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第194話 発見

『改めて自己紹介するね。名前は奏他。種族は【地堕天光翼族】。半分天使で半分人の種族だよ。宜しくね。』


 挨拶と同時に片翼を広げる奏他。

 

『残念ですが。空は飛べません。』

 

 奏他が仲間になり【人族】の情報も手に入れた。

 これからの旅の目的。

 【人族】の里を見付け、燕を探す。

 その目的に一歩近付いた訳だ。


『宜しくね!。奏他お姉さん!。』

『よろ~。』

『宜しくお願い致します。』


 3人も受け入れたようだし。


 目的地へ向け歩きだした俺達。

 俺と夢伽の間に奏他が入った順番で道なき道を進んでいる。奏他が2番目なのは道案内を兼ねてだ。


 ああ。そう言えば…。


『なぁ。奏他。』

『な、何かな?。閃…君?。』


 ん?。何だ?。この反応は?。

 質問しようと近付くと顔を真っ赤にして距離を取られた。

 ええ…何か傷つく反応だな…。


『俺、お前に何かしたか?。』

『え?。いや、違うよ。全然。むしろ仲間に入れてくれたんだもん。助けてくれたって思ってるし、感謝もしてるよ。…で、あの…何かな?。』

『そ、そうか?。なら良いんだが。せっかく仲間になったんだからな。嫌なことがあったら言ってくれよ?。一緒にいる奴に不快感を持たれるのは嫌だからな。』

『あ、うん。ごめんね。また気をつかわせちゃった。』

『別につかってないよ。で、昨日はあの後、夢伽達と何を話したんだ?。お前が3人と打ち解けられたなら嬉しいんだが?。』

『っ!。…ああ。そういう。』

『な、何だ?。』

『あの後ね。3人に閃君がどれだけ凄いか。格好いいかを休みなく聞かされたよ。特に詩那は凄いね。彼女、完全に君に惚れ込んでるよ…目がマジだったもん。』

『おぉう。何か…すまん。』

『良いよ。全然。けど、凄く好かれてるんだね。まだ、出会って間もないって聞いたよ?。』

『ああ。今日で3日目だな。アイツ等には俺には恋人がいるって話したんだけどな。これ以上、恋人は増やせない…。てか、こんな状況で恋人なんか増やしたらアイツ等に嫌われちまう。それは絶対嫌だからな。』

『うん。聞いたよ。11人もいるんだよね?。凄いよね。ハーレムじゃん。』

『俺に好意を抱いてくれたのは嬉しかったし、これからも限られたメンバーで生きていかなければならなかった環境だったからな。全員の想いを受け入れた。その時点からアイツ等を満足させるのが彼氏である俺の役割だ。どんな願いでも聞いてやりたかった…結局、誰一人として護れずに…逆に助けられちまったけどな。』

『会ったことない私が言えることじゃないかもしれないけど。皆、無事だと良いね。』

『ああ。早く会いたいな。』

『そうだね。仲間になった以上、私も力を貸すからね。』

『ああ。ありがとう。』


 奏他とも仲間として仲良くやっていけそうだと思えた瞬間だった。

 

 奏他の案内を頼りに旅立ちから3日が経過した。

 あの時のような温泉を発見することは出来なかったが、途中で川を見付け水浴びをしたり身体を拭いたり出来たのは運が良かった。

 女の子ばかりのいるパーティーだからな。長旅だと分かっていても匂いは気になるようで水浴びを嬉しそうにしていた。

 奏他を除いた3人に身体を拭いて欲しいとせがまれたが、やんわりとお断り。

 仕舞いには、男である俺の身体を拭こうとしてきやがった。断ったら泣きそうな顔をするし、いつも助けて貰ってるから恩返しをしたいとか大層な理由をつけて来たので女の姿になって拭いてもらった。

 ………おもいっきり、全身をまさぐられた。


『そろそろだと思うんだけど…。』

『もう…へとへと~。』

『歩きっぱなしですもんね。私も疲れました…。』

『………。』

『って、蝶女。アンタだけズルくない?。何で飛んでるのよ!。』

『蝶ですので。駄肉は可哀想ですね。そんなに重いものをぶら下げて。さぞ、肩の凝ることでしょう。』

『はぁ!?。まな板女が!。』

『………イラッ。』

『お前達静かにしろ。』

『『はい。先輩。』閃さん。』

『凄いです。お兄さん。お姉さん達の調教師さんみたいです。』

『えへへ…先輩に調教されちゃった~。』

『……悪くありませんね…。』

『何を馬鹿なこと言ってんだ。それより、あれを見てみろ。目的地に着いたぞ。』

『え?。本当ですか!。』

『やりましたね。燕お姉さん居ますか?。』


 俺達は少し離れた高台の岩影に隠れながら【人族】の里らしき場所を見下ろしている。

 らしき というのは、少し様子がおかしいからだ。


『あれ…ちょっと。マズイかもしれないね。』


 俺は視力を強化。

 兎針は触角で空気の流れを感じ取り動きを感じ取っているようだ。

 詩那と奏他は夢伽に触れ視力を強化して貰っている。

 夢伽は我慢だ。


『ああ。何の種族だ?。』

『分からない。白国じゃないのは確実。あの…人達の服につけてるエンブレム…確か青国の…。』


 青国…ブリュセ・リオ…だったか。

 奏他の話によると、海に囲まれた科学の国で水棲生物型のモンスターや機械系統のモンスターが中心に暮らす国だと言っていたな。


 ここから見る限り俺達が転生し旅立った里と同じ。【人族】自体に大した違いはない。所々に社が建っているのも同じだ。

 

 【人族】と思われる6人くらいの男女が、青国の者と思われる数人の人物に引き連れられ、その中に【人族】の6人中3人は手枷をはめられている。手枷をはめられらた者達への扱いはぞんざいだ。

 同じ【人族】なのに、この違いは何だ?。


『閃さん。彼等を助けますか?。』


 兎針が問う。


『いや、様子を見よう。奏他の部下がやったような状況とは少し違うみたいだ。それに…。』

『それに…。』


 俺は視線を彼等に戻した。

 兎針も俺の視線を辿る。


『まさか…あんな奴までいるのか…。』


 俺の視線の先。

 青国の者の中で異質な雰囲気を持つ者が1人。

 40歳半ばといった外見。長いコートを羽織った男。

 アイツは…ヤバイな…。


『っ!。あれは…彼が纏っているのはエーテルですね。ですが、あの方の容姿に心当たりはありません。』

『ああ。俺もだ。俺達と同じ【異神】じゃない…のかもしれない。』

『なら…いったい…。』

『分からねぇ。けど、この感じ…俺が戦った神共に似ている気がする。』

『っ!?。あ…確かに…。』

『今はアイツとの接触を避けたい。だが、あのまま連れて行かれる【人族】の人達を無視できない。』

『では…。』

『ああ。アイツ等の後をつけよう。』

『そうですね。どこに行くのか。調べる必要があります。』


 俺達は互いの顔を見る。全員が頷く。


ーーー


『おや?。』

『どうされました?。イグハーレン様。』

『いいえ。何やら…ただならぬ気配を感じたのですが…。気のせいだったようです。』

『?。そうですか?。なら良いのですが?。』

『イレギュラーはつきもの。警戒するに越したことはありません。迅速に進めましょう。』

『はっ!。』

『イグハーレン様。』

『はい。何でしょうか?。長老様?。』

『ほ、本当に今回の贄で…神を拝むことが出来るのでしょうか?。もう…この里には…身体の弱い弱者しか残っていないのですが…。』

『ええ。安心してください。今回で最後です。ええ。最期ですとも。ふふ。これで、貴殿方は【異神】の恐怖に怯えることも、他種族から逃げ隠れることもなくなりますよ。ええ。きっとね。』

『そうですか。そうですか。ありがたや~。あり~。』

『ふふ。ええ。楽しくなりそうですね。まさか…ふふ。イレギュラーとは…。さて、どの程度の 神 が引っ掛かったのやら。』

『連行!。』

『はっ!。』


ーーー


『あっぶね~。アイツ…やべぇな。』


 俺は4人を抱き抱えて岩影に潜り、奴の視界から外れた。

 奴との距離は300メートルは離れている。俺や兎針のエーテルに反応しやがった。流石に俺達が何処の誰かまでは探られてなかったと思うが…。


『アイツ…俺達の存在に気付きやがったぞ。』


 あんな奴がいるのか…。

 エーテルを纏う謎の男。厄介だな。雰囲気が神共に近い…強さを察しにくい。


『お、お兄さん…苦しいです…。』

『先輩の腕の中…ヤバイ。もっと~。』

『すぅ~。はぁ…。すぅ~。はぁ…。すぅ~。はぁ…。』

『……………。きゅ~~~。』

『ああ。すまん。咄嗟だった。』


 腕の間から顔を出す夢伽。

 腕…どころか身体に抱きついてくる詩那。

 俺の匂いを必死に嗅ぐ兎針。

 固まって気絶する奏他。


『お前ら緊張感を何処に忘れた?。』


 俺から離れる3人。

 気絶した奏他を岩を背に座らせる。


 奏他…男に免疫なかったのか?。

 目を回している奏他の頬を軽くぺちぺち。


『はっ!?。』

『すまんな。咄嗟だった。男、苦手だったか?。』

『ああ。………はい。ああ。苦手ってだけだよ?。嫌いって程じゃないの。ただ、心の準備が必要で…。急に触られると…恥ずかしいんだよね…。ははは。』

『そうか。知らなかったこととはいえ。すまない。これからは気を付ける。』

『ああ。うん。でも、助けようとしてくれたんだよね?。私もあの男は危険だと思った。けど身体が動かなかったから閃君が引っ張ってくれて助かったよ。こっちこそ、ありがと。』

『ああ。そう言ってくれると助かる。』


 さて、これからどうするか。

 あの男の警戒網に引っ掛からずに尾行するとなると…この距離を維持したまま進むしかないな。

 幸いなのは、【人族】の連行と老人達の誘導で奴等の進みが遅いことか。


『皆。気を付けてついてこいよ。』

『うん。』

『はい。』

『分かりました。』

『了解だよ。』


 俺達の謎の男が率いる集団への尾行が始まった。


 【人族】の里から1時間くらい歩いた場所に大きな滝があった。

 断崖絶壁の超高度から叩きつけられる大量の水が高々く水飛沫を発生させる。

 集団は断崖の側面にある細い道を歩いていく。

 そして、滝の裏側へと姿を消していった。


『何か…あるのか?。兎針。俺達を追跡している奴はいるか?。』

『いえ、何処にも。』

『そうか。皆。何があるか分からない。絶対俺から離れるなよ。』

『はい!。』

『勿論です!。』

『分かりました。』

『え?。え?。ど、どうすれば?。…えい!。』


 両手足。胴体に抱きつく4人。


『離れるな…とは、言ったが…これじゃ動けん。』

『許可が出たので。』

『先輩~。』

『私もか弱き乙女ですので。』

『え…その…空気を読んでみました…えへへ。』


 やっぱり緊張感を何処かに忘れてしまったようだ…。

 そう受け取ることが出来る彼女達の行動だが…。


『はぁ。不安を誤魔化すなよ。そういう気持ちは我慢するな。』

『『『っ!?。』』』

『安心…は、出来ないよな。これから何が起こるのか、どんなことが起きるのか分からない場所に突入するんだ。緊張も…恐怖だって感じるのは仕方がない。』


 夢伽と詩那の頭を撫でる。


『夢伽、詩那、兎針、奏他。お前達はここに…いや、兎針を中心に安全な場所に隠れていてくれ。』

『え?。』

『俺が偵察に行く。』

『………。』

『そうだな。2日。いや、3日経っても俺が戻って来ない場合は…。』

『嫌です!。お兄さんと一緒が良い!。』

『ウチも先輩と一緒が良い!。』


 一番震えていた2人に言葉を遮られた。


『足手まといなのは分かっています!。けど、お兄さんの身を心配しながら待つ方が辛いです…。』

『そ、そうだし。ウチの力も何かの役に立つかもしれないでしょ?。だから…。』

『お兄さんと一緒が良い…です。』

『先輩と一緒が良い…よぉ。』

『………さっきも言ったが、この先は何があるか分からん。俺がお前達を護れない状況に陥ることだってあるんだぞ?。』

『分かってます!。ついていきたいって言ったのは私たちです!。後悔はしません!。』

『う、ウチも…。大丈夫…。頑張る。』

『そうか…。兎針。奏他はどうだ?。』

『夢伽さんが勇気を出して導き出した結論に意を唱えることはありません。閃さんだけ負担を強いることもありません。私も夢伽さんをお守りします。あと…ついでに駄肉も。』

『私もです。閃君や兎針ちゃんのような強さはないけど…全力で皆の為に力を使うよ!。』


 全員の意思を確認する。

 どうやら迷いはないようだ。

 さて…こうなった以上、全力でコイツ等を護らないとな…。


『わかった。じゃあ、行くぞ。』


 俺達は滝の裏側へと踏み入れる。

 

 そこは長く、長く続く洞窟だった。

 長く。長く。長く。長く。長く。

 下り坂の洞窟が続いている。


 どれくらい歩いたか。

 右へ。左へ。右へ。左へ。

 下り坂はどんどん続いていく。


 何時間か進んだ頃。

 目の前に機械的な扉が出現した。

 …って、これエレベーターだよな?。

 岩肌に埋め込まれたような扉の横に ▽ マークのボタンがあるし…。


『閃さん。ここまで機械的な扉です。中に…いえ、もしかしたら既に…この周辺にも監視カメラが仕掛けられている可能性があります。』

『ああ、こんな馴染みのある機械があるとは思わなかった。』

『私の蝶で周辺を調べましたが、ここ以外に扉は無いようです。』

『…覚悟を決めるしかない。ってことか…。鬼が出るか蛇が出るか…。皆、警戒だけはしろよ。』


 全員が頷く。

 それを確認し、ボタンを押した。


 暫くすると チーン という音と共に扉が開いた。

 

『やっぱ。エレベーターだよな?。』


 全面にはガラス張り。

 9人くらい入れる広さの個室。床は絨毯。

 ちょっと高級感のあるエレベーターだった。


『行こう。』

 

 エレベーターの中へ。

 階層を表示するボタンは1つだけ。

 ▽ を示すボタンだけが点滅する光を放っていた。

 俺はそのボタンを押した。

 ガコン。と僅かに揺れを感じたが、すぐに静けさが戻る。


『先輩!。』

『お兄さん!。』


 2人に呼ばれ振り返る。

 ガラス張りの壁。その外を指差す2人。

 俺はその方向に視線を向けた。


『は!?。何だ!?。あれ!?。』


 視界に広がった景色。

 太陽の光りすら届かない地下世界。

 だが、そこは…眩しくも思える光に照らされた巨大な広い空間だった。

 人工的な輝き。様々な建造物。どこか懐かしさを感じる建物の並ぶその場所は…。


『地下にこんな巨大な都市があるなんて…。』

『知りません。こんな場所の情報は白国には…。』


 あまりにも広い…。

 広大なアンダーグラウンドが存在していた。

次回の投稿は14日の木曜日を予定しています。

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