第184話 迫る終焉
クティナの出現。無華塁の神化。クティナの神化。【震動の神】【神獣の神】と化した無華塁とクティナは【無限の神】ガズィラムに対し全力で挑む。
無華塁は震動の力を用いてガズィラムが放出するエーテルの波動を乱し、十全な能力の発動を封じると同時に震動の力を纏った攻撃をガズィラムへ連打する。
無華塁の攻撃は、ガズィラムが放出することで身を守っていたエーテルを削っていった。
つまりは、エーテルでの防御にも限界があるということ。攻撃を続けていれば…やがて震動の力はガズィラム本体へ届くことになる。
無凱の時とは違う身に及ぶ危険を感じ取ったガズィラムが無華塁から距離を取ろうとするが、獣の力を身に宿したクティナの蹴りがガズィラムの動きを阻害した。
クティナは【神力】を発動した。
決定した結果は【神を殺す】。
【無限の神】ガズィラムを殺すために【神獣の神】が得た過程は様々な神獣の力を使いガズィラムの【神核】を破壊するということ。
四足獣の速度で周囲を駆け巡り、翼獣の翼で空を舞う。
閃の契約したクミシャルナ達【五行守護神獣】。クティナのしもべである【七大罪の獣】。その全ての力をその小さな身体に発現させガズィラムへ攻撃を繰り返す。
クティナの攻撃は単純な破壊力だけでエーテルの放出による防御を破壊出来る威力を持つ為、僅かずつだがガズィラムの肉体に傷を負わせていく。
小さな傷はすぐに回復されてしまう。自分の攻撃力ではガズィラムに決定打を与えられない。そう考えたクティナは無華塁の神技に賭けることにした。
無華塁が削ったエーテル。次々に溢れだしているエーテルに僅かに波のような波紋が生まれ、ガズィラムの身体への小さな穴が一瞬生じた。
『今!。』
『ぬ?。ぐっ!?。』
クティナの強烈な蹴りがガズィラムを捉える。
その蹴りはガズィラムを地面へ叩きつけた。
『無華塁!。』
『うん!。神技!。』
魔力込めた震動による破壊の一撃。
『【天地震界破局】!。』
『ぐおぉぉぉぉぉおおおおお!!!。』
ガズィラムの全身に伝わる震動。
本来なら大地を揺らし大地震を引き起こす神技。その破壊力を一点に集めガズィラムの肉体を貫いた。
ガズィラムの身体を通り過ぎ周辺の壁や床を走る衝撃が崩壊させた。
『はぁ…はぁ…はぁ…。おもいっきり。叩き込んだ。』
『命中。勝った。』
土煙を上げながら壁の向こう側まで吹き飛んで行ったガズィラム。
無華塁の一撃はガズィラムの神核に命中した。手応えはあった。
『っ!?。』
『気付いた?。』
『うん。まだみたい。』
ゆっくりと。静かに前進してくる腕を組んだままのガズィラム。
エーテルの放出は未だ衰えず先の一撃で仕留められなかった真実を無華塁とクティナに叩きつけた。
『はははははははははは!!!。一瞬。余も驚いたぞ。まさか、ここまでの破壊の力をその小さな身体に秘めているとはな。震動の力…お前が完全な神へとなれば世界を崩壊させることも可能だろうな。星の持つ破壊の具現とでも言うべき力。面白い。』
『何で。生きてる?。手応えあった。』
『ん?。不思議か?。余は自身の神核の周囲に特殊なエーテルを纏っている。』
『特殊なエーテル?。』
『そうだ。余が生を受けた時間に比例し蓄積されたエーテルの外殻だ。その密度によって生まれる硬度はお前達…いや、例え同種の神であっても破壊することは出来ん。お前が攻撃したのはその外殻だ。謂わば、それが余の神具だ。』
『……………。』
無華塁。クティナは直感する。
自分達ではガズィラムを倒せないことを。
『余を楽しませてくれた礼だ。余の最強の一撃にて終わりにしてやろう。』
これ以上の足掻きは無駄に終わる。
無華塁達の直感がそう告げていた。
神具を手放した無華塁。クティナも諦めてしまった。獣の神故にこの状況、逃げることすら許されていないという絶望的な状況を受け入れた。
最後に思い浮かべる大好きな人の顔。
目を閉じ来るべき衝撃に備えた。
ガズィラムの指先に集まるエーテル。
凝縮され指先よりも小さな光の塊が出現する。
『それではな。強き者達よ。余は満足した。安らかに眠れ。』
ガズィラムが指を鳴らした瞬間。
小さな光の塊が破裂し強大なエーテルの波動が爆発を起こした。
全てを蒸発させ、吹き飛ばし、呑み込み破壊の力。
無華塁とクティナに逃げ道など最初からなかった。最初からガズィラムが全力で戦っていたら勝負にすらならなかったであろう。
消滅する寸前。
2人は思う。
もし次が…ガズィラムに挑戦できる機会があるのなら。
今度は…今度こそは自身の力でガズィラムを倒す。と。
ーーー
独り。拠点の外。最も高い場所で空を見上げている神がいた。
空には満天の星。赤い星。白い星。流れる星。様々な星が輝いている。
【宇宙の神】メリクリア。
手元には魔力で作られた立体映像のような、ジオラマのような、小さな宇宙が星々の輝きを照らしている。
メリクリアの神具【ミクロコスモス】である。
実在する宇宙の縮小版。
本来の宇宙と接続されメリクリアが星を動かせば現実の星も連動し動く。宇宙規模の神具。
その宇宙でメリクリアは星と星を線で結び巨大な魔方陣を描いていた。
『女王。此方に居ましたか。』
『ん?。ああ。【静寂の神】か?。何用だ?。妾は計画の最終段階を実施しておる。お主は自身の持ち場はどうした?。』
メリクリアの背後に現れたリシェルネーラ。
『私の、この世界での役目…いえ、目的は終了しましたから。…半身に会い、能力の手解きを行いました。』
『そうか。』
両目を布で隠しているリシェルネーラ。
その隠れた表情はとても嬉しそうだった。
『後は、私の 本当の主君 が目覚めるのを待つだけです。…ああ、ふふ。女王?。無理に女王の話し方をしないでも宜しいですよ?。』
リシェルネーラのその言葉にメリクリアは僅かに驚いた。だが、彼女ならば気付いていてもしょうがないか…という結論に達し、本来の口調に戻すことにした。
『……………やっぱり、気付いてたんだね。他の神なら騙せてると思ってるんだけど。君には絶対無理だと思ってたんだ。君に隠し事は出来ないしね。』
『ふふ。そうですよ。ですが、一生懸命に女王として振る舞おうと頑張っていた貴女が可愛らしくて、つい…見守りたくなってしまいました。』
『むぅ。いじわる。…まぁ、良いや?。それで?。どうしてここの来たの?。まさか、本当に僕に会いに来たの?。』
『ええ。そうですよ?。復活の近い我が主君です。私が主君と戦うことはありませんし、有り得ません。私は 主君に仕える 為に存在しているのですから。』
リシェルネーラが自身が世界に創造された役目を語る。
『…良いなぁ。羨ましいよ。僕も閃君ともっと一緒にお喋りしたいなぁ。』
短くも楽しかった時間を思い出しメリクリアが頬を赤らめる。
『あらあら。ああ。そう言えば黒姫ちゃんも主君にご執心でしたね。ふふ。恋のライバルですか。微笑ましい。』
『はぅっ!。言わないでよ…こんな気持ち初めてなんだ。』
『神の…恋。良いですね。とても。…けれど、主君を護るのが私の役目です。彼が望まぬ行動を行った際には、例え女王でも私の敵ですよ?。』
『それは恐いね。主様…【絶対神】と閃君…【観測神】が持つ世界の理に干渉する力の一端。【世界を崩壊させる力】を持つ君が相手じゃ僕に…いや、僕達に勝ち目は無いね。』
『くれぐれもお気をつけ下さい。ああ。けれど、主君が望むのであれば自由ですので。』
『うわぁ…凄く良い笑顔で言ったね…。』
暫く互いに話さず、メリクリアが神具を操作する音だけが静かに響いていた。
『よし。これで準備は終わりかな。後は…僕の映し身に頼るしかないかな。』
『そうですね。では、私はこれで。女王。この世界での最後のお勤め頑張って下さいね。』
そう言い残しメリクリアの前から姿を消したリシェルネーラ。
『うん。最後だ。色々あったこの世界も…また最初から始まるんだ。』
女王は天空に浮かぶ巨大な目を見ながら静かに その時 を待つ。
閃が【観測神】へと覚醒する…その時を…。
ーーー
ーーー閃ーーー
『美緑…砂羅…翡無琥…。無華塁…。皆…。』
仲間達の最期の姿を映像で見せられた俺は膝をついた。
俺達は、ただ…平和に暮らしたかっただけだ。こんな能力に支配された世界でも争わずに皆で楽しい毎日が送れるだけで満足だった。
そんな日常を皆が求めて…戦い…死んだ。
全員の 死 を見せられた。
『くそっ…。』
地面を殴っても白い砂が巻き上がるだけ。
拳は砂に埋まっていく。
『さぁて。仲間達の最期の姿。楽しんで貰えたようで何よりだ。』
『お前…。』
『おっと。そう睨むなよ。安心しろよ。俺とお前が1つになり、【観測の神】の力を完全にコントロール下に置いたのなら全員を生き返らせられる。そうすれば、また今まで通りの日常だ。』
『っ!。ああ。そんなこと言ってたな。けど、お前の考えはそうじゃないんだよな?。』
『ああ。あんな弱い連中はいらねぇ。1から俺のオリジナルのクロノ・フィリアを作ってやるぜ。それで、あのクソゲーをブチ込んできた神の奴等に復讐すんのさ。散々、俺達を巻き込んだんだ。落とし前はつけさせてもらわねぇとな。』
もう一人の俺が近付いてくる。
『さてと。』
『ぐふっ!?。』
奴の蹴りが俺の腹を蹴りあげた。
そのまま俺の身体は砂の上を転がる。
『くっそ…身体が重い…。』
何とか立ち上がるも、全身に力が入らない。
『能力の使いすぎだ。お前の力の源である【創造の力】。それをあれだけ連発したんだ。魔力が尽きかけているんだろ。』
俺の神具【時刻法神】。
仲間達の能力を使うことが出来る神具だ。
【時刻ノ絶刀】は奴の手の内にある。
この戦いで俺は扱える仲間達全員の能力を秘めた【神剣】を次々に繰り出した。
しかし、【絶刀】によって悉く断ち斬られることになる。そして、最後に残った【時刻法神】自体も奴に斬られてしまった。
『だが、お前のことも理解できてるんだぜ?。俺の目指す世界が気に食わないんだろう?。けどな?。現実を見ろ。地に這いつくばっているお前を見下ろしている俺。これが実力の差なんだよ。【絶対神】の力を持つ俺の方が全てにおいてお前の上にいるんだ。』
『だ、だからって…諦めるかよ…。お前が話したクロノ・フィリアは俺達のクロノ・フィリアじゃねぇ。クロノ・フィリアは俺達で作ったんだ。断じて1人の意思によって作り直されて良いもんじゃねぇんだ。』
拳に魔力を込める。
『ははは。そうだった。そうだった。お前には…まだ それ が残されていたな。【人族】としての最後の技が。』
俺に残された最後の攻撃。
クロノ・フィリア全員の思いを乗せて奴に放つ!。
皆…待っててくれ。俺は…皆を生き返らせる…から…。
『はぁぁぁぁぁああああああああああ!!!。』
俺は奴に向かって走り出した。
『神技!。』
俺は平和な日常を取り戻す!!!。
『【極 天刻地絶人】!!!。』
『はぁ…。つまらん。』
『なっ…にっ…。ぐあっ!?。』
俺の拳は奴に届く前に腕ごと切断された。
『トドメだ。とっとと俺の中に還れ!。』
奴の追い討ち。左肩から胸を斬られた。
『がっ!?。ぐっ…あっ…!?。』
全身の力が抜けた俺はそのまま地面に倒れる。
周囲に自分の血が水溜まりのように広がっていく。痛い。痛い。痛い。血が止まらない。
けど…ここで…諦められない…。
『ま…だ…だ。』
『おいおい。まだ、立つのか?。ああ。そう言えば白蓮の時もそうだったな?。全身ボロ雑巾みたいになってんのに何度も立ち上がってよ?。お前の中で見てた俺も結構引いたぜ?。』
失った腕を創造する。
この世界は俺の心の形。【創造神】の力が満ち溢れている。
腕を失う前の自分自身を想像し魔力を…いや、エーテルを流す。
身体を巡る流れを感じ取りそれを知覚。失った腕も、 そこにある 時のようにエーテルを巡らせ、腕の形をイメージする。
それが次第に形となり、新たな腕が創造される。
『へぇ。創造の力をコントロールし始めてんな。この世界の後押しがあるとはいえ、そこまで完璧に腕を再生させるとは…驚きだ。はぁ…。その様子じゃ。まだ諦めねぇようだな?。』
『はぁ…はぁ…。たりめぇだ。ここで…諦めたら…今までの…俺の人生が…全部…嘘になっちまう…。諦め…ない俺を…皆が信頼してくれたんだから…な!!!。』
『はぁ…。うぜぇな。諦めないとか、そんな場面じゃねぇんだよ?。お前は俺に勝てねぇんだ。どんなに足掻こうがそれが真実なんだよ。』
『それ…でも…だ。』
『もう良いわ。とっとと死ねよ。』
奴が再び。絶刀を構える。
余裕な様子で距離を詰めてくる。
身体がまともに動かせない…【創造神】の力がこんなに身体に負担が掛かるなんて…。立っているのがやっとだ…。
そんな俺の様子を知っているのか。心臓を狙う的確な一突きが恐ろしくゆっくりな動作で放たれた。
『ぐっ…。避け…。』
…られねぇ。
『させないよっ!。神具【魔柔念金属】!!!。』
懐かしくも感じる声と、見覚えのある液体金属が俺と奴の間を走った。
何で、ここに…?。
その後ろ姿は、長い水色の髪を靡かせる少女。俺の…大事な…。
『っ!?。はっ!?。何でお前がここにいんだよ?。』
【絶刀】は細く鋭利な刃になった液体金属によって弾かれる。
目の前に現れた人物の登場には流石の奴も予想外だったみたいだ。
『よかった。閃!。間に合った!。』
振り返る美少女は笑顔で…今の俺にはとても眩しく見えた。
『こっちの女の子の姿の閃が僕の大好きな方であってるよね?。』
そんな質問をしている最中にも俺に抱きついてくる恋人に苦笑いで返した。
『…すまん。助かった。』
『えへへ。仲間だし。恋人だもん。助けるのは当たり前だよ!。』
『ああ。ありがとう。代刃。』
俺は代刃を抱きしめた。
ーーー
ーーーステータスーーー
・クティナ
・刻印 No.24(右目)
・種族 【天地創世終末神族】
・階級 【創世崩壊神級】
・スキル
【七大罪の獣】
【多重結界】
【浮遊】
【魔力崩壊(弱)】
【劣化コピー】
【神体強化(弱)】
【接触崩壊】
【野生勘】
【自己修復】
【獣神強化】
【獣神装甲・肉体変化】
【神力・神獣】
・神化 【獣神女神化】
・神具 【神獣核】
・神技 【崩壊波動咆哮】
・無華塁
・刻印 No.24
・種族 【天地振壊神族】
・スキル
【極震】
【振撃】
【震強乱波】
【局地極地震】
【振動波動】
【震極空間】
【肉体強化(極)】
【直感(極)】
【真眼】
【震伝】
・神具 【界震崩天戟】
・神技 【天地震界破局】
【極 天地震界破局】
・灯月
・刻印 No.10(胸元)
・種族 【天魔翼神族】
・スキル
【暗視 極】
【静暗転歩】
【気配隔絶遮断】
【魂喰の風】
【未来視】
【混沌月鎌刃斬】
【死魂吸絶結界】
・神化 【天魔混沌翼女神化】
・神具 【魂喰混沌鎌】
【魂救混沌槍】
・神技 【黒翼ノ死鎌】
【白翼ノ生槍】
・代刃
・刻印 No.2(左目)
・種族 【時空間神族】
・スキル
【魔力物質化】
【魔力性質変化】
【武具最上神域錬度】
【鑑定眼(神具)】
【重硬金属神装甲】
【時空間女神化】
【男性化】
・神化 【時空間女神化】
・神具 【魔柔念金属】
【並行世界接続門】
【多重並行世界接続門】
・神技 【極時空間神具砲弾】
次回の投稿は6日の日曜日を予定しています。