどの様に神さまと出会ったのだ?。』
それは私も知りたい。
閃さんのこともだけど、彼女達との出会いも。
『お兄さんと始めて出会ったのは、5日くらい前です。私が怪しい騎士達に追われ。追い詰められた時に助けてくれたのがお兄さんでした。』
夢伽と詩那は人族の里で目を覚ました。
そこに、白国に所属していた奏他の部下が命令違反を犯し人族の蹂躙を始めた。
2人は逃げるも、大した力のない2人じゃ騎士達から逃げ切ることは出来ず崖に追い詰められた。詩那は夢伽を助ける為に自らを犠牲にし崖から夢伽を突き落とす。
そのまま詩那は騎士達に犯され身を汚された。
一方、崖下から逃げた夢伽も別の別動隊の騎士達に取り囲まれる。
絶体絶命だと諦めかけた時、閃さんが駆け付けてくれたという。
閃さん。完全にヒーローじゃん。
圧倒的な力で騎士達を倒した閃さんは夢伽と犯されボロボロになった詩那を抱え人族の里に戻り、さっきも使ったリスティナさんの力で2人の傷を治し、服まで創造した。
次の日、気配を感じ外を見ると逃がした騎士達が仲間を率いて里へやってきていた。その中にいたのがリーダーだった奏他。
奏他は人族の保護の命令を白国から受けていたのだが、部下が人族を己の快楽の為に蹂躙していたことをその時に始めて知ったらしい。
取り込まれた状況。頼りの閃さんは神力を使って眠っている。戦力がない。圧倒的不利な状況で助けに現れたのが兎針だった。
兎針は前世で夢伽に酷いことをしてしまったことを謝りたくて夢伽を探していたらしく絶妙なタイミングで助太刀に現れたのだ。
そこから奏他の命令で騎士達は撤退、閃さん達4人は人族だった私を探す為に人族の里を目指し旅に出た。
途中、命令違反をした部下の騎士達を全滅させた奏他が仲間に加わり人族の里を発見した。
そういう流れだったらしい。
その村で人族がイグハーレン達に拐われている場面に遭遇、後をつけこの地下都市を発見した。
対して、八雲は青国を裏切ったイグハーレンを追ってこの地下都市までやって来た。そこで閃さんに出会いイグハーレンの攻撃から命を救われたことで信仰した。
最後の方は良く分からないけど。助けられたから好きになった。みたいな感覚なのかな?。
『ふむ。成程。では、貴女達も神さまのことを余り詳しく知らないと言うことか。』
『私達は前世の世界のことや、閃さんの能力などを直接教えて貰いました。』
『そうだし!。八雲。アンタの知らないこと、いっぱい知ってるもん!。』
『例えば?。』
『先輩は女の子になれる!。』
ああ。それは知ってるんだ、
『…冗談か?。』
『それが本当のことなんだよね。閃君は女の子の姿に自由に変身出来るの。しかも、絶世の美女。』
『誰もが思い描く 美女 を形にしたような美貌を持つお姿。スタイルも良く、各々のパーツがハイクオリティで調和していました。』
『おっぱいも大きかったです。』
『…うん。ウチよりも…。形も弾力も柔らかさも全部が上…。』
『そ、そんな…こと…が…。』
その気持ち分かるなぁ。
私も初めて見た時、自分の目を何回も擦っちゃったし。
『後で見せて貰いましょう。』
『ええ。是非。神さまは、女神さまでもあったのですね。』
閃さん…。女の子達の目が獣みたいになってるよぉ。逃げて~。
『他には?。』
『そうですね~。』
閃さんは、彼女達に色々なことを教えているようだった。
前世での出来事を含め、仲間達のこと、恋人達のこと。
閃さんのこの世界での目的として最も重要視していることは、仲間達との合流。
そして、恋人達との再会を何よりも優先しているよう。
傍目から見ていても彼女達の閃さんへの想いは恋だ。いや、奏他は 気になってる くらいの感覚だろうけど。
少なくとも夢伽と詩那、兎針は完全に落ちちゃってるみたい。
閃さんは鈍くない。確実に彼女達の気持ちにも気付いている。
それは、彼女達も分かっているらしく。
話を聞くと、やんわりと恋人になることを断られてしまったらしい。
今の閃さんは恋人達との再会を優先的に考えている。
この何もかもが分からない世界で彼女達の安否すら確認できていない現状。新しい恋人など作れない。作る気もないとはっきり言われてしまったみたい。
けど。彼女達は閃さんと一緒にいる道を選んだ。
………私はどうしたら良いのかな。
背中を押すべきなのか…。突き放すべきか…。
『その前に、ここには私達よりも閃さんに詳しい人がいます。』
兎針の視線が私に。
つられて全員の視線が私に集まる。
うわぁ…嫌な予感…。
『あの~。燕さんにお尋ねしたいのですが。燕さんは11人の1人ですか?。』
『え?。11人?。』
『その…お兄さんの恋人の一人なんですか?。』
『あっ…そういうことか!。』
11人って、灯月ちゃん達のことか。
彼女達は私が閃さんの大好きクラブの一員か確認したいんだね。
…って、閃さんはクラブのことも話したんだ。
『違うよ。私は恋人がいるもん。』
『そ…そうなんですね。良かった…。』
夢伽が胸を撫で下ろしている。
やっぱり、夢伽は閃さんへの気持ちはガチの好きになってるんだ。
昔から知ってる仲だし、応援したい気持ちが強いんだよね…。
『あっ。でも、燕さん。恋人がいたんですね。一緒にギルドにいた時はそんな方はいなかったですよね。』
『うん。クロノ・フィリアに入ってからできたんだ~。』
『どんな方なんですか?。ちょっと気になります。』
『クロノ・フィリアってことは、お兄さんの友達ですよね?。』
『……………。友達というか…。閃さんの恋人。』
実際に代刃君との関係を考えると凄く複雑だよね。しかも、それを人に伝えるとかハードル高過ぎるよ。
『お兄さんの恋人が恋人?。』
『何それ?。燕。女の子が好きなの?。』
『ち、違うよっ!。代刃君は…何て説明しようかな…ええ…と。閃さんが女の子になれるのは知ってるでしょ?。』
『はい。直接見ました。』
『クロノ・フィリアには、もう一人性別を変えられる人がいるの。本来の姿は女の子なんだけど。男の人の姿になれるスキルを持ってる人がいて、その人が男の人の姿の時が私の恋人で女の子の姿の時が閃さんの恋人なの。』
『『『『『……………。』』』』』
全員が無言。
『ふ、複雑な関係だね…。』
『その代刃さんという方も凄いですね。』
は、恥ずかしい…。
自分のことを話すのって凄い緊張するよ。
『燕さん。他の閃さんの恋人方のことを教えて頂けないでしょうか?。』
『ウチも知りたい。先輩がどんな娘達を好きになったのか。』
『私もです。』
『わ、私も…ちょっと興味があるかも。』
『神さまの秘密。』
うわぁ…皆、真剣だ。
これは、私も真剣に向き合わないとだよね。
『ふぅ。分かった。けど。これだけは聞かせて。貴女達は、閃さんのことを真剣に考える?。本当に好き?。』
『ウ、ウチは好き!。大好きっ!。』
『私も…お兄さんが好きです…。』
『私もです。』
『私は………好き…かな…まだ、出会ったばかりで心の整理がついてないけど…。気になってる…。』
『神さまの秘密。』
まぁ。そうだよね…。
奏他の言う通りなんだよ…。
好きって断言出来る3人が凄いよ…。
八雲は独り違うところに行ってるし。
『分かったよ。けど。私も全てを知っている訳じゃないから。当人達じゃなく第三者の視点から見たことしか話せない。それでも良い?。』
『はい。勿論です。』
『お願い致します。』
『おっけー。じゃあ、話すね。』
私は、前世での閃さんとの記憶を思い出しながら彼女達に説明する。
…と、言っても順序立てて説明するしかないんだけど。
クロノ・フィリアというギルドのメンバーの説明を軽く行い、その中での閃さんの立ち位置から始めた。
そして、閃さんを慕う少女達により立ち上げられた【にぃ様大好きクラブ】の説明に入る。
『にぃ様…。』
『大好き…。』
『クラブ…。』
『閃君が言ってたね。』
灯月ちゃん。代刃君。智鳴ちゃん。氷姫さん。睦美ちゃん。瀬愛ちゃん。翡無琥ちゃん。無華塁ちゃん。美緑ちゃん。砂羅さん。累紅ちゃん。
クラブのメンバーの特徴と性格を順番に私が知る限りで説明していく。
閃さんに好きになって貰えれば灯月ちゃん達も認めるだろうけど、閃さんはこれ以上恋人を増やすつもりはないみたいだし。
外堀から埋めるのが、手っ取り早い。
けど。その外堀が余りにも深すぎる。
灯月ちゃん達に認められないといけないんだから。
あの…にぃ様大好きっ娘の灯月ちゃんを筆頭にクセの強いメンバーが多いからなぁ…。
まぁ。美緑ちゃん達はまだ、安全な方かな?。
灯月ちゃん。氷姫さん。睦美ちゃん。智鳴ちゃん。無華塁ちゃん。翡無琥ちゃん。あたりは性格というより勘が良いから、閃さんに邪な考えを持っていると認められないかも?。
『そうですか…では、その方々に認められる必要があるのですね。』
『ウチ。頑張る!。絶対、恋人になるんだ!。』
『それまで自分を磨きましょう。』
『うぅ…私、緊張してきたかも。閃君の恋人達に会う前にお腹に穴が開きそう…。』
『神さまの…恋人…。えへへ。幸せかも…。』
各々の想いを胸に彼女達は燃えていた。
閃さん…相変わらず罪づくりな人だなぁ…。
~~~
『そう言えば奏他は歌わないの?。』
『え?。どういう意味?。』
暫く、クロノ・フィリアでの思い出を話して一段落しようとした頃。
私は前世の記憶で疑問に思ったことを奏他に聞いた。
『前世の頃にさ。奏他。テレビで言ってたんだよね。どんなものより歌が大好きって。歌が私を支えてくれたからここまで来れましたって。』
『え?。テレビ?。えっと…私…前世の記憶を持ってないんだけど。何してたの?。』
『人気アイドルだった。歌って踊れて演技も出来る天才って言われてた。』
『あっ!。そうです!。奏他お姉さんの顔、何処かで見覚えがあると思ってました。あんまりテレビを見てなかった私でも知ってるくらい有名でしたよ。ああ。アイドルって言うのは、熱狂的なファンのいる歌を歌う人って感じでしょうか?。』
『えっ!?。そうなのっ!?。私が…。』
『マイクを持つと放したくなくなるのが自分のダメなところって自己紹介してた。』
『マイク…。』
『声を大きくする道具です。』
『歌を…歌ってた…。そうなんだ…私が…。』
その後、奏他は何かを考えるように黙り込んでしまった。
要らないこと言っちゃったかな?。
ーーー
ーーー守理ーーー
とある一室。
長い机と椅子が並ぶその部屋で睡蓮と憧厳を含めた3人で集まっていた。
『今、話したことが我が神から助言されたことだ。この地下都市と住む人族を俺達で守っていく。そして、まだ地上で他種族に怯えながら暮らしている人族を地下都市で保護する。』
『成程な。この地下都市を人族の国にするってことか。』
『なかなか大胆な発想でんなぁ~。けど。ワッチは賛成じゃよ?。色々、考えなあかんことがありぃんが、そこんとこは追い追い考えればええんじゃし。』
『だが、俺達…3人だけでは限界がないか?。確かに生活、食料や気候などは機械が管理しているとはいえ敵の襲撃が全く無くなることはないだろう?。』
『その点も考えている。今回の戦いで人功気は人族なら特訓すれば誰でも習得できることが分かった。』
『ほぉ。確かになぁ。夢伽がワッチに攻撃んされてから人功気を使っとったのぉ。』
『そうだ。切っ掛けとコツさえマスター出来れば扱える。そして、扱えるようになった者達に戦闘訓練を行い、この地下都市を守る自警団を組織しようと考えている。』
『へぇ。それは面白いな。』
『何よりも心強いのは、我が神が後ろ楯になってくれると言ってくれたことだ。流石の神でも旅の途中だ。頻繁にここに駆け付けてくれることは無理だろうが、もしもの時は助けに来てくれることを約束してくれた。』
『へぇ。それはええなぁ。』
『ああ。最高神が俺達に味方してくれるんだろ?。最高じゃねぇか!。』
『そういうことだ。満更悪い計画ではないだろう?。』
『俺は賛成する。それなら………人族が安心して暮らせる場所を守る。死んでいった…いや、俺が殺しちまった奴等への罪滅ぼしになるかもしれねぇ。お前達を犠牲にしちまった力で、俺は人族を…同族を守れるようになったんだぜって…言えるよな…。』
『ええ。ワッチも賛成じゃ。それがこの力の…本来の使い方かもしれん…いんや、ワッチ等がそうして見せようぞ!。』
『ああ。3人で人族の未来を切り開こう!。』
ーーー
ーーー閃ーーー
目が覚めた俺は通路を歩いていた。
目覚めた部屋は見覚えの無い部屋。俺は敷かれた布団で眠っていたことから、おっさんが上手くやってくれたことを理解した。
あの機械の棟。ここはその建物の中だ。
イグハーレンが倒され、その部下、仲間達が撤退したと考えて、おっさんに調べて来て貰ったがどうやら正解だったようだな。
『ここか…。』
ある部屋の前に止まる。
メインコンピュータールーム。
この棟の中心だ。
扉の前に立つと自動で扉が開いた。
『おっさん。』
『ん?。ああ。閃君。起きても平気かい?。』
モニターの前に立ちキーボードで何やら操作を行っていたおっさんが俺に気付いた。
『ああ。もう大丈夫だ。リスティナの力にも大分慣れてきたみたいでな。気を失っている時間も最初の時より短くなって来てる。』
『そうかい。やっぱり、凄いな。閃君は。こんな状況でも、しっかり自分のすべきことを見つけることが出来ている。』
『そりゃあ。仲間達と再会する以外の目的が無いからだ。おっさんもそうだろ?。仲間を探しながら、この世界の情報を集める。だから、ここに居たんだろ?。』
『そうだね。けど。閃君みたいに真っ直ぐ前を見てはいない。僕は自分の感情を優先してしまっているから。』
『………黄華さん達か?。』
『ああ。僕は黄華さん。無華塁ちゃん。柚羽さん。水鏡さんを見つけるのを優先している。君達よりも。』
『良いんじゃねぇか?。それでも?。』
『……………。』
『俺だって灯月や睦美達との再会を最初に考えたくらいだ。多分、それが自然なことなんだよ。それにさ。その考えって俺達のことを信頼してるから出たって考えられるだろ?。俺達ならきっと何とか出来る。どんな状況になっても乗り越えられるって。』
『…そうかな?。』
『ああ。俺だっておっさんを信頼してるから、そこまで心配してなかったぜ?。』
『ふふ。喜んで良いのかな?。』
『ああ。だから、自分のしたいように行動しろよ。そして、最後は全員揃って笑顔でパーティーでもしようぜ。』
『はは。そうだね。うん。そうするよ。僕は皆を信じているからね。』
おっさんが困ったように笑う。
『あと、これはクロノ・フィリアのリーダーだった僕のケジメだ。』
突然、おっさんは俺に頭を下げた。
な。何事だよ!?。
『すまなかった。』
そして、謝ってきた。
ーーー
ーーー白国 ホシル・ワーセイトーーー
ーーー?ーーー
ーー玉座ーー
玉座に深々と座る銀髪の男。
外見の年齢は若い。しかし、その眼光、佇まい、雰囲気はその姿を見る者に緊張と恐怖を与える程の重圧を与えていた。
自身に満ちた眼差しが深々と頭を下げる報告者に向けられていた。
普通の感性を持つ者ならば畏縮し身体は震え続けることだろう。
だが、それだけの威圧を受けて尚、平然と報告をする白髪の初老の人物は坦々とした態度で報告を続けていく。
『ほぉ。イグハーレンが異神に敗れたか。』
『はい。報告によれば神の力を更に授かり、神獣へと進化を果たしたようですが…相対した異神に為す統べなく敗北したと…。』
『ふむ。それは如何様な神だったか?。』
『………最高神の1柱。観測神との報告が。』
『はは。ははは。そうか。そうか。ハズレを引いたか。イグハーレンよ。』
『はい。神が最も警戒すべきと啓示されたと聞いております。如何致しますか?。』
『放っておけ。今はまだ他の神眷者共に任せておけ。まだ、我が出る時ではない。』
『御意。』
『しかし、警戒は怠るな。異神に関する報告は逐一せよ。』
『畏まりました。』
白髪の男が消える。
『ははは。イグハーレンよ。異神相手に神獣程度の力で挑んだのが過ちよ!。』
銀髪の男が玉座から立ち上がる。
同時に男の頭の後ろで手を繋いでいた2人の少女が一緒に立ち上がる。
立ち上がり歩き出す男に寄り添うように左右に立つ少女達。その片手は常に男の後ろで繋がれたままだ。
男の右側には黒髪長髪の少女。右の背中には漆黒の片翼が。
同じく左側には白髪長髪の左の背中から純白の片翼を生やした少女が。
『異神に対抗するには同じく異神の力だ。そう思わんか?。シルエルレーセよ?。』
『はい。その通りです!。にぃ様。』
『うん。そうだね。お兄ちゃん。』
『ははは。そうだ。我が神!。【無限の神】ガズィラム様から賜りし力と、異神の力があれば我々に敵はいない!。』
『はい!。にぃ様!。』
『お兄ちゃんの言う通りだよ!。』
巨大なガラス製の窓から下界を見下ろす3人。自身が統べる白国の町並みを満足気に眺め抑えられぬ高笑いを響かせた。
『はぁぁぁ。はははははははははは…。』
『ふふ。ふふふふふ。』
『くすくすくすくす。』
玉座の後ろ。
天井から吊るされたカプセル。カプセルから伸びるコードは別の場所に繋がっているようだ。
その中には両手足を鎖付きの錠で拘束され、黄緑色の液体の中に入れられた人影。
左右非対称の純白と漆黒の翼。翼と同じく左右で色の違う長い髪を持つ少女がカプセルの中で気を失い拘束されていた。
その力を、カプセルの中にある液体によって奪われ続けながら…。
次回の投稿は19日の木曜日を予定しています。