第18話 六大会議の侵入者
『色々ねぇ。話を聞かせて貰ったけどさ。あんたらの作戦は大当たり!心配しないでも何人かはその大会とやらに参加すると思うよ。』
円卓の中央に突然現れた男。
ひらひらとした黄色の服装にピエロの仮面を着けていた。
この男は誰?何処から現れたの?
そんな考えで若干パニック状態です。
『突然、現れた君は誰なんだい?』
白蓮が戸惑いつつも質問する。
『ああ、申し遅れたね。僕はクロノ・フィリアメンバーの1人でNo.16 裏是流っていうんだ。よろぴこ。』
彼が名乗った瞬間、ギルドマスター全員が動いた。
一応、私も形だけは動かないといけないわね。っと思い武器の扇子を取り出す。
『あれまぁ。流石は各ギルド最強のギルドマスター達だ、速いねぇ。速いねぇ。』
人を小馬鹿にしたような態度の裏是流。
その背後に赤皇が回り首と左腕を封じ、右腕を黒璃。美緑は両足を植物の幹で拘束し、白蓮と青嵐と私が武器を突き付けた。
こんな感じかな?一応、皆の動きに合わせられたと思うけど。
チラリと叶神父を見ると小さく拍手をしていた。とても不気味な笑顔で…。
『クロノ・フィリアがこんな場所に何の用だ?』
『わざわざ敵陣に1人で乗り込んじゃってバカじゃない?』
『我が神の敵にこんなにも早く会えるとはな。』
『それで、この状況でどうするつもりかな?クロノ・フィリアの裏是流君?』
身動き出来ない裏是流は軽く周囲を見渡す。
『いやぁ。予想以上だよぉ。君たち。これならちょっとは楽しめそうだねぇー。』
ニヤリと楽しそうに笑う裏是流。
それを見た瞬間、背中に悪寒が走り抜けた。
『っ!皆!退け!』
白蓮の叫びに一同が裏是流から跳び退いた。
それと同時に裏是流の身体が光を放ち、ボンッ!という音と共に7色の煙が噴き出した。
『こ、これは?』
一同は護衛を含め全員が壁際に避難する。
『どうやら、ただ色の付いた煙のようですね。何も魔力を感じません。』
美緑さんが周囲に植物を広げると植物達が煙を吸い取っていく。
『ははは。驚いた?良い演出でしょ?。いぃひひ。皆の必死な顔頂きましたぁー。ぶい!』
裏是流は数枚の写真を見せる。
ああ、私の顔スッゴい変。撮り直して欲しい。てか、あれ処分したいんですけどぉ。
『おっと!』
『くっ!?』
即座に斬りかかる銀さん。
2本の短剣が裏是流さんを捉えたかのように見えたが、煙のように裏是流の身体が歪む。
『残念ー。残像でしたー。出直しておいでー。』
裏是流の回し蹴りを横腹に受け銀さんが壁まで飛ばされる。
『よっと。大丈夫かい?銀。』
『はい。申し訳ありません。白蓮様。』
白蓮は銀さんを受け止めるとゆっくりと座らせた。
『さて、裏是流君だったかな?結局、君がここに現れた目的は何なんだい?』
裏是流が白蓮を見据える。
ピエロの仮面越しではあるが2人の視線は交わっているようだ。
『そうだなぁ。何て言えば良いのかなぁ?まあ、暇だった。かな。』
『暇?』
『ああぁ、ついでに敵の戦力でも見ておこうかなっと思ったわけさ。ははは。』
『ふむ、で?この状況で君はどうするのかな?』
『ん?この状況?』
裏是流と白蓮が話している間に、ギルドマスターとその護衛達が裏是流を囲むように配置についていた。裏是流自身も現在壁際に立っているため後方への逃げ場は無い。
『あらら。いつの間に。』
それでも余裕を崩さない裏是流。
『いくらクロノ・フィリアメンバーであろうと、この人数差では、君も苦しいのではないかな?』
『いんや。むしろ計画通りかな。』
『何?』
『言ったでしょ?敵の戦力でも見ておこうかなって思ったってさ。6体で良いかな。』
『っ!皆。油断するなよ。』
裏是流の身体から溢れ出る魔力に警戒を強める白蓮が警告を告げる。
『来なよ!幻想獣!』
『『『『『『!?』』』』』』
裏是流の周囲を取り囲むように展開された6つの魔法陣から出現した6体の獣。
獅子の顔と胴体に2本の角、虎模様の手足と蛇の尾。そして、蝙蝠のような翼を生やしたキメラ。
『コイツらのレベルは115。まあ、君らなら難なく倒せると思うけど頑張ってね。』
裏是流が指を鳴らすと同時に各々のギルドマスターに襲い掛かるキメラ。
って、私にも襲い掛かって来てるし!
むりムリ無理ぃ!あんなの倒せないって!
私の能力後衛用のしか無いんだからね!
『もう!何なのよぉ!』
声にならない悲鳴を上げる私を余所にキメラの襲撃は止まらない。
キメラの牙が眼前まで迫った時、私の前に小さな影が割り込んだ。
『………。』
太い牙を、手に持つ杖で防ぐ翡無琥さん。
その小柄な少女は特に慌てる様子も辛そうな様子も見せることなく無言と無表情でキメラの攻撃から私を守ってくれたのだ。
『翡無琥さん?』
『やれやれ。危ないところ。でしたね。』
『え?叶神父?』
いつの間にか後ろにいた叶神父。
そっと肩を持ち私を下がらせる。
出会った時の挨拶以来、声を聞いたの2回目だ。
『黄華さん。それ以上前には出ないで下さい。』
『は、はい。』
『良い娘ですね。では、翡無琥さん。宜しいですよ。』
その言葉にコクりと頷く翡無琥さん。
次の瞬間、チンッ!という音が鳴った。直後キメラの頭と胴体が見事に切断された。
え!?今の一瞬で斬ったの?全く見えませんでしたけどぉ?。ていうか、あの杖って仕込み刀だったんですか?
『速い。全然見えませんでした…凄いですね。』
『でしょ?翡無琥さんの居合いはギルドで一番上手なんですよ。』
居合い。上手とかそんなレベルではないと思うのですが?実力のある方の感覚は難しすぎます。
『やるねぇ。』
嬉しそうに笑う裏是流。
『おらっ!』
赤皇が拳をキメラに叩き込む。
キメラの身体が九の字に折れ曲がり、そのまま壁に激突した。
キメラの身体が風船の様に萎み煙になって消えてしまった。
『へっ。こんなもんかよ?所詮は獣ってか?さて、他の連中は、おお、黄ぃのはもう倒したのか?流石だな。』
『ええ、まあ。』
倒したの私じゃありませんけどね。
『あははははは。弱すぎぃ。つまぁんなーい。』
多くの黒い刃に串刺しにされたキメラ。
その上で笑う黒璃。
刃には毒か呪いの性質があるのかキメラの身体が紫色に変質していた。
『ふっ。我が神の恩恵を受けても、この程度の雑魚しか喚べぬか。片腹痛い。』
青嵐の持つ聖典から放たれた光によって自由を奪われたキメラ。
身動きの取れないキメラに黄金の剣でトドメの一撃を与える。
『ごめんなさい。あなたの命をいただきます。』
美緑の足下から出現した植物の幹と根がキメラに纏わりつき肉体に突き刺さる。キメラを養分に幹から枝が生え先端に複数の花が咲いた。
『さて、これで最後かな。』
最後に残った1匹のキメラの眉間に刀が突き刺さり絶命する。
『ありゃりゃ。こんなあっさり。戦力を見誤ったかなぁ?まぁ、でも初見だしこんなもんかな。』
特に焦る様子も見せずに手を頭の後ろで組む裏是流。
『もう特にすることもなくなったし。この辺でお暇するよ。皆々様。お疲れさまでしたー。』
『この状況で逃げられるとでも?』
『ははは。まぁ、余裕だけど。っね!』
突然の出来事だった。
裏是流の姿が、かき消えたと思った直後、私の目の前にドアップのピエロの仮面が現れたのだ。
『え?』
咄嗟のことで反応できずに驚いて間抜けな声を上げていると、また翡無琥さんが間に割って入ってくれた。
『ははは。さすがぁーーー。』
『………。』
裏是流は足に取り付けられた短剣を奇妙な動きで器用に使い攻撃する。
その斬撃を杖で的確に捌いていく翡無琥さん。
数回の交錯の末、斬撃の一瞬の隙を利用して裏是流が翡無琥に何言かを耳打ちしたように見えた。
そして、直後。翡無琥さんは距離を取り私の元に戻ってきた。
『なかなか楽しい余興だったよ。じゃあ、またねぇー。』
既に姿を消した裏是流。
その場にいた全員が言葉を発せずにいた。
『これは、遊ばれてしまったね。この程度の防衛システムではクロノ・フィリアの潜入を防げないらしい。銀。』
『はい。更なるシステム強化を開発班に指示致します。』
『ああ、頼むよ。』
白蓮が全員に目配せをする。
『さて、皆。途轍もなく強大な邪魔が入ってしまったね。流石にこれ以上は会議を続けても仕方がないし。ここは解散としようか。』
『ああ、何か疲れた。』
『私もぉ。もうお家かえりたーい。』
『異論はない。』
『私もです。』
『はい。』
『うん。では解散しよう。後日、大会の詳細については各々の端末にメールを転送しておくから確認してくれ。銀、皆さんのお見送りを頼むよ。』
『はい。』
そう言い残し、白蓮は扉の奥へと消えていった。
『俺も戻るわ。じゃあな。』
『私もぉー。』
『ふん。』
『では、私も失礼します。』
『それでは、皆様。ごきげんよう。』
各々が入室してきた扉の奥に消えていく。
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コツコツコツ。
周囲に人影の無い長い通路を1人で歩く白蓮。
『今、戻りました。』
その後ろに現れる銀。
『お疲れさま。銀。皆は無事に帰ったかな?』
『はい。』
『そうか。』
コツコツコツ。
暫しの無言。廊下を歩く音だけが響く。
『白蓮様。』
『何だい?』
『質問をお許しください。』
『いいよ。』
『何故。貴重な『開発品』を、あの者たちにお渡しになられたのですか?』
『ああ、その事かい。』
『はい。あれは我らで独占しても良かったのでは…と思いまして。』
『ふふふ。なぁに。簡単なことさ。更なる進化の為だよ。』
『更なる進化?』
『そう。『薬』を渡した5人のギルドマスター。この中で薬を使う奴はいない。怪しまれてたしね。ここまで全員に信用されてないと逆に笑える。…そして、彼らは各々で薬の成分などを調べて独自の研究を始めると僕は思う。』
『そう…でしょうか?』
『まず、赤皇は部下に使えと言って自分は使わない。何しろ自分の強さに自信を持っている男だ。その強さは自分自身で積み重ねてきた努力の結晶。今さら他の力など取り込みはしないだろうさ。そして薬を受け取った部下は怪しんで薬の成分などを調べようとする筈さ。多分、玖霧君アタリかな。』
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『ふぅー。久しぶりに疲れたぜ。』
『お帰り。赤皇。六大会議どうだった?』
『おっ。戻ってたのか玖霧。会議はまあまあ面白かったぞ。』
『あんたのことだから。勝手に喧嘩でも売ったんじゃないの?』
『いんや。喧嘩売る前にクロノ・フィリアの1人が乱入してきてな。俺ら全員に喧嘩売ってきたぞ。はははは。』
『え!?クロノ・フィリアが?良く無事で帰って来れたわね。』
『相手も、ちょっとしたお遊びだったんだろうさ。弱っちぃ獣みたいなヤツ召喚して、けしかけて来たけどな返り討ちよ!。』
『まあ、あんたが無事ならそれで良いわ。』
『あと、これやるよ。』
『え?何これ?薬?』
『白ぃのが言うには飲んだらレベルが一時的に上がる薬なんだと俺は使わねぇからお前らで分けれや。』
『いや、怪しくない?まあいいわ。研究班に調査させるわよ。』
『後は、任せるわ。俺は寝る。ZZZZZ。』
『はいはい。』
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『続いて、黒璃は薬を部下に渡し研究しろと命令を出すだろう。彼女は我々を一切信用していないからね。』
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『ただいまぁー。』
『…お……えり。』
『え?暗君1人だけ?』
『…う…ん。』
『そっかー。じゃあ暗君にお願いしようかな。』
『…な…に?』
『これね。研究室の寝蔵に届けて成分とか効力とか色々調べてもらって?』
『…こ……何?』
『んー。レベルが上がるぅあやし~お薬。』
『…そ…う…。』
『あらら。興味ない?』
『…う…ん…。』
『そっかー。じゃあソレよろしくね。』
『…ん…。』
『あっ。あと1つ。』
『…な…に…?。』
『今度ねぇ。面白そうなイベントがありそうなんだぁ。で、ちょーっと悪巧みしよーかなぁって思ったの。』
『…しゅ…ぅけ…っ?。』
『そっ。残りの 三陰と六影 全員呼んどいて。』
『…う…ん…。』
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『青嵐も同じだろうね。まあ、彼なら自分で解析するだろうけど。青法詩典は、今、クロノ・フィリアの1人を捕まえている。少し、波乱がありそうだ。ふふふ。』
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『お疲れ様でした。青嵐様。』
『お疲れ様です。』
『ソナタたちも護衛の任、ご苦労。』
『これから、どうなさいますか?』
『ソナタたちは、来る大会に備え四方に散らばる同士達を集結させよ。』
『了解しました。』
『時雨。』
『はい如何致しましたか?』
『ソナタはB地区の研究所へ行き警戒を強めよ。』
『B地区と言いますと例の。』
『ああ、我が神の最大の敵が収監されし場所だ。くれぐれも注意しろ。奴らが取り返しに来るかもしれない。』
『はい。心得ました。』
『青嵐様。』
『どうした。法陣。』
『青嵐様はこれから?』
『この錠剤の解析を行う。これが我が神の恩恵を受けし秘宝になり得るかどうかを…。』
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『美緑君の所は共同で試作したからね。研究はこのまま続行していくだろう。ただ、ギルドは先の件でそれどころではないだろうね。』
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『端骨。詳しい説明をお願いします。』
『…は…。わ…私は、クロノ・フィリアの戦闘データの入手の為…に…部下たちを犠牲にしました。』
『…それが…涼さんたち…だと?。』
『…はい。涼、柚羽、狂渡、羽黒、威神。以上5名が率いる小隊、計200名。全滅です。』
『っ!…りょ…う…さん…が…死…んだ?』
『…はい。潜入後、2時間後には連絡が完全に途絶えました。』
『ぅ…。そう…ですか…端骨…あ、貴方への処分は追って伝えます。今は、下がりなさい。』
『…はい…失礼…致します。』
端骨が退席する。
『美緑。大丈夫か?』
『…お兄ちゃん…りょ…涼さんが…涼さんが死んだって…死ん…じゃったって!。』
『よく、耐えたな。』
『うぇぁぁああああああああ。』
『安心しろ。お前の大切な者を殺したクロノ・フィリアは必ず俺が全滅させる。仇は兄が取るからな。』
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『黄華君の所は戦闘が出来る能力者が少ない。薬を使っても驚異になる存在はいない。筈だった。』
『あの盲目の少女と神父ですね。』
『ああ、アレは危険だね。強さの底が見えない。警戒を怠るなよ?』
『はい。』
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『あの、今日はありがとうございました。』
私は深々と頭を下げた。
『気にしなくても大丈夫です。お姉ちゃん。』
『え?』
喋った。めっちゃ可愛い声なんですけどぉ。
『私が勝手に立候補したんです。お姉ちゃんを守りたくて…。』
『え?どうしてですか?私たち初対面ですよね?』
『そうです。けど。お姉ちゃん優しい人だから。』
『優しい?私がですか?』
『私。こんな世界になって目が見えなくなってしまいましたが、今は、今まで見えなかったモノが 視える ようになったんです。』
彼女の目は、布で覆われ隠されている。
『お姉ちゃんの 心の形 はとっても優しい形なんです。閃お兄ちゃんや無凱おじさんと同じくらい。だから、心配だったの。だから、私から行くって無凱おじさんにお願いしたんです。あ、あのぉ…迷惑でしたか?』
きゅんっ!
『そんなことないわ。翡無琥さん…いいえ。翡無琥ちゃん!。』
思わず彼女を抱き締めていた。
そして、頭をなでなでする。
こんなに良い娘だったなんて、怯えてた私を全力で殴りたい。
『お姉ちゃん。くすぐったいです。』
『ああ、ごめんね。つい…。』
『いいえ。嬉しかったです。また、してください。』
『もうっ。』
可愛すぎるぅ。
こんな娘を送って来てくれた無凱には感謝ね。
『やれやれ。すっかり気に入られましたね。黄華さん。』
『あっ。叶神父もありがとうございました。』
『いいえ。私はただ見守っていただけですから。翡無琥さんが対応できないような事態が起きた時に備えてね。まあ、要らぬ心配でしたが。』
成る程。叶神父は翡無琥ちゃんの付き添いで来たのですか。
『そう言えば。あの乱入してきた方はクロノ・フィリアの仲間ですよね?』
『そうです。裏是流君ですね。彼も相変わらずですね。』
『彼の目的は結局何だったのでしょう?』
『彼は素直じゃ無いですからね。何を考えていることやら。』
『翡無琥ちゃん。』
『何ですか?お姉ちゃん。』
『あの時、彼に何を言われたんですか?』
『あの時…ひそひそ話された時ですね。』
『そうそう。ちょっと気になって。』
『…あの…パンツの色…何色って。』
『はぁあ!?』
あんのぉ男ぉぉぉ。
私のエンジェルに向かって何てゲスな質問をぉぉぉぉ。
『因みにピンクでクマさんです。』
『ほうほう。』
『女の子がそんなこと報告しちゃダメです!叶神父も何がほうほうですか!。』
『これは失礼。』
『ごめんなさい。あっ。でも、もう1つ言ってました。』
『ん?彼がですか?』
『はい。まだ見つかってない仲間の居場所を教えて貰いました。』
『そうなのかい?』
『はい。私、耳がとても良いので裏是流お兄ちゃんの小声も聞き取れました。叶おじさん。多分、機美お姉ちゃんことだと思います。』
『おやおや、機美さんですか?やれやれ。これは無凱君に報告ですね。黄華さんも1度我々の集会に参加して今回の会議のことの説明をお願いします。』
『は、はい。最初からそのつもりです。』
『やった。まだお姉ちゃんといられるんですね。』
『翡無琥ちゃん…。』
きゅん!きゅん!
もう何なんですか?
この可愛い生き物は?
『手、繋ぐ?。』
『良いんですか?お願いします!。』
ああ、小さな手。癒されるぅ。
優しく握るとぎゅっと握り返してくれる。
あーー可愛すぎるぅーーー。
『さて、では戻りましょうか。』
『はい。行きましょう。』
『へへへ。お姉ちゃん。』
この娘、お持ち帰りしてもいいかな?
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『くくく。順調のようだね。』
『白蓮様?』
急に笑いだした白蓮を心配する銀。
『いやなに、何でもないよ。ただ、順調過ぎて可笑しくてね。』
『順調…ですか?私にはまだ良く分かっていないのですが。』
『我々の目的は、ただクロノ・フィリアとの 接点 を作るだけで良いのさ。そうすれば、後の事は『あの方』たちがしてくれる。』
『『あの方』々は信用できるのでしょうか?』
『信用も何も今までの計画は全て『あの方』が考えられたからね。我々は、ただ命令に従っただけ。つまりは『あの方』たちにとって我々は駒でしかないのさ。盤上へ…クロノ・フィリアを表舞台に引きずり出すね。』
『白蓮様はそれで良いのですか?』
『…ふふふ。そうするしかないのさ。我々の力だけでは所詮この薬を作るまでしか出来なかったから。』
ギルドマスターたちに配った リヒト を1錠取り出し握り潰す。
そして、地面に捨てる。
『レベル120程度の我々では、レベルを20上げたところで、レベル『150』のクロノ・フィリアたちには遠く及ばない。だから、従うのです。最後に全てを手にするために。』
『…畏まりました。私は白蓮様に従います。』
『期待、してますよ。銀。』
『はい。』
この日を境に、世界は少しずつ動いていく。
小さな波紋が大きなうねりになるように。




