第181話 神に抗う④
【神王】【無限の神】ガズィラムによるエーテルの爆弾投下により、黄華扇桜は森林地帯のみを残し、爆発と爆風。蒸発、溶解で土と砂と石だけの更地となった。
それは各々の戦い…戦場をも巻き込みクロノ・フィリアのメンバーへ決定的な敗北をもたらすこととなる。
【万能の神】レジェスタと戦闘を繰り広げていた仁、光歌、春瀬の3人。
【同調の神】キーリュナと戦闘を行っていた裏是流、白、時雨、響、初音の5人。
その全員がエーテルの爆発に巻き込まれたのだ。
黄華扇桜。中心部。
【万能の神】レジェスタは、従者達達を装着した仁と互角の接近戦を繰り広げ、光歌、春瀬の援護すら退けていた。
『流石だ。これ程の能力を手足のように使いこなすとは、彼方の世界でトップに君臨したギルドだけはあるっ!。』
レジェスタの姿。
仁と似た鎧を装着し、左手には光歌と似た銃を。右手には春瀬と似た剣を持ち。3対1であるにも関わらず戦闘開始から終始3人を圧倒していた。
光歌が跳弾を利用た時間差の攻撃を繰り出すも同じく跳弾を使用した弾丸で迎撃。光歌の計算を上回る頭脳を持つレジェスタ。それを数的に不利な状況で行っているのだ。
そして、春瀬の聖剣による攻撃。腕力にモノを言わせた暴力的な斬撃すら片手で防ぐ。両手で聖剣を振り回す春瀬に対し片手のみの力で春瀬を凌駕しているのだ。
『コイツ…私達と同じスキルを使ってる…。』
その事に気付いた光歌が言った。
『ほぉ。気付いたか。その通りだ。私はお前達がプレイしていたゲーム。エンパシス・ウィザメント内で、プレイヤーの【レベル・スキル管理】を行っていた。本を正せば、お前達のスキルは私が与えたモノだ。私が使えるのは必然だろう?。』
『そんな…。』
『故に私は【万能の神】なのだ。…まぁ、自分からは何も出来ないがな…。視界に映る対象の能力に近いものを自分の中から引き出しているに過ぎん…器用貧乏な使い勝手の悪い能力さ。』
内には万能の能力が内包されている。が、自らが自在に引き出すことが出来ない。あくまでも対象のスキルと似たスキルを引っ張り出して使用するだけと…溜め息混じりに呟くレジェスタ。
そのやり取りの寸刻前。
従者隊を装着した完全武装の仁と【万能の神】レジェスタが交錯する。
『やはり、【神人】は一筋縄ではいかんな。』
『どういうことだい?。』
激しく衝突を繰り返す中、レジェスタが仁に向けてぼやく。
『【神人】はエンパシス・ウィザメント内でも特別だったのだ。無意識で会得したスキルに自分の魔力を加えていた。故に、私が想定していた能力以上のモノを獲得していた。その証拠に。』
銃を消し、拳で仁へ殴り掛かるレジェスタを同じく拳で迎撃。ぶつかり合う拳。鎧ごと砕けたのはレジェスタの方だった。
『ほらな?。同じモノを取り出しても、お前のような【神人】相手では私の方が押し負けてしまう。【神人】が神から警戒されている理由だ。故に、この戦いも3対1という形だからこそ成立している。』
光歌、春瀬がいることでレジェスタは2人の能力を使え、更に仁の能力を上乗せすることで3対1での戦いを優位に立ち回っている。しかし、仁とのタイマンになれば劣化能力しか引き出せないレジェスタでは勝ち目がない。
レジェスタはそう言っている。
『故に私が勝利するには、君から倒すしかないのでね。全力で取りに行っているという訳さ。』
説明をし終え再び銃を取り出したレジェスタ。仁も改めて構えなおす。
そこから仁を中心とした戦いが始まった。
そして、この戦闘の最終局面へと移行。
しかし、このタイミングで違和感を、この場にいる全員が気付くことになる。
『これ…何?。何かが…来る…。』
しきりに動く光歌の耳と尻尾。
仁と春瀬も同時に気付いた。
『仁様…何か…悪い予感が…。』
『ああ。魔力…じゃない。何かが集まっている。』
この場にいる者の中でレジェスタだけが真実に行き着いた。
『これは…王の…いや、しかし、このタイミングなら好都合か…。』
全てを消滅させるエーテルの波動が急速に接近。目に映る視界全てがエーテルの壁で埋め尽くされた。
『光歌!。春瀬!。』
仁の必死の呼び掛けも虚しくエーテルは全てを呑み込んだのだった。
暫くするとエーテルの波動は終息し周囲に静寂が戻る。
『はぁ…。はぁ…。王の力は恐ろしい。この身が エーテルによって生み出され、エーテルに対して僅かな耐性 を持っていなければ即死であったな。』
鎧を脱ぎ捨て、銃も聖剣も失ったレジェスタが立ち上がる。エーテルの波動を目視した瞬間、全身から魔力を放出。出力は劣るものの王と同じことをすることで死から逃れることに成功した。
『はぁ…。しかし、驚いた。まさか、あの奔流に呑まれて尚、生きて…いや、原形を留めていようとは…。』
『くっ…。はぁ…。はぁ…。』
身に纏っていた外装を解除して周囲に展開した仁のスキル【外装甲陣】。
光歌と春瀬を中心に障壁を展開した。だが…。
ドサッ…。という音と共に倒れる仁。
光歌も春瀬も辛うじて生きてはいるがエーテルの衝撃を受けてしまっていた。
『だが、防ぎ切れるモノではない。例え【神人】だったとしても。精々が我々と同じ性能なのだから。悲しいが、我々との違い…作られ方の違いがこの状況だ。』
『パ…パ…。』
『仁…様…。』
光歌と春瀬が這って仁へと近付いていく。
足を失ってしまっていた2人はこうすることしか出来なかった。
『この場でトドメ…と言いたいところだが。勝敗は決した。この世界からお前達が消えるのも確定し、時間の問題だ。最期の時を大切な者同士で過ごすが良い。』
そう言い残しレジェスタが消える。
2人を庇ったことで仁は致命傷を受けた。
既に消滅は進み胸から上を残すだけとなっていた。意識もなく。息もしていない。
そんな仁を抱き締める光歌と春瀬。
『パパ…いつも…守ってくれて…ありがと…大好き。』
『こんな私を…恋人にして下さり…幸せでしたわ…。光歌…ちゃんも…。』
『………私…も…ママと…一緒は…嬉しい…。』
『光歌…ちゃん…ママ…って…。』
『………恥ずか…しい……………し…。』
『………嬉………しぃ………。』
3人が消滅する。
ーーーーー
【同調の神】キーリュナとの戦闘が行われていた。
メンバーは、裏是流、白、時雨、響、初音の5人。
大量に召喚したモンスターに対抗する為、裏是流が展開した幻想世界。幻想世界は裏是流の意思で世界へ入ることの出来る存在を選別できる。モンスター軍勢はその世界により全滅。しかし、モンスターの軍勢の生命を取り込み女神として顕現したキーリュナが裏是流達を迎え撃った。
圧倒的な力。鬼殺しの刀を持ち要り裏是流達を圧倒していたキーリュナ。
苛烈する戦いの中、突如として 死 の波が運命を乗せてやって来たのだ。
【神王】ガズィラムの放ったエーテルの波動は裏是流の展開していた結界を破壊し全員を巻き込んだ。
それは突然だ。幻想世界の空にヒビが入ると同時にエーテルの波動によって全てが無に期したのだった。
『…くそ…何なんだ…。僕の結界を…破壊した挙句…この…ぐっ…。』
破壊の波が去った後、裏是流は生きていた。
ボロボロになりながら、身体はエーテルの影響で消滅しかけている。手足の先から少しずつ、徐々に、確実に消滅が始まっていた。
辺り一帯は廃れた荒野のように砂と石の世界になっている。今まで過ごしてきた拠点も、逃げ回っていた波樹林も、仲間達と共に歩いた橋も、綺麗に花を咲かせていた桜の木も…何もかも無くなってしまっていた。
『っ!?。白!?。はくぅぅぅぅぅううううう!!!。しぐれぇぇぇぇぇえええええ!!!。ひびきぃぃぃぃぃいいいいい!!!。はつねぇぇぇぇぇえええええ!!!。』
自身のことを好いてくれていた恋人達の名前を叫ぶ。
何度も…何度も…何度も…何度も…何度も…。
何度呼び掛けても返ってくる声はない。
『皆…。何処行ったんだよ…。』
裏是流はさっきまで彼女達がいた付近の砂を掘った。スコップなどはない。ひたすら手で掘り続ける。
もしかしたら、さっきの爆発に巻き込まれて砂の中に埋もれてしまったのかもしれない。
そう考えて掘り続ける。
指先が消えても、手で。手が消えての腕で。
気付けば足も消えていた。
『頑張るね。』
『っ!?。』
不意にした声に振り返る。
『キーリュナ…だったっけ?。悪いけど俺、忙しいんだ。邪魔しないでくれる?。』
『あのエーテルの爆発で生き残ったんだ。凄いね。流石【神人】だよ。けど、君が今必死に探している。彼女達は【神人】じゃない。君ならもう理解しているんじゃない?。』
『うるさいなぁ。』
『もう手足が無いよ?。そんな無理しなくても良いんじゃない?。彼女達はもう…。』
『うるさいって言ってんだろ!。』
『………。そう。まぁ、私の目的は達したし別に良いんだけどさ。』
『なら、向こう行けよ。』
『………。君達は…凄いね。カナリアのしたこと…もしかしたら間違ってなかったかも…って思っちゃった。』
何かに納得したキーリュナがゲートの中に消える。
残された裏是流は、その身体が光の粒子となり完全に消えて無くなってしまうまで砂を掘り続けた。
ーーーーー
ーーー代刃ーーー
結界の中心に独り佇む閃。
『閃…。』
僕の目の前に閃がいる。
その赤い眼光が僕を見つめている。全てを見透かされるような何処までも深い眼差しに僕は言葉を失い冷や汗を流した。
『……………。』
閃が絶刀を持ち上げた。
『っ!?。』
『安心なされ。ほれ。』
クライスタイトが閃に巻き付いた。
両腕に絡まり両方の刀を封じる。
『クライスタイト!。』
今度は、閃の眼光がクライスタイトを見る。あれは、あの眼で見られたら存在を消されちゃう。端骨の時を思い出し僕は叫んだ。
『無駄ですぞ?。完全体となった【観測神】ならまだしも、力のコントロールもロクに出来ない半端な神では私を消滅させるなど出来ません。ほぉほぉほぉ。』
クライスタイトは余裕だった。
『さて、代刃様。準備は整いましたぞ?。これより彼の心の世界へ入ることとなります。心の準備は宜しいですかな?。』
『うん。皆が居たからここまで来れたんだ。皆の思いも一緒だし、今更…怖気付くことなんてないよ!。』
『そうですか。では、始めましょう。門を開いて下され。』
『うん。』
僕は接続門を開く。
閃…待っててね。今すぐ助けに行くから。
『注ぐ魔力は最大のレベル10。さあ、準備は出来ました。神具の名も貴女の頭の中に浮かんできたでしょう?。後は叫ぶだけです。ほぉほぉほぉ。』
何処までも陽気に、この状況ですら余裕の態度を崩さないクライスタイトに思わず笑みがこぼれた。
そうだよね。これで最後なんだ。
『うん。クライスタイト。色々、ありがとう。君が召喚されてくれて本当に助かったよ。』
『なぁに。私こそ、短い時間でしたが貴女様に出会えて、とても楽しい時間を過ごさせて頂きました。貴女…いえ、貴女達が幸せな未来を手にすることを、我が本体と一緒に見守っていますぞ。ほぉほぉほぉ。安心なされ。前にも言いましたが貴女様の未来は明るい。そこまでの道のりが困難なだけです。仲間と共にいる限り、その道は確実に開けるでしょうぞ。』
『うん。本当にありがとう。じゃあ。行くね。』
『はい。ご武運を。』
クライスタイトに別れを告げ、僕は魔力を込め…神具の名前を叫んだ。
『魔力レベル10…【ミツ・メル】っ!!!。』
神具の効果により僕の意識は肉体を離れ閃の心象世界へ侵入した。
ーーー
ーーーステータスーーー
・仁
・刻印 No.20(右腕)
・種族 【外部装甲機神族】
・スキル
【装甲従者召喚】
【シルヴァ】【ゼルド】
【リオウ】【ガドウ】
【アリシア】【メルティ】
【ファルナ】
【巨大化】
【外武装飛翔】
【外武装蹴撃】
【外武装拳撃】
【外武装機甲斬】
【外武装機翔斬】
【外装甲陣】
【外武装光閃砲】
・神化 【外武装神化】
・神具 【装甲従者】
・神技 【神武装解砲撃】
・光歌
・刻印 No.22(右胸)
・種族 【銀虎神族】
・スキル
【広範囲気配感知】
【獣神強化】
【獣爪】
【獣神瞬動】
【魔力性質変化】
【獣神爪】
【獣爪早撃】
・神化 【銀虎獣姫神化】
・神具 【獣神魔弾爪填銃】
・神技 【獣神虎爪斬空】
【獣神魔縮砲弾】
・ 春瀬
・刻印 No.9(左手甲)
・種族 【聖堕邪天神族】
・スキル
【聖鎧 部分解除】
【聖邪闘気放出】
【光転闇化】
【剛腕力】
【愛想君寵】
【聖白の部屋】
【聖邪合一】
【聖邪光盾】
・神化【聖邪光神化】
・神具【聖鎧】【聖光玉】
【破邪聖光剣】
・神技【聖邪混合破光双剣】
・ 裏是流
・刻印 No.16(左太股)
・種族 【夢現幻想像神族】
・スキル
【幻想獣召喚】
【幻想契約】
【認識妨害】
【呪縛解除】
【溶合隠遁】
【幻想分身】
【幻想体化】
【幻想獣複合】
【幻想獣同化】
・神化 【幻想界神化】
・神具 【幻想ノ仮面】
・神技 【幻想反転世界】
・白
・刻印 No.19(右鎖骨)
・種族【魔呪鬼神族】
・スキル
【鬼術 鬼法縮地】
【常時肉体強化】
【黒呪光 雷豪風雲】
【雷閃】
【鬼術 四神葬包陣列呪法】
【黒雷】
【鬼法 言霊書記】
【鬼法 形代傀儡】
【黒呪雷光 一刀】
・神化 【奥義 黒雷呪姫 顕現】
・神具 【呪伸刀】【呪巨刀】
【呪透刀】【呪霧刀】
・神技 【黒雷呪 万雷喝災】
・時雨
・刻印 No.16(左太股)
・種族 【戦軍神族】
・スキル
【心眼】
【反射思考】
【明鏡止水】
【縮地】
【真斬一閃】
【飛翔一刃】
【刺突穿槍】
【飛翔一槍】
【強貫飛弓】
【流星破矢】
・神化 【戦軍女神化】
・神具 【戦軍三器】
・神技 【軍神波乱】
・響
・刻印 No.9(左手甲)
・種族 【鋼鉄身物神族】
・スキル
【鋼鉄操作】
【鋼鉄化】
【呪縛鎖陣】
【封神鎖縛】
【呪縛鎖弾】
【呪縛鎖盾】
【呪縛鎖鋼鞭】
・神化 【鋼鉄女神化】
・神具 【呪縛鎖錠】
・神技 【八ツ首鎖錠蛇龍】
・初音
・刻印 No.22(右胸)
・種族 【音奏歌神族】
・スキル
【高揚の旋律】
【癒しの音奏】
【破壊の音奏】
【守護音奏壁】
【音奏波流弾】
【音奏呪縛】
・神化 【音奏女神化】
・神具 【音奏魔笛】
・神技 【音葬 不協和音】