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第182話 神に抗う⑤

ーーークロノ・フィリア森林区画ーーー


『無駄ですよ。そのような単調な攻撃は効きません。』


 美緑のスキル【世界樹】がメリクリアの召喚した隕石群によって倒壊、半壊した森林区画。

 燃え上がる森の炎を一瞬にして消し去った【静寂の神】リシェルネーラが美緑の前に立ちはだかる。


 足元から蔦や根を刃に変えリシェルネーラを迎撃。しかし、その攻撃も目にも映らぬ速度で放たれる抜刀の斬撃が悉く切り刻んでいく。

 両眼を布で隠しているにも関わらず、気配だけで正確に切り裂いていくリシェルネーラの神気に美緑が後退る。


『強い………なら、これを…【樹界種】。』


 植物の種をばら蒔いた美緑。


『何かを考えた様ですが。貴女の能力では私を倒せませんよ?。植物を育て、操る能力では。』

『そんなこと…やってみなければ分かりません!。【傀儡木人】!。』


 周囲の倒木から出来た人形が複数体作られリシェルネーラに飛び掛かる。


『ふむ。蔦や木が傀儡に変わっただけのようですが?。先程と何も変わっていませんよ?。いえ、何かをなさろうとしていますね…時間稼ぎでしょうか?。』

『っ!?。』


 時間稼ぎが狙いだとバレたことに焦りを感じる美緑。更に傀儡を作り自身の前方で壁にする。


『その程度では私を止められません。』


 たった一振。

 傀儡達に出来た斬撃の傷痕でリシェルネーラが斬りつけたことを理解する。

 その速度は美緑の知覚の完全に外にある。


『終わりです。小細工をされる前に排除させて頂きます。』

『くっ…。』


 間に合わない。

 美緑がやろうとしていること。単純な戦闘能力ではリシェルネーラに敵わない。

 なら、彼女を自分の領域に引きずり込むしかないと考えたのだ。

 だが、森を焼かれ、焦げた土では発芽させるまでに時間を要する。その為の時間稼ぎ。


『お覚悟。』


 抜刀。

 神速の居合いが美緑を襲う。


『むっ!?。これは…鱗?。』


 ギンッ!!!。という金属音。金属と金属がぶつかり合った音が響いた。

 チンッ!。というリシェルネーラの納刀時の音が美緑にも聞こえたが自分が斬られていないことに気付く。


『させません。我が主の命により美緑様をお守りいたします。』


 美緑の身体をとぐろを巻くことで取り囲んだ長い身体。鋼の鱗が輝く。


『クミシャルナさん?。』

『出てくるのが遅くなり申し訳ありません。ご主人様との繋がりが切断され状況把握に時間が掛かってしまいました。』


 クミシャルナが美緑を守るように前に立つ。


『神獣…そのような存在まで使役しているとは…。』

『神…【神騎士】の1柱ですか。これは…厳しい状況ですね。』

『いくら神獣の助力を得ようと貴女方では、私を止めることなど出来ません。』


 再び、杖を構えるリシェルネーラ。


『美緑様。何か良いお考えがあるのですよね?。』

『はい。彼女に通じるか分かりませんが、私の能力の全てを使えば…。ですが、もう少し時間が…。』

『分かりました。時間を稼ぎます。』


 半透明の鱗型の盾が空中に複数展開される。


『その力…地母龍…ですか。珍しい。何やら相談事をしていたようですが、時間稼ぎが見え見えですよ?。』


 抜刀。しかし、リシェルネーラの斬撃はクミシャルナの盾に僅かに傷をつけただけに留まった。


『硬い…。ふふ。少し楽しくなって来ました。…ん?。これは…砂?。』


 再び、杖を構えなおすリシェルネーラだったが、この時に周囲の異変に気付く。


『言い忘れました。この場へ加勢に来たのは私だけではありません。』

『スキル【砂刃】。』

『っ!?。ぐっ!?。』


 リシェルネーラの周囲を漂う砂埃が刃となって彼女を切り裂いたのだ。


『美緑ちゃん。ご無事ですか!?。』

『砂羅…ええ。大丈夫です。』


 砂埃が人の形を作り砂羅へと変わる。駆け付けた砂羅が美緑を抱き締めた。


『良かったです。私…心配で心配で…。』

『砂羅も無事で…本当に良かった…です。』 


 互いの無事を確認し合う2人。


『砂になる能力ですか…。私としたことが油断しましたね。』


 目に巻いている布に僅かな切り傷が入ったリシェルネーラ。顔の横から血を流している。


『まだ。行くぜ?。』

『っ!?。』


 追撃。

 上空から舞い降りた獣が雷の纏ったその拳でリシェルネーラに殴り掛かった。

 杖で防いだリシェルネーラ。雷のエネルギーが周囲の発散される。


『またも、神獣…雷皇獣まで使役しているのですね。』

『ちっ。防ぎやがったか。』


 跳躍しクミシャルナの横に着地するラディガル。


『無事みたいだな。クミシャルナ。美緑。間に合って良かったぜ。』


 リシェルネーラへの警戒を緩めず、美緑達への安否を気遣うラディガル。


『貴女もですか?。』

『ああ。主様との繋がりが急に切れた。俺の大事な主様に何かあったんだ。』

『私 達 のご主人様です。ふぅ…。此方は見ての通り【神騎士】の彼女が相手です。攻め手が無いこの状況を打開する案が美緑様にあるようなので時間稼ぎをしたいのですが?。』

『おーけー。分かりやすい。』


 雷を全身に纏うラディガル。


『私も行きます。』

『私が皆さんを守ります。』


 砂羅、クミシャルナも前に出る。


『良い闘気です。では、【静寂の神】として貴女方を排除します。』

 

 雷が走る。

 高速移動からの肉弾戦を繰り返すラディガルの攻撃を的確に捌いていくリシェルネーラ。杖を巧みに操り雷を纏う乱打を受け流している。


『そこです。』

『させません!。』


 攻撃をいなしたことでバランスの崩れたラディガルへのリシェルネーラの抜刀をクミシャルナの鱗の盾が防ぐ。


『素晴らしい強度です。私の刃でも僅かしか傷つかないとは…。』

『【砂軍】!。』

『砂の…兵隊?。』


 砂羅のスキル。

 砂で出来た人型の兵隊を作り出す。

 その手には強度を上げた砂の剣が握られ、複数体で襲い掛かる。


『はっ!。』


 リシェルネーラが抜刀するも、元々が砂の兵隊は破壊されても、すぐに復元され何度も攻撃を繰り返す。


『厄介ですね。』

『俺もいるぜ!。忘れんじゃねぇ!。』

『忘れてなどいませんよ。』


 砂羅の不死身の兵隊。ラディガルの高速移動からの肉弾戦。クミシャルナの防御。その全てが一体となりリシェルネーラを追い詰める。


『皆さん!。お待たせいたしました!。下がってください!。』


 美緑の声に3人が反応。

 美緑の後ろに跳躍する。


『神化!。【樹界女神化】!。』


 美緑の神化。

 その姿は小さな手のひらサイズの妖精へと変身した。


『さあ!。【神水玉輪】よ!。枯れた大地に恵みの雨を降らせなさい!。】


 神具の起動。

 美緑の首から下げられた宝石が輝き、神の雨を降らせる。


『準備は整いました!。私の子達よ!。目覚めなさい!。神技!。【自然樹異界】!。』

『こ、これは!?。』


 世界樹から伸びる大量の木々。

 急速に成長し焼き払われた大地に広大な樹海を作り出した。

 あっという間に周囲を巨大な大木に取り囲まれたリシェルネーラ。


『成程。倒れたあの倒木…世界樹と言っていましたか。その栄養を使い発芽させたのですね?。死んだ大地に緑が蘇るとは…優しい。素晴らしい能力ですね。』

『ありがとうございます。ご推察の通りです。ですが、これだけではありませんよ?。』


 樹海内に反響する美緑の声。

 スキル【樹木同化】により美緑は樹海にある 全て を操ることが出来る。


『気配が…読めない…。』


 リシェルネーラが困惑する。

 樹海の全てから気配を感じるからだ。樹海と同化したことにより美緑は自身の手足のように自在に木々を操作する。


『行きます!。』


 樹海の 全て が一斉にリシェルネーラへ襲い掛かる。

 蔓、蔦、根は鞭のようにしなり、草や葉は刃となって舞い落ちる。木々そのものは根を利用して徘徊し1つの生物のように独立して行動している。


『くっ!。数が多い…。』


 迫り来る樹海の猛攻に防戦一方になるリシェルネーラ。如何に速い抜刀も疲労無く絶えず襲い掛かってくる木々の前には無意味であり、木々も全方位から攻撃を仕掛けてくるためその場に留まることが出来ず動き回るしかない。

 また、気配を読むことに長けているリシェルネーラだが気配があらゆる方向から感じ取れてしまう為、気配を感じ取ることの出来る範囲を狭め迎撃のみにその力を使用していた。

 しかし、それが次の攻撃に対するリシェルネーラの反応が遅れることとなった。


『【咆雷哮砲】!。』

『っ!?。あああああ!?。』


 木々の中に作られたトンネルから放たれるラディガルの巨大な雷。直線上の木々を焼き払いリシェルネーラに直撃した。抜刀の連続使用の僅かな隙。そこを的確に狙うように美緑が指示を出したのだった。


『ぐっ!?。まだ。この程度では…。』

『ええ。まだ続きます。』

『っ!?。』

『【砂縛流】!。』


 リシェルネーラの足下が崩れる。

 小規模の流砂が発生し両足を地面の中に引きずり込み身動きを封じた。

 同時に複数本の蔦が両手、首、胴、太股に絡み付く。鞭のように彼女の手を打ち杖を叩き落とすことに成功する。


『これでトドメです!。』


 鋼の硬度と化した無数の根が地中から彼女を串刺しにする為に穿たれる。


『私をここまで追い詰めるとは…。【神人】以外にも素晴らしい方々は沢山いる。王よ。貴方の見解、間違えていました。』

『なっ!?。』


 その瞬間。

 世界が崩れる。

 リシェルネーラの目を覆っていた布が落ち、隠されていた虹色の瞳が露になった。

 拘束していた蔦。地面から飛び出した根。その両方が同時に、砂のように崩れ落ちてしまった。


『バカな!?。』

『あれは翡無琥ちゃんの!?。』


 落ちた杖を拾うリシェルネーラ。


『申し訳ありません。時間切れのようです。』

『砂羅さん!。』

『え!?。』


 今までの速度じゃない。

 一瞬で砂羅の間合いを侵略したリシェルネーラが手を伸ばす。

 間一髪で間に割り込んだクミシャルナが鱗の盾を展開するも盾を含め突き出した右腕が崩れて消えた。


『あがぁぁぁああああああああああ!?。』


 腕と背中から大量の出血。普段冷静で物静かなクミシャルナが悲鳴を上げその場に倒れ込んだ。盾はクミシャルナの鱗を集めて作られていた。それが消滅したことで本来鱗のあった背中が削り取られ皮が失われた。


『クミシャルナ!。』


 駆け寄るラディガルと砂羅。

 美緑も木々を操作し彼女達を覆い隠す。同時に再び樹海の攻撃を開始する。

 しかし…。


『無駄です。貴女方には既に勝ち目はありません。』

『駄目!?。攻撃が通じない!?。』


 息もつかせぬ連続攻撃もリシェルネーラに触れた途端に崩れてしまう。


『さあ。諦めなさい。そして理解しなさい。全てが静寂の中にあることを。』

『私達は負けない!。』


 勝機は既にない。

 けれど、諦めることなど出来ない。

 仲間の皆が…大切な人達が…最愛の人が今も戦い続けているんだ。

 ここで自分が諦めることなんて出来ない。


 そう自分を奮い立たせた直後、大地が揺れた。


『えっ!?。何?。この地震?。』


 揺れの後、爆発するようなけたたましい音と巨大で太い根を張り巡らしている木々を傾ける程の衝撃が押し寄せた。


『このエーテル…王の…。そうですか。満足なされたのですね。』


 一人だけ今の状況の答えにたどり着いたリシェルネーラ。

 樹海と一体となっている美緑の瞳には信じがたい出来事が映っていた。


 遥か遠くの方角で見えた光。

 その地点から徐々に広がっていく魔力に似た何かの球体状の放出がギルドを…拠点を…黄華扇桜の全てを巻き込み消滅させていく。


『そんな…涼さん…皆さん…。』


 放出されたエネルギーは美緑達のいる森林区画の手前で終息し消える。

 今まであった建物や自然は消し去られ、捲れ上がった土や石が積もった平坦な大地が広がるだけな平地が残った。


『いったい…。これは…。』

『おい…なんだよ…これ…。俺達の家が…。仲間達が…。消えちまった…。』

『……………今の…は…エーテル!?。そんな…世界を創造したエネルギーですよ!?。いったい誰が!?。』


 感覚を共有している植物から今の映像を確認した砂羅、ラディガル、クミシャルナも混乱している。


『どうやら、頃合いのようですね。皆様との一時、とても有意義でした。ありがとうございます。排除を開始させて頂きますね。』


 リシェルネーラが一歩を踏み出す。

 彼女が歩いた箇所、触れた部分が次々に消滅していく。


『か、勝てない…。』


 現状の把握すら儘ならない。


『既に貴女の本体は見つけています。』


 リシェルネーラがある1本の大木の前に立ち軽く触れると木の表面が崩れ落ち中から妖精となっている小さな美緑が現れた。


『………。』


 迫るリシェルネーラを睨むことしか出来ない美緑。ギルドの皆の安否すらも確認できない状況が美緑に絶望感を押し付ける。取り乱しそうになる感情。そんな冷静さを失いつつある美緑は必死に感情を抑えた。


『美緑さん!。』

『え!?。』


 チンッ。という聞き慣れた音と共に現れた翡無琥。


『翡無琥ちゃん!?。良かったです!。無事でしたか!。』

『はい。この近くに飛ばされていたので。月涙ちゃん。』

『了解しました。』


 翡無琥と共に現れた月涙がクミシャルナの元へ近付く。


『今、治します。【月ノ涙】。』


 月涙の手のひらに出現した水の玉。

 それをクミシャルナの背中と腕に塗っていく。その効力はすぐに現れ背中と腕の出血が止まり元通りの綺麗な肌へと再生した。


『失った腕は私の力では戻せませんが傷は完治です。』

『ありがとう。月涙。助かりました。』

『お前も無事だったんだな。良かったぜ。』


 先程の爆発で無事だった仲間がいた。

 そのことがメンバーへの活気へと繋がっていく。


『翡無琥ちゃん。気をつけて。彼女に触れると砂みたいになって崩れてしまうの。貴女の力と全く同じ能力みたい…。』

『そのようですね。今の一撃。私の刀の刃が消えてしまいました。』


 白杖の中の仕込み刀を見せる翡無琥。その切先から中央にかけて失われていた。


『それは…。』

『しかもこれ…多分…私よりも…強い…。』


 翡無琥、美緑がリシェルネーラを見る。

 すると、意外なことが。

 目を閉じたままのリシェルネーラが笑顔で翡無琥に近付いたのだ。


『やっと見つけましたぁぁぁあああああ!!!。』

『っ!?。』ビクッ!。


 翡無琥の手を握るリシェルネーラ。

 彼女が触れたことで消滅を覚悟した翡無琥と美緑だったが手をニギニギされるだけでなんともないことに気付く。


『な、何ですか!?。』

『貴女のお名前は何と仰るの?。』

『え…あの…ひ、翡無琥…です…。』

『翡無琥ちゃん!。可愛らしい!。良いお名前ね!。私、貴女にずっとお会いしたかったの!。』

『わ、私にですか?。』

『ええ!。そうなの!。この世界に来たのもそれが目的だったのだから!。』


 警戒心を募らせる翡無琥。

 その時、この場に新たな来訪者が現れる。


『楽しそうではないか?。リシェルネーラよ。』

『王…。はい。私の目的の1つが達成されそうなので!。』

『そうか。なら良い。好きにするが良い。それに、お前のもう1つの目的ももう少しで達成出来そうだぞ?。』

『ええ。その通りです。何もかも順調。この世界に来ることを勧めていただき感謝致します。』

『ははははは。気にするな。さて。』


 その男が現れた瞬間。

 その場にいたリシェルネーラ以外が戦慄した。

 何気無くに纏う魔力に似たエネルギーが常識の範疇を超えていたのだ。それは、リシェルネーラすら可愛く思える程。自分達が圧倒されていた存在すらも容易く屠れるであろう存在が明確に敵として現れたのだから。


『王よ。私は私の目的の為に行動したいと思います。』

『良かろう。では、残りの強者と…ゴミを戯れるとしよう。』


 そう言うと王と呼ばれた男が魔力…エーテルを放出し、その力で宙に浮かぶ。


『そこの女…と、妖精よ。名乗るが良い。』


 美緑と砂羅を見下ろす王。その威圧に素直に答えるしか出来ずに名乗る。


『砂羅…。』

『美緑…です。』

『ほぉ。美緑に砂羅…良い名だ。この地に残る最後の強者よ。』

『最後?。』

『ははははは。見たであろう?。先の余の気の波動を。』

『まさか…。』

『余に一撃を与えた強者がいてな。名を涼と言った。お前達の仲間だろう?。あまりの興奮にこの地を消し去ってしまった。ははははは。』

『涼…さん…が…。』

『この地に残ったのはお前達のみだ。』

『っ!。お前が…お前が…涼さんを…皆さんを…。』


 美緑の身体から怒りに任せて魔力が放出される。


『私も一緒です。美緑ちゃん。』

『私達もです。』


 美緑、砂羅、クミシャルナ、ラディガル、月涙が立ち上がり臨戦態勢へ。


『良い気だ。強者よ。その力を存分に示すが良い。…しかし、獣ども。貴様等の視線は汚らわしい。余に視線を向けたこと後悔しながら死ね。』

『っ!?。』


 神獣であるクミシャルナ達に向けるゴミを見るような視線。

 その殺気に3人が警戒、恐怖を感じた。


『ふっ…。まぁ。良い。…余は【無限の王】ガズィラム!。強者よ。余を満足させてみせよ!。』


 ガズィラムと…いや、神とのクロノ・フィリア拠点での 最後 の戦いが始まった。


~~~~~


 手のひらから放出されたエーテルの波動。

 それを、神具で薙ぎ払う。

 空間を震動させ、エーテルを乱すことで威力を弱めたのだ。


『ほぉ。やるな。』

『まだまだ。』


 ガズィラムが自身を宙に浮かべる為に放出し続けるエーテルが無華塁の振動によって乱れ続ける。

 無華塁のスキル【震動波動】をガズィラムのエーテルの放出を参考に全身から放出しているのだ。


『流石だ。【神人】よ。あの無凱の娘だけのことはある。』

『どうもありがとう。嬉しい。』

『それにしても驚いた。【神人】としての性能が遺伝するモノだとはな。長く生きてきたが…お前のような存在に出会うのは初めてだぞ?。』

『良く分からない。早く。続き。やろう。』

『ははははは。余を急かすとは。面白い娘だ。ふむ。普段と同じことをするのも些か芸に欠けるか。』


 エーテルの放出を止め。地面に降り立つガズィラム。


『何で降りた?。降参?。』

『ははははは。面白いことを言う。単なる好奇心だ。お前と同じ土俵に降り立ったまでのこと。』


 手のひらにから放出されたエーテルが武器の形を作る。それは無華塁の手に握られた神具である矛と同じ形。


『私の真似事?。』

『その通りだ。ふっ。接近戦。武器を用いて戦うのは初めてだがお前達との戦いを経験し僅かながら興味が湧いた。』

『付け焼き刃じゃ。勝てない。』

『ははははは。そうかな?。』


 無華塁が走る。矛による突進。

 それを難なくいなしたガズィラム。

 互いの矛が交錯し周囲に火花が弾けた。


『くっ!。強い…。』

『ははははは。楽しいな!。娘!。』


 ぶつかり合う両者。

 クロノ・フィリアでも実力が上位に位置する無華塁が僅かに押し負けている。


『どうした?。余はまだ余裕があるぞ?。』

『ぐっ。まだまだ!。』


 加速。加速。加速。

 常人には捉えることすら出来ない速度での攻防が繰り広げられる。

 互いのしていることは同じ。

 ガズィラムはエーテルを放出し速度の上乗せと加速。更に攻撃の威力を高める。

 無華塁も魔力を放出し同じ要領で速度と攻撃力を上げていた。

 互角。いや、互角のように見えて無華塁が僅かに押されている。

 攻防は数分。数十分。一時間以上続く。

 流石の無華塁も全力で魔力を放出し続けている現状は身体が悲鳴を上げていた。疲労の色が見え隠れする。

 対するガズィラムは一向に衰えることはない。僅かな傷もエーテルにより即回復。体力など尽きる気配すらない。


『ぐっ!。このっ!。【震撃】!。』


 無華塁がガズィラムが矛を引いた一瞬の隙をつきスキルを発動した。

 震動を攻撃として纏うスキル。触れた部分に防御無視のダメージを負わせるモノだ。


『ははははは。悲しいな。耐えられんか?。自身の鍛え上げた肉体を信じきれずにスキルに頼るとは…。余はお前を過大評価していたようだな。』


 エーテルの放出を一点に集中させ無華塁のスキルを相殺。スキルを放ったことで今度は無華塁に隙が生じガズィラムが放出したエーテルの波と同時に振り抜かれた矛の一撃を受け無華塁の身体が吹き飛ばされる。


『うぐっ!?。』


 そのまま壁に叩きつけられた無華塁。


『ここまでだな。【震動の神】よ。その力の強大さ。このような閉鎖的空間でなければ存分に発揮することが出来たであろう。しかし、これも巡り合わせというもの。貴様は全力で戦い、余に敗北するのだ。光栄に思え。』

『ぐっ…。動けない。』


 ガズィラムが歩み寄る。

 壁に激突した衝撃でまだ動くことの出来ない無華塁。


『余を楽しませてくれた礼だ。お前の得意とする技で排除してやる。』


 エーテルが凝縮された矛を無華塁へ突き付け心臓を一突き。これで無華塁はこの世界から消滅…とはならなかった。


『ふっ。そうか。まだ貴様がいたな。』


 矛は止められた。

 無華塁の影から伸びた腕によって。


『ク…ティナ…。』

『ははははは。【創造の神】の写し身。【神獣の神】よ!。』


ーーー


ーーーステータスーーー


・翡無琥

  ・刻印    No.13(背中)

  ・種族   【天真眼神族】

  ・スキル

   【境界刀気】

   【崩墜砕破点】

   【神速抜刀】

   【明鏡止水】

   【思考加速】

   【超広域気配感知】

   【弱所鑑定】

   【神眼】

   【反響魔音感知】

  ・神化   【天眼女神化】

  ・神具   【天神眼】

  ・神技   【崩脆世界】


・美緑

  ・刻印    No.6(首後ろ)

  ・種族   【森樹界神族】

  ・スキル

   【樹速成長】

   【世界樹】

   【樹界種】

   【傀儡木人】

   【感覚接続(植物)】

   【樹木同化】

   【養分吸収】

   【光合成】

   【眷族召喚】

   【樹界武装】

  ・神化   【樹界女神化】

  ・神具   【神水玉輪】

  ・神技   【自然樹異界】

 

・砂羅

  ・刻印    No.21(右目)

  ・種族   【砂渇塵界神族】

  ・スキル

   【砂化】

   【砂霧】

   【砂漠化】

   【砂塵嵐】

   【砂刃】

   【砂縛流】

   【砂隠遁】

   【砂軍】

   【渇水砂陣】

  ・神化   【砂渇塵女神化】

  ・神具   【砂国羽扇】

  ・神技   【砂宮神殿 王伝威光】

次回の投稿は30日の日曜日を予定しています。

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